
JFEスチールは、製鉄プロセスにおいて省エネルギー、省資源に取り組んできました。その結果、多くのエネルギー、水、資源の製鉄プロセス内循環を実現しています。また、最終処分量を上回る量のプラスチックなどの廃棄物リサイクルを行っています。
JFEスチールをはじめ、日本鉄鋼連盟加盟企業を中心とする91社では、地球温暖化対策として自主行動計画を策定し、さまざまな取り組みを行っています。自主行動計画では、
の3つの項目を柱としており、鉄鋼生産における省エネへの取り組みについては、右記の数値目標を掲げ、その目標達成に向けさまざまな活動を展開しています。
2009年度の91社の粗鋼生産量は9,372万トンと、1990年度比で10.5%減少するなか、エネルギー消費量は、1990年度比で17.2%の減少、CO2排出量は、1990年度比17.5%の減少となり、2008年度に引き続き目標を上回る結果となりました。
2009年度のエネルギー消費量の減少には生産レベルの急激な低下が大きく影響していますが、粗鋼1トンあたりのエネルギー消費量(エネルギー原単位)でも、1990年度に対して、7.5%の改善が見られるなど、これまでの省エネルギー活動の成果も現れています。
日本の粗鋼生産量は、リーマンショックの影響で、2008年度下期に急減し翌年度上期まで減少傾向が続き、2009年度の粗鋼生産量は1億トンを割りましたが、2010年度には1.1億トン/年にまで回復しています。今後も1億トン/年を超える状況が続けば、5年平均での削減目標の達成も非常にチャレンジングなものとなってくる可能性もあります。鉄鋼業界としては、今後もさまざまな省エネ対策を継続し、京都メカニズムの活用も含め、引き続き目標達成に向けて、最大限の努力を継続します。


JFEスチールでは、鉄連自主行動計画の達成をめざし、製鉄プロセスにおける省エネルギーとCO2削減に向けたさまざまな取り組みを続けています。
JFEスチールは、鉄連自主行動計画が策定される以前より、省エネルギー設備の導入などを中心とした、省エネルギーに積極的に取り組み続けてきました。
JFEスチールのエネルギー原単位推移
省エネルギー設備の導入
高炉による製鉄プロセスは、鉄鉱石の還元にコークスを使用しますが、この還元工程などでCO2が発生します。JFEスチールは、1970年代から長年にわたり、コークス炉、高炉などで発生する副生ガスを回収し、燃料、発電に活用することや、その他の工程でも徹底した排ガス、排熱の回収・有効利用の促進、さらには工程の連続化など、さまざまな省エネルギー設備の導入によって、1990年度までに1973年度比で20%以上の省エネルギーを実現しました。
さらなる省エネルギーの推進
90年代に入ってからも引き続き、廃プラスチック高炉吹き込み、「リジェネバーナー」、エンドレス圧延の導入をはじめとするさらなる省エネルギーを推進し、鉄鋼生産では世界最高水準のエネルギー使用効率を実現しました。
省エネルギーによる地球温暖化防止対策
現在では、地球温暖化防止対策への取り組みとして、鉄鋼業界が自主行動計画で掲げた目標を達成するため、「Super-SINTER®」の開発・実用化、CDQの増強、シャフト炉の新設などの
省エネルギーに向けたさまざまな取り組みを続けています。このように省エネルギー分野で積極的な設備投資を進めた結果、その投資額は1990年以降の累計で4,160億円規模に達しています。こうした努力の結果、1973年から現在までに約37%の省エネルギーを実現しています。
粗鋼生産量の推移
JFEスチール単体の2010年度の粗鋼生産量は2,880万トンと、1990年度比で22%、2009年度比では11%増加しています。その結果、2010年度のエネルギー消費量は前年度より増加しましたが、粗鋼1トンを生産するために必要なエネルギー消費量(エネルギー原単位)は、0.2ポイントの改善を実現しました。製鉄プロセスにおけるエネルギー消費量は生産量に大きく影響されますが、当社で はこのような影響を極力排除し、技術レベルの向上をより的確に把握できる指標として、エネルギー原単位を重視しています。当社のエネルギー原単位は、生産量の増減にかかわらず改善基調を維持しており、1990年度と比較して、21%の改善を達成しています。
粗鋼生産の増加により、CO2排出量も前年度の実績を上回りましたが、粗鋼1トンを生産する際に排出するCO2の量(CO2原単位)は0.04ポイント低減しています。エネルギー原単位と同様に、CO2原単位も一貫して改善を続けており、1990年度との比較では22%の改善となりました。
JFEスチールでは、鉄連自主行動計画の目標達成に向け、これからも技術の向上を通じた原単位の改善により、エネルギー消費量の削減、CO2排出量の削減を促進し、地球温暖化防止に取り組んでいきます。
具体的には、製鉄所の操業効率のさらなる改善や設備投資などによる省エネルギー・CO2削減への取り組みを推進していきます。また、将来の抜本的なCO2削減に向けて、革新的製鉄プロセス開発やCO2の分離・回収技術などの研究開発を積極的に行い、長期にわたり地球環境問題に貢献していきます。
| % | |||||
| '06 | '07 | '08 | '09 | '10 | |
| 消費量 | 2 | 6 | -7 | 12 | -3 |
| 原単位 | -18 | -19 | -18 | -20 | -21 |
| 粗鋼生産量 | 23 | 30 | 13 | 10 | 22 |
エネルギー消費量・原単位、粗鋼生産量の1990年度比増減率
| % | |||||
| '06 | '07 | '08 | '09 | '10 | |
| 排出量 | 1 | 5 | -9 | -13 | -5 |
| 原単位 | -18 | -19 | -20 | -21 | -22 |
| 粗鋼生産量 | 23 | 30 | 13 | 10 | 22 |
CO2排出量・原単位、粗鋼生産量の1990年度比増減率
JFEスチールは、鉄の製造プロセスにおける省エネルギーやCO2削減努力に加え、製造プロセス以外でも、物流、製品の提供、国際協力などを通じた、総合的なCO2排出量の削減に取り組んでいます。
JFEスチールは、鋼材を輸送する際の燃料消費によって発生するCO2やNOx(窒素酸化物)の削減も大きな課題と考えています。これらを削減するために、比較的環境負荷の低い船舶や鉄道へ輸送手段を切り替えるモーダルシフトを積極的に進めています。 また、海外からの原料の輸送においても、大型の原料専用船を導入するなどの輸送の効率化を追求しています。
2010年度のJFEスチールのモーダルシフト化率※1は、95%に達しています。また、鋼材の輸送に伴うCO2排出量は約36万トンでした。

モーダルシフト化率(JFEスチール)

全産業トータルでのモーダルシフト化率
非エネルギー起源CO2の
排出量推移(試算)
高炉や転炉では、鉄鉱石中の不純物を取り除くために、副原料として石灰石やドロマイトを使用します。JFEスチールでは、これらが分解する際に発生するCO2を非エネルギー起源CO2として管理しています。2010年度の非エネルギー起源のCO2排出量は約171万トンでした。
非エネルギー起源のCO2排出量は当社のCO2全排出量の約3%ですが、粗鋼生産量の増加にかかわらず、2010年度もほぼ同程度の排出量を維持しています。
非エネルギー起源CO2の
排出量推移(試算)
モーターの鉄心
(無方向性電磁鋼板の積層品)
JFEスチールは、優れた技術力を活かし、低炭素社会と経済発展の両立に不可欠なさまざまな素材を開発、提供しています。例えば、ハイブリッドカーや電気自動車の普及が進むなか、こうしたエコカー普及のニーズをいち早く捉え、自動車の電動化に対応する電磁鋼板の開発を進めてきました。小型高出力と同時に高い効率と信頼性が要求される駆動モーター用として、バッテリーの電力を効率良く利用できる高級電磁鋼板製造の専用設備を、他社に先駆けて導入しています。また、「高効率無方向性電磁鋼板」など新製品の開発により、ハイブリッドカーや電気自動車の燃費向上、高出力化、小型軽量化に一段と貢献しています。これらの高機能鋼材は、自動車の走行時に排出されるCO2の大幅な削減に貢献しています。
JFEスチールは、継続的な技術開発によって培ってきた環境保全・省エネルギー・CO2削減技術を活用し、世界各地で経済と環境の両立、温暖化対策などに向けた多くの技術移転プロジェクトを推進しています。昨年5月には、ブラジルのヴァーレとの合弁会社である米国カリフォルニアスチール(CSI)が新設した第5加熱炉※において、米国の大型加熱炉としては初めてとなる「リジェネバーナー」を採用しており、従来と比較し20%の燃料原単位の改善を達成しています。
JFEスチールは今後もグローバルな技術移転を通じ、地球規模での温暖化対策に貢献していきます。

CSI第5加熱炉
焼結炉排ガス処理設備:西日本製鉄所
(福山地区)活性コークス方式の例
JFEスチールは、地域社会との共生をめざし、SOx、NOxの排出抑制に取り組んでいます。その具体策として、主要な排出源である焼結排ガスへの脱硫装置、脱硝装置の設置を進めてきました。それぞれの排出量は1973年から大幅に削除され、現在も削減傾向を維持しています。
今後も、SOx、NOxの排出量の削減に努めていきます。
ばいじんや粉じんは、製鉄所近隣の方々に不快な思いをさせる原因物質となります。JFEスチールでは、地域との共生をめざし、ばいじん、粉じんの削減に努めています。その具体策として、構内清掃、原料ヤードなど粉じん発生源への散水強化、防じんネット設置を行っており、さらに日常管理を徹底し、飛散量低減に取り組んでいます。
排水処理設備:東日本製鉄所(千葉地区)
排水中
窒素処理設備の例
製鉄プロセスでは、大量の水を使用します。JFEスチールでは、製鉄プロセスで使用した水を、使用後の性状に応じて、生物処理法や化学処理法などの方法で浄化処理することで、積極的に循環利用しています。その結果、水の循環率は約94%という高い水準を維持し続けています。また、公共水域へ排水する場合にも、徹底した浄化処理を施すなど、水域への環境負荷 低減に取り組んでいます。2010年度の化学的酸素要求量(COD)の排出は3.1トン/日であり、前年度と同様の水質を維持しています。
SOx排出量の推移
NOx排出量の推移
工業用水受入量・循環率の推移
COD(化学的酸素要求量)の推移
化学物質の排出量・移動量
JFEスチールは、有害性が高く排出量の多い化学物質から優先的に削減を進めています。その結果、2010年度はダイオキシン類については前年度より1.4g-TEQ削減し3.4g-TEQ に、またベンゼンについては約1.1トン削減し23.9トンに、それぞれ排出量を削減しました。
また、事業所内埋立と事業所外移動を含めた移動量と、大気、公共水域への排出量の合計は、粗鋼生産が増加しましたが、前年度とほぼ同等レベルを維持しています。
JFEスチールは、今後も化学物質についての自主的な削減を継続し、大気、公共水域への環境負荷軽減に努めていきます。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)機器については、PCB特別措置法に則り、適正な保管管理、運搬、処理に努めています。
JFEスチールでは、2005年に日本環境安全事業(株)(JESCO)への大型PCB機器の早期登録を完了しており、現在はJESCOの指示に従って、順次処理を進めています。
PCB機器の処理の進捗状況は、地域によって異なりますが、これまでに保管、輸送についてのトラブルはなく、適正な保管、運搬、処理が行われています。今後も引き続きJESCOの指示に従い、適正処理を推進します。
なお、微量PCB機器については、絶縁油使用機器を廃却する時点での絶縁油分析をルール化し、PCBの含有が確認された場合には、適正に保管しています。

PCB機器保管庫と機器保管状況:西日本製鉄所福山地区
環境データの遠隔監視の例(京浜地区)
環境異常の発生を未然に防ぐため、大気、水質の負荷状況について、定期的なバッチ分析、自動分析装置による連続分析およびITV(工学用テレビ)による遠隔監視など、さまざまな方法、角度からの監視を実施しています。また、異常発生時には携帯電話網を使って情報が自動配信される体制を整備しており、迅速な対応が可能となっています。こうした環境監視体制の効果もあり、2010年度はJFEスチールでは環境異常の発生はありませんでした。
JFEスチールの製鉄所では、鉄鋼スラグ(製鉄工程の副産物)、高炉や転炉の鉄系ダスト、圧延排水処理などのスラッジが主な副生物です。それぞれ、鉄鋼プロセスの最適化、水処理プロセスの最適化を進め、発生量削減に努めています。
また、鉄分を多く含むダストやスラッジは、製鉄原料への再利用を進め最終処分量の削減に努めています。
2010年度は、2009年度に稼働した福山地区のダスト精錬炉、2008年度に稼働した倉敷地区のばい焼炉を活用し、ダスト、スラッジの所内原料化を進めました。鉄鋼スラグについては、海域での利用促進のための技術開発に取り組んでいます。
これらの結果、2010年度のダスト・スラッジ再資源化率は99.8%でした。
今後も、ダスト・スラッジの所内原料化のための技術開発を積極的に推進していきます。

副生物発生量の内訳

副生物の最終処分量・資源化率の推移
JFEスチールでは、鉄鋼スラグはすべて有効利用しています。土木・セメント用途が鉄鋼スラグの利用先の大部分を占めていますが、近年では海域修復工事向けなどの環境保全分野への有効利用を推進しています。
マリンロック(港湾修繕工事)
マリンロックは、鉄鋼スラグから製造される準硬石相当の人工資材です。限りある天然石材に代わる資源循環型・環境保全型の土木・海洋工事、港湾・空港工事資材として、あるいは護岸や藻場造成材、被覆石として使用されています。マリンロックは、「ザ!鉄腕!DASH!!」の番組企画のなかで、海草育成場の材料として使われています。
製綿中のスピナー
ロックウールは高炉で発生する溶融高炉スラグを主成分として成分調整後、高速回転ロールで吹き飛ばすことで繊維状に加工されたもので、住宅用断熱材に利用されています。ロックウールは成分や性状が天然材と同様の無機材料であるため、耐熱性や不燃性に優れているだけでなく、酸やアルカリなどに対する耐薬品性、紫外線による劣化が無い、さらには発泡剤などの化学薬品を使用しないという特徴を持つ、鉄鋼製造プロセスの副産物を原料とする資源循環型の製品です。