
バラスト水処理フロー図
船舶は空荷時にバランスをとるため、荷揚げ港で海水(バラスト水)を注入します。このバラスト水には荷揚げ港の海洋生物が含まれ、荷積み港の周辺で排水する時に、その生態系を乱す問題があります。
そこで、JFEエンジニアリングは船内に搭載したバラスト水を無害化する管理システム「JFEバラストエース」を開発しました。「JFEバラストエース」は2010年3月にIMO(国際海事機関)の最終承認を取得しました。現在、世界最大となる4,500m3/hの処理能力まで適用できます。
「JFEバラストエース」へのお客様のニーズに対応できるよう、営業強化しています。また、国土交通省から使用する薬剤の使用量半減化の承認を取得しましたので、ランニングコストが半減しました。さらに、シンガポール、ロッテルダムなど主要20拠点に、システム搭載船への薬剤の供給拠点を設置しています。この拠点については、今後も増設する計画です。

薬剤供給拠点網

日本郵船は、バラスト水管理条約の発効に先立ち、バラスト水処理システムの搭載を検討し自動車専用船「エメラルドリーダー」にJFEバラストエースを初号機として採用しました。続けて、日本郵船は2号機として自動車運搬専用船「アウリガリーダ」にもJ F Eバラストエースを搭載しました。
さらに、JFEエンジニアリングは就航中大型船1隻および新造大型船2隻向けのJFEバラストエースを相次いで受注しました。新造船への大型処理システム搭載は、国内メーカー初となります。
マリンブロックと
断面の電子顕微鏡写真
JFEスチールが開発した「マリンブロック」は、鉄鋼スラグをCO2と反応させ、炭酸カルシウムとして固化した藻場・サンゴ礁造成用ブロックです。炭酸カルシウムはサンゴの主成分であり、微細な凸凹がサンゴや海藻の根を張りやすくしています。また、鉄分は海藻が生育するための必須元素であり、二酸化ケイ素も珪藻の主成分となります。藻場の再生は、海の生産力向上やCO2吸収に役立ちます。
1997年から開始した「マリンブロック」の実証実験・事業は、これまでに、全国33カ所の島々や沿岸域で、サンゴ礁再生や藻場造成など、さまざまな形で行われてきました。その結果、沖縄の海域でサンゴの育成基盤としての成果を挙げ、またその他 の多くの海域でも、海藻が「マリンブロック」上で繁茂し、藻場育成基盤として優れていることが実証されました。さらに、宮古島ではサンゴの産卵も確認され、サンゴ礁の再生サイクルに有効なことが実証されました。
サンゴの産卵
マリンブロックに
カジメ(海藻)が繁殖(城ヶ島)
インドネシアでは、2007年から東京海洋大学とインドネシアサムラトランギ大学が共同でサンゴの生育調査・試験を行ってきました。その結果をふまえ、本格的な実証試験が 経済産業省「平成22年度東アジア省エネルギー推進研究事業」の一環として実施され、その成果は、「ERIA※」主催の会合で報告されました。会合では、インドネシアをはじめ とする各国参加者から高い関心が示され、環境保全に貢献する技術としての認知度が高まりました。インドネシアでは、実証試験に関する州政府関係者や研究者によるシンポジウムも開催され、この試験をきっかけとした、「マリンブロック」のグローバルな展開への期待が高まっています。

移植の様子
「マリンブロック」に移植された
サンゴ幼生(拡大)
「製鉄」と「サンゴ礁や藻場の再生」――無関係に思えることが、生命の誕生から何万年という時間軸を持った物質 の循環として結びついています。
鉄の主原料は鉄鉱石、石炭、石灰石です。鉄鉱石は海水中の鉄イオンが、20億年以上の時をかけ鉱床を形成したものです。また、石炭は古代の樹木が埋没したまま分解せずに残存したもの、さらに、石灰石は、古代のサンゴや貝殻が堆積したものです。このように、製鉄業は古代の生物の 営みによってできた鉱石を、人間の知恵で「鉄」という重要な素材に転換する役割を担っています。
「マリンブロック」は海の生物の多様性を守る材料として期待されていますが、これは、製鉄原料が製鉄業を経て生命の起源の海へ戻るという、まさに地球規模での物質循環へとつながっています。
サンゴ礁の再生も植林も、環境にかかわる事業を継続していくためには、基準や法律を守ることはもちろん、地域住民をはじめ関係者との対話のプロセスが不可欠です。これは発展途上国の 漁村でも国内の都市部でも同様で、地域の人々が「自分たちのプロジェクトだ」というオーナーシップを実感できること、企業と対等なパートナーシップを構築できていると感じることが成功 の鍵となります。
こうした観点から「マリンブロック」のプロジェクトをみると、地道に15年以上のデータを蓄積してきたことが関係者の厚い信頼関係を物語っていると思います。強度、成長の速度といったデータに加え、「台風で死滅するのではないか」といった住民や関係者の懸念を一つ一つ共有しながらクリアしてきた実績はプロジェクトの貴重な財産です。今後もこうした姿勢を貫き、発展途上国での応用の可能性、地域面での広がりを模索していくとともに、国際的な信頼関係の構築、深化に努力していただきたいと思います。(名古屋市立大学大学院 経済学研究科 准教授 香坂 玲氏)