
社会を取り巻く環境がめまぐるしく変化する今日、企業の活動もさまざまな場面でその影響を受けます。地球環境問題も同様であり、昨今の国内外の政治・経済情勢の激変に翻弄されてきた感があります。しかし、そのなかにあっても揺るがぬものは、着実な成果を生み出す確固たる技術力であり、実効性のある対策は先進的な技術を梃子とするものでなければならないと考えています。このような信念のも と、当社はこれまでさまざまな技術を開発し、その普及に邁進してきました。近年、その効果は自社の鉄鋼生産プロセスの範疇を超え、他産業や海外鉄鋼メーカーにも及ぶ広がり をみせています。
われわれはこれらの活動を「3つのエコ」と称して推進しています。 即ち、最先端の省エネ技術・設備により生産工程のCO2削減をめざす「エコプロセス」、高機能鋼材の供給を 通じて最終製品の使用段階での省エネを促進する「エコプロダクト」、そして、世界最高水準の技術を海外に展開・移転し、地球規模でのCO2削減をめざす「エコソリューション」です。
「エコプロセス」では、生産体制の最適化と操業設備・技術の改善、先進技術の導入により、2010年度には粗鋼を1トン生産するために必要なエネルギー使用量、CO2排出量を、1990年度のレベルから20%以上削減する大きな成果を挙げています。例えば当社独自開発の「Super-SINTER®」は、2010年11月に日経地球環境技術賞※1大賞を受賞するなど、その省エネ効果は外部からも高く評価されています。「エコプロダクト」では、ナノレベルで鉄の結晶構造を制御した「NANOハイテン®」など、各種ハイテン鋼板を世に送り出し、自動車の強度の維持・向上と軽量化を同時に充足することで、燃費改善によるCO2排出削減に寄与しています。「エコソリューション」では、海外グループ企業、提携先を中心に省エネ技術の移転・普及を進めるとともに、世界鉄鋼協会をはじめ、APP※2、日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術交流会※3など、国際協力体制の構築に積極的に参加し、地球規模でのCO2削減に貢献しています。
日本鉄鋼連盟の環境自主行動計画は、1990年度比で9%のCO2排出削減を目標としていますが、ここでは「エコプロセス」の効果のみがカウントされています。これに対して、「3つのエコ」合計での削減効果は、年間7,000万t-CO2にのぼると試算されており、1990年度の鉄鋼業総排出量の約35%、わが国の総排出量の約6%にも相当する削減量となります。このことは、将来も含めた排出削減、特に海外での貢献に対して、日本鉄鋼業の技術が大きなポテンシャルをもつことを示すものです。
また、将来の抜本的な排出削減に向け、新しい高炉原料として期待される「フェロコークス」、CO2排出量の大幅削減をめざす「COURSE50」など、革新的な技術の開発にも取り組んでいます。
当社は今後もこれまで培ってきた技術力にさらに磨きをかけ、技術を梃子とした真に実効ある温室効果ガス排出削減を国内外で力強く推進し、地球規模での温暖化対策に貢献してまいります。
「3つのエコ」で温暖化防止に貢献
JFEスチールは、独自に開発した高機能鋼材をお客様に提供し、最終製品の使用段階における省エネとCO2排出削減に貢献しています。高機能鋼材の製造には、微量成分の調整や、圧延加工時の精密な温度制御など ナノレベルで鉄の結晶構造を制御する、さまざまなハイテク技術が活躍しています。

JFEスチールが提供している高強度厚板は、圧延加工の際に精密な温度制御を組み合わせることで、高い強度と優れた溶接加工性を実現しています。これにより、船舶の軽量化と航行時の燃費改善に貢献し、また建造時の省エネを達成しています。

「東京スカイツリー®」など、各地で建設されている大型の高層建築物には、強度や加工性に優れた高性能の建築用鋼材が必須となります。
JFEスチールが開発した高性能の厚板・形鋼・鋼管などさまざまな建築用鋼材は、高層建築物の軽量化と省資源に貢献しています。
ハイテン使用部位と高強度化
鉄鉱石を石炭で還元し鉄をつくる高炉プロセスでは、還元反応に伴うCO2の発生が避けられません。JFEスチールではさまざまな技術の開発・実用化を通じ、プロセスのエネルギー効率改善によるCO2排出削減に取り組んでいます。
京浜地区に導入された「Super-SINTER®」JFEスチールは、焼結鉱の製造プロセスで使用する粉コークスの一部を、天然ガスなど水素系ガスで代替する 「Super-SINTER®」技術を開発・実用化しました。これにより焼結プロセスのエネルギー効率が大幅に向上するとともに、 焼結鉱の品質が改善することから、これを使用する高炉のエネルギー効率も改善されます。
2009年1月に京浜地区焼結工場で商業運転を開始し、年間最大6万トンのCO2排出削減を達成しました。現在、西日本製鉄所(倉敷地区)をはじめ、各地区への導入を進めています。
フェロコークス「フェロコークス」は、鉄鉱石と石炭を事前に混合・成形し、乾留した塊成物であり、高炉における反応効 率改善とそれに伴う還元材比削減、さらにCO2排出の大幅削減が期待される革新的な高炉原料です。
JFEスチールは、京浜地区にパイロット設備を設置し、実用化に向けた実証試験に取り組んでいます。
現在の製鉄プロセス

JFEスチールは1996年に世界で初めて使用済みプラスチックの一貫高炉原料化技術を開発・実用化しました。これにより還元材として使用するコークスを減らし、高炉からのCO2排出を削減しています。当技術は2004年度「資源循環技術・システム表彰経済大臣賞」を受賞したほか、川崎市から、市内で研究開発され特にCO2削減に寄与する技術に与えられる、「低CO2川崎パイロットブランド2010」に選定されました。なお、最近ではプラスチックの微粉化技術を実用化し、高炉における反応効率を高めることで、さらなるCO2排出削減を可能にしています。
使用済みプラスチック(微粉化前)
微粉化後JFEスチールは、世界鉄鋼協会やAPP鉄鋼タスクフォースなどさまざまな国際活動を通じて、省エネ・環境技術のグローバルな普及を促進し、鉄鋼生産のグリーン化、海外製鉄所の省エネ推進で リーダーシップを発揮しています。
JFEスチールは、焼結鉱を製造するフィリピンの子会社フィリピン・シンター社(PSC)において、焼結排熱回収技術に基づくCDMプロジェクトを実施し、1.5万トンのクレジットを取得しています。また、経済産業省が所管した「平成22年度地球温暖化技術普及等推進事業」の一環として、PSCへの「Super-SINTER®」など各種省エネ設備の導入調査事業を実施しました。
JFEスチールは2010年7月、インドのJSWスチール社へ資本参加し、省エネ・環境分野を含む包括技術協定を締結しました。この協定に基づき、JSWグループの主力一貫製鉄所のエネルギー効率改善に積極的に取り組んでいます。
JFEスチール京浜地区での見学会JFEホールディングス社長の馬田一が会長を務めるworldsteelは、製鉄所から排出されるCO2を世界共通の手法で計測・算出するプロジェクト(Climate Action)を進めており、さらに、その手法の国際標準(ISO)化を推進しています。2010年10月に東京で開催された年次総会後の京浜地区見学会には、メンバー企業各社の経営陣やマスコミ関係者が多数参加し、都市型製鉄所の環境エネルギー設備やリサイクル施設のあり方について意見交換を行いました。
高炉プロセスは、高性能な鉄鋼製品を低コストで安定的に生産することで、世界の経済成長を支えており、その重要性は今後も変わりません。
日本鉄鋼業界は、高炉プロセスから発生するCO2を大幅に削減することをめざし、NEDOの支援を受け、革新的な技術による次世代の製鉄法、「環境調和型製鉄プロセス:COURSE50」の技術開発に取り組んでいます。
このプロジェクトは、CO2排出量の30%削減を目標とし、2030年の実用化をめざしています。JFEスチールは、高炉からのCO2発生を削減する技術、発生したCO2を分離回収する技術、未利用排熱を回収する技術など、すべての重点分野で中心的な役割を果たしています。
高炉プロセスでは、鉄鉱石の還元材としてコークスを利用しますが、その一部を水素で代替するとCO2の発生量を減ら すことができます。
JFEスチ-ルでは、大量の水素を含む改質コークス炉ガスを、高炉へ吹き込む際の炉内反応への影響を解明することで、安定的に高炉で水素還元を行う技術の開発に取り組んでいます。

転炉
約1,600℃で転炉から排出される製鋼スラグの顕熱は、現在有効に利用されない排熱となっています。JFEスチールでは、この排熱を水蒸気として回収しCO2の分離・回収プロセスに有効利用する技術の開発を進めています。
JFEスチールは、高炉ガスに含まれるCO2を効率的に分離・回収するPSA(圧力スイング吸着)プロセスの開発に取 り組んでいます。
CO2の分離に適した吸着剤の開発と、それを利用した吸着装置の操業を最適化することで、高炉ガスに含まれるCO2を80%以上回収することをめざしています。福山地区に建設した試験装置「ASCOA-3」を活用し、実証試験を進めています。
