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世界最高水準の競争力の実現と変化に挑戦し続ける革新的な企業文化の創造を目指してスタートしたJFEグループは、その初年度において、「第1次中期経営計画」のもと統合効果を着実に実現しつつ、収益基盤と財務基盤の強化に向け確かな第一歩を踏み出しました。

代表取締役会長
(Co-CEO)
江本寛治
 
会長・社長 代表取締役社長
(Co-CEO)
下垣内洋一
 


2003年度(2003年4月~2004年3月)連結業績
世界の鉄鋼需要は、中国、アジア市場の高成長に支えられ、急速な成長を見せてきました。国内においても、自動車・建設産業機械・造船向けを中心に需要は堅調に推移しました。その一方で、鉄鉱石、合金鉄等の原料コスト上昇が見られました。
 こうした環境のもと、2003年度の売上高は2兆4,737億円と、前期に比べ1.9%、468億円増加しました。さらに営業利益では、増収に統合効果が加わって前期比72.7%、1,067億円増の2,536億円と大幅な伸びを示しました。
 事業別では、売上の84%を占める鉄鋼事業が順調に推移し、増収増益となったほか、LSI事業も好調なデジタル家電に支えられ業績を伸ばしました。その一方で、もうひとつのコア事業であるエンジニアリング事業は公共事業縮減等の環境悪化に加え、造船事業分社化の影響もあり、減収減益となりました。都市開発事業は子会社清算の影響により減収となりましたが、大規模社有地開発・マンション分譲事業を着実に展開することにより増益とすることができました。
 経常利益ベースでは前期からほぼ倍増の2,183億円となり、その結果、売上高経常利益率(ROS)は前期の4.3%から8.8%へ、また総資産金利前経常利益率(ROA)は前期の3.7%から6.5%へと大幅に上昇しました。退職給付移行差額償却等に伴う特別損失319億円がありましたが、当期純利益は前期の159億円から1,068億円へと飛躍的に増加しています。
 営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは2,220億円でした。当面、キャッシュは財務体質強化に最優先で充てる方針であり、当期はネットで2,197億円の借入金返済・社債償還を実施したことにより、借入金・社債残高は2兆円を切って1兆8,374億円となりました。一方の株主資本は、利益の積み上げによって、前期の5,945億円から7,462億円へと増加しています。今後とも積極的に有利子負債削減を進め、早期に株主資本と有利子負債の比率を1対1の水準にもっていきたいと考えています。
 配当につきましては、利益の伸びと財務体質強化という目標とのバランスを勘案して、1株当たり30円と決めさせていただきました。


第1次中期経営計画の遂行
JFEグループの最重要課題は、まさに収益基盤と財務基盤の強化にあります。『安定したフロー収益力を早期に確立し、加えて、資産圧縮および投資の厳選によりキャッシュフローを極大化し、有利子負債の削減を積極的に推進する』、そのためのロードマップとして策定されたのが、第1次中期経営計画(2003年度~2005年度)です。同計画の中では、2005年度に、経常利益を2,500億円、売上高経常利益率(ROS)を10%、総資産金利前経常利益率(ROA)を9%へと、それぞれ高めることを目標としています。また、財務体質についても、2005年度末に総資産残高を3兆4,600億円、借入金・社債残高を1兆6,000億円、株主資本を8,300億円へと、それぞれ改善することを目指しています。前述のとおり、すでに初年度において大きな前進を勝ち得たことで、私たちは目標達成への確かな手ごたえと、さらにはもう一段のストレッチの可能性を感じています。
 この前進は、外部環境の好転に恵まれたこともありますが、それ以上に全グループ従業員一丸となった収益基盤強化の取り組みによるところが大きいと言えます。
 まず、統合効果は私たちの予想を上回るスピードで現実のものとなっています。特に鉄鋼事業においては、前期比約500億円のコスト削減を実現しました。倉敷地区(旧川崎製鉄)と福山地区(旧NKK)の両地区を一体運営する西日本製鉄所では、お互いの「技術の協力と競争」が最高度に発揮され、連続鋳造、溶融亜鉛メッキなどの工程で、月間生産量の記録を次々と塗り替えるとともに、操業コストの低下、歩留りの改善、品質の安定化、納期短縮などの効果も生まれました。このような直接・間接のコスト削減効果により、西日本製鉄所はすでにROS15%と、世界トップレベルの収益力となっています。そしてさらなる収益力強化を目指し、今期から福山地区で高炉の改修とコークス炉の増設工事に着手します。一方、収益力が課題となっていた東日本製鉄所においては、2004年3月末、京浜地区の高炉改修が完了し、そして2004年6月末、千葉地区の高炉1基を計画通り休止させました。これにより、東日本製鉄所での粗鋼生産量を大きく変化させることなく、高炉の最適運営体制を確立しました。今後、さらに首都圏・需要家立地という地域性および設備特性を活かすべく必要な投資を行い、自動車・家電向け等の高付加価値製品の生産性向上を図るとともに、統合効果をフルに発揮していくことにより、収益力を強化していく計画です。
 統合のもうひとつの側面であるグループ会社統合についても、2003年度は容器、建材、化学の3分野の統合を終え順調に統合効果を出しています。さらに第2弾として、2004年4月には表面処理、物流、設備保全、サービスなど4分野で統合を行いました。
 また、計画の中で強調している、グローバルに圧倒的な技術優位性を有する高付加価値「オンリーワン、ナンバーワン」商品の強化については、鉄鋼事業における売上高比率を2002年度の6%から約13%へと飛躍的に伸ばしています。2003年度、鉄鋼事業の増益要因のうち約100億円はこの「オンリーワン、ナンバーワン」商品の構成比上昇によるものです。その具体例として、2003年度は、オンリーワン商品群の中から、6.5%けい素鋼板「JFEスーパーコア」*1が昇圧用コンバータ用部品としてトヨタ自動車「新型プリウス」に、また「ハイパーバーリング高炭素鋼」*2が駆動系部品として複数の自動車部品メーカーに、各々新規採用されたことが挙げられます。その他、JFEスチールは、自動車用鋼材だけを取り上げても、オンリーワン商品群として、ナノハイテン、加工後強度上昇型強度鋼板(BHT)を、またナンバーワン商品群として、良スポット溶接性ハイテン、高潤滑溶融亜鉛メッキ鋼板を有しています。今後も、オンリーワン商品の新規開発・ナンバーワン商品の拡充に努め、中期計画目標(売上高比率15~20%)の確実な達成を目指してまいります。
 一方のエンジニアリング事業では、「オンリーワン、ナンバーワン」商品の売上高比率は、残念ながら、いまだ5%台にとどまっています。今一段の開発努力によって、2005年度目標の14%へ向けて着実に伸ばしてまいります。

*1 JFEスーパーコア:「連続CVD(化学気相蒸着)技術」により世界で初めて工業化に成功した電磁鋼板で、高周波領域での鉄損が極めて少なく、電気機器の小型化・高効率化に効果的な商品
*2 ハイパーバーリング高炭素鋼:オンリーワン技術「限界冷却速度によるオンライン加速冷却技術(Super-OLAC)」を熱延に活用することにより、高強度を維持しながらさらにバーリング性(穴拡げ性)を向上させた商品

グローバル戦略
鉄鋼事業のJFEスチールは、アジアを中心に世界各地の鉄鋼会社とアライアンス関係を持ち、熱延コイルやスラブ、ブリキ用原板などの供給元として重要な役割を果たしています。これは、JFEスチールの世界規模での顧客対応力強化に寄与するとともに、同社の上工程の稼働率を上げ、また提携先の鉄鋼会社にとっては負担の大きい上工程の設備投資を避けることができる、まさにWin-Winの関係と言えます。鋼材輸出比率は40.6%ですが、輸出内容は、こうしたアライアンス先向けと自動車・家電・造船等大口需要家向けが8割強を占めており、残りも極薄鋼板など供給メーカーの限られた高付加価値品であるため、今後とも非常に安定した需要と収益確保を見込めます。急速に成長する中国市場に対しては、今後の需要増加が見込まれ、かつJFEスチールが技術優位性を有する自動車用鋼板分野で市場参画するため、2003年10月広州鋼鉄企業集団との間で合弁会社を設立、2006年4月の稼動を目指し、溶融亜鉛メッキラインの建設に着手しました。
 一方、エンジニアリング事業では、国内の公共工事等が縮減される中、海外市場での事業展開の必要性がさらに高まっています。JFEエンジニアリングでは、厳しい事業環境の中で確実に中期計画を達成していくために、2004年4月、これまでの海外事業推進組織の機能を拡大・強化した「国際事業センター」を設立しました。ここに海外事業に関する営業・技術等の経営資源を集中させ業務効率を高め、徹底したリスク管理のもと人材・資金の有効活用を図り、2005年度までにコンスタントに年間200~300億円の受注を達成できる体制を構築してまいります。

コーポレート・ガバナンスと社会的責任
JFEグループは、統合を契機に、その事業規模と活動領域を大きく広げました。従いまして、これまで以上に「社会におけるグループの存在の重さ」を十分に認識したうえで、社会との良好な関係を一層深めるべく努力してまいります。そのためには「謙虚さと品格を備えた、誠実な企業文化の確立」が必要です。私たちは、いかに高い技術力があろうとも、高潔な企業文化なくしては、将来にわたって株主、顧客、従業員、社会などステークホルダーの皆様から理解と共感を得ることは不可能だと考えています。
 まずコーポレ-ト・ガバナンスについては、透明性の高い経営を実現するために、私たち二人はCo-CEOとしてJFEホールディングスの経営に専念し、グループ各社の経営を独立した立場から見ています。主要事業会社では、それぞれ「経営会議」と執行役員制によって迅速な意思決定を行っており、一方当社は、持株会社として経営管理機能をフルに発揮して、グループ全体の価値の最大化に努めています。
 当社はまた、安全に万全を期すことは、社会的な貢献のための基本的な前提をなすものと考えております。私たちの事業においては、ひとたび事故が発生すると、その影響は大きく、近隣の皆様やお客様に多大なご迷惑をかけることになります。安全の実践が当グループにとって最重要の経営課題だと認識しています。
 さらに言えば、全員が常に強い使命感と高い倫理観をもって業務にあたり、グループの社会的責任を全うすることなくして、持続的な成長はありえません。そのため、グループ創設当初より、あらゆる企業活動の実践において「企業行動指針」の遵守を全役員・従業員に義務づけるとともに、グループ全体の「コンプライアンス委員会」を発足させ、法令遵守と企業倫理を徹底させてきました。
 また環境への取り組みにおいては、グループ全体として、製品・サービスのライフサイクルを通して常に環境への負荷を意識した経営をしています。同時に、「世界最高の技術をもって」環境問題の解決に貢献することも私たちが果たすべき重要な責務であると考えています。その代表例が、次世代のクリーン燃料として期待されるDME(ジメチルエーテル)です。当社は他社と共同でDMEの事業化を検討しており、2003年11月に100トン/日にスケールアップした実証プラントを活用してDMEの大量製造技術の確立を図っています。
 グループ各社は、いずれもJFEのDNAである「技術立社」の精神で不断に技術を磨き上げています。私たち二人は、その努力が最高の社会的価値として結実するよう、最適なグループ経営のあり方を追求し続けてまいります。

2004年度をさらに実り多い1年とするために
-地道な基盤作りと機敏な状況判断-
統合2年目として真の実力が問われる2004年度、経営環境は、引き続き堅調な鉄鋼需要が見込まれる一方で、原料価格の上昇、円高、金利上昇、環境コストの増大等、不透明な部分も多く予断を許さないものがあります。このような中、私たちは第1次中期経営計画を着実に遂行することで、さらなる収益拡大を図るとともに、将来にわたる成長を確かなものにするため強固な経営基盤を構築してまいります。そして同時に、順風時にも、「油断大敵」を常に肝に命じ、変化の予兆を素早く正確に読み取り、先手先手で事業の運営にあたってまいります。
 今後とも、当社の経営にご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2004年8月
代表取締役会長(Co-CEO)
江本寛治
  代表取締役社長(Co-CEO)
下垣内洋一
江本寛治   下垣内洋一