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特集1:鉄鋼新時代を勝ち抜くJFE の戦略 ― 技術力で明日を拓く

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増え続ける需要と生産量

写真 世界の粗鋼生産量は1970年代後半から約20年間、7億トン台で推移してきましたが、2000年に8億トンを突破した後、急速な拡大を続け、2004年にはついに10億トンの大台に達しました。[グラフ:世界の粗鋼生産量推移 参照]これはBRICsと呼ばれる新興工業国が目覚しい経済成長を続けていることが主な要因です。特に中国をはじめアジア諸国では爆発的な鉄鋼需要の拡大が起こっています。  BRICsの鉄鋼消費は一人当たりで見るとまだ小さく、4ヵ国の中で最も大きい中国でさえ、日本の3分の1に当たる年間約200キログラム強に過ぎません。これは日本の1960年代や韓国の1980年代の水準です。  過去の先進国の例を見ると、経済成長が進み国民の生活水準が上がると、まずは道路や住宅などの建設業からの、次いでその国の産業育成に応じて製缶、機械、自動車など製造業からの、鉄鋼製品に対する需要が増えていきます。今後、人口の多いBRICsが本格的な経済成長を遂げる過程で、鉄鋼需要が拡大していくことが期待されます。

鋼材見かけ消費実績と予測
鋼材見かけ消費実績と予測のグラフ

一人当たり粗鋼見掛け消費の推移(5年刻み)
一人当たり粗鋼見掛け消費の推移のグラフ

巨大メーカー誕生で鉄鋼産業全体の競争力が復活

 鉄鋼需要の増大以外の点でも、世界の鉄鋼業界は今、激動の時代を迎えています。国境を越えた統合・再編により、かつてなかった規模の巨大メーカーが次々と生まれているのです。
  こうした鉄鋼メーカーの統合・再編が進む背景には、グローバリゼーションの進展とともに、鉄鉱石や石炭などの原料のサプライヤー、そして自動車など鉄鋼のユーザーの業界の寡占化が進んでいることがあります。これらの業界の統合は鉄鋼メーカーよりも先行していたため、鉄鋼メーカーはこれまで、十分な価格交渉力を発揮できない状況でした。鉄鋼業界の統合・再編は、この状況を改善し、川上・川下とのバーゲニング・パワーを強める働きをしています。

世界トップ10の粗鋼生産シェア
世界トップ10の粗鋼生産シェアのグラフ

主要鉄鋼メーカーの粗鋼生産高
主要鉄鋼メーカーの粗鋼生産高の表

アジア鉄鋼市場で競争優位性を確保

アジアへの鉄鋼輸送コストの図 世界各地で大規模な統合・再編が進む中、日本の鉄鋼メーカーの強みは、原料輸入に有利な臨海型の大規模製鉄所を擁すること、後に述べる高い技術力を有することに加え、成長の続く大需要地・アジアに位置していることです。これにより物流費が低く抑えられること、さらに現在、日本はアジア各国と経済連携協定(EPA)の交渉を進めていることから、欧米メーカーと比較して、アジアに根ざす日本メーカーの構造的優位性が増しています。

Win-Winの国際垂直分業体制

JFEスチールの製品(2004年度実績・数量ベース)のグラフ とりわけJFEは、アジアをホームマーケットと捉え、アジア鉄鋼市場の開拓で先んじてきました。すなわち、JFEが下工程鉄鋼メーカーに素材となる高品質のスラブ、熱延コイル、冷延コイルを安定的に提供し、下工程鉄鋼メーカーが自動車用薄板、造船用厚板、食缶用ブリキなどの高付加価値の鉄鋼製品に仕上げる「国際垂直分業」体制の構築です。
  一貫製鉄所建設の設備投資は、熱延ミルまでの工程で約7割を占めます。JFEとの国際垂直分業により提携先の下工程鉄鋼メーカーは高炉、転炉、連続鋳造機などの上工程への設備投資を節約でき、一方JFEは既存設備の稼働率を高めるという果実を得るWin-Winの提携を結びました。
  また、こうした提携に際しては、合わせて技術サポートや提携先の持分の取得を行い、長期信頼関係を磐石なものとしました。

  JFEスチール単体の約4 割を占める輸出のうち、4割がこうした提携先や海外関係会社向けであり、別の4割は日系メーカーのアジア工場など紐付きのお客様となっており、安定した収益の確保に貢献しています。

アジア地域の下工程子会社・提携先
アジア地域の下工程子会社・提携先の地図
集合写真
JFE ぶりきファミリー技術ミーティング

鉄鋼製品は高級品と汎用品に二極化

  品種
 
厚板

薄板
高級品
タンカー用高耐食性鋼板

自動車用鋼板
汎用品
工事現場敷板

ガードレール

 世界の鉄鋼市場では、これまで述べてきた需要の伸びのほか、「メーカーが設備一式を揃えて基本の操業方法を習得すれば製造できる汎用品」と「上流設備から下流設備まで一貫で成分調整、加熱・冷却、圧下などの品質管理をしないと製造できない、お客様の求めに合わせたオーダーメードの高級品」への二極化現象が起きています。一般の建設用鋼材(形鋼、棒鋼、線材などの条鋼と熱延コイル、冷延コイルなど鋼板の一部)などはそれほどの生産技術・品質の高さを必要としないのに対し、自動車、家電、造船などに用いられる鋼板には優れた生産技術・ノウハウ・品質が必要です。

高級品はノウハウの塊

 高級品の最も端的な例が自動車用のボディに使われる鋼板(外板)です。外板には、

〈プレス成形性〉
○ 自動車メーカーのプレス工程で鋼板が割れたり皺がよったりしないこと
○ 金型に押し付けられた後の反り返りも含めてプレス成形後の形状の精度が良いこと

〈塗装焼付け硬化性〉
○ プレス成形時には柔らかく加工性が良いが、塗装時の焼き付け処理で硬化し凹みにくくなること

〈表面品質〉
○ 鋼板に表面キズのないこと

〈化成処理性〉
○ 自動車メーカーにおける塗装前処理でできる化成処理皮膜が良好であること

〈接着剤との相性〉
○ 各種の接着剤との相性が良いこと(例 ガラスを受けとめるゴムの接着剤)

などが求められます。外板の製造には、これらすべてを満たす高品位の鋼板を「条件が揃えば時として」ではなく「いつでも安定的に」生産できる技術が不可欠です。

厚板圧延機(プレートミル)
厚板ミルでは、加熱炉での昇温制御、圧延時の圧下力の制御、圧延後の水冷制御の摺り合わせにより、製品の手直し作業を大幅に減らして生産性の向上を図るとともに、鋼板の強度のばらつきの低減などの品質ニーズに応えています。さらに、JFE オリジナルの新オンライン加速冷却システム(Super-OLAC)の導入により、熱い状態で薄く延ばされた板を従来できなかった急速スピードで冷却し結晶粒を微細化することが可能となり、炭素や合金の量を抑えたままで鋼の強度を向上させることに成功しました。

 鉄鋼の製造は、ヤードブレンディングといわれる鉄鉱石や石炭などの積み下ろしにはじまり、コイルの巻き取りまで、長いプロセスを経なければなりません。上流設備から下流設備まで一貫して操業上のパラメータを微細に管理・調整し、初めて狙い通りの品質ができるのです。

  JFEの技術力は、現在、世界で最先端にあると自負しています。「JFEの技術は何年で追いつかれるか」という問いは、「最新鋭の厨房機器を与えられた料理人は何年でミシュランの三ツ星(評価の厳しいレストランガイドの最上級評価)を取ることができるか」という問いに似ています。鉄鋼半製品のスラブの加熱炉であれ、調理用オーブンであれ、ボタンを押せば設定した温度まで正確に加熱してくれるでしょう。しかし、問題は「何度の状態に何分置くと一番良いか」「混ぜる、延ばす、温める、冷ます……すべてのプロセスを一貫して管理できるか」「お客様それぞれに異なる新たな要求にすぐに応えられるか」であり、そのためのノウハウは一朝一夕では得られないものです。今後、そのノウハウにさらに磨きを掛け、常に競合メーカーの一歩先を目指していくことで、JFEは永続的に技術優位性を維持できると確信しています。

技術優位をさらに推し進めるオンリーワン・ナンバーワン戦略

 さらにJFEは業界で唯一の技術を活かした製品を「オンリーワン製品」、業界で最高の技術を活かした製品を「ナンバーワン製品」として、その比率をできるだけ高めていくことを戦略としています。鉄鋼事業における「オンリーワン」「ナンバーワン」は現在全売上高の約17%を占めていますが、2005年度にはこれを20%以上に引き上げることを目標として掲げています。
  他のメーカーに真似のできない独自技術を武器に、需要家と安定した関係を築き、景況にかかわらず高い収益を確保していく――それが激動の時代を勝ち抜く、JFEの戦略なのです。

中国とは共存共栄の方向へ

 世界から鉄鋼製品を輸入していた中国が鉄鋼の純輸出国になったことを懸念する声があります。確かに2004年9月、中国の鉄鋼輸出は鉄鋼輸入を上回りましたが、品種別に内訳を見ると、高級品の輸入は続いており、特に日本との関係においてはその傾向が強くなっています。

 また、中国国内での生産能力増強につれて、日本、韓国、台湾以外からの輸入は減少傾向にありますが、高級品に特化した日本からの輸入は安定的に推移しています。

 引き続き中国では高級品に対する需要の伸びが期待されています。 JFEは環境負荷の低減に繋がる良質の鉄鋼製品を求める中国国内のお客様のご要望にお応えする一方で、省エネルギー技術やリサイクル技術を希求する鉄鋼メーカーにはエンジニアリングソリューションを提供します。鉄鋼とエンジニアリングの双方の分野で地球環境に貢献しながら、中国の鉄鋼メーカーとは共存共栄を図り、JFEの世界最高水準の技術に根ざす鉄鋼とエンジニアリングをコアとしたグループとしてのアイデンティティを深めていきます。

中国の品種別輸出入状況(2005年4月)
中国の品種別輸出入状況(2005年4月)のグラフ

中国の輸入先内訳
中国の輸入先内訳のグラフ

原料の長期安定確保

瀬戸内マックス型船舶写真
瀬戸内マックス型船舶

 世界的な鉄鋼需要の増大を背景に、鉄鉱石、原料炭、合金鉄等あらゆる鉄鋼原料について、需給逼迫と価格高騰が起きています。こうした中、原料の長期安定確保は重要な経営課題の一つになっています。
 JFEは2004年度、原料の長期安定確保のため、投資や長期契約など次々に実行に移しました。

 鉄鉱石では、豪州BHPB社と新鉱区開発ジョイントベンチャーの設立と年間1500万トンの11年長期契約に基本合意(2004年8月)し、ブラジルCVRD社とも年間1000万トンの10年長期契約を締結(2004年9月)しました。

 原料炭では、米国AMCI社とオーストラリアの2炭鉱の権益取得と長期契約に合意(2004年12月)しました。これらも含めて、鉄鉱石については必要量のほぼ100%、原料炭については約70%を長期契約にて安定確保する体制を確立しました。

 また、合金鉄でも、中国・内蒙古自治区で、シリコマンガンの生産販売会社を、オルドス社と三井物産との合弁で設立することに合意(2004年8月)し、グループ内の他の合金鉄各社とあわせ、安定確保の目途をつけました。

 さらに、原料輸送船についても、必要な船腹の90%は中長期契約にて確保する体制を整備し、市況高騰著しいスポット船の比率を低下させるとともに、海運会社や造船会社とも連携し、瀬戸内マックスなどの最適船型の導入も積極的に進め、輸送コスト削減に努めています。瀬戸内マックスは、浅い喫水での積載効率を従来船より格段に高めた船型で、今後瀬戸内海に面する西日本製鉄所向けの主力となる船で、2006年度までに合計17隻導入する予定です。

 このように、JFE は原料調達先や需要家と将来ビジョンを共有し、信頼関係に基づく安定した関係を長期にわたって築くことを目指し、着々と手を打っています。

主原料価格推移
主原料価格推移のグラフ

長期契約比率
長期契約比率のグラフ