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特集2:競争力の源泉 ― 研究開発

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写真 JFEグループは「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」を企業理念としています。社会に貢献できる技術、すなわち、技術として優れているだけでなく、社会のニーズに沿い、多くの方に利用していただける技術の持続的な開発をグループの競争力の源泉と位置付け、すべての事業分野で環境負荷の低減、安全性の確保などの社会的要請や、新商品の開発、コストパフォーマンスの向上などの産業界のニーズにお応えするための研究開発を続けています。
 この特集では、鉄鋼事業およびエンジニアリング事業に関する研究開発をご紹介いたします。両事業の研究開発はJFEスチールの「スチール研究所」、JFEエンジニアリングの「エンジニアリング研究所」、JFE技研の3機関で行われており、合計で500人以上の研究員を投入し、世界最高水準の商品を生み出すべく全力投球しています。

JFEグループの研究開発体制
JFEグループの研究開発体制

スチール研究所

  スチール研究所は鉄鋼分野の研究機関として世界最大の規模を誇り、既存設備の能力最大化のための生産性向上技術の革新と、お客様との連携強化によるオンリーワン・ナンバーワン商品の開発を中心テーマとして推進しています。また、鉄づくりで獲得した技術・ノウハウを、化学をはじめとする鉄の周辺分野や、環境関連の研究開発に活かしています。こうした研究は、社内の営業部門や製造部門およびグループ各社との連携を通じ、お客様のニーズや生産性向上・コスト削減の効果を捉えた上で行われており、販売数量の拡大、コスト競争力の向上に大きな成果を上げています。
  ここでは、その具体例として、自動車分野での取り組みと、オンリーワン商品の一例として、「NANO ハイテン」と「BHT鋼板」をご紹介します。

 近年、自動車に求められる機能は多様化してきており、自動車本来の走行性や快適性はもとより、高燃費化・排ガス規制などの地球環境保全、また人に優しい車づくりが必須になっています。これを達成する主要な課題として車体の軽量化・衝突安全性・長寿命化があげられます。また、開発期間短縮によるコスト削減も大きな課題の一つです。
 JFEスチールでは、これらの諸課題に対応するために、各種鉄鋼製品の開発はもとより、利用加工技術開発体制を整備強化し、自動車の各部品にふさわしい鉄鋼材料と加工方法を併せて提案するEVI活動(Early Vender Involvement)を展開しています。


●NANO ハイテン[析出強化型新高強度熱延鋼板]

自動車のサスペンションアーム
ナノハイテンの適用例
自動車のサスペンションアーム
電子顕微鏡で見た自動車用高強度薄鋼板の組織
電子顕微鏡で見た自動車用高強度薄鋼板の組織。(左)ミクロンサイズの結晶粒。(右)3nm程度の超微細析出物が列状に並んでいる様子。
[1ミクロン(μm)は1ミリの1000分の1、1 ナノ(nm)は1 ミリの百万分の1]
 

(New Application of Nano Obstacles for dislocation movement)
 ナノハイテンは、「高強度(780MPa級)」と「高成形性」という相反する特性の両立を実現した熱延鋼板です。鋼板は一般に硬くなればなるほど加工性が悪くなりますが、JFEスチールは、お客様のプレス成形時に割れの原因となりうる析出物を世界で初めて「ナノサイズ(10億分の1)」に制御し、高強度と高成形性を両立させたユニークな特性を持つ鋼板の開発に成功しました。
 ナノハイテンは、プレス加工する際に必要な良好な伸び――穴拡げバランスを実現すると同時に、その成形品は優れた衝突エネルギー吸収力も有しているため、自動車のサスペンションアーム等の足回り部品や車体構造部品に採用されています。


●BHT鋼板[歪み時効活用新高強度熱延鋼板]

BHT鋼板の適用例
 
BHT 鋼板適用による耐衝突特性向上および板厚低減効果
BHT 鋼板適用による耐衝突特性向上および板厚低減効果
 

(Bake Hardenable steel with Tensile strength increase)
 BHT鋼板は、プレス成形時は折り紙のように加工しやすく、塗装焼付け処理後には強度が上昇し、車体完成後には鉄本来の優れた衝突安全性・耐久性を持つ、という自動車構造部材用の高強度熱延鋼板です。
 JFEスチールは、通常は避ける「製鋼プロセスに窒素を添加する」というアプローチを敢えて選択し、「歪み時効硬化現象」を活用することで、従来のBH鋼板には見られない引張強度も上昇する熱延鋼板の開発に成功しました。
 この開発により、車体重量を増加させることなく耐衝突性を向上させること、あるいは耐衝突性を維持したままでの車体軽量化が可能となりました。サイドシル、センターピラーをはじめ車体構造部品、足回り部品への適用が進んでいます。


エンジニアリング研究所

 エンジニアリング研究所は、エンジニアリング分野の主力事業のブラッシュアップと新規事業開拓を目標に研究開発を進めています。天然ガスを中心としたエネルギー分野、ごみ処理を中心とした環境分野、上下水分野、大型建造物を手がける鋼構造分野で、他社の追随を許さない独自技術をさらに磨く一方で、カーボンナノチューブ、水和物スラリなど新規事業開拓につながる試みに挑戦しています。またシミュレーション技術を駆使した製品の性能評価、解析などによって事業活動を直接支援しています。
 今後もイノベーションによる新しい社会のニーズ創出に向けて「オンリーワン・ナンバーワン技術」を主軸に据えた研究開発を強化・加速してまいります。
 ここでは、数多く保有する「オンリーワン・ナンバーワン技術」の中から、「高純度テープ状・カーボンナノチューブ(CNT)合成技術」「水和物スラリ空調システム」をご紹介します。


●高純度テープ状・カーボンナノチューブ(CNT)合成技術

超高純度CNT テープ写真
超高純度CNT テープ

 JFEエンジニアリングが開発したCNTは、世界初の「超高純度テープ状CNT」です。このCNTは、市販の黒鉛あるいは炭素電極を原料に、自社独自の溶接技術を応用したアーク放電法により大気中で比較的簡単に、幅2~5mmの薄いテープ状の任意の長さのものを、連続して大量に製造できることが特徴です。開発したCNTは、その形態ならびに高純度性により、次世代TVとして注目を浴びているFPD(フラットパネルディスプレイ)などの電子放出源への利用が有望視されています。

●水和物スラリ空調システム

水和物スラリ製造装置写真
水和物スラリ製造装置
 
水和物スラリ製造装置の図
 

 水和物スラリは、JFEエンジニアリングが世界で初めて開発した冷水に代わる新しい冷熱媒体です。冷熱利用分野で蓄熱・搬送媒体として使用される水の2~4倍の熱密度と優れた輸送性を有しており、搬送動力の著しい低減が可能となります。JFEエンジニアリングは、この水和物スラリの特長を活用し、冷房時の搬送ポンプ用電力消費を従来の1/2に抑制する冷房システムを開発しました。既に都内オフィスビルや自社ビル(横浜市)で導入されたほか、東南アジア施設での採用も決まっております。
 今後は電力消費の節減のみならず、地球温暖化防止のための温室効果ガス排出削減の打ち手として導入を働きかけていきます。


JFE技研株式会社

北田豊文

JFE技研は、約80名の研究開発員を擁し、鉄鋼とエンジニアリングの双方に関連する共通中核技術の研究開発拠点および成長分野の開発ステーションです。保有する中核技術(コアコンピタンス)をさらに高め、JFEグループの経営戦略・技術戦略の下で、新たなコンセプトを創出・提案・実践し、経済的価値の実現を図ることで、JFEグループ全体に貢献してまいります。

JFE技研株式会社
代表取締役社長

北田 豊文

 JFE技研は、鉄鋼、エンジニアリング事業共通の中核技術に基づく研究開発の成果によって事業会社の経営に寄与することを当然の責務としながら、将来のJFEグループの中核事業に成長しうる新たな成長分野の芽を育成するという二つの使命を持ちます。
  JFE技研ではこの二つの使命に対応するため、研究開発の形態をJFEスチール、JFEエンジニアリングを中心とするグループ企業からの委託に基づく「受託研究」とJFEグループに共通する基盤技術をJFE技研が自主的に開発する「共通基盤研究」の二つに分類しています。この研究開発形態によって、スチールとエンジアリング間の技術の相互展開による効率的R&Dの推進(Technology Interaction)、ならびに異種技術群との有機的結合による非連続コンセプト創出(Technology Integration)を図ると同時に、将来必要になる要素技術をニーズに先行して探索・開発する、いわゆるシーズ先行型の開発を担うという役割も果たしていきます。JFE技研はこの研究開発形態のバランスをうまくコントロールし、JFEグループの技術戦略の実現に貢献していきます。

組織と要素技術
組織と要素技術

これまでの成果の一例

スチール分野   エンジニアリング分野
  • 溶鋼流動シミュレーションによる高速鋳造プロセスの改善
  • 熱延工程の高速通板安定化技術
  • 鋼板の品質計測技術
  • シミュレーションおよび数理的手法による物流計画の最適化
 
  • ゴミ焼却ガス化溶融炉の連続出滓温度の安定化制御技術
  • ボイラ水管用自動清掃ロボット「JFEボイラクリーンDX」