「JFE21世紀財団」2006年度・アジア歴史研究助成・募集要項

1.助成対象研究
 アジアの包括的あるいは個別の歴史を対象とし、その研究成果が21世紀アジアの産業・通商交易と文化・社会の予見、展望を通して、21世紀アジアに共存・共栄するための日本の産業と文化のVision構築に資する研究。
 個別の歴史事象の研究はそれ単独では助成対象としない。その歴史事象が現在や将来のアジアの産業・通商交易や文化・社会に直接に、あるいは「ものの考え方」「世界観」の形成などを通して間接的に与えている影響などを明らかにするようなアジア歴史研究を助成対象とする。
 予見、展望およびVisionはそれ自体では(論説や提言だけでは)助成対象としない。研究成果が、そのような予見、展望、Visionの根拠や裏づけ、あるいは発想の原点となる(なりうる)ような歴史研究を助成対象とする。
アジア・・・ 北東アジア(日本、朝鮮半島、中国)、東南アジア、インド亜大陸、西アジア(中近東アジア)、中央アジアとカスピ海沿岸地域
実質的に完了している研究や、特定の機関からの依託研究は対象外とする。
助成を受けた研究は成果も含めて公開を前提とする。
2.助成件数と助成金額
7件に1件あたり150万円、総額1,050万円を交付する。
助成金は代表研究者所属の大学に交付する。(2006年12月に大学指定銀行口座に振込む)
助成金の使途(書籍・文書費、設備・備品費、学会・調査旅費、研究補助者謝金などで、研究室運営費、学会等開催費、書籍刊行費などは不可)は申請書に記載。
3.研究期間
1年(原則として2007年1月開始、同年12月終了、2008年1月・報告書提出)を原則とするが2年を上限に延期・延長を可とする(2009年1月・報告書提出)。
4.応募資格者
日本の国公私立大学(付属研究機関を含む)または大学共同利用機関に所属する研究者(大学院生を除く)であって国籍は問わない。グループの場合は1名を代表研究者、他(3名以内)を共同研究者とする。共同研究者は大学院生および外国の大学や日本の公的研究機関に所属する研究者も可ととする。2005年度の本財団「アジア歴史研究助成」受領者(代表研究者のみ)は本応募の代表研究者から除外する。
5.申請手続き
本財団ホームページ上の申請フォーム(5月22日立上)に記入し送信。
財団ホームページ http://www.jfe-21st-cf.or.jp
 
開始5月22日:締切6月20日
6.審査・選考と助成研究(者)の公表
本財団委嘱の審査委員会による審査・選考を経て7件を採択し、9月下旬(予定)に応募者(代表研究者)に結果(採択、不採択とも)を通知の後、採択された研究(者)は本財団ホームページ等で公開とともに一部の新聞紙上でも発表の予定。
委員長  木村尚三郎 (東大名誉教授、静岡文化芸術大学学長、本財団評議員)
委 員  片倉もとこ (総合研究大学院大学名誉教授、国際日本文化研究センター所長)
   朱 建栄 (東洋学園大学人文学部教授)
7.助成受領者(代表研究者)の義務・条件
(1) 本財団との覚書交換と助成金の受領手続き
(2) 贈呈式への出席(東京において11月予定、出席費用は本財団負担)  
(3) 研究成果報告書(公開前提)の提出と助成金使途(実績)の報告
(4) 研究論文等への本財団への謝辞の記載
8.「アジア歴史研究助成」 趣意 (ご参考)
 東西冷戦が終焉し21世紀に突入した世界は経済のグローバル化が進展するとともに、国際関係においてはイデオロギーに代わって、一方では経済や政治の連携・組織化が進み、他方では宗教、文化、民族、地域間の紛争が露わになっている。このような変革は、アジアにおいても顕著に現れている。日本、朝鮮半島、中国から成る北東アジア圏は政治、社会体制、経済発展の度合いの相違の他に領土・安全保障問題などによる国家間の軋みを伴いながら、既に世界経済の約30%を占め、更に中国を中心に発展して北米、EUを優に凌駕する経済圏を形成すると予測されている。ASEAN諸国は経済・文化から政治・安全保障の問題解決を通して、EUのような地域連合を視野に入れ始めている。インドはカースト制度のような古い社会制度が残存したままで世界のIT基地になっている特異な国であるが、グローバル化はインドを中国に続く爆発的な経済成長を伴う産業国家に飛躍させようとしている。西アジアのイスラム諸国では米国の言う「文明と野蛮の戦い」が勃発し、世界を混迷に陥れている。ここでは、グローバル化は世界の相互理解を発展させるどころか断絶させているようにも見える。一方、現代世界にある七つの文明の内、アジアには日本、中国、ヒンドウー・インド、イスラムの四つの文明がある。17、8世紀から世界を実質的に支配してきた西欧文明は、かっての優位性を失いつつもアジアとの連携強化を模索する傾向にある。そして、日本文明は古くは他の三つの文明とりわけ中国文明から多くを吸収し近くは西欧文明を模してきたが、何れの文明とも異質である。
  第2次世界大戦後は政治的にも経済的にも米国に密着して発展して来た日本が、改めて21世紀での「生き方」を考える時が来ている。そして、その「生き方」は多くの識者が提言するように、「中国・インドを中心とする経済の飛躍的な発展とそれに伴う世界における発言権・存在感の増大が予測されるアジアに共存・共栄する」ことであろう。日本にとっては千年の時を隔てて「唐・天竺の時代」が再来することになる(木村尚三郎)。「共存・共栄」とは直接にはアジア諸国との高度な経済的関係(産業・通商交易の共栄)を指すが、しかし、そのためには良好な政治的関係を必要とし、更にその土台には親密な文化的関係がなくてはならない。換言すれば、21世紀アジアに共存・共栄するためには産業のVisionのみならず文化のVisionがなくてはならない。親密な文化的関係は一朝一夕には得られないにしても、その構築の一つの方法は、アジアの人々の文化と社会が形成されて来た道である歴史を繙くことによって、その文化と社会をそれが成り立つ根底から理解することである。特に、近年は専ら欧米に親しんで来た日本人にとって、アジアの人々の「ものの考え方」や「価値観・世界観」などをそれらの形成過程から理解することが肝要である。このような意味で、画餅に終らないVisionを構築するには、その根幹となる21世紀アジアの産業・通商交易とその土台となる文化・社会の予見、展望が、アジアの歴史にその根拠を持つのが望ましい。そして、そのような日本の産業と文化のVision構築に資するアジア歴史研究が日本の大学において更に活発に行われることが望まれる。
  「21世紀鉄鋼産業の創造的発展に資する事業」を行う当財団は、設立以来14年間に渡って日本の大学に技術研究助成を行い高い評価を頂いているが、新たにアジア歴史研究助成を事業に加えて日本の大学におけるアジア歴史研究の振興に微力ながらも寄与し、以って「21世紀アジアに共存・共栄する日本のVision構築」に些かなりとも貢献したい。 

以上

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