1998年4月1日

川崎製鉄株式会社

1998年度大学卒新入社員入社時社長挨拶(要旨)

日時:4月1日 10:00〜

場所:東京本社

 入社おめでとう。

 最近の経済状勢は厳しいが、日本の鉄鋼業は力をつけてきており、次第に盤石なものになりつつある。不安を感じることなく、安心して働いてもらいたい。

 日本の鉄鋼業の水準は、量的にも質的にも世界トップクラスにある。国際競争力の点で韓国・台湾中国と比較したとき、未だ少し力が及ばない面もあるが、今も懸命に実力をつけようと努力している。君たちもそういう認識で頑張ってほしい。

 企業は人がどれくらい充実しているかで決まる。一人一人が粒ぞろいになり、将来会社を支えていく自覚を持ってほしい。何になるか、ではなく、これからの何十年間に何をなし得るか、ということを志として持ってもらいたい。

 また、英語の能力は重要な武器になるから、20代のうちに確実に身につけてほしい。

 当社の中核が鉄鋼業であることは未来永劫変わらないが、鉄鋼と周辺分野以外に、新しい事業として、半導体、樹脂コンパウンド、太陽電池用シリコン、廃棄物ガス化溶融の4つの事業に取り組んでいる。人もだんだん育ってきており、君らの時代には大きな事業になっているだろうと期待している。

 鉄鋼業は基礎産業であり、日本の全ての産業を支えているといってもいい。私はよく、鉄は空気みたいなものと言っているが、鉄があらゆる産業の下支えをしている。材料にかかわる産業が裾野を支えているのだ。鉄なくして一般の産業はありえない、という誇りをもってもらいたい。

 今日ひとつだけ覚えておいてほしいことがある。

 梅棹忠夫さんが、人間が生きていくうえで大切なものが3つあるとおっしゃっていた。「腹の足しになるもの」、「からだの足しになるもの」、そして「心の足しになるもの」だ。この「心の足しになるもの」とは何か、ということを自問自答してほしい。

 力はあっても情感に乏しい人がいる。「心の足しになるもの」をあまりやってこなかった人だと思う。これを身につけるには小説を読むことだ。自分の気に入ったものでいい。長い間に栄養になってくる。それといい友達を持つこと。

 仕事のベースになるのは、見識と胆力だ。「心の足しになるもの」を心がけていれば、自然と見識と胆力がついてくる。仕事をしていると、逃げたくなるようなつらい修羅場があると思う。しかし、仕事から逃げてはいけない。そういう心がけで臨んでほしい。

取締役社長 江本 寛治(えもとかんじ)

[ご参考]

新入社員数 大学・大学院卒事務系 19人、技術系36人、計55人

    高校卒 生産職  130人

    一般事務職     56人 

 

以上