1998年8月5日
川崎製鉄株式会社

超微細結晶粒鋼管の開発について
(新造管プロセスによる高強度・高延性均質鋼管の開発)

1.川崎製鉄は、結晶粒の大きさが従来の約1/10、平均1μm以下という、超微細結晶粒電縫鋼管(商品名「HISTORY鋼管」)を開発いたしました。
 超微細結晶粒鋼材の工業的実用サイズでの製造に成功したのは、世界で初めてです。
(HISTORY=High peed ube Welding and ptimum educing Technologの略)

2.鋼材は結晶粒が微細になると強度が飛躍的に向上することが知られており、現在、金属材料分野において超微細結晶粒鋼材の製造に関する研究が積極的に進められております。既に科学技術庁の金属材料技術研究所や、通商産業省の外郭団体である金属系材料研究開発センター(JRCM)などにおいて、実験室レベルでは結晶粒が1μm以下の鋼片の製造に成功したとの報告もありましたが、全て微小試験片での実績でした。

3.「HISTORY鋼管」の主な特徴は以下のとおりです。

 (1)強度−伸びバランスの向上
  組織の超微細化により、母材の持つ引張り強度と伸びのバランスが飛躍的に(約15〜30%)向上することから、材料の高機能化が図れます。すなわち、強度と伸びを同時に向上させることが可能です。(従来の電縫鋼管は、加工過程では強度が上がる分、伸びは著しく低下するため、強度−伸びバランスが向上することはありませんでした。)
  また、伸びを母材と同程度に保てば、強度は母材より約20%向上し、強度を同程度に保てば、伸びは母材より約20%向上します。

 (2)溶接面での品質向上
  新しい溶接法により、これまで電縫鋼管が抱えていた溶接に伴う様々な問題を解消できます。
  従来は、溶接部が硬化し母材との硬度差が大きくなって加工性が阻害されるため、用途によっては鋼管に熱処理を施しておりましたが、HISTORY鋼管は溶接部の硬化がなく、円周方向の材質が均一に保たれるため、熱処理なしで使用できます。
  またビード(溶接部の盛上り)切削が不要で、切削面に現れる偏析線や介在物の露出がなくなるため、フッククラックや溝食(熱影響部の割れや腐食)の発生がありません。
  さらに、溶接時のスパーク(短絡)等による溶接欠陥やスパッター(溶鋼飛散)の発生がなく、スパッター疵等のない表面品質の優れた鋼管が製造できます。

 (3)薄肉鋼管の製造が可能
  従来は、成形面、溶接面で製造が困難であった低tD鋼管(t=肉厚、D=外径、外径の割には比較的薄肉の鋼管)も、新成形法・圧延法により製造が可能になります。

4.HISTORY鋼管は、当社が独自に発想し開発を進めてきた新しい成形法・溶接法・圧延法により実現いたしました。

 一般の電縫鋼管は、熱延鋼板や冷延鋼板の帯板を管状に曲げ加工し、両縁部を電気抵抗溶接したものです。
 それに対しHISTORY鋼管は、まず帯板を「低ひずみCBR成形(*1)」した後、両縁部を「電縫拡散溶接(*2)」し、その後「温間域高縮径圧延(*3)」して製造いたします。

(*1)「低ひずみCBR成形」:既に実用化している帯板成形法で、管状加工の際の加工硬化が少なく、安定成形できる。
(*2)「電縫拡散溶接」:帯板の両縁部を、電気抵抗加熱による拡散溶接で接合するため、溶接品質に優れた高速溶接ができる。
(*3)「温間域 高縮径圧延」:溶接後の鋼管を、熱間より低い温度域(=温間域)で縮径圧延(引張りながら径を小さくする圧延)する。これにより、母材で通常10μm程度の結晶粒が、1μm以下の超微細粒になり、特性を飛躍的に高めることができる。
 なお本開発においては、材料の全製造工程にわたって省エネルギー達成が可能となる開発テーマとして、通商産業省より「エネルギー使用合理化関係技術実用化開発費補助金」(96〜98年度)を受けております。

5.HISTORY鋼管は、高強度・高延性であることから、自動車の加工を伴う各種部材、とりわけ耐衝突用部材(インパクトビームやサイドメンバー)等に、また薄肉の製造が可能であることから、自動車のハイドロフォーム用部材等に、最適な材料と考えております。今後はこうした特徴を生かした製品開発を積極的に進めるために、新たに設置した実機規模のパイロットプラントを用いた量産化試験を行ってまいります。


以上

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川崎製鉄株式会社  総務部広報室
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