Press Release

2001年11月 6日



造船向け超大入熱溶接用高張力鋼板の製造開始



 当社はこのたび、大型コンテナ船の建造に用いられる、超大入熱溶接性に優れた厚肉の船体用高張力鋼板を開発し、製造を開始しました。

 コンテナ船では船倉内の仕切壁が無く、船上部の開口部が大きいため、船側上部に厚肉の高強度鋼板を用いることにより船全体の強度を確保する構造となっています(注1)。コンテナ船大型化の動きの中で、鋼材の厚肉化、高強度化は進み、6,000TEU(注2)を超える大型船では、最大板厚65mm、降伏強度390N/mm2級の鋼板が用いられるようになってきました。

 このような厚肉鋼板の溶接には高能率のエレクトロガスアーク溶接(注3)による1パス施工が適用され、建造工期短縮が図られています。通常、造船分野で一般的に適用されている自動溶接の溶接入熱は最大20万J/cm程度ですが、大型コンテナ船の分野では40〜50万J/cmと非常に大きくなります。このため溶接熱影響部の組織が粗大化し、溶接熱影響部における低温靭性(低温でのシャルピー衝撃吸収エネルギー)の確保が課題とされてきました。さらに、鋼板の厚肉化および高強度化に対しては一般的に炭素当量を高める必要があり、鋼板の溶接性および溶接熱影響部の靭性が低下します。このため炭素当量の上昇を押さえた、厚肉、高強度鋼板の製造技術も併せて求められてきました。

 当社では、従来の大入熱溶接用鋼(降伏強度:〜355N/mm2、溶接入熱:〜20万J/cm)として、溶接熱影響部の靭性劣化原因となるフリー窒素の低減により、マトリックス(素地となる組織)そのものの靭性向上対策を取ってきました。本開発鋼では、さらなる厚肉化(板厚:〜65mm)、高強度化(降伏強度:〜390N/mm2)、超大入熱溶接化(入熱:〜50万J/cm)に対応し、超大入熱溶接時に組織制御を可能とするマイクロアロイング技術を適用することにより、溶接熱影響部組織を微細化し、熱影響部の靭性を画期的に改善することに成功しました。さらに、鋼板の製造には高冷却速度の水冷設備Super-OLACを用い、従来と同レベルの炭素当量で、溶接性を損なうことなく、板厚65mmまでの厚肉、降伏強度390N/mm2級までの高強度鋼板の製造を可能としました。その結果、-40℃の低温においても良好な溶接熱影響部の靭性を確保し、造船用Eグレード鋼板において超大入熱溶接を可能としました。

 本開発鋼は需要家より高い評価を受けており、北米航路、欧州航路等の幹線ルートに投入される大型コンテナ船向けに、既に6,000トンを受注、製造を行っております。
 今後は、造船分野で超大入熱溶接が可能なFグレード鋼板、造船分野以外の超大入熱溶接が用いられる建築用鋼板、優れた低温靭性が要求される海洋構造物用鋼板等への適用を目指し、厚肉化、高強度化、超大入熱溶接化等の多様化する需要家ニーズに積極的に応えてまいります。



 <注1> コンテナ船の構造
 タンカーでは油槽により内部が細かく仕切られており、この内部壁や上部甲板にも強度を持たせる構造になっています。コンテナ船では積載能力向上、荷役能率向上から船倉内の仕切壁を無くし開口部を大きくとった構造となっています。このため船側上部に厚肉の高強度鋼板を用い、船全体の強度を確保しています。

 図
図1 代表的な貨物船の断面図 

 <注2> TEU(Twenty feet Equivalent Unit)
 コンテナ船の積載能力を表す指標。長さ20フィート(約6m)のコンテナに換算した個数を表す。

 <注3> エレクトロガスアーク溶接
 厚鋼板の高能率な立向上進溶接方法の一種。固定タイプの裏当て材と水冷Cuによって作られた間隙内に連続的に溶接ワイヤを供給し、溶融池を形成します。溶融池は炭酸ガスなどのシールドガスによって大気と遮断され、溶融池の上昇と共に水冷Cuが自動的に上昇することにより溶接ビードが形成されます。1ラン1パス溶接のため、炭酸ガス多層溶接と比較して大幅に溶接施工工数が低減されます。

図
図2 エレクトロガスアーク溶接 

以 上  


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