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第三者意見

上智大学 名誉教授 上妻 義直 氏

上智大学 名誉教授
上妻 義直

1. 第7次中期経営計画

2021年度からの第7次中期経営計画では、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない存在」になるというJFEグループの使命達成に向けて、「環境的・社会的持続性」に裏打ちされた「経済的持続性」の確立により、中長期的な持続的成長を目指すという戦略的方針が明言されました。これは、サステナビリティ配慮を事業戦略の基調とする経営体制の確立を意味しており、持続可能な社会でもさらなる成長を果たすという経営ビジョンのコミットメントに他なりません。これまでもCSR経営を着実に進めてきましたが、第6次中期経営計画から大きく踏み込んだ「持続可能な社会」への適合方針によって、同グループのサステナビリティ経営は新時代へ入ったように感じます。

2. 環境経営ビジョン2050

環境的持続性の柱は間違いなく環境経営ビジョン2050です。昨年度に「2013年度比で20%以上」という鉄鋼事業のCO2排出量削減目標を公表したばかりですが、今期はさらにそれを進めて、「2024年度末に2013年度比で18%削減し、2050年にカーボンニュートラルの実現を目指す」という環境経営ビジョン2050を明らかにしました。きわめて短期間に具体的な削減目標と達成期限を前倒しで設定し、それを公言したことで、JFEグループの気候変動政策は達成への緊張感に満ちたものになりました。また、達成手段となるカーボンリサイクル高炉やCCUは独自性が強い技術的ノウハウであり、その提示によって、業界との連携だけに留まらない、課題解決への主導的な姿勢を示しています。

3. 人権デューディリジエンス

社会的持続性では、「重大災害ゼロ」を達成するために、安全教育やルール徹底だけでなく、設備そのもので災害防止を目指す取り組みと人権デューディリジェンスが注目ポイントです。いずれもグローバル社会がビジネスに要請する標準的な人権尊重施策になりつつあり、とりわけ人権デューディリジェンスは欧州で急速に実施規制の法制化が進んでいます。その社内体制を短期間で整備できたことはリスクマネジメントの大きな成果です。

4. 今後の課題

連結ベースでの集計開示が進む環境データと比べて、社会データの集計範囲は単体中心であることが課題になっています。とくに休業災害データ、障がい者雇用率、離職率等は労務施策の重要な評価指標になる場合も多く、人権デューディリジェンスの有効性評価にも必要です。また、適宜改善が行われているWebサイトですが、情報量が経年的に増加して膨大になっていることから、さらなる利用しやすさへの工夫に関して今後の検討が望まれます。

 

 

立教大学 21世紀社会デザイン研究科 特任教授 河口 真理子 氏

立教大学
21世紀社会デザイン研究科 特任教授
河口 眞理子

今年で5年目となる第三者意見を述べさせていただきます。この5年間は、のちに資本主義が大転換した時期と評価される激動期と感じています。この5年の間にSDGsの考え方が社会に広く浸透し、社会の脱炭素化が世界共通目的となり、環境社会課題の多くがビジネスの周辺領域から主流の最重要課題へと浮上しつつあります。なかでも気候変動問題は経済活動の前提条件になっています。加えて今年は生物多様性の保全が重要なテーマとして浮上しています。一方でコロナ禍の中で労働者の人権問題、貧富の差という社会的課題も明らかになっています。

このような状況下、JFEグループは高炭素型という鉄鋼業のハンディを逆手にとり積極的な脱炭素戦略を取られており、高く評価されます。2年前にはTCFDのシナリオを日本企業としては先駆けて策定し、多くの日本企業の脱炭素戦略のお手本となりました。さらに昨年はカーボンニュートラル実現にむけたCO2削減ロードマップを策定。今年は新たに超長期の「2050年ビジョン」を掲げ2050年カーボンニュートラルを宣言されました。それと同時に、最終年度の2024年には鉄鋼事業からのCO2の18%削減という野心的な目標をかかげた新中期計画を発表されました。

通常超長期ビジョンは、ビジョンへのコミットメント決意表明という面が重視されます。一方で中期計画は実現可能な計画目標とみなされます。化石燃料を原料とする鉄鋼業では、エネルギー産業以上に脱炭素が困難と思われていましたが、中期計画で削減計画を表明するということは、鉄鋼業における脱炭素化の道筋が明らかになったという力強いメッセージと受け止めました。

社長メッセージで触れられているカーボンリサイクル高炉や水素直接還元技術、低炭素化技術などの新技術に加え、従来から着実にすすめてきた省エネのさらなる推進及び、電炉事業や、再生可能エネルギー事業などの事業ポートフォリオの低炭素化戦略も同時に一段と加速されるものと期待します。高炭素事業の代表格とされてきた鉄鋼業から脱炭素企業のメッセージを発することは、他産業、社会全体の脱炭素化をけん引する力となります。一層のJFEグループのリーダーシップに期待します。

以上を踏まえた上で、今後リーダーシップを発揮していただきたい点について述べさせていただきます。

まず気候変動のもう一つの側面である適応策です。世界各地で大型ハリケーンや台風による洪水や高潮、大規模な山火事など激化する自然災害により、都市生活、物流やエネルギーインフラ、農耕地や山林などに甚大な被害が生じています。今や気候変動による自然災害の激化に社会全体が適応していかなければなりません。災害に負けずにその被害をやり過ごす、レジリエントなハード・ソフトの仕組み構築は焦眉の急です。レジリエントな建物、街インフラ整備は切実な社会課題であり、確実にビジネスチャンスです。今後は気候変動対策を脱炭素とレジリエンスの二本柱として推進していただきたいです。

次にお願いしたいのは、サプライチェーンにおける社会課題解決です。一般的にレアメタルや非鉄金属などの鉱山開発の現場では、地形を大幅に改変し生態系や水系にダメージを与え、現地の人たちのコミュニティや人権にも大きな影響を与え得るとされ、それがマテリアリテイの高い社会課題とされます。本報告書ではサプライチェーンに関しては、調達方針の記述が中心にとどまっています。鉄鉱石、石炭など主要原材料についてのサプライチェーンの社会環境リスクについての具体的な方針、具体的な目標の設定、それらの開示は環境先進企業として不可欠な要因になると考えます。

最後に、本報告では、鉄は地球上に遍在するリサイクル可能な最も持続可能な素材であると紹介されています。またエンジニアリング事業を通じたサーキュラー経済の取り組みも報告されています。鉄とエンジニアリングを掛け合わせると、循環型と同時に脱炭素というウィンウィンのビジネスモデルになり得ると解釈しました。

ジェンダーや人種などの多様性に配慮しつつ、今後は、個別の技術戦略の上位概念として脱炭素・サーキュラーを組み込んだビジネス戦略を、より明確に示しながら、2050年ビジョンの実効性を着実に高めていただけるリーダーシップに期待しています。