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JFEホールディングス株式会社代表取締役社長(CEO) 柿木 厚司

2023年9月
JFEホールディングス株式会社
代表取締役社長(CEO)
柿木 厚司

豊かな地球の未来のために、創立以来最大の変革に挑戦し、
持続可能な社会の発展に貢献します。

JFEグループが目指す姿

JFEグループは「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」を企業理念に、激変する事業環境の中、その変化に柔軟に対応しながら持続的な成長を目指してまいりました。2021年に策定した第7次中期経営計画(以下、中期計画)の対象である2021年度から2024年度は、「豊かな地球の未来のために、創立以来最大の変革に挑戦」する期間と捉えており、「環境的・社会的持続性」を確かなものとし、「経済的持続性」と両立させることで、中長期的な企業価値向上を実現することを目標としています。中期計画の方針・施策に基づいて特定した「経営上の重要課題」に対して、重要業績評価指標(以下、KPI)を設定し、環境・社会的な課題を中心とするサステナビリティへの取り組みと、当社グループの持続的な成長に欠かせない経済面の重要課題に対する取り組みを推進してきました。

特に気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、これに応えるべく「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定し、「鉄鋼事業のCO2排出量削減」と「社会全体のCO2削減への貢献」を両輪として脱炭素への道程を示すとともに、この課題への取り組みを成長の機会ととらえ、さまざまな技術開発に注力しています。当社事業の中核である「鉄」を、今後も社会の発展や私たちの生活に欠かせない素材として社会に安定的に供給するために、体系的な取り組みを継続していきます。

JFEグループは、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在を目指して、変革に向けた挑戦を続けていきます。

気候変動問題への取り組み

気候変動に対する危機感が世界中で広がる中、鉄鋼事業を中核とするJFEグループにとって、気候変動問題への対応は事業継続の観点からも極めて重要な経営課題です。CO2排出量の削減に関しては、鉄鋼事業における2024年度末目標として「2013年度比18%削減」を掲げており、2022年度は2013年度比約13%の削減となりました。省エネ・技術開発による削減量はKPI目標値を達成し、着実に活動の成果が表れています。引き続き「JFEグループ環境経営ビジョン2050」で公表した施策を実行してまいります。

2022年度は新たに、2050年カーボンニュートラルに向けた超革新技術の実証試験や実装への方針や時期を示すとともに、2030年までの低炭素鉄鋼プロセスへの転換の道筋を示しました。2027~2030年を目途に倉敷地区の高炉一基を高効率・大型の電気炉に置き換える検討を行うことを公表し、さらには、スクラップ使用量の拡大により大幅なCO2排出量削減が可能となるプロセスを全地区の転炉に導入したことに加え、仙台製造所における電気炉の増強等を決定しました。エンジニアリング事業においても再生可能エネルギープラント、リサイクル施設の建設・運営により、2021年度比で約58万トンのCO2削減に貢献しています。

2023年度は、千葉地区のステンレス製造プロセスにおける電気炉の導入を決定したほか、政府からの支援を受けて複線的にチャレンジしているカーボンリサイクル高炉※1や水素製鉄※2などの超革新技術の開発についても、千葉地区で各技術の試験設備建設を開始します。

エンジニアリング事業では洋上風力発電の事業化を推進しています。笠岡市において国内初となるモノパイル(洋上風力発電用基礎構造物)製造工場の建設に着手しており、2024年4月からの生産開始に向けて準備を進めています。また、当該生産で使用する素材には西日本製鉄所(倉敷地区)の第7連続鋳造機で製造する高品質・大単重厚鋼板を充当する予定です。同製品は従来よりも大きなサイズの厚鋼板であり、発電量拡大等を目的に風車の大型化が進む中、溶接作業回数の削減により作業効率の向上や製造コストの削減に貢献することができます。また商社事業では、鉄鋼や原材料・資機材事業で培ったノウハウで洋上風力発電向け鋼材・加工製品のサプライチェーンを構築し、需要家への最適提案を行っていきます。このような各事業会社の強みを活かしたグループシナジーの拡大に引き続き取り組んでまいります。

さらには2023年度上期から、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を従来の製品より大幅に削減したグリーン鋼材である「JGreeX(ジェイグリークス)」の供給を開始しました。CO2削減という「環境価値」を創出するコストをサプライチェーン全体で負担する世界で初めてのビジネスモデルとなります。大規模な投資を実行しながらCO2排出量削減を進めていく当社グループの持続的成長にとって、このようなビジネスモデルは不可欠であり、今後もカーボンニュートラル社会の実現に貢献できるグリーン鋼材の価値をお客様に認めていただき、市場の創出を図る取り組みを進めてまいります。

※1高炉から排出されるCO2をメタン化し、還元剤として高炉に吹き込む技術

※2石炭の代わりに水素を還元剤として利用する技術

社会課題への取り組み、コーポレートガバナンス充実の推進

持続的な企業価値の向上には、社会課題への取り組みも重要です。とりわけ企業の根幹をなすのは人であり、人的資本への投資を通じて従業員が安心して働ける環境を整備し、能力や活力を最大限に引き出す施策に取り組んでいます。

当社グループは「安全はすべてに優先する」の基本姿勢のもと、安全に関するKPIを定め取り組みを推進しています。グループ全体で年間100億円規模の安全対策への優先的な投資を実施し、災害発生防止に引き続き注力していきます。加えて、従業員とその家族の健康を維持・増進するために、各事業会社で体制を構築して積極的に健康経営を推進していきます。

また、変化の激しい経営環境においては、さまざまな価値観や考え方を融合させることでこれまでになかった発想や解決法を得て、企業価値の持続的な向上につなげていくことが必要になっています。当社グループではダイバーシティ&インクルージョンの推進を重要な経営課題として位置付け、性別、国籍や価値観、異なるライフスタイルなど多様な背景を持つ人材が能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。特に女性の活躍について、取締役会での議論を経て、2022年度より女性管理職登用・女性採用比率等について意欲的なKPIへの見直しを行いました。「採用」、「定着」、「配置・育成」の観点からさまざまな施策を引き続き推進していきます。

こういった取り組みと並行して、多様な人材がいきいきと能力を発揮するために、従業員が働きがいを感じられるための社内環境の整備に取り組んでおり、在宅勤務、オフィス改善、作業効率化や、1on1ミーティングなどによる職場コミュニケーションの活性化を推進しています。さらに、当社および各事業会社ではエンゲージメントサーベイを年1回実施して従業員意識を定期的に把握し、働きがい等に関する課題の特定や施策の検討を行っており、継続して取り組んでいきます。

役員の業績連動報酬には、非財務目標として2022年度から従業員の安全に関する指標を、今年度から気候変動に関する指標を導入しました。当社グループの持続的な成長に向けて、より健全なインセンティブとして機能する制度を目指し、引き続き検討を進めコーポレートガバナンスの充実を図ってまいります。

中期経営計画の進捗

中期計画の2年目となる2022年度は、ウクライナ情勢の長期化や中国における経済活動の停滞、世界的なインフレ懸念の高まりや円高の進行もあり、物価上昇や供給面での制約等の影響が生じ、鉄鋼事業では前期に比べ減益となりました。一方で、高付加価値品比率の向上やDX戦略の推進、量から質への転換を図ることで、収益基盤の強化は着実に進んでいます。引き続き、生産・エンジニアリング実力の強靭化と、商品・サービスの競争力強化を軸に、数量や市況に拠らない強固な収益構造の構築を進めていき、環境的・社会的持続性と経済的持続性の両立を目指していきます。

ステークホルダーの皆様へ

JFEグループは、今後も長期にわたって、豊かな地球の未来のための商品やサービスを提供する存在であり続けることを目指していきます。そのために社会との信頼関係の基本であるコンプライアンスの徹底に真摯に取り組み続けるとともに、気候変動や生物多様性といった環境課題、労働安全衛生やダイバーシティ&インクルージョンなどの社会課題について、これらをさらなる成長の機会と捉え、グループ一体で取り組んでまいります。