トップメッセージ

カーボンニュートラル時代の到来に向けて盤石な基盤を構築し、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在を目指します。
2024年9月
JFEホールディングス株式会社
代表取締役社長(CEO)
JFEグループが目指す姿
JFEグループは「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」を企業理念に、激変する事業環境の中、その変化に柔軟に対応しながら持続的な成長を目指してまいりました。2021年に策定した第7次中期経営計画(以下、中期計画)の対象である2021年度から2024年度は、「豊かな地球の未来のために、創立以来最大の変革に挑戦」する期間と捉えており、「環境的・社会的持続性」を確かなものとし、「経済的持続性」と両立させることで、中長期的な企業価値向上を実現することを目標としています。中期計画の方針・施策に基づいて特定した「経営上の重要課題」に対して、重要業績評価指標(以下、KPI)を設定し、環境・社会的な課題を中心とするサステナビリティへの取り組みと、当社グループの持続的な成長に欠かせない経済面の重要課題に対する取り組みを推進してきました。
特に気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、これに応えるべく「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定し、「鉄鋼事業のCO₂排出量削減」と「社会全体のCO₂削減への貢献」を両輪として脱炭素への道程を示すとともに、この課題への取り組みを成長の機会ととらえ、さまざまな技術開発に注力しています。
本中期計画を通じて鉄鋼事業における「量から質への転換」、「構造改革の完遂」などを通じて外部環境に左右されない経営基盤は整いつつあり、新たなステージへ飛躍するための準備ができたと考えています。今後は、来るべきカーボンニュートラル時代を乗り越えるための盤石な基盤を作り、その先の持続的な成長の実現を図ってまいります。JFEグループは、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在を目指して、変革に向けた挑戦を続けていきます。
環境課題への取り組み
気候変動に対する危機感が世界中で広がる中、鉄鋼事業を中核とするJFEグループにとって、気候変動問題への対応は事業継続の観点からも極めて重要な経営課題です。CO₂排出量の削減に関しては、鉄鋼事業における2024年度末目標として「2013年度比18%削減」を掲げており、2023年度は2013年度比約17%の削減となりました。KPI目標値を達成し、着実に活動の成果が表れています。引き続き「JFEグループ環境経営ビジョン2050」で公表した施策を実行してまいります。
2023年度は千葉地区のステンレス製造プロセスにおける電気炉導入を決めたほか、政府からの支援を受けて複線的な超革新技術開発に挑戦しているカーボンリサイクル高炉や水素製鉄などの試験炉の建設を開始し、2024年度に入りこれらの一部で実験を開始しました。2030年半ばを目途にこれらの技術開発完了を目指してまいります。さらに、2024年度中には、従来の高炉プロセスのみでしか製造し得なかった高品質鋼材を製造可能にする大型電気炉の西日本製鉄所倉敷地区への導入の投資判断を行う予定です。
また、昨年度から、鉄鋼製造プロセスにおけるCO₂排出量を従来の製品より大幅に削減したグリーン鋼材である「JGreeX®(ジェイグリークス)」の販売を開始しました。CO₂削減という「環境価値」を創出するコストをサプライチェーン全体で負担する世界で初めてのビジネスモデルとなります。一方で、国内含めてまだグリーン鋼材の環境価値は十分認知されていないと言わざるを得ません。今後、政官民一体となって、グリーンであることの価値を評価するとともに、社会全体でのコスト負担を実現することで、カーボンニュートラル社会を作り上げていくことが肝要です。これにより日本の産業界全体がその製品の品質と環境の両面から世界をリードすることが、日本経済の発展に資すると考えています。
エンジニアリング事業では、日本のエネルギー施策に貢献できる洋上風力発電事業、廃棄物発電事業、CCUS事業に 取り組んでいきます。
JFEエンジニアリングにて笠岡市で国内初となるモノパイル(洋上風力発電用基礎構造物)製造工場を建設し2024年4月から生産を開始しました。日本最大のモノパイルサプライヤーとして笠岡製作所の運営、洋上風力発電所のO&M(オペレーション&メンテナンス)、浮体式洋上風力発電の研究開発を推進します。廃棄物発電事業では既に全国11カ所、海外で2カ所が稼働中であり、今後も海外設計拠点の活用、部品調達の多様化、多国籍化、デジタル技術を活用したO&Mに力を入れ、世界的にも競争力のある事業として注力していきます。
また、循環型社会の実現に向けて、前述の廃棄物発電事業や再生可能エネルギーでの電力供給、回収したペットボトルを再生する事業などは、「リサイクル」、「リユース」としてサーキュラーエコノミーの観点においても当社が貢献できる分野です。エンジニアリング事業においては、海外での拡充も含めて取り組みを推進していきます。加えて鉄鋼事業においてもインフラの長寿命化に貢献する耐疲労鋼や、自動車の軽量化に貢献する超ハイテン鋼といった高機能鉄鋼製品の供給をより一層推進することで社会の「リデュース」につなげ、グループ全体でサーキュラーエコノミーの実現に向けた貢献を図っていきます。
社会課題への取り組み
持続的な企業価値の向上には、社会課題への取り組みも重要です。とりわけ企業の根幹をなすのは人であり、人財は今後ますます重要なファクターとなってきます。これまで以上に人材獲得・育成、エンゲージメント向上にも注力し、人的資本経営に対する投資も拡大していきます。
当社グループは「安全はすべてに優先する」の基本姿勢のもと、死亡災害件数(0件)および休業災害度数率に関するKPIを定め取り組みを推進しています。グループ全体で年間100億円規模の安全対策への優先的な投資を実施し、災害発生防止に引き続き注力していきます。さらに、従業員とその家族の健康を維持・増進するために、保健指導の強化や禁煙促進などの目標を掲げ、各事業会社で体制を構築して積極的に健康経営を推進していきます。
加えて、新しい領域への進出や収益倍増の達成といった変革を進める上では、さまざまな価値観や考え方がぶつかり合うこと、すなわちダイバーシティ&インクルージョンによって、新しい発想や解決法が生まれてくることが重要な役割を果たします。当社グループではダイバーシティ&インクルージョンの推進を重要な経営課題として位置付け、性別、国籍や価値観、異なるライフスタイルなど多様な背景を持つ人材が能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。特に女性の活躍については、女性管理職登用・女性採用比率等について意欲的なKPIを掲げており、「採用」、「定着」、「配置・育成」の観点からさまざまな施策を引き続き推進していきます。
また、一人ひとりの人権が尊重・擁護される社会の実現に貢献することが企業の社会的責任であるとともに経営基盤の一つであると考え、特に「サプライチェーンにおける人権尊重」を重要課題として取り組んでいます。従業員に対する教育・研修に加えて、サプライヤーやグループ会社に対するリスク管理や人権デューディリジェンスの展開など引き続き推進していきます。
ステークホルダーの皆様へ
JFEグループは、今後も地球環境を守りながら、鉄という社会の豊かな未来にとって必要不可欠な素材を通じて社会に貢献していきます。そのために社会との信頼関係の基本であるコンプライアンスの徹底に真摯に取り組み続けるとともに、気候変動や循環型社会の実現、生物多様性の保全といった環境課題、労働安全衛生やダイバーシティ&インクルージョン、人権の尊重などの社会課題に対して、これらをさらなる成長の機会と捉え、グループ一体で取り組んでまいります。
この「サステナビリティ報告書2024」においては、各課題への取り組みを幅広く紹介しています。本報告書がJFEグループの取り組みに対する皆様のご理解の一助になれば幸いです。