トップメッセージ

社会の持続的発展と人々の安全で
快適な生活に寄り添う
「なくてはならない」存在を目指します。

2026年9月
JFEホールディングス株式会社
代表取締役社長(CEO)
北野 嘉久

JFEグループの目指す姿

現在、私たちを取り巻く事業環境は、気候変動問題の深刻化や生物多様性の損失、資源・エネルギー制約の高まりなど、地球規模の課題がますます複雑化しています。また、国内では需要構造の変化が着実に進む一方、海外では保護主義の広がりや中東情勢の不安定化など、地政学リスクへの対応がこれまで以上に重要となっています。


JFEグループにとって、こうした社会課題への挑戦こそが存在意義であり、特に気候変動問題をはじめとする環境課題への取り組みや人的資本の強化は、最も重要な経営課題であると認識しています。鉄鋼業は社会の発展に不可欠な素材を供給する一方で、多くの温室効果ガスを排出する産業でもありますが、鉄鋼業だからこそ世界の脱炭素化を前進させることができると考えています。すなわち、製鉄業の脱炭素化により、自動車、建築、エネルギー、インフラなど、あらゆる産業の脱炭素化を支える高機能材やソリューションを提供し、社会全体のGXを牽引することが私たちの使命です。


JFEグループは、「JFEビジョン2035」の実現に向けて歩みを進めています。その中心にあるのは「世界最高の技術」です。革新電気炉、水素を活用した直接還元製鉄、カーボンリサイクル高炉など、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、技術開発のトップランナーとして革新的な技術の創出に挑戦し、カーボンニュートラル社会の実現を先導していきます。カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進し、環境投資と財務健全性を両立させながら、環境価値と経済価値の双方を創出していくことが不可欠です。


環境課題への取り組み、それを支える人的資本、技術開発、ガバナンスを一体で強化することにより、JFEグループならではの新たな価値創造を実現していきます。具体的な取り組みの例として、監査等委員会設置会社への移行やCFO・CTOの設置によりガバナンスと技術開発を強化しています。また、DX・AIの活用による業務変革や経営判断の高度化も進め、グループ全体の競争力向上につなげていきます。そして、環境価値と経済価値の創出を通じて、社会課題の解決と持続的な成長を両立し、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活に寄り添う「なくてはならない」企業グループであり続けたいと考えています。

サステナビリティへの取り組みの深化

第8次中期経営計画で重点課題として掲げる気候変動問題、循環経済への移行、生物多様性の保全・自然再興といった環境課題への取り組みは、JFEグループにとって社会的要請への対応にとどまるものではありません。これらは、将来の事業基盤そのものであり、持続的な成長と企業価値向上を支える重要な経営戦略であると考えています。


カーボンニュートラルについては、短期的には欧米を中心にスローダウンの兆しも見られますが、長期的には不可逆な潮流であると認識しています。当社は、短期的な変化に左右されることなく、長期的な視点に立って超革新技術の開発に取り組みます。革新電気炉、水素を活用した直接還元製鉄、カーボンリサイクル高炉など、複数の技術開発を着実に進めるとともに、高品質・高機能なGXスチールの大量供給体制の構築にも取り組んでいます。特に倉敷地区における革新電気炉の導入は、単なるプロセス転換ではなく、カーボンニュートラル時代における競争力強化と収益体質改善を同時に実現するための重要な取り組みです。


一方で、カーボンニュートラルの実現には、技術的実現性だけでなく、経済性の確立や社会全体での受容が不可欠です。GXスチールの普及には、市場創出や制度整備に加え、その環境価値が社会の中で適切に評価される仕組みが必要です。当社グループは、政府と連携した制度構築や、カーボンニュートラルの価値の見える化に向けた国際的なルール形成にも積極的に関与しています。GXスチールの価値が市場で正当に評価される環境を整えることは、将来の競争優位性を確保する上でも重要です。カーボンニュートラルへの対応を単なるコストとして捉えるのではなく、新たな需要を創出する成長機会と位置付け、環境価値を経済価値へとつなげていきます。また、市場形成の進展を見極めながら、脱炭素技術の社会実装に向けた投資判断を適時適切に行っていきます。


また、資源・エネルギー制約への対応策の一つである循環経済への移行についても、グループの強みを生かした取り組みを進めています。鉄鋼事業ではスクラップ利用の拡大や高付加価値品の開発を通じて資源循環を推進しており、エンジニアリング事業では、Waste to Resource分野やリサイクル分野を軸に事業拡大を推進しています。従来のEPC(プラント納入型ビジネス)に加え、DXを活用したO&M(オペレーション&メンテナンス)など、付加価値の高いサービスを組み合わせることで、収益モデルの高度化を図っています。廃棄物発電、プラスチックリサイクル、食品リサイクルなど、社会全体の循環経済への移行を支える事業は、環境課題の解決と成長機会の獲得を両立する取り組みです。自社の技術開発に加え、自治体や他社とも連携しながら集荷ネットワークやリサイクルサプライチェーンを構築し、再生資源や環境商材の流通拡大を通じて、循環経済への移行を支えていきます。


生物多様性の保全・自然再興については、当社グループの事業活動が自然資本に依存し、同時に影響を与えていることを認識することが出発点です。自然関連のリスクと機会を把握し、事業活動に伴う影響の低減に取り組むとともに、生物多様性の保全・自然再興に貢献するプロセス・製品・技術の開発を進めていきます。地域社会やサプライチェーンを含む多様なステークホルダーと連携し、カーボンニュートラルや循環経済との関係性も踏まえながら、実効性のある取り組みを推進します。生物多様性は、単独の環境課題としてではなく、カーボンニュートラルや循環経済と相互に関係する課題として捉える必要があります。今後は、これらの環境課題のつながりやトレードオン・トレードオフを認識した上で、統合的な対応と情報開示を進めていきます。


さらに、京浜土地活用をはじめとするグループの大きな事業変革においても、環境課題への貢献を重要な視点として位置付けています。京浜臨海部の土地活用では、電力事業、データセンター事業、使用済みプラスチックリサイクル工場など、カーボンニュートラルや循環経済への移行に資する事業利用の検討・展開を進めています。こうした取り組みは、保有資産を単に活用するだけでなく、地域社会や産業インフラの将来像を見据えた新たな価値創造につながるものです。環境課題の解決を成長機会として捉え、グループの技術、人材、事業基盤を結び付けることで、社会課題の解決と企業価値向上の両立を図っていきます。


また、一人ひとりの人権が尊重・擁護される社会の実現に貢献することが企業の社会的責任であるとともに経営基盤の一つであると考え、人権尊重とサプライチェーン全体を通じたリスク管理の強化にも取り組んでいます。グループ会社やサプライチェーン全体を対象とした人権デューディリジェンスを展開し、人権リスクの把握と責任ある調達を推進していきます。


私は、サステナビリティへの取り組みを企業価値向上につなげるためには、ステークホルダーとの対話が不可欠であると考えています。社会から寄せられる期待、要請、懸念に真摯に向き合いながら、当社グループが果たすべき役割を明確にし、取り組みの実効性を高めていきます。気候変動問題、循環経済への移行、生物多様性の保全・自然再興はいずれも、一社のみで完結するものではありません。お客様、行政、自治体、金融機関、投資家、地域社会、サプライチェーンの皆さまと連携し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

人的資本への取り組み

JFEグループが目指す持続的な成長と価値創造を実現するためには、その原動力となる人材の力が不可欠です。気候変動問題、循環経済への移行、生物多様性の保全・自然再興といった環境課題への対応に加え、海外事業の拡大やDX・AIの活用など、当社グループが向き合う課題は複雑化しており、一つの専門性だけで解を導くことはできません。異なる経験や価値観を持つ人材が互いに力を発揮し合い、新たな発想を生み出すことが、これからの競争力の源泉になると考えています。


そのため、人材育成、エンゲージメント向上、安全・健康への投資、DEI推進を着実に進めています。特に安全はすべてに優先するものであり、社員一人ひとりが安心して能力を発揮できる職場環境を整えることは経営の責務です。また、海外事業の拡大を支える海外人材や、生産性向上・業務変革を担う高度DX人材、専門性に加え多様な人材を束ね変革をリードする「キャプテンシー」を持つ人材の育成も重点的に進めています。


また、経営層と社員との対話や、自律的なキャリア形成を支援する制度の充実にも取り組んでいます。社員一人ひとりが成長を実感し、誇りとやりがいを持って挑戦できる環境を整えることで、社員の成長と会社の成長が連動する好循環を生み出し、持続的な企業価値向上につなげていきます。

ステークホルダーの皆さまへ

JFEグループはこれまで、社会との信頼関係を礎として成長してきました。今後も、気候変動問題、循環経済への移行、生物多様性の保全・自然再興、人権、安全、DEIといった重要課題に対し、グループ一体となって真摯に取り組んでいきます。


この「サステナビリティ報告書2026」では、持続的な成長と企業価値向上の実現に向けたJFEグループの取り組みを幅広く紹介しています。本報告書がJFEグループへのご理解を深めていただく一助となれば幸いです。


今後も社会課題の解決に取り組みながら持続的な成長を実現し、株主をはじめとするすべてのステークホルダーの皆さまから信頼され、社会にとって「なくてはならない」企業グループであり続けたいと考えています。