働きがいのある職場の実現
取り組み
当社が持続的に発展していくためには、これまでの働き方を抜本的に見直し、高い生産性で新たな価値を創造しながら、従業員一人ひとりが仕事に誇りと働きがいを感じられる働き方の実現が不可欠です。第7次中期経営計画においても、従業員が安心・安全に働き、能力を最大限に発揮できる職場環境・社内制度の整備を進めていきます。
働きがいのある職場環境の整備
当社は、給与支払いに関して法令を遵守し、生活賃金を満たすべく、各国・各地域・各業種別に定められた最低賃金以上の給与を設定しています。また、時間外労働の上限規制などを遵守することはもとより、従業員がやりがいを持って働くことができるよう、業界トップレベルの労働条件を実現するとともに、会社の収益に応じた成果還元として賞与を支給しています。
また、寮・社宅制度等の福利厚生制度も手厚く整備するなど、従業員が長期に安定して働けるような環境づくりに力を入れています。
従業員意識を定期的に把握するため、当社および各事業会社ではエンゲージメントサーベイを毎年実施し、働きがい等に関する課題の特定や施策の検討に活用しています。また、定期的に実施している企業倫理意識調査の内容も参考に働きやすい職場環境の実現に取り組んでいます。
ST 働きがいの向上を目指した取り組み
JFEスチールでは、働きがいの向上が当社の持続的な発展にとって重要な経営課題であるとの経営層の認識のもと、人事制度のみならず企業文化変革も含めた多面的な施策を推進する「人財戦略本部」を2024年4月に新設し、「社員の働きがいを高め、会社と社員がともに成長することを目指す企業改革」として、社長をプロジェクトオーナーとする「ReFuture PROJECT」※を開始しました。本プロジェクトで目指すものは、会社は従業員の働きがいを高めるさまざまな支援や取り組みを行い、同時に従業員はその持てる能力を最大発揮して貢献することで、会社と従業員が双方の期待に応えながら、強固な相互信頼の関係性を育み、ともに成長する姿です。人財戦略本部内に新たに設置したカルチャー変革室がプロジェクト全体の旗振りを担い、関連部署と連携しながら一連の施策を継続的に展開していきます。
例えば、カーボンニュートラルや人口減少・内需減少など当社を取り巻く環境が大きく変化する状況において、従業員が当社の将来に期待しながら夢を持って仕事に取り組むには、「当社の未来のありたい姿」、「当社の存在意義」や長期ビジョンをあらためてこのタイミングで描くことが必要であるとの考えから、当社の「パーパス(会社の存在意義)」「ビジョン(目指す姿)」「バリュー(大切にする価値観)」について現在策定を行っています。さらに、本年10月には従業員一人ひとりの働きがいを向上させることを目指し、従業員区分の再編・異動となる勤務地範囲を従業員が選択できる枠組み・評価のさらなる透明性向上・フィードバック強化などの内容を特徴とする人事・賃金制度改定についても実施予定です。
また、従業員が働きがいや充実感を得ながら仕事をし、その上で会社の生産性向上につなげていくことを目指した「新しい働き方」についても推進しています。具体的な施策として、在宅勤務制度の拡充によるテレワークの推進、コアレスフレックス制度の導入、本社を中心としたフリーアドレス化、チャット・Web会議ツールの導入、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:端末上の人の作業を自動化するソフトウエア)の導入、電子契約やワークフローの導入等によるペーパーレス化の推進や脱ハンコ等を実施しています。これらの取り組みにより、付加価値の高いワークスタイルへのシフトを進めていきます。
加えて、キャリア採用者の増加などに伴う従業員ニーズの多様化を踏まえ、福利厚生制度として2022年度よりカフェテリアプランの導入を行いました。またワーク・ライフ・バランスの向上のために、年休奨励日の設定による有給休暇取得の推進、育児・介護や不妊治療、自己啓発・ボランティア時などに取得できるワーク・ライフ・バランス・サポート休暇制度を充実化しています。また、2024年度より一般勤務者の休日数を2日/年増やして121日/年としており、従業員とその家族が健康と仕事を両立しながらより安心して働くことができる環境づくりを行っています。
「ReFuture PROJECT」における2024年度の重点取り組み
項目 | 概要 |
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ありたい姿の策定 | パーパス(会社の存在意義)、ビジョン(目指す姿)、バリュー(大切にする価値観)の策定 |
業務改革/組織風土改革 | 業務のあり方の見直し、IT化推進、働きがいを向上させるマネジメントの改善等 |
コミュニケーション改革 | タウンホールミーティング実施を通じた経営層と従業員の対話強化等 |
職場環境への投資 | 製鉄所・製造所を中心とした事務所等への重点的な投資による、より働きやすい職場環境実現 |
人事・賃金制度見直し | 従業員一人ひとりの働きがいを向上させることを目指した改訂 |
- ※「ReFuture PROJECT」の名称には、2003年に「日本を代表する未来志向の企業グループ」という想いで誕生した当社が、大きな変革期にある今だからこそ、「ありたい姿」という未来を見つめ、世界に求められる新しい未来をともにつくっていきたいという思いを込めています
EN 「新しい働き方」による生産性向上および働きがいの向上に向けた取り組み
JFEエンジニアリングでは全社的に「休み方改革」を推進しています。夏季金曜日の年休取得奨励日「なつきん」や建設工事完了時に集中的に休暇を取得する「ひといき年休」などの休暇施策により、年間付与日数22日に対する2023年度の取得実績は19.4日(取得率88%超)となりました。2024年度は20日以上の取得を目指しています。
さらに働き方改革として、オフィス部門においては、自分でコアタイムを設定できるセルフコアフレックス制度のもと、定時退社日「スイスイデー」の導入や原則20時以降の残業禁止など、時間効率を意識した働き方を推進しています。またコロナウイルス感染対策で導入したリモートワークを2021年度より恒久的に制度化し、自宅や全国約400カ所にあるシェアオフィスでの勤務を可能にするなど、柔軟な働き方を実現しました。
建設部門においても労働時間の縮減を主要な課題に据え、継続的な取組みを行っています。2023年度からは、全社横断で設置した対策ワーキングの中で、縮減の取組の進捗状況および現場単位で時間外労働状況の確認を行っています。時間外労働については年間計画策定を行っており、毎月実績と年間計画に乖離がある場合は、本社管理者が現場と協力して改善を行うこととしています。また、社内書類の削減および書類作成業務時の本社バックオフィス組織の活用や本社、下請事業者とのタイムリーなやり取りを可能とするITツールを導入するなどの施策を進めています。また、働きがいの観点では、従業員の活躍が企業の競争力向上や持続的な成長の源泉と考え、従業員が能力、知識、技能、経験などを最大限活用できることを経営課題として、施策を実行してきました。
「健康・安全」、「育成」、「ダイバーシティ」、「従業員エンゲージメント」についてはKPIを定め、以下のような具体的な取り組みを進めています。
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人事・賃金制度見直し
キャリア採用者の増加など従業員構成の変化を背景に、評価の納得性の向上と従業員の成長の後押しを目的とした人事制度の刷新を実施しました。
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研修体系の見直し
人事制度改革の中で階層別に期待される人材像を再定義し、これを踏まえて今年度から研修体系を見直しています。見直しにあたっては、従業員一人ひとりの成長意欲にこたえるため、自主的に選択できる多様な研修プログラムを用意しました。
SH ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた多様な働き方を支える取り組み
JFE商事ではワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、毎週水曜日の定時退社デーの設定や22時以降の深夜就業の禁止、指定年休日の設定などを通じて、労働時間の削減やワーク・ライフ・バランスの向上に取り組んでいます。また、多様な働き方に対応するために在宅勤務制度およびフレックスタイム制度を導入しています。さらに、従業員一人ひとりがメリハリのある働き方を意識し、実践する場として、全従業員を対象に年に1回(約1カ月間)全社チャレンジデイズを実施しています。例えば、業務の進め方を見直すための取り組み等を実施し、組織・個人の生産性向上を目指しています。
やりがい・成長を実感出来る職場づくりを進めることで、エンゲージメント(働きがい)の向上にも努めています。毎年実施するエンゲージメントサーベイのスコアを定点観測して、所属単位で背景を深掘りの上で改善に向けたアクションプランの設定を行い、エンゲージメントの向上につなげています。
加えて、個々の評価をよりメリハリをつけて給与へ反映出来るように人事制度を改定し、個人へのフィードバックの場となる面談において上司から部下に対して評価内容を伝えるだけでなく、能力向上に向けたアドバイスを行うことで成長を実感するとともに、上司と部下が今後のキャリアの積み上げ方を協議することで将来を意識した業務設計を行い、仕事のやりがいにつなげています。
業務改革
ST 最新ICTを活用した業務改革の推進
JFEスチールでは、従業員の単純作業時間を削減し、より創造的な業務にあてる時間を増やすためにRPAを導入しています。2023年度までに900種類以上の業務に導入し、年間11万時間以上を創出しました。
2020年度後半から開始したRPA自主開発についても、開発ツールのアカデミー修了者が410名を超え、全社的に拡大しています。加えて2021年度から開始したローコード開発ツールを使った自主開発については、260名を超える従業員により、年間6,800時間以上を創出しました。ローコード開発ツールだけでなくワークフローシステムを活用した自主開発も進んでおり、業務効率化だけでなく、脱ハンコやペーパーレス化といったワークスタイル変革も推進しています。これらの業務改革によって創出された時間は、お客様へのさらなるサービス向上のため活用していきます。
また、データドリブンな業務変革を推進すべく、新たなBIツールの全社展開を開始し、データの見える化と共有化により意思決定を迅速化して、企業競争力を高めていきます。
EN 生成AIを活用した業務改革推進
JFEエンジニアリングでは、2023年9月に生成AI活用による業務革新を目的として、独自のセキュリティ対策により情報漏洩リスクを最小限に抑えた文章生成AIサービス Pla'cello xChat(プラッチェロ エックスチャット)を社内向けにリリースしました。既に1,000名を超える従業員が、文書作成や情報整理などの業務効率化に活用しています。
また、継続的にRPAによる業務の自動化を進めており、2024年6月時点で約300業務の自動化開発を実施、例えば、従業員の休日出勤・休暇管理表や各種報告、通知の自動作成などで効率化に貢献しています。
今後も数々の制度や施策、効率化ツールなどを導入し、ワーク・ライフ・バランスの実現と組織全体のアウトプット最大化を図っていきます。
SH J-MUSCLE活動
JFE商事では、2008年より業務効率化とパフォーマンス向上を目指した業務改革活動を継続して推進しています。2023年には活動名称をJ-SLIMからJ-MUSCLEへと改め、今まで効率化中心に進めていた活動から価値を増やしていく活動へ意識を新たにしました。「無駄をなくしてスリムになった体に筋肉となる付加価値を増やし、より会社を強くしていく」というJ-MUSCLEのコンセプトの元、さらにこの活動を活性化させていきます。
2023年の活動発表会ではJFE商事・国内外グループ会社合わせて22チームが各自の取り組みをオンラインで発表し、グループ全体で延べ2,900名が視聴しました。クラウドシステム活用による情報共有方法の見直しや業務時間の削減、データ活用・EXCEL関数を駆使した事務処理精度の向上・効率化、お客様との合同勉強会開催などのレベルアップ活動、オフィス環境整備によるコミュニケーション活性化など、生産性向上につながるさまざまな活動の成果を共有し、グループ全体へ横展開を進めています。今後も既成概念にとらわれず、時代の変化に柔軟に対応し、常に変革を求める企業文化の醸成を目指していきます。
小集団活動による現場の活性化
ST 「J1活動」の展開
JFEスチールでは、全社で約1,200グループが小集団活動「J1活動※」を展開し、品質改善・業務改善などに関する重要課題において、さまざまな成果を生み出しています。また、グループ会社も含めた「JFEファミリー成果発表大会」を年2回開催し、そこで優秀な成績を収めたグループを国内外のQC大会や関連企業に派遣するなど、活動の活性化を図っています。
- ※JFEをNo.1にする、エクセレントカンパニーを目指す活動のこと。JFEスチールおよびJFE商事では「J1活動」、JFEエンジニアリングでは「JE1活動」と呼びます
EN 「JE1活動」の取り組み
JFEエンジニアリングでは、国内外のグループ会社を含めた、約250チーム、約2,000名が「JE1活動」に取り組み、年度末の全社大会でその成果を競っています。活動分野は品質、能率、安全、コストなど多岐にわたり、職場の活性化やレベルアップのみならず、会社の業績にも大きく貢献しています。
SH 「J1活動」のさらなる活性化
JFE商事国内グループ会社では、製造部門の「安全・品質・コスト・操業・納期」等の課題解決に適した手法として「J1活動」に取り組んでおり、毎年開催しているJ1発表大会で各社代表約20チームがその成果を報告し、優秀チームを表彰しています。今後も職場の活性化、問題解決力向上のためにJ1活動を推進していきます。
健全な労使関係に向けて
JFEグループでは活力ある職場づくりに向け、労働条件や諸制度に関して 労働組合と活発な議論を行っています。労働組合から挙げられた意見は現場の生の声として真摯に受け止め、労働条件や制度の点検を行うとともに、働きがいのある職場環境の実現に向けた課題の特定や施策の検討を行っています。
ST 真摯な労使協議の実施
JFEスチールでは、さまざまな経営課題に着実に対応していくためには、労働組合の協力が不可欠だと考え、相互の理解と信頼に基づいた健全で良好な労使関係を構築しています。社長以下経営幹部と労働組合の代表者が経営課題について意見交換を行う「労使経営審議会」を年4回開催するほか、労働条件や職場環境などについて適宜意見交換を行い、制度を改訂する場合には真摯な労使協議を実施しています。
EN 健全な労使関係に向けた取り組み
JFEエンジニアリングでは健全な労使関係の向上に努めており、社長以下経営幹部と労働組合代表者が意見交換を行う場として「中央労使協議会」を定期開催しているほか、ワーク・ライフ・バランスに関する労使委員会を設置しています。
SH 健全な労使関係の維持
JFE商事では、労働組合との間で、相互の信頼と理解のもとに企業の永続的発展と従業員の生活の向上、あわせて豊かな社会の実現を目的とする「共同宣言」を行っており、健全な労使関係を保っています。定期的な意見交換、経営情報を共有する場として、社長以下経営幹部と労働組合の代表者が「経営協議会」(年2回開催)を実施しています。