働きがいの向上

取り組み

経営戦略を実行していくためには、人材ポートフォリオの一人ひとりが最大限に能力を発揮していきいきと活躍することが重要です。そのため、一人ひとりの従業員が高い働きがいを感じられることを目指した環境の整備を進めています。柔軟な働き方の実現・休暇の取りやすい環境整備など「働きやすさ」に関する取り組みや、業務改革・人事制度改定など仕事への「やりがい」を高める取り組みを各社で積極的に実行しています。

「働きやすさ」と「やりがい」を高める取り組み

従業員意識を定期的に把握するため、当社および各事業会社ではエンゲージメントサーベイを毎年実施し、KPIを設定して取り組むとともに、働きがい等に関する課題の特定や施策の検討に活用しています。また、定期的に実施している企業倫理意識調査の内容も参考に、働きやすい職場環境の実現を図っています。


給与支払いについては、法令を遵守し、生活賃金を満たすべく、各国・各地域・各業種別に定められた最低賃金以上の給与を設定しています。また、時間外労働の上限規制などを遵守することはもとより、従業員がやりがいを持って働くことができるよう、業界トップレベルの労働条件を実現するとともに、会社の収益に応じた成果還元として賞与を支給しています。


さらに、寮・社宅制度等の福利厚生制度も手厚く整備するなど、従業員が長期に安定して働けるような環境づくりに力を入れています。


エンゲージメントサーベイにおける働きがいに関する質問の肯定割合
2022年度 2023年度 2024年度
JFEスチール 72% 72% 72%
JFEエンジニアリング 79% 81% 81%
JFE商事 78% 80% 77%

ST 働きがいの向上を目指した取り組み

JFEスチールでは、働きがいの向上が当社の持続的な発展にとって重要な経営課題であるとの経営層の認識のもと、人事制度のみならず、企業文化変革も含めた多面的な施策を推進する「人財戦略本部」を2024年4月に新設し、「社員の働きがいを高め、会社と社員がともに成長することを目指す企業改革」として、社長をプロジェクトオーナーとする「ReFuture PROJECT」を開始しました。会社は従業員の働きがいを高めるさまざまな支援や取り組みを行い、同時に従業員はその持てる能力を最大発揮して貢献することで、会社と従業員が双方の期待に応える文化をつくり、そのサイクルを回すことで企業価値の向上を目指していきます。人財戦略本部内に設置したカルチャー変革室がプロジェクト全体の旗振りを担い、関連部署と連携しながら一連の施策を継続的に展開しています。


カーボンニュートラルや人口減少・内需減少など当社を取り巻く環境が大きく変化する状況において、従業員が将来に期待しながら夢を持って仕事に取り組むには、「当社の未来のありたい姿」、「当社の存在意義」や長期ビジョンを改めてこのタイミングで描くことが必要であると考え、「パーパス(会社の存在意義)」「ビジョン(目指す姿)」「バリュー(大切にする価値観)」を策定しました。ReFuture PROJECTではこれらについての従業員の認知・理解・共感/行動を促進するための浸透活動を行っています。さらに、2024年10月には従業員一人ひとりの働きがいを向上させることを目指し、従業員区分の再編・異動となる勤務地範囲を従業員が選択できる枠組み・評価のさらなる透明性向上・フィードバック強化などの内容を特徴とする人事・賃金制度改定についても実施しました。


また、従業員が働きがいや充実感を得ながら仕事をし、その上で会社の生産性向上につなげていくことを目指した「新しい働き方」についても推進しています。具体的な施策として、在宅勤務制度の拡充によるテレワークの推進、コアレスフレックス制度の導入、本社を中心としたフリーアドレス化、チャット・Web会議ツールの導入、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:端末上の人の作業を自動化するソフトウエア)の導入、電子契約やワークフローの導入等によるペーパーレス化の推進や脱ハンコ等を実施しています。これらの取り組みにより、付加価値の高いワークスタイルへのシフトを進めていきます。


加えて、キャリア採用者の増加などに伴う従業員ニーズの多様化を踏まえ、福利厚生制度として2022年度よりカフェテリアプランの導入を行いました。またワーク・ライフ・バランスの向上のために、年休奨励日の設定による有給休暇取得の推進、育児・介護や不妊治療、自己啓発・ボランティア時などに取得できるワーク・ライフ・バランス・サポート休暇制度を充実化しています。また、2024年度より一般勤務者の休日数を2日/年増やして121日/年とし、従業員とその家族が健康と仕事を両立しながらより安心して働くことができる環境づくりを行っています。


  • 「ReFuture PROJECT」の名称には、2003年に「日本を代表する未来志向の企業グループ」という思いで誕生した当社が、大きな変革期にある今だからこそ、「ありたい姿」という未来を見つめ、世界に求められる新しい未来をともにつくっていきたいという思いを込めています
「ReFuture PROJECT」における2025年度の重点取り組み
項目 概要
①ありたい姿の策定 パーパス(会社の存在意義)、ビジョン(目指す姿)、バリュー(大切にする価値観)の浸透
②業務改革 業務プロセスの見直し、IT化推進、バリューを活用した業務改善など
③職場環境改善 製鉄所・製造所を中心とした事務所等への重点的な投資による、より働きやすい職場環境実現
④人事・賃金制度見直し 改定趣旨に沿ったマネジメントの定着、現業職従業員の働き方・休み方の多様化など
⑤コミュニケーション改革 「対話」による企業文化変革推進(経営層↔従業員、部長等↔部下)
⑥マネジメント改善/
 リーダーシップ強化
管理職研修の再構築などによる、パーパス・ビジョン・バリューに沿ったマネジメントの促進
⑦成長支援/キャリア自律促進 手上げ式の教育研修や、公募制の異動を拡大
⑧ 心理的安全性の向上/組織風土改革 心理的安全性を高め、組織風土を変えていくため、意識・行動の変化につながるソフト面の取り組みを促進
JFEスチールのパーパス・ビジョン・バリュー
パーパス

ねがう未来に、鉄で応える。

ビジョン
  • 鉄鋼業界のカーボンニュートラルトップランナーになる。
  • 強靭な国内製鉄事業を基盤に、海外鉄鋼事業や新規事業へ果敢に挑戦し、新たな成長を遂げる。

(収益目標)2035年度セグメント利益 5,000億円

バリュー

Future-Oriented もっと未来志向へ

  • 挑み、成長し、未来を拓く。
  • 今日の決断と実行で、明日を変える。
  • 本質を捉え、研ぎ澄ます。
  • 柔らかい思考で、今を超えていく。
  • 広い視野で、世界を見渡す。
  • 現場で学び、ともに成長する。

EN 「新しい働き方」による生産性向上および働きがいの向上に向けた取り組み

JFEエンジニアリングでは全社的に「休み方改革」を推進しています。夏季金曜日の年休取得奨励日「なつきん」や建設工事完了時に集中的に休暇を取得する「ひといき年休」などの休暇施策により、年間付与日数22日に対する2024年度の取得実績は18.7日(取得率85%超)となりました。2025年度は20日以上の取得を目指しています。


さらに、働き方改革として、オフィス部門においては、リモートワーク制度およびコアタイムのないフレックス制度のもと、状況に応じた場所と時間の選択が可能な働き方を設定することが可能な環境を整備し、多様な働き方の実現を目指しています。このうち、コロナウイルス感染対策で導入したリモートワークは2021年度より恒久的に制度化し、自宅や全国約400カ所にあるシェアオフィスでの勤務を可能にしています。


建設部門においても労働時間の縮減を主要な課題に据え、継続的な取り組みを行っています。2023年度からは、全社横断で設置した対策ワーキングの中で、縮減の取り組みの進捗状況および現場単位で時間外労働状況の確認を行っています。時間外労働については年間計画策定を行っており、毎月実績と年間計画に乖離がある場合は、本社管理者が現場と協力して改善を行うこととしています。また、社内書類の削減および書類作成業務時の本社バックオフィス組織の活用や本社、下請事業者とのタイムリーなやり取りを可能とするITツールを導入するなどの施策を進めています。また、働きがいの観点では、従業員の活躍が企業の競争力向上や持続的な成長の源泉と考え、従業員が能力、知識、技能、経験などを最大限活用できることを経営課題として、施策を実行してきました。


「健康・安全」、「育成」、「ダイバーシティ」、「従業員エンゲージメント」についてはKPIを定め、以下のような具体的な取り組みを進めています。

  • 人事・賃金制度見直し

    キャリア採用者の増加など従業員構成の変化を背景に、評価の納得性の向上と従業員の成長の後押しを目的とした人事制度の刷新を実施しました。

  • 研修体系の見直し

    人事制度改革の中で階層別に期待される人材像を再定義し、これを踏まえて今年度から研修体系を見直しています。見直しにあたっては、従業員一人ひとりの成長意欲に応えるため、自主的に選択できる多様な研修プログラムを用意しました。

SH ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた多様な働き方を支える取り組み

JFE商事ではワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、毎週水曜日の定時退社デーの設定や22時以降の深夜就業の禁止、指定年休日の設定などを通じて、労働時間の削減やワーク・ライフ・バランスの向上に取り組んでいます。また、多様な働き方に対応するために在宅勤務制度およびフレックスタイム制度を導入しています。さらに、従業員一人ひとりがメリハリのある働き方を意識し、実践する場として、全従業員を対象に年に1回(約1カ月間)全社チャレンジデイズを実施しています。例えば、業務の進め方を見直すための取り組み等を実施し、組織・個人の生産性向上を目指しています。


やりがい・成長を実感出来る職場づくりを進めることで、エンゲージメント(働きがい)の向上にも努めています。毎年実施するエンゲージメントサーベイのスコアを定点観測して、所属単位で背景を深掘りの上で改善に向けたアクションプランの設定を行い、エンゲージメントの向上につなげています。


加えて、個々の評価をよりメリハリをつけて給与へ反映出来るように人事制度を改定し、個人へのフィードバックの場となる面談において上司から部下に対して評価内容を伝えるだけでなく、能力向上に向けたアドバイスを行うことで成長を実感するとともに、上司と部下が今後のキャリアの積み上げ方を協議することで将来を意識した業務設計を行い、仕事のやりがいにつなげています。

業務改革

ST 最新ICTを活用した業務改革の推進

JFEスチールでは、従業員の単純作業時間を削減し、より創造的な業務にあてる時間を増やすためにRPAやローコード開発ツールを導入しています。2024年度までに1,400種類以上の業務に導入し、年間25万時間以上を創出しました。従業員自ら開発できる市民開発者数は、2024年度末で630名となりました。


加えて、2024年には、独自のセキュリティ対策および利用ガイドラインを整備した当社独自の生成AIサービス「Chat JFE」を構築し、全従業員が安全かつ効率的に利用できる環境を整備しました。すでに2,000名を超える従業員が、文章作成、翻訳、情報検索などの業務に活用しており、引き続き生成AIの業務適用を通じた生産性向上を目指していきます。なお、これらの業務改革によって創出された時間は、お客様へのサービス品質のさらなる向上に活用しています。


また、データドリブンな業務変革を推進すべく、BIツールの全社活用を推進しており、データの可視化と共有を通じて意思決定の迅速化を図り、企業競争力の強化を目指していきます。

EN 生成AIを活用した業務改革推進

JFEエンジニアリングでは、2023年9月に生成AI活用による業務革新を目的として、独自のセキュリティ対策により情報漏洩リスクを最小限に抑えた文章生成AIサービス「Pla'cello xChat(プラッチェロ エックスチャット)」を社内向けにリリースしました。講習会やハンズオンを通じて生成AIの普及に努め、すでに2,000名を超える従業員が、文書作成や情報整理などの業務効率化に活用しています。


一般的なオフィス業務だけでなく、建設業に特有な業務にも生成AIを利用しています。チャットボットや文書検索、AI-OCRなどに関わる技術を開発し、個別アプリを展開しています。文書内のデータの転記や変換など、単純作業で人手がかかっている部分を生成AIで自動化することで、工数削減を実現しています。


今後も数々の制度や施策、効率化ツールなどを導入し、ワーク・ライフ・バランスの実現と組織全体のアウトプット最大化を図っていきます。

SH J-MUSCLE活動

JFE商事では、2008年より業務効率化とパフォーマンス向上を目指した業務改革活動を継続して推進しています。


2024年の活動発表会ではJFE商事・国内外グループ会社合わせて21チームが各自の取り組みをオンラインで発表し、グループ全体で延べ3,300名が視聴しました。システムや生成AIを活用した事務処理改善、請求書やミルシートの電子化による経費削減・ペーパレス、オフィスリニューアルによる多用な働き方への対応とコミュニケーション活性化など、生産性向上につながるさまざまな活動の成果を共有し、グループ全体へ横展開を進めています。特に2024年より導入した生成AIの活用は活発であり、文書作成、情報整理、翻訳、複雑なエクセル関数の作成など、さまざまな業務に取り入れ効率化と精度向上につながっています。


今後も既成概念にとらわれず、時代の変化に柔軟に対応し、常に変革を求める企業文化の醸成を目指していきます。

小集団活動による現場の活性化

ST 「J1活動」の展開

JFEスチールでは、全社で約1,100グループが小集団活動「J1活動」を展開し、品質改善・業務改善などに関する重要課題において、さまざまな成果を生み出しています。また、グループ会社も含めた「JFEファミリー成果発表大会」を年2回開催し、そこで優秀な成績を収めたグループを国内外のQC大会や関連企業に派遣するなど、活動の活性化を図っています。

  • JFEをNo.1にする、エクセレントカンパニーを目指す活動のこと。JFEスチールおよびJFE商事では「J1活動」、JFEエンジニアリングでは「JE1活動」と呼びます

EN 「JE1活動」の取り組み

JFEエンジニアリングでは、国内外のグループ会社を含めた、約270チーム、約2,000名が「JE1活動」に取り組み、年度末の全社大会でその成果を競っています。活動分野は品質、能率、安全、コストなど多岐にわたり、職場の活性化やレベルアップのみならず、会社の業績にも大きく貢献しています。

SH 「J1活動」のさらなる活性化

JFE商事国内グループ会社では、製造部門の「安全・品質・操業」等の課題解決に適した手法として「J1活動」に取り組んでおり、毎年開催している「J1発表大会」で各社代表約20チームがその成果を報告し、安全および品質・操業でそれぞれ最優秀チームを表彰しています。また、発表会をTeamsで開催することにより100名以上の方に聴講いただきました。今後も職場の活性化、問題解決力向上に向けて「J1活動」を推進していきます。

健全な労使関係に向けて

JFEグループでは活力ある職場づくりに向け、労働条件や諸制度に関して 労働組合と活発な議論を行っています。労働組合から挙げられた意見は現場の生の声として真摯に受け止め、労働条件や制度の点検を行うとともに、働きがいのある職場環境の実現に向けた課題の特定や施策の検討を行っています。

ST 真摯な労使協議の実施

JFEスチールでは、さまざまな経営課題に着実に対応していくためには、労働組合の協力が不可欠だと考え、相互の理解と信頼に基づいた健全で良好な労使関係を構築しています。社長以下経営幹部と労働組合の代表者が経営課題について意見交換を行う「労使経営審議会」を年4回開催するほか、ワーク・ライフ・バランスや働きがいの向上に関する専門委員会を労使で開催するなど、労働条件や職場環境などについて適宜意見交換を行い、制度を改定する場合には真摯な労使協議を実施しています。

EN 健全な労使関係に向けた取り組み

JFEエンジニアリングでは健全な労使関係の向上に努めており、社長以下経営幹部と労働組合代表者が意見交換を行う場として「中央労使協議会」を定期開催しているほか、ワーク・ライフ・バランスに関する労使委員会を設置しています。

SH 健全な労使関係の維持

JFE商事では、労働組合との間で、相互の信頼と理解のもとに企業の永続的発展と従業員の生活の向上、あわせて豊かな社会の実現を目的とする「共同宣言」を行っており、健全な労使関係を保っています。定期的な意見交換、経営情報を共有する場として、社長以下経営幹部と労働組合の代表者が「経営協議会」(年2回開催)を実施しています。