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ニュースリリース


JFEホールディングス株式会社

2024年 JFEホールディングス社長年頭挨拶

代表取締役社長  柿木 厚司

代表取締役社長 柿木 厚司

 

新年にあたり、JFEグループで働く皆さんに一言ご挨拶を申し上げます。

 

まず、本年1月1日に発生しました「令和6年能登半島地震」により被災された方々に心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧を心からお祈り申し上げます。

昨年は、新型コロナウイルス感染症による社会の大きな混乱は収束した一方、ウクライナ問題の長期化や中東情勢の悪化等、世界各地で地政学リスクが顕在化しました。また、世界的なインフレを起因として急速な金融引き締めが行われ、中国における不動産セクターの債務問題等の影響により世界経済に下押し圧力がかかり、今後の見通しも不透明感が増しています。このような世界情勢の下においても、2023年度のJFEグループは第7次中期経営計画(以下、中期計画)で掲げた各施策を力強く実行することにより、中期目標の達成に向けて着実に進展しています。

JFEスチールは、中期計画の最重要課題として掲げた構造改革の仕上げとして、昨年9月に京浜地区の上工程と熱延設備を休止し、固定費削減のみならず販売構成の高度化を行うことで「量」から「質」への転換を進めています。また、構造改革後の土地活用構想として「OHGISHIMA2050」を取りまとめました。100年の歴史を持ち、世界の鉄鋼業をリードしてきたエリアではありましたが、次の100年を担う新たな産業の立地や雇用の創出を通じて、地域・社会の持続的発展に資する取り組みにしたいと考えています。 収益については、海外中心とした需要低迷により市況停滞が継続する環境下で、9月以降原料炭が急騰する状況においても、国内を中心とした販売価格改善や構造改革効果等により増益(前年度比)を達成できる見込みです。前述の「量」から「質」への転換については、成長戦略として倉敷地区の電磁鋼板製造能力増強を意思決定し、2024年度から順次、戦力化していきます。またインドJSW社とインドにおける方向性電磁鋼板の需要増を確実に捕捉するため、製造販売会社の共同設立について合弁契約を締結しました。

カーボンニュートラル(以下、CN)関連では、CN戦略の推進を機動的かつ確実に実行すべく、昨年公募増資の実行および転換社債の発行により2,000億円強の資金調達を行い、市場からも良好な評価を頂きました。2030年度のCO2排出量削減目標達成に向けて必要な設備投資を着実に実行しており、2027年度稼働を目指した倉敷地区への高効率・大型電気炉の導入も検討中です。また、製造時におけるCO2排出量を大幅に削減した鉄鋼製品「JGreeX®(ジェイグリークス)」の供給を2023年度上期より開始しました。「JGreeX®」は、製造プロセスにおけるCO2排出量削減努力を任意の製品に割り当てるマスバランス方式の適用によって、CO2排出量を従来製品より大幅に削減したグリーン鋼材であり、既に複数の海運会社や建築業界等で採用が決定しています。さらに、カーボンリサイクル高炉をはじめとした超革新技術の実証試験設備の千葉地区への建設工事も2023年度より開始するなど、技術開発を推進し早期の実装へ向け取り組んでいます。

JFEエンジニアリングは海外工事の損益悪化等により昨年度の収益は悪化したものの、入善洋上風力発電所の運転開始や、ベトナム国バクニン省での廃棄物処理発電事業に向けた建設プロジェクトが順調に進むなど、中期計画で掲げた重点分野の土台作りと収益目標に向かって確実に進捗しています。

JFE商事は昨年度過去最高益を更新、2023年度も米国を中心とした鋼材市況の低迷はあるものの中期目標を超える利益水準の見通しとなっています。電磁鋼板・自動車分野のSCM強化や、海外建材を中心とした事業投資等を実施し、国内外における収益基盤は着実に強化されています。

 

本年の取り組みについて

2024年度は中期計画の最終年度を迎えます。各々、これまでの取り組みから得られた成果と課題を確認した上で、中期計画の達成に向けた取り組みを進めて下さい。また本年は、次期中期経営計画の検討をスタートします。JFEホールディングス及び各社において取り組むべき課題を整理し、当社グループの将来に向けた成長に繋がる計画とするべく真摯に検討を進めましょう。

また、CN社会の実現に向けて世界各国で投資促進政策の動きが加速しており、脱炭素化の技術革新競争は益々激化してゆくでしょう。そういう意味においても鉄鋼事業におけるCN実現は経営における最重要課題の一つです。CN実現には乗り越えねばならない多くの課題がありますが、一方で、世界に先駆けての技術確立やその実現プロセスを達成することが出来れば、大型臨海製鉄所の建設で世界の製鉄技術をリードしてきた時代と同様に、当社にとって大きな財産となります。エンジニアリング事業におけるCO2排出削減貢献量の拡大と合わせてグループ一丸となって取り組んでいきましょう。

以下に本年の重点課題を示します。各事業会社は常に環境の変化を注視しながら、何を実行すべきかを考え、課題に前向きに取り組んで下さい。

 

○収益力の追求と成長戦略の推進
グループの収益基盤であるJFEスチールは、中期計画の柱である「量」から「質」への転換を引き続き着実に推進し、構造改革の効果も合わせた収益性向上を図るとともに、インドを中心とした海外戦略の推進やDX活用、ソリューションビジネスの拡大等を通じて、さらなる収益基盤の強靭化を進めて下さい。

JFEエンジニアリングは、市場の拡大が続く環境・リサイクル分野や再エネ分野の需要捕捉を行うとともに、受注済みプロジェクトの着実な収益化を図ることに取り組んで下さい。また、運営型事業や老朽インフラ更新を通じて国内外の社会課題解決に取り組み、中期目標の達成と合わせて、事業規模の拡大を通じたSDGsへの貢献拡大を進めて下さい。

JFE商事は、JFEスチールが推進する構造改革と連動しながらも、JFE商事が独自で取り組む電磁鋼板・自動車分野に代表されるグローバルSCM強化を継続し、トレードと事業運営の両面で更なる収益基盤の安定・強化を図って下さい。

JMUにおいては、引き続き抜本的な収益および財務の改善に努めるとともに、国内外の競合に先行して次世代燃料船の開発等将来に向けた技術力の向上を図って下さい。

また、グループ全体では、洋上風力発電事業において、国内初となるJFEエンジニアリングのモノパイル工場が岡山県笠岡市に立ち上がります。その素材はJFEスチール西日本製鉄所(倉敷地区)で製造した大単重厚板「J-TerraPlate」を用い、JFE商事がサプライチェーンを構築し、風車建設のための作業台船はJMUが建造するという、グループ全体のシナジー創出が期待される取り組みです。その他の分野においてもこのようなグループ連携の取り組みや、DXによる外部への付加価値提供など新たなビジネス創出を加速して下さい。 また、今後さらに重要性が高まるD&Iや働き方改革をはじめとした人的資本経営にも積極的に取り組んでいきます。その推進や浸透には個人だけでなく役員・上司も含めた職場全体の意識を変えていく必要があると考えています。共に取り組んでいきましょう。

 

○安全
JFEグループでは全世界の様々な地域で事業を行っています。「安全はすべてに優先する」という基本姿勢のもと、そこで働く多様な社員の皆さんが安心して働けるよう、安全な作業環境の整備とDXなど最新技術を活用した設備の本質安全化を進め、労働災害の防止に努めて下さい。

 

結び

グループを取り巻く環境変化は激しさを増しておりますが、CN実現を含め、クリーンエネルギー中心の産業構造へと転換していくGX(グリーントランスフォーメーション)が進む今後の社会は、当社にとって多くのチャンスがあると捉えています。社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活の実現を目指して、JFEグループの持つ世界最高の技術を活かしてグループ一丸となって取り組んでいきましょう。 最後になりましたが、本年が皆さんとご家族にとって、健康で実り多い年となることを祈念して、新年の挨拶とします。