2025年 JFEホールディングス社長年頭挨拶
JFEホールディングス株式会社
代表取締役社長 北野 嘉久
新年にあたり、JFEグループで働く皆さんにご挨拶を申し上げます。
はじめに
本年は、新たに策定中の第8次中期経営計画(以下、8次中期)がスタートする年となります。第7次中期経営計画(以下、7次中期)は「豊かな地球の未来のために、創立以来最大の変革に挑戦」と位置づけ、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在としての地位を確立すべく、施策を推進してまいりました。今回の8次中期を立案するにあたり、まず10年先の長期ビジョンを描き、そのビジョンを達成するために次の3年間で何を実行していくのかを明確にしてゆく方針です。
足元の事業環境と今後のJFEグループの取り組み
我々を取り巻く足元の事業環境は、厳しい状況が継続しております。国内では人手不足や資機材高騰による建築プロジェクトの遅延や自動車会社の認証不正問題による生産下方修正、海外では中国における不動産業不況に端を発した国内経済成長の鈍化により鋼材の輸出が激増し、世界的に鋼材市況の下落を招いています。また中国における日系自動車は中国製EV車の販売攻勢で苦戦が続いています。このような外部環境の変化は当社グループの経営に大きな影響を及ぼしています。
また世界各地での紛争は終わりが見通せず、緊迫した国際情勢が継続する一方、保護貿易主義の傾向が強まっており、自由で開かれた貿易に対する懸念が高まってきています。
このような厳しい事業環境下ではありますが、当社グループでは、7次中期で掲げた取り組みを着実に進めてまいりました。鉄鋼事業では、2023年9月に京浜地区の上工程休止等の構造改革を完遂するとともに、高付加価値品の比率を高めて量から質への転換を進めてきました。また海外での成長を目指してインドでの電磁鋼板製造販売会社の設立を図るなど将来の成長のための布石も打ち始めました。エンジニアリング事業では海外での廃棄物処理事業や笠岡の洋上風力用モノパイル製造工場の立上げ、商社事業においては米州や豪州での薄板建材会社のM&A、セルビアでの電磁鋼板加工会社設立などを実施し事業拡大に努めてまいりました。
その結果、厳しい事業環境下においても一定の収益が上げられる体質になってきたもののその収益レベルはまだ不十分と言わざるを得ません。株式市場においてもJFEホールディングスの株価は低迷し、PBRは1倍に遠く及ばず、市場からの企業価値評価は低いと言わざるを得ないのが現状です。
これは、安定的に高収益(自己資本利益率 ROE10%以上)が継続できていないこと、カーボンニュートラルへの対応含めて将来の成長性が不透明であることなどが株価の重しになっていることが理由と思われます。将来に向けた成長戦略を描き、それを社員とともに成し遂げ、収益を確実に積み上げ、企業価値を上げることにより株主への安定配当と社員への賃金還元を実現していくことが経営者の責務であると考えております。
そこで長期ビジョンとして将来のありたい姿と具体的な方向性を掲げることとしました。長期ビジョン策定のポイントとしては、①収益倍増に向けた強靭な経営基盤の確立、特に攻めの成長戦略による各事業競争力強化、②2050年カーボンニュートラル達成に向けた超革新技術の開発の完了と実機化に向けた道筋の整理、が挙げられます。
また、先に述べたような厳しい環境においても十分な高い収益を安定して上げられる「強靭な収益体質」を確立するために足元3年間で何に取り組むのかという視点で8次中期計画を策定し、ステークホルダーの皆さまへしっかりとお示ししていきたいと考えています。
環境的持続性について
環境課題への取り組みも極めて重要なテーマです。
鉄鋼事業におけるCO2排出削減量の2024年度目標は、7次中期の取り組みが順調に進捗し、2013年度比18%の削減を達成できる見込みです。さらに、2030年度30%以上削減の目標達成に向けて重要な設備投資となる倉敷地区への大型電気炉導入を進めてまいります。
超革新技術の開発においては、本年中にカーボンリサイクル高炉をはじめとした実証試験設備の建設を終え、試験実施段階へとステージが上がります。技術開発を着実に進めるとともに、今後の開発の道筋を整理してまいります。
サーキュラーエコノミー(循環経済)や生物多様性の取り組みも重要度が増しています。サーキュラーエコノミーについては、グループの強みを活かして、限りある資源を無駄なく有効活用する取り組みを拡大していきます。例えば、エンジニアリング事業における廃棄物発電やリサイクル事業の拡大、鉄鋼事業におけるエコプロダクトの開発と販売拡大、商社事業におけるバイオマス燃料、スクラップなどの物流強化等、本年はこれらの取り組みを加速させ、日本の循環経済の構築を先導できるよう取り組んでまいります。また、生物多様性の保全や自然再興に寄与するプロセス・製品・技術開発を推進し、地域社会やサプライチェーンなど様々なステークホルダーの皆さまと連携し多様なアプローチで取り組みを進めます。
気候変動問題(カーボンニュートラル)を中心に、循環経済への移行、生物多様性の保全・自然再興(ネイチャーポジティブ)はそれぞれ密接に連関した大きな課題です。当社グループ全体で引き続き活動を推進してまいります。
結び
昨年4月にJFEホールディングス社長に就任して以降、国内・世界各地で活躍する当社グループ社員に接する機会が多くありました。鉄鋼、エンジニアリング、商社の3事業を中心としたこのJFEグループの存在は唯一無二であり、世界最高の技術を活かし、世界中の皆さんの豊かな暮らしに深く貢献できるものと考えています。「挑戦。柔軟。誠実。」というJFEグループ行動規範のもと、一丸となって取り組みを進めてまいります。
本年が皆さんとご家族にとって、健康で実り多い年となりますよう心から祈念し、新年の挨拶といたします。
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