循環型社会の実現

基本的な考え方

新興国の経済成長によって資源枯渇などの問題が一層顕在化することが予想されます。鉄は回収が容易で、リサイクル性に優れた素材であり、同じ材料製品の原料として無限にリサイクルが可能です(クローズド・ループ・リサイクル)。JFEグループは製鉄プロセスでの副産物の再資源化、工事現場での廃棄物削減、鉄スクラップのグローバル循環など、グループ内の事業それぞれの特徴を活かして資源使用量の削減や資源循環に貢献しています。また、鉄スクラップリサイクルやバイオマス燃料化・廃棄物発電など、生産工程と製品・サービスの各々で資源効率の向上を目指しています。


また、中核事業の鉄鋼製造プロセスにおいて、製品や設備の冷却・洗浄に大量の淡水を使用するため、水源やその周辺のステークホルダーへの影響を考慮した水資源の効率的な利用は重要な課題です。この課題に対応するため、製鉄所などでは使用した水を浄化することで可能な限り水を循環利用し、取水量を減らすための循環システムを構築しています。加えて、従業員に節水を呼び掛ける等、水使用量の削減と効率的利用により、継続的に環境負荷の低減を推進していきます。

体制

JFEグループは「グループサステナビリティ会議」のもと、JFEホールディングス社長を議長とする「グループ環境委員会」を設置し、環境目標の設定、達成状況のチェック、グループ全体の環境パフォーマンスの向上、その他環境に関する諸問題の解決に取り組んでいます。特に気候変動問題など、経営にとって重要な課題については、グループ経営戦略会議でも審議し、さらに取締役会への報告を行っています。取締役会は報告を受けた環境課題について議論することを通じ、監督しています。また、それぞれの事業会社・グループ会社でも専門委員会を設置し、企業単位の活動を進めています。

目標と実績

JFEグループは、資源の有効活用を製造業にとって重要な環境課題と認識しており、各社の事業特性に合わせた高い目標を設定し、実績を管理しています。2020年度までCSR重要課題としてKPIを設定し、毎年安定して目標を達成し、取り組みを確立してきました。引き続き、以下の高い目標を設定して、資源の有効活用に取り組んでいきます。


また、水資源の利用については、製造業にとって重要な環境課題と認識しており、中核事業である鉄鋼事業において大量に水を利用するため、水資源の循環利用率に対して高い目標を設定して実績を管理し、水使用量の削減に取り組んでいます。2020年度までCSR重要課題としてKPIを設定し、毎年安定して目標を達成し、取り組みを確立してきました。引き続き、以下の高い目標を設定して、水使用量の削減に取り組んでいきます。

2023年度の目標と実績および2024年度の目標
事業会社 2023年度の目標 2023の実績・取り組み 2024年度の目標
JFEスチール 副産物の再資源化率:99%以上 再資源化率:99.4% ダスト、スラッジなどの発生・排出抑制と再資源化継続して推進し、再資源化率90%以上を継続する
水資源の高効率利用の維持循環利用率:90%以上%以上 循環利用率:93.1% 循環利用を推進し水使用量の削減に取り組み、循環利用率90%以上を継続する
JFEエンジニアリング

建設現場でのリサイクル率

  • がれきリサイクル率:99.5%以上
  • 汚泥リサイクル率:95.0%以上
  • 産廃リサイクル率:85.0%以上

建設現場でのリサイクル率

  • がれきリサイクル率:97.8%
  • 汚泥リサイクル率:99.3%
  • 産廃リサイクル率:87.1%

建設現場でのリサイクル率

  • がれきリサイクル率:99.5%以上
  • 汚泥リサイクル率:95.0%以上
  • 産廃リサイクル率:85.0%以上

オフィス資源物再生資源化率

  • 横浜本社:98.0%以上

オフィス資源物再生資源化率

  • 横浜本社:97.7%

オフィス資源物再生資源化率

  • 横浜本社:98.0%以上
JFE商事

鉄スクラップのグローバルな資源循環

  • 2020年度取り扱い数量以上
    (2024年度目標:2020年度比5%増)
2020年度比:▲5%

国内向け数量は増加したものの、日本からのスクラップ総輸出量の減少から、海外向け販売は減少
鉄スクラップのグローバルな資源循環 2020年度比 5%増

国内外の調達ネットワークを強化し、JFEグループ向け及び国内外需要家向けに販売を伸ばし、目標値の達成に向けスクラップ取引の推進を図る。
副産物の最終処分量・再資源化率推移
  • 集計範囲:JFEスチールの国内連結子会社22社
工業用水受入量・循環率推移
  1. ※1工業用水循環率(%)=(総使用量-工業用水受入量)/総使用量×100
  2. ※2集計範囲:JFEスチールの国内連結子会社22社
廃棄物排出量の推移(現地工事部門)

製作所における産業廃棄物関連の定量データは以下をご参照ください。

取り組み

JFEグループの資源循環ソリューション

JFEグループでは、循環型社会の形成に向けてさまざまな側面からの取り組みを行っており、各社の事業特性に合わせた資源循環の目標を設定して活動を推進しています。製鉄所では、製鉄プロセスにおける原料や水などの資源の有効利用に加え、使用済みプラスチックを高炉原料として使用するなど、再生資源の利用を促進しています。さらに、製鉄プロセスから発生する副産物を有効利用する取り組み、鉄スクラップをグローバルに循環させる取り組みを行っています。また、鉄の高いリサイクル性を生かした商品開発を通じて、プラスチックごみ問題の解決に貢献する取り組みも推進しています。


エンジニアリング分野では、食品廃棄物や下水汚泥のバイオマス燃料化、廃棄物発電などのプラント・インフラ施設等の建設および、これら施設の運転、運営の受託による資源循環ソリューションを提供しています。さらに、ペットボトル、プラスチック等のリサイクル事業やエネルギー供給事業を展開し、サーキュラーエコノミーの推進に向けた取り組みを行っています。


JFEスチールおよびJFEエンジニアリングのリサイクル事業は以下をご参照ください。


資源循環に関する商品・技術の詳細は以下をご参照ください。

ST 副産物の発生・排出抑制と有効利用

鉄鋼スラグ(製鉄工程の副産物)や、高炉・転炉の鉄系ダスト、水処理スラッジなどの副産物については、再資源化率向上の目標を定め、発生・排出の抑制を推進しています。鉄分を多く含むダストやスラッジについては、製鉄原料への再利用を進めています。また、鉄鋼スラグについてはセメント材料や土木材料などで有効利用しています。さらに、環境修復材(生物付着基盤や海域環境改善材として有効に機能する「マリンストーン®」など)への活用を推進しています。その結果、2023年度のスラグ・ダスト・スラッジ再資源化率は99.4% となっており、再資源化率の目標値90%以上を達成し、今後も継続して達成していきます。


副産物関連の定量データは以下をご参照ください。

EN リサイクルの推進

JFEエンジニアリングにおける主要な廃棄物は、建設工事から排出されるがれきや汚泥などの建設廃棄物と、鶴見製作所、津製作所、笠岡モノパイル製作所から排出される産業廃棄物です。これらについて、環境目標とするリサイクル率を設定し、適切な分別の上でリサイクル率の高い処理業者へ委託するなどの取り組みにより、産業廃棄物の排出削減および資源循環を推進しています。また、2022年4月から施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」に対応して、環境目標にプラスチックのリサイクルなどに向けた取り組みを追加しています。


横浜本社では、オフィス資源物の再生資源化率の目標を設定し、リデュース(両面コピーの推奨)、リユース(ファイル専用回収箱、名刺ケース回収箱を設けて再利用を促進、ラベルプリンターカートリッジの回収)、リサイクル(ごみ分別の徹底による再資源化促進)の3Rへの取り組みを継続しています。また、JFEエンジニアリンググループでは、ペットボトルリサイクル事業や食品廃棄物リサイクル事業を通じて、循環型社会の実現に向けた取り組みを推進しています。


製作所における産業廃棄物関連の定量データは以下をご参照ください。

水資源の効率的利用

ST 水の循環利用目標の設定

JFEスチールでは、国内の7生産拠点のすべてで水の管理計画を策定し、水使用量を把握しており、循環利用率を高めることで、取排水量の低減、水資源の効率利用を推進しています。冷却等で大量に使用する水の循環利用の目標を90%以上と定めており、これは使用時の蒸発量を考慮すれば極めて高い水準です。使用した水は生物処理や化学処理等の徹底した浄化処理を行うことで循環率を高め、目標を継続達成しており、2023年度における工業用水の循環率は93.1%と高い水準を維持しています。

EN 水資源の効率的な使用

JFEエンジニアリングおよびグループ各社は、それぞれの事業拠点において水の効率的な使用に努めています。


水関連の定量データは以下をご参照ください。

2023年度の主な取り組み

ST リサイクル性の高いスチール製カップによるプラスチックごみ問題解決への貢献

JFE スチールは、鉄の特性を活かし、軽くて丈夫で、薄型で心地よい口当たりや冷涼感などを特徴とするリサイクル型スチールカップを提案しています。スチールカップは、鉄の高いリサイクル性を生かし、スチール製品として何度でも何にでも生まれ変わります。また、リサイクルが容易なスチールカップを使用することで、使い捨てプラスチックのごみ問題解決にも貢献できます。スチール製品(Steel)の良さを活かして、スタイリッシュ(Stylish)に地球環境に貢献できるように、という思いを込めたロゴ「Steelish®」を掲げ、リサイクル可能なスチール製品を使うライフスタイルおよびその提案活動を展開しています。


この活動では、2021年より「BETTER RECYCLE 湘南」プロジェクトを推進しています。本プロジェクトは、新製品の開発を通じて新しいライフスタイルを提案することで、消費者と一緒にプラスチック容器の使い捨て問題にアプローチし、問題解決に貢献する新しい試みです。(株)IBLCおよび「湘南スタイルmagazine」(発行:(株)EDITORS)をメンバーとするプロジェクトチームを立ち上げ、湘南エリアを活動の場とし、地元自治体やテイクアウト容器を提供する事業者の協力を得ながら、環境に優しい飲料用スチールカップの試作品構想を固めました。2022年11月には、神奈川県立辻堂海浜公園で開催された、国内初のゼロ・ウエストの実現と湘南の未来を考える「カーニバル湘南2022」で取り組みの紹介を行うなど各種イベントで採用されました。


2023年3月には、東京都目黒区で開催された中目黒の桜開花時期の“使い捨てプラスチックカップゼロ”を目指すイベント「ナカメチャレンジコップ2023」において、スチールカップが採用されました。アサヒユウアス(株)と(一社)ナカメエリアマネジメントが共催し、桜を楽しむと同時に、プラスチックごみ削減やフードロス削減などのサステナブルな取り組みを自ら実践してもらうきっかけとすることを目的に開催されました。


今後も鉄という素材を通じて、社会やお客様のニーズに応じたソリューションを提供することで、気候変動問題やプラスチックごみ問題などの環境課題に対する意識醸成やSDGsの目標達成に貢献していきます。

Steelish®ロゴ
リサイクル型スチールカップ

商品・技術(循環型社会の実現)

JFEグループでは循環型社会の実現に向けて事業活動における資源の有効利用だけでなく、自社の商品や技術による社会への貢献を目指しています。


鉄鋼事業においては、環境負荷の低減につながるエコプロダクト、エコプロセスの開発に加えて、生産プロセスで発生する副生品や社会活動で発生する廃棄物を有効に利用する技術、商品の開発を推進しています。エンジニアリング事業においては、新技術の研究開発と廃棄物発電やプラスチックリサイクル事業などを積極的に進めています。


循環型社会の実現に関する商品・技術の詳細は以下をご参照ください。