気候変動問題への取り組み
基本的な考え方
JFEグループは、気候変動問題を事業継続および中長期的な企業価値の向上に直結する極めて重要な経営課題と位置付けています。グループの温室効果ガス(GHG)排出量の99%以上を占める鉄鋼事業では、これまでにさまざまな省エネルギー・GHG排出削減技術を開発し、製鉄プロセスに適用することにより、低いレベルのGHG排出原単位で生産を行っています。
また、JFEグループは、お客様の使用段階で省エネルギーに寄与する高機能鋼材、再生可能エネルギーによる発電など、多数のGHG排出削減に貢献する商品や技術を開発・保有しています。今後さらにこれらのプロセスおよび商品の技術開発・普及を進めるとともに、これまで培ってきたさまざまな技術のグローバルな展開を当社にとっての機会と捉え、気候変動問題の解決に貢献していきます。
JFEグループは、これまでTCFD提言への賛同のもと、シナリオ分析を活用し、気候関連のリスクおよび機会の特定と、それを踏まえた戦略の策定を進めてきました。現在は、こうした取り組みを基盤として、ISSBによる気候関連開示基準をはじめとする国際的な枠組みの考え方との整合を図りながら、気候変動対応を経営戦略に反映しています。
さらに、JFEグループはカーボンニュートラルの技術開発のトップランナーとなることを目指し、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を掲げ、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指し、GHG排出量の削減およびGHG削減貢献に積極的に推進していきます。
一方で、気候変動を巡る事業環境は不確実性が高く、グリーントランスフォーメーション(GX)に係る投資の実行にあたっては、個別技術の開発状況に加え、電力や水素等のエネルギーインフラの整備状況、GX製品市場の成熟度、政府の支援策や制度設計の動向などを総合的に勘案し、経済合理性を見極めた上で意思決定し、推進していきます。
JFEグループ環境経営ビジョン2050
JFEグループは、主に鉄鋼事業を取り巻く環境変化への対応として事業構造改革を実施していく中で、地球規模の気候変動問題の解決を通じた持続可能性の向上を目指しています。
2021年に、2050年カーボンニュートラルの実現を目指した「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定しました。
本ビジョンでは、これまでTCFD提言を踏まえて進めてきた気候関連課題への対応を基盤としつつ、国際的な気候関連開示の枠組みの考え方との整合性を図りながら、気候変動問題の解決に向けて体系的かつ戦略的に取り組んでいきます。鉄鋼事業においては、2013年度比のGHG排出量を2024年度に18%削減、2027年度に24%削減し、2030年度には30%以上の削減を目指しています。なお、2024年度には23%削減を達成し、当初目標を上回る進捗となりました。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、当社独自技術である「カーボンリサイクル高炉」をはじめとする超革新技術に挑戦するとともに、複数の技術開発を並行して進めることで、あらゆる可能性を模索しながら取り組みを推進していきます。さらにエンジニアリング事業においては再生可能エネルギー発電やカーボンリサイクル技術の拡大・開発、鉄鋼事業においては、高機能鉄鋼製品の供給等を通じて社会でのGHG削減貢献を拡大しています。加えて、グループ全体で洋上風力発電ビジネスの事業化も積極的に取り組んでいます。
GHGの排出を最小限に抑えて、高品質かつ高機能な鉄鋼製品を大量に生産できるプロセス技術の開発は、今後の社会の持続的な発展にとって不可欠な取り組みです。カーボンニュートラルの実現に向けたさまざまな施策を実行する上では、研究開発や新たな設備への更新に多額のコストが伴うことは避けられず、社会全体でのコスト負担のあり方についての検討や政府などによる支援が必要と考えています。
「2050年カーボンニュートラルの実現」という高い目標に向けて、脱炭素インフラの整備とグローバルなイコールフッティングの実現を前提としつつ、世界の競合他社に先んじて、必要な脱炭素技術を可能な限り早い時期に確立することを目指します。
【JFEグループ環境経営ビジョン2050】
- 気候変動問題を極めて重要な経営課題ととらえ、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。
- 新技術の研究開発を加速し、超革新技術に挑戦します。
- 社会全体の温室効果ガス削減に貢献し、それを事業機会ととらえ、企業価値の向上を図ります。
- TCFDの理念を経営戦略に反映し、気候変動問題解決に向けて体系的に取り組みます。
【2027年GHG排出量削減目標(第8次中期経営計画における取り組み)】
- 2027年度のGHG排出量を2013年度比で24%削減(鉄鋼事業)
【2030年GHG排出量削減目標】
- 2030年度のGHG排出量を2013年度比で30%以上削減(鉄鋼事業)
【2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み】
-
鉄鋼事業のGHG排出量削減
- カーボンリサイクル高炉+CCUを軸とした超革新技術開発への挑戦
- 水素直接還元法の技術開発
- 業界トップクラスの電気炉技術を最大活用した高品質・高機能鋼材製造技術の開発、高効率化等の推進・早期実装
- トランジション技術の複線的な開発推進(転炉スクラップ利用拡大、低炭素エネルギー転換等)
-
社会全体のGHG削減への貢献拡大
- エンジニアリング事業:再生可能エネルギー発電、カーボンリサイクル技術の拡大・開発(GHG削減貢献量目標 2027年度1,350 万トン、2030年度2,000万トン、2035年度3,000万トン)
- 鉄鋼事業:エコプロダクトやエコソリューションの開発・提供
- 商社事業:バイオマス燃料や鉄スクラップ等の取引拡大、エコプロダクトのサプライチェーンマネジメント(流通加工体制)強化等
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洋上風力発電ビジネスへの取り組み(グループ全体で洋上風力発電事業化を推進)
- エンジニアリング事業:着床式基礎(モノパイル、ジャケット等)の製造
- 鉄鋼事業:西日本製鉄所倉敷地区の第7連鋳機を活用した大単重厚板の製造
- 商社事業:鋼材、加工品のサプライチェーンマネジメント構築
- 造船事業:洋上風力発電浮体の製作および作業船の建造
- グループ全体:リソースを最大限活用したオペレーション&メンテナンス
| (注) | 1.カーボンリサイクル高炉:高炉から排出されるCO2をメタン化し、還元材として高炉に吹き込む技術 |
| 2.CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization | |
| 3.トランジション技術:カーボンニュートラル社会への移行を進める技術 |
JFEグループの気候変動問題対応の戦略
JFEグループでは、気候変動に関連するリスクと機会を整理し、経営戦略に反映しています。第8次中期経営計画(対象期間2025~2027年度)においても、これを経営の重要課題の一つとして位置付け、取り組みを推進しています。
また、2050年カーボンニュートラルの実現を目指す「JFEグループ環境経営ビジョン2050」および、「JFEビジョン2035」に基づき、カーボンニュートラルに向けた技術開発のトップランナーを目指す取り組みを事業戦略に組み込んでいます。これらの戦略は、シナリオ分析に基づく影響評価により特定したリスクと機会を踏まえて策定しており、意思決定にも活用されています。
さらに、種々の開示媒体や説明会などを通じて、JFEグループの気候変動問題への取り組みを発信していくことで、ステークホルダーの皆様との信頼関係の一層の強化を図っていきます。
関連資料は以下をご参照ください。
- リスクと機会の特定・評価(TCFD推奨シナリオ分析)
- JFEグループ環境経営ビジョン2050説明会資料
- JFEグループ長期ビジョン「JFEビジョン2035」・第8次中期経営計画(2025~2027年度)
- JFEグループ環境経営戦略説明会
鉄鋼事業におけるカーボンニュートラル実現に向けた取り組み
推進体制
JFEスチールでは、GX戦略本部を設置し、GXの実現に向けて全社一体となって戦略を立案、推進しています。同本部はGX企画部※1と、技術開発を担うカーボンリサイクル開発部、新還元プロセス開発部、新溶解プロセス開発部で構成されます。GXに係るさまざまな取り組みはGX戦略本部でステアリングし、重要な判断はグループ経営戦略会議および取締役会で審議し、決定しています。JFEスチールは下記の体制でカーボンニュートラルに関する技術開発や投資の実行・管理等に加え、GXスチール「JGreeX®」※2の販売拡大に向けた市場形成や行政との連携強化などの諸課題に対応していきます。
- ※12026年4月にGX企画部とGXインフラ開発部を統合。GX戦略をより一体的に推進していくことを目的に、GXインフラ開発部が担っていた行政やコンビナート企業との対外的な連携機能をGX企画部に一元化
- ※2 GXスチール「JGreeX®」を通じたGXスチール市場の形成の取り組み
JFEスチールのカーボンニュートラル推進体制
鉄鋼事業における環境課題の取り組みと経済的合理性の両立に向けた考え方
GXスチール※1(グリーン鉄)の市場は2050年に約5億トンまで拡大する潜在的な需要があり※2、将来的に需要サイドのGX製品へのニーズ増加が見込まれます。日本政府も2030年代前半に自動車、建築、公共工事、造船、産業機械等向けの年約300万トン以上の規模の高品質なGXスチール市場を国内外で獲得することを目標に設定しています※2。また、国内外の競合他社においてもGXスチールの生産に向けた技術開発や投資を進める動きがみられます。
このような中、JFEスチールは鉄鋼業界のカーボンニュートラルのトップランナーになるべく、グリーンイノベーション基金事業を活用し、超革新技術(カーボンリサイクル高炉、水素直接還元法、高効率・大型電気炉)の開発を推進しています。その中で、トランジション期においては電気炉の活用が唯一の手段と考えており、早期に革新電気炉へのプロセス転換を図るべく政府との連携強化を図り、CAPEX支援と税制支援を具現化していきます。2025年4月、政府の「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業」による補助金の交付決定を受け、2027年度に改修時期を迎える倉敷地区第2高炉の代替として革新(高効率・大型)電気炉の導入を他社に先駆けて機関決定しました。電気炉鋼材の分野においても、当社の競争力の源泉である技術力(プロセス技術/製品・成分特許など)を高め、既存電気炉では製造が困難であった高品質・高機能鋼材を供給することは世界のトップレベルの鉄鋼会社としてプレゼンスを維持・向上する上でも重要です。JFEスチールは、低炭素で高品質・高機能鋼材の国内生産・技術基盤を構築し、国内GXスチール市場でトップシェア獲得を目指していきます。
他方、GXスチール需要は黎明期にあります。JFEスチールは、GX投資回収の予見性確保に向けて、環境価値の見える化、優先調達や購入支援などのGXスチール市場形成に向けた官民挙げての対策を提案し、具現化していきます。
鉄鋼事業のGHG排出量削減目標の達成に向けた取り組み
JFEグループは、2050年カーボンニュートラル実現に向け超革新技術の開発を含む複線的な取り組みを進めており、鉄鋼事業において、2027年度24%、2030年度30%以上(2013年度比) のGHG削減目標を定めています。2030年までをトランジション期とし、「減らす」取り組みを中心とした低炭素技術の適用拡大によりGHG削減目標達成に向けた計画を確実に実行し、2030年以降のイノベーション期への移行準備として超革新技術の研究・開発を加速します。イノベーション期においては、当社独自技術であるカーボンリサイクル技術を適用したカーボンリサイクル高炉や直接還元製鉄法の早期実装、CCUの適用拡大等による「賢く使う」取り組みを進めます。また、地域社会やコンビナート各社と一体となった、カーボンニュートラル社会の構築に向けてCCSによる「固定化」にも取り組み、これら3つの取り組みによりカーボンニュートラルを実現します。
カーボンニュートラルに向けたロードマップ
JFEグループは、2025年5月に成長戦略のための第8次中期経営計画(2025~2027年度)を策定するとともに、同月開催したJFEグループ環境経営戦略説明会において、2030年度までのGHG排出削減計画を公表しました。鉄鋼事業において、2030年度のGHG排出量30%以上削減(2013年度比)という目標の達成に向け、その直線的経路上の中間目標として、2027年度にGHG排出量24%削減(2013年度比)を新たに掲げています。さらには、JFEグループの目指す姿を示す長期ビジョン「JFEビジョン2035」を策定しました。「JFEビジョン2035」では、カーボンニュートラルに向けた技術開発のトップランナーを目指す方針を事業戦略に組み込み、鉄鋼事業における2050年のカーボンニュートラル達成に向けた段階的かつ戦略的な取り組みを推進しています。
2030年度の目標達成に向けては、大幅な排出削減効果が期待される倉敷革新電気炉や高炉還元鉄への投資など、主要なGX投資は概ね機関決定済です。一方、2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、グリーンイノベーション基金などの公的支援を活用し、革新的な低炭素技術の研究開発に取り組んでいます。これらの技術は、2035年頃までの技術開発完了を目標としており、カーボンリサイクル高炉や直接還元法での水素活用や電気炉による高品質・高機能製品の製造方法開発など、従来の製造プロセスを根本から見直す超革新技術の確立を目指しています。
超革新技術開発の進捗に加え、カーボンニュートラルの実現には、エネルギーインフラの整備状況が重要な要素となります。水素供給網の構築や脱炭素電力の安定的な確保など、外部環境の変化を踏まえた対応が不可欠です。また、GXスチールの市場ニーズや顧客の環境意識の高まりも、鉄鋼製造プロセスの転換を判断する上での重要な指標となります。これらの要素を総合的に勘案しながら、最適なタイミングで鉄鋼製造プロセスの転換を図っていきます。
2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ
- ※1MCH(メチルシクロヘキサン):水素キャリアの一つであり、トルエンに水素を付加させて作る液体
- ※2CCS:Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素の回収・貯留)
JFEグループの戦略とパリ協定との整合性
経済産業省が策定・公表した「トランジションファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップはパリ協定に基づき定められた国の排出量削減目標と整合しており、パリ協定とも整合しています。2040年代以降、水素供給インフラやCCUS等が整備されることを前提に革新技術の導入により脱炭素を加速させ、カーボンニュートラルを実現する道筋が描かれています。
2022年に当社グループは公募形式によるトランジションボンドを発行し、その評価過程で、当社グループの取り組みが経済産業省のロードマップと整合することが第三者機関から認証されていることから、当社グループの取り組みはパリ協定と整合したものと考えられます。
指標と目標(鉄鋼事業におけるGHG排出量削減計画と実績)
国内鉄鋼事業のGHG排出削減
JFEグループは、鉄鋼事業において、2027年度24%、2030年度30%以上(2013年度比)のGHG削減目標を定めています。計画達成に向けて、JFEスチールは2025年10月に西日本製鉄所倉敷地区に革新電気炉の建設を開始しました(2028年度稼働予定)。本革新電気炉を稼働させることで、GXスチール「JGreeX®」※の大量供給体制を構築し、GHG排出量の削減を着実に実行していきます。また、2026年4月には東日本製鉄所千葉地区において、ステンレス製造用電気炉を稼働させました。国内外のグループが一丸となって気候変動問題への対応を事業戦略に組み込むことで、TCFDの理念を経営戦略に反映した取り組みを体系的に推進していきます。
GHG排出量削減と合わせて、社会全体の脱炭素化貢献のため、JFEスチールは「JGreeX®」の供給能力を300万トン/年まで拡大する目標も掲げています。
国内鉄鋼事業:GHG排出削減計画
日本鉄鋼連盟の計画との連動
JFEスチールは、所属する日本鉄鋼連盟にて策定された、「カーボンニュートラル行動計画」の目標達成に取り組んでいます。「カーボンニュートラル行動計画」では2030年度のエネルギー起源CO2排出量を2013年度比30%削減を目標としており、JFEスチールでも積極的な活動を推進しています。
日本鉄鋼連盟は、これらの取り組みに加え、最終的な「ゼロカーボン・スチール」の実現を目指した2030年以降の「長期温暖化対策ビジョン」を2018年に策定し公表しました。JFEスチールもこの長期ビジョンの策定に中核的な立場で参画しました。さらに、2021年に「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を発表し、日本鉄鋼業として早期のゼロカーボン・スチールの実現に向けて、果敢に挑戦することを宣言しました。
JFEグループとしては、「2030年度のGHG排出量を2013年度比で30%以上削減、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す」という鉄鋼事業における排出削減目標を掲げています。
国内鉄鋼事業:GHG排出量実績
JFEスチールGHG排出量推移
- ※2021~2024年度は、日本鉄鋼連盟カーボンニュートラル行動基準で算定
- ※2024年度以降は、GHGプロトコル基準にて算定
JFEグループのGHG排出関連の定量データは以下をご参照ください。
2030年度GHG排出量削減目標の達成に向けた取り組み
鉄鋼事業において2030年度GHG排出量30%以上削減(2013年度比)の達成に向け、2030年までをトランジション期と位置付け、省エネルギー・高効率化、低炭素原燃料の活用、電気炉技術の活用を3本柱として取り組みを推進しています。2024年度までに約0.4兆円のGHG削減投資を認可・推進しており、西日本製鉄所倉敷地区の革新電気炉プロジェクトや、東日本製鉄所千葉地区における還元鉄・スクラップ活用拡大など、2030年度の削減目標達成に寄与する主要な投資案件は概ね機関決定しています。加えて、第8次中期経営計画においてGHG削減投資を着実に実行し、各施策の効果を積み上げることで、2027年度および2030年度の削減目標を目指しています。今後も必要な投融資の認可・実行を進めるとともに、2050年カーボンニュートラル実現に向けた超革新技術の開発と社会実装に取り組んでいきます。
既存プロセスにおける取り組み
【製鋼におけるスクラップ利用拡大】
JFEスチールは、環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス「DRP®」(Double-slag Refining Process、以下、「DRP」)の導入を推進し、2021年に全地区で設備実装を完了させ、転炉でのスクラップ利用量拡大によるGHG排出量の削減を実現しました。
「DRP」では、溶銑中の珪素(Si)を熱源として最大限活用することで、転炉でのスクラップ投入量を拡大することが可能となります。当技術の導入により溶銑配合率を従来プロセスの90%から82%に低減することができます。
当社は「DRP」を全地区に導入し、転炉でのスクラップ利用量拡大を図っています。2024年度実績で、約134万トン/年のGHG排出量削減を達成しました。今後のさらなるスクラップ利用拡大のための技術開発を進めていきます。
環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス「DRP®」:Double-slag Refining Process
【高炉におけるHBI利用】
JFEスチールは、高炉への還元鉄(HBI:Hot Briquetted Iron)の活用拡大を進めています。還元鉄は、あらかじめ鉄鉱石から酸素の一部を除去した鉄源であり、高炉内で必要となる還元反応を低減できることから、コークス使用量とCO2排出量の削減に寄与します。当社は、2024年度 「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」 の支援を受け、東日本製鉄所千葉地区第6高炉への還元鉄活用のGX投資(約60億円)を機関決定しました。引き続き中東における還元鉄製造プロジェクトを推進するとともに、東日本製鉄所千葉地区を中心に高炉での還元鉄利用技術の開発・実装を進めています。高炉プロセスの強みである高品質鋼材の製造能力を維持しながら、還元鉄を活用することで既存設備を有効活用した実効性の高いGHG削減を実現し、排出削減目標達成に貢献していきます。
電気炉プロセス技術の開発
JFEスチールは、革新電気炉プロセス技術の開発・社会実装を進めています。電気炉プロセスは、鉄スクラップや還元鉄を主原料として鋼材を製造するプロセスであり、高炉-転炉法と比較してCO2排出量を大幅に削減できることが特長です。さらに将来的には、水素還元鉄の利用拡大や脱炭素電力の活用により、さらなるGHG排出量削減が期待されています。
一方で、従来の電気炉プロセスでは、スクラップ由来の不純物(トランプエレメント)の影響や生産性の面から、高品質・高機能鋼材の製造に制約があることが課題とされてきました。当社は、グリーンイノベーション基金事業を活用した試験電気炉や研究所での開発を通じて、高品質・高効率溶解技術や不純物影響低減技術の開発を進めてきました。2025年には千葉地区の試験電気炉で要素技術の検証を完了し、高品質鋼材製造に必要な技術確立の目途を得たことから、現在は革新電気炉への実装に向けたエンジニアリング段階へ移行しています。
こうした成果を踏まえ、当社は西日本製鉄所倉敷地区において革新電気炉プロジェクトを推進しています。導入する革新電気炉は、年間約200万トンの生産能力を有する高効率・大型電気炉であり、当社独自技術と革新プロセス技術を組み合わせることで、既存の電気炉では製造が困難であった電磁鋼板や高張力鋼板などの高品質・高機能鋼材の大量生産を可能とします。また、還元鉄を最大50%使用し、年間約260万トンのCO2削減効果を見込んでいます。
倉敷地区の革新電気炉は、2030年度GHG排出量削減目標達成に向けた中核プロジェクトとして建設を進めています。設備本体に加え、プロセス転換に必要となる電力・LNGなどのエネルギー供給設備や、還元鉄・スクラップ利用拡大に対応する港湾設備などの関連インフラ整備も含めて事業化を推進しており、現在、稼働に向けた具体化とエンジニアリングを着実に進めています。今後も、高品質GXスチールの安定供給体制の構築とCO2排出量の大幅削減を両立し、高品質GXスチール市場におけるメインプレーヤーを目指していきます。
【仙台製造所における電気炉製造能力の増強】
JFEスチールは、仙台製造所の電気炉の強靭化、DX等による能力増強対応および荷役設備増強によって、2024年度に仙台の電気炉製造能力の増強(約14万トン/年)を完了しています。これにより、約10万トン/年のGHG排出量の削減を見込んでいます。
【東日本製鉄所(千葉地区)のステンレス製造における電気炉の稼働】
JFEスチールは、東日本製鉄所(千葉地区)第4製鋼工場に新たにアーク式電気炉の導入を進め、2026年4月に稼働を開始しました。同工場ではステンレス鋼を製造しており、高炉からの溶銑と自所発生スクラップを主な原料としています。新たな電気炉の導入により、これまで以上にスクラップを有効活用できる体制を整えました。電気炉の導入により、高炉溶銑の一部をスクラップに代替することで、製鋼プロセスにおけるCO2排出量の削減を図っています。スクラップ溶解能力は従来比最大約6倍に拡大し、GHG排出量については、最大で年間約45万トン/年の削減効果を見込んでいます。さらに、スクラップ活用による原料構成の見直しや操業の効率化を通じて、資源循環の推進と事業競争力の強化を進めています。
設備概要
| 設備投資額 | 約180億円 |
|---|---|
| 稼働日 | 2026年4月29日 |
| スクラップ溶解能力 | 約30万トン/年 |
| GHG排出量削減効果 | 最大約45万トン/年 |
千葉地区第4製鋼電気炉の外観
【西日本製鉄所(倉敷地区)への革新電気炉の導入】
JFEスチールは2025年4月、2027年度に改修時期を迎える西日本製鉄所倉敷地区の第2高炉を革新電気炉にプロセス転換することを機関決定し、既存設備の撤去を進め、2025年10月下旬より基礎杭打設工事に着手しました。導入する革新電気炉は世界最大規模であり、既存大型電気炉では製造し得なかった高品質・高機能鋼材の大量供給体制を他社に先駆けて実現し、国内GXスチール市場でトップシェアを獲得することを目指しています。本プロジェクトは、高炉プロセスの一部を電気炉プロセスへ転換するものであり、2024年度までに認可したGHG削減投資の中核を担う案件として位置付けています。導入する革新電気炉は、高効率・大型電気炉と独自の高品質鋼製造技術を組み合わせた世界最高水準の設備であり、既存の電気炉では製造が困難であった電磁鋼板や高張力鋼板などの高品質・高機能鋼材の大量供給を可能とします。
革新電気炉の年間生産能力は約200万トンで、還元鉄を最大50%使用する計画です。スクラップと還元鉄を活用した電気炉一貫プロセスにより、高品質鋼材の製造とCO2排出量削減を両立し、年間約260万トンのGHG排出量削減効果を見込んでいます。
現在、プロジェクトは政府支援の活用を前提に具体化を進めており、設備本体の建設に加え、電力・LNGなどのエネルギー供給設備や還元鉄・スクラップ利用拡大に対応する港湾設備など、関連インフラの整備もあわせて推進しています。今後も、高品質GXスチールの安定供給体制の構築とGHG排出量の大幅削減を実現し、高品質GXスチール市場におけるメインプレーヤーを目指していきます。
倉敷地区の革新電気炉および関連設備の建設イメージ図
設備概要
| 投資規模 | 3,294億円(うち政府支援上限額:1,045億円) |
|---|---|
| 投資内容 | 革新電気炉、炉外精錬設備、冷鉄源物流設備、岸壁整備、電源系統増強 等 |
| 生産能力 | 約200万トン/年 |
| 生産開始 | 2028年度第一四半期 |
| GHG排出量削減効果 | 約260万トン/年 |
- ※自己負担分はGX推進機構による債務保証制度等を活用
- ※本制度を活用した国内初のトランジションローンを締結(2026年3月)
倉敷地区の革新電気炉および関連設備の建設イメージ図
【高品質鋼材の製造方法開発の実証試験】
NEDOのグリーンイノベーション基金(GI基金)事業による支援をいただいて、電気炉の溶解電力低減および冷鉄源(スクラップや還元鉄)の高速溶解を実現するプロセスを開発しています。実証試験では以下の項目を検証します。
- 還元鉄の予熱・投入適正化方法
- 熱付与バーナーの使用方法
- 溶鋼撹拌の適正化方法
2025年度のステージゲート審査では開発の進捗と成果が評価され、NEDOより、事業継続の承認を得ました。今後も高品質鋼材の製造技術の実用化に向けた開発を推進していきます。
電気炉での研究開発項目について
還元鉄確保に向けた事業化検討
2030年までのトランジション期において、不足することが想定される国内スクラップを補い、電気炉での高品質鋼製造や、高炉法でのGHG排出量削減のためには直接還元鉄の活用が有効と考えられます。
JFEスチールは、アラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼最大手のEMSTEEL、伊藤忠商事(株)との間で低炭素還元鉄のサプライチェーン構築に向けた詳細な事業化調査を進めています。事業スキーム決定後、UAEに設立する合弁会社のもと直接還元鉄の生産を開始し(年間250万トン程度)、当社が最大のオフテイカーとして、西日本製鉄所倉敷地区の革新電気炉向けを中心に長期安定的に直接還元鉄を調達していきます。
- EMSTEEL概要
会社名:EMSTEEL
代表者:HE Engineer Saeed Ghumran Al Remeithi(Group CEO)
事業内容:鉄鋼業
アラブ首長国連邦(アブダビ)にて、岸田文雄内閣総理大臣(当時)立会いのもと行われた覚書交換式の様子(2023年7月17日)
GXスチール「JGreeX®」を通じたGXスチール市場の形成の取り組み
名称の由来:JFE + Green + GX
社内の関連部署から広く公募し、「JFEスチールが提供するGXスチールである」と伝わりやすいことから、この名称に決定しました。
ロゴのデザインについて:
「X」の文字に矢印を組み合わせ、「カーボンニュートラル実現に向け前進していく」という意思を表現しています。
鉄鋼業は製造プロセス由来のCO2排出量が大きく、かつHard−to−Abate産業であり、現時点では高炉プロセスから直ちに大幅なGHG削減やゼロエミッション鋼材を安定的かつ大量に供給することは困難です。しかしながら、お客様からのこのような鉄鋼製品に対するニーズは高まっています。
日本鉄鋼連盟は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、追加性を伴う削減プロジェクトによって創出したGHG削減量を任意の鋼材に割り当てるGXスチールの考え方をGXスチールガイドライン※1にまとめました。本ガイドラインでは、GXスチールを「企業単位での追加的な(Scope1の)直接的排出削減行動による大きな環境負荷の低減があり、排出削減行動に伴うコストを上乗せした場合には、一般的製品よりも価格が大きく上昇する鋼材」と定義しています。このような鋼材は、経済産業省の「GX推進のためのグリーン鉄研究会」において、「GX推進のためのグリーン鉄」として政府による優先的調達や購入支援などの政策が重点的に講じられることが明記されています※2。JFEスチールは本ガイドラインに基づくGXスチールとして「JGreeX®」の供給を開始し、サプライチェーンにおける脱炭素化ニーズに対応しています。
「JGreeX®」におけるGHG削減量および製品排出原単位については、認証機関である日本海事協会による第三者認証を取得しており、2024年度実績として約134万トンのGHG削減量が認証されています。JFEスチールは削減量の算定方法や環境価値の割当方法に関する透明性の確保を重視しており、第三者認証を通じて信頼性向上に努めています。また、GXスチール市場の健全な発展には、GHG排出量や削減量の算定方法、環境価値の帰属方法について、GHGプロトコルおよびISOといった国際的なルールと整合させることが重要であると認識しており、これらの取り組みに積極的に取り組んでいます。
こうした透明性向上の取り組みとあわせて、JFEスチールはGXスチール市場の形成・拡大にも取り組んでいます。2025年度は、自動車、造船、建築、産業機械など幅広い分野で「JGreeX®」の採用が拡大し、販売数量も拡大しています。また、GXスチール市場のさらなる拡大に向けては、補助金や公共調達などの政策を活用した支援も重要であると考えており、需要家に加えて行政との対話を積極的に進めています。これらの国際的なルール形成や政策提言に関する取り組みの詳細は、「政策エンゲージメント」をご参照ください。
一方で、GXスチール市場は依然として発展途上にあり、脱炭素に必要な設備投資や操業コストの増加を環境価値として適切に評価する市場形成が重要な課題となっています。革新電気炉の超革新技術の実装には巨額の投資が必要であり、その実現には需要家によるGXスチールの選択に加え、国際的なルール整備や政策支援を含めた社会全体での価値評価の仕組みが不可欠です。
JGreeX®採用概要
JGreeX®供給概要
| 供給開始時期 | 2023年度上期 |
|---|---|
| 2024年度以降供給可能数 | 50万トン程度 |
| 対象商品 | 当社が製造する鉄鋼製品 |
| 認証機関 | (一財)日本海事協会 |
JGreeX®販売実績(2024年9月以降)
| 適用分野 | 内容 | 時期 | URL |
|---|---|---|---|
| 建築 | 建築用高力ボルト | 2025年3月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/03/250326.html |
| 天井クレーン | 2025年7月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/07/250707.html | |
| 造船 | 内航一般貨物船 | 2025年6月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/06/250612.html |
| ガット船 | 2025年12月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/12/251202-2.html | |
| プラント | 産業用大型変圧器 | 2025年2月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/02/250203.html |
| 産業機械 | 発動機表面実装機 | 2024年9月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2024/09/240903.html |
| 鋼管 | 鋼管・管材商社向け販売 | 2025年1月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/01/250129.html |
| 鋼板・鋼管 | 製造事業者向け供給覚書 | 2024年9月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2024/09/240924.html |
| 自動車 | 自動車部品 | 2025年4月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/04/250424-2.html |
| 2025年11月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2025/11/251111.html | ||
| 2026年1月 | https://www.jfe-steel.co.jp/release/2026/01/260129.html |
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
JFEグループでは、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」で公表した2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、カーボンリサイクル高炉(CR高炉)、水素製鉄(直接還元)、電気炉法(高効率・大型電気炉)といった超革新技術の開発に複線的に取り組んでいきます。なかでも、CR高炉とCCUの組み合わせにより、高効率に大量の高品質・高機能鋼材を製造する事が可能な高炉法でCO2が再利用できます。余剰のCO2についても、メタノールなどの基礎化学品の製造、地中への貯留(CCS)等によって、実質CO2排出ゼロを目指すことができます。
NEDO製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト(GREINS)に関する実証試験
JFEスチールは日本製鉄(株)、(株)神戸製鋼所、(一財)金属系材料研究開発センターとともにコンソーシアムを結成し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト(GREINS)」を共同で受託し、2050年のカーボンニュートラルに向けた取り組みを推進しています。
JFEスチールは、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた超革新技術の開発を推進すべく、カーボンリサイクル高炉をはじめとした本プロジェクトに関する実証試験の各種設備を東日本製鉄所(千葉地区)に集中して建設し、効率的な開発を推進することで、コンソーシアムメンバーと共同で超革新技術の開発を加速させます。
【実証試験の実施計画内容】
- カーボンリサイクル試験高炉 (内容積 150m3)
2023年現地工事開始、2025年5月稼働、2026年度までに実証試験完了予定 - 水素直接還元小型ベンチ試験炉
2023年現地工事開始、2024年12月稼働、2026年度までに実証試験完了予定 - 試験電気炉(10t 試験炉)
2023年現地工事開始、2025年2月稼働、2025年度末実証試験完了
2026年6月にステージゲート審査を通過しNEDOより事業継続承認
それぞれの詳細内容は、以下に紹介します。
カーボンリサイクル高炉
【CR高炉の技術的な特徴】
CR高炉は、高炉から発生するCO2ガスをメタネーション技術によりカーボンニュートラルメタンに変換し、これを高炉の還元材として繰り返し利用する超革新的な高炉技術です。CR高炉およびその他の手段を用いて、通常高炉に対してCO2排出量を50%削減し、CCU/CCUSを活用することによりカーボンニュートラルを目指すものです。さらに、通常高炉で吹き込んでいた空気を純酸素に換えることにより、空気に含まれる窒素の加熱に使っていたエネルギーをメタン加熱に使い、プロセスの熱効率を高めていきます。また、窒素が無くなることでCO2の分離が容易になり、メタネーション向けにCO2を分離する設備が小型化・効率化でき、CCUSを効率的に進めることが可能となります。
【実証試験の概要】
高炉から発生するガスに含まれるCO2を、水素を用いてメタンに変換し、還元材として高炉で利用することでカーボンを繰り返し利用し、CO2を削減するプロセスを開発します。実証試験では以下の項目を検証します。
- 多量のメタンを酸素とともに吹込む操業方法
- 循環ガスを使用する加熱バーナーの活用方法
- 高炉ガスに含まれるCO2をメタンに変換するメタネーション設備の連動操業方法
カーボンリサイクル高炉の概要
直接水素還元技術の開発(カーボンリサイクル直接還元プロセスの開発)
JFEグループが取り組むカーボンニュートラルに資するもう一つの製鉄技術として水素還元製鉄技術があります。水素還元製鉄技術は、現在実用化されている直接還元製鉄で用いられている天然ガスを水素に100%置き換えることによって、鉄鉱石を還元する時にCO2を排出させないことを目指したものです。
【新たな原料処理技術の開発】
直接還元製鉄の原料には高品位鉱石しか使えないという問題点があります。高品位鉱石は生産量が少なく、今後世界的に直接還元製鉄が拡大していく局面では入手が困難になると予想されています。
この問題に対し、JFEスチールは鉄鉱石のサプライヤーの一つであるBHP社との協業により、生産量が大きく、現在高炉用原料として使われている低・中品位鉱石の新たな原料処理技術を開発する計画です。これにより低・中品位鉱石を直接還元製鉄用原料として戦力化し、原料ソースの拡大を目指します。
【原料の予熱、水素の加熱技術の開発】
水素還元の課題の一つに、水素による鉄鉱石の還元が吸熱反応であること、すなわち反応が進むためには熱を外部から与える必要があることが挙げられます。熱が不足した状態では、還元反応が十分に行われない可能性があるため、原料や水素ガスを加熱する技術を開発する必要があります。
【実証試験の概要】
直接還元炉から排出されるCO2をメタネーションにより水素を用いてメタンに変換し、還元材として直接還元炉で利用することでカーボンを繰り返し利用し、CO2を削減するプロセスを開発します。実証試験では以下の項目を検証します。
- 排ガス中のCO2をメタネーションによりリサイクルする最適な方法
- 低品位鉱石の使用方法
カーボンリサイクル直接還元プロセスについて
【グリーン水素を使用した還元鉄試作進捗】
NEDOのグリーンイノベーション基金事業「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクト(以下、本プロジェクト)の「水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術の開発/直接水素還元技術の開発」において、日本で初めて※1グリーン水素※2を用いた還元鉄の試作に成功しました。
この試作は、NEDOの水素社会構築技術開発事業※3で建設した水素製造設備からグリーン水素の供給を受け、本プロジェクトで建設した直接水素還元の試験設備を使用したもので、グリーン水素の製造技術開発と利用技術開発が連携することにより実現しました※4。
今後は、引き続き直接水素還元技術の開発を推進し、社会実装を目指します。
図1 グリーン水素により試作した還元鉄※4
- ※12026年7月現在、NEDO調べ
- ※2再生可能エネルギーを用いて水を電気分解し、製造過程でCO2を排出せずに生成される水素
- ※3水素社会構築技術開発事業「CO2フリーの水素社会構築を目指したPower to Gasシステム技術開発」
- ※4日本初、グリーン水素を使用した還元鉄試作に成功しました
CCUSの取り組み
【CO2を用いたメタノール合成における最適システム開発】
JFEスチールは、(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)と共同で、「CO2を用いたメタノール合成における最適システム開発」の研究開発を推進しています(図)。西日本製鉄所福山地区において2022年度より試験設備建設の現地工事を開始し、2023年度稼働、2026年度末までに実ガス実証試験を完了予定です。低コスト型のCO2分離と高効率メタノール合成を柱に最適な全体システムの構築を図ります。当研究開発により、カーボンリサイクル高炉などの製鉄プロセスと組み合わせた大規模CCUプロセスの実用化を目指していきます。この成果は、NEDOの委託業務(JPNP16002)の結果得られたものです。
CO2を用いたメタノール合成フロー
【製鋼スラグの高速多量炭酸化による革新的CO2固定技術の研究開発】
JFEスチールは、国立大学法人愛媛大学と共同で、NEDO委託事業として「製鋼スラグの高速多量炭酸化による革新的CO2固定技術の研究開発」も推進しています。これまでにプロセス原理を確認し、東日本製鉄所千葉地区において実用化に向けた実証試験設備を建設して2025年度から試験を開始しました。当研究開発により、カーボンリサイクル高炉などの製鉄プロセスや近隣の火力発電所などから発生するCO2をスラグに固定するとともに、高温スラグの顕熱を回収する技術および道路の路盤材等として利用する技術を検証していきます。
製鋼スラグの高速多量炭酸化フロー
- ※本技術開発は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した委託事業「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発」として実施
【CCS実現に向けた検討】
(独)エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の令和8年度「先進的CCS事業船舶輸送案件に係る分離回収・液化・一時貯蔵・出荷設備の設計作業等」に関する委託調査業務の公募において、JFEスチールが参画する「水島クラスター」(対象:西日本製鉄所 倉敷地区)が選定されました。水島コンビナートに位置するCO2排出事業者間での連携を通じてCCS実現に向けた検討を推進しています。また、西日本製鉄所福山地区、東日本製鉄所千葉地区でも当社独自の検討を引き続き行います。2025年度は、分離回収、液化、ユーティリティ供給等、各地区において必要となる設備の構成や運営方針の検討を実施しました。政府支援を前提に、事業実施に向けた検討および準備を進めていきます。
水島クラスターでの検討状況
【水島コンビナートにおける企業間連携の取り組み】
JFEスチール、三菱ガス化学(株)(以下、三菱ガス化学)、三菱ケミカル(株)(以下、三菱ケミカル)の3社は、⽔島コンビナート(岡⼭県倉敷市)において、製鉄プロセスから発⽣する副⽣ガスを用いてメタノールを製造し、メタノールからプラスチック原料となるプロピレンを製造する実証実験(以下、本実証実験)に関する覚書を締結しました。⽔島コンビナートにおけるGHG 排出削減のため、製鉄プロセスから発⽣する副⽣ガス中のCO2を有効活用して化学品を製造するという、Hard−to−Abate 産業(排出削減が困難な産業)が連携する新たな取り組みとして、2026年度の実証開始を目指しています。将来的にこの取り組みを鉄鋼と化学の連携による炭素循環のコンセプトに発展させることにより、従来の化⽯資源由来の化学品製造に⽐較して、GHG 排出量を削減することを目指します。
水島コンビナートにおける企業間連携
関連する取り組み一覧
| 鉄鋼事業のCO2排出量削減 | ||
|---|---|---|
| カーボンニュートラル | 主な取り組みについて | JFEグループ環境経営戦略説明会 |
| 実証試験について | JFEスチールのGXへの挑戦~カーボンニュートラルの実現に向けて~ | |
| カーボンリサイクル高炉 | カーボンリサイクル高炉技術 | JFEグループ環境経営戦略説明会「CR高炉の開発進捗」 |
| チャレンジゼロ「『カーボンリサイクル高炉+CCU』を軸とした超革新的技術開発への挑戦」 | ||
| CCU/CCUS | チャレンジゼロ「CO2有効利用技術開発」 | |
| 水素還元製鉄向け原料処理技術の開発 | 水素直接還元技術 | JFEグループ環境経営戦略説明会「直接水素還元法の開発進捗」 |
| 原料サプライヤーとの協業 | 「BHP社と製鉄プロセスの低炭素化に向けた取り組みに関する覚書を締結」 | |
| 鉄スクラップ・還元鉄利用拡大 | 環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス「DRP®」 | 製鋼プロセスでのスクラップ利用拡大によるCO2排出量削減について |
| 鉄鋼業界のグリーン化に向けた低炭素還元鉄の サプライチェーンの構築について | ||
| 還元鉄確保に向けた事業化検討 | 低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築について | |
| 電気炉プロセス技術の開発 | JFEスチール カーボンニュートラル戦略説明会「高効率・大型電気炉技術開発」 | |
| 電気炉プロセスの導入について | 東日本製鉄所(千葉地区)第4製鋼工場電気炉稼働および竣工式について | |
| 革新電気炉(高効率・大型電気炉)の導入決定について | ||
| CO2有効利用・貯留技術 | CO2有効利用技術 | 石炭由来のCO2を利用して有価物を製造する新プロセスがNEDO委託事業に採択 |
| 実用化試験 | カーボンニュートラルの実現に向けたCO2有効利用技術の実用化試験について | |
| 水島コンビナートにおける炭素循環社会の実現に向けたサプライチェーンの実証について | ||
| CCSバリューチェーン構築 | JOGMECと「先進的CCS事業」に係る業務委託契約を締結~水島コンビナートにおいて、国内最大規模のCCS拠点形成を目指す~ | |
| マレーシアCCS事業化に向けた日本起点のCCSバリューチェーン構築共同検討に中国電力と日本ガスラインが新たに参加 | ||
インターナルカーボンプライシング(ICP)の導入
鉄鋼業は、Hard−to−Abate産業であり、カーボンニュートラルの達成にはGHG削減技術の導入が不可欠です。JFEスチールは2050年カーボンニュートラルに向けた技術開発のトップランナーとして、これらの技術の開発・実装を通じて、2050年カーボンニュートラルを達成することを目標としています。
近年、投資家やESG評価機関をはじめとするステークホルダーからは、将来のカーボンプライシング導入や脱炭素社会への移行に伴うリスクや機会を、企業がどのように経営判断へ反映しているかについての関心が高まっています。
JFEスチールでは、脱炭素技術がもたらす価値や将来発生し得る炭素コストを経営判断に反映するための参考指標として、インターナルカーボンプライシング(ICP)を活用しています。
JFEスチールではGX投資は、大きく2種類が存在していると考えています。①既存技術による継続的なGHG排出削減投資と、②革新電気炉やCCS等の革新的なGHG削減技術の開発・実装に係る投資です。これらは投資規模や投資回収期間、将来の事業環境に対する前提が大きく異なり、短中期的に発生し得る炭素コストと、2050年カーボンニュートラルを見据えた長期的な炭素価値の双方を適切に評価するために、それぞれの特性に応じて異なるICPを参照しています。
①の既存技術によるGHG排出削減投資については、現在の制度環境の下で想定される炭素コストを反映する観点から、GX-ETS価格(2026年度上下限価格の平均:3.0千円/t-CO2※1)を参照しています。これにより、省エネルギー投資などの経済性評価において、将来発生し得る炭素コストを考慮しています。
一方、②の革新的なGHG削減技術の開発と実装など、追加的なGX投資については、技術開発に伴うコスト負担や投資規模が大きく、回収期間が長期に及ぶことから、現時点の炭素価格のみでは将来的な価値を十分に評価することが困難です。そのため、2050年ネットゼロ社会の実現に向けて必要とされる将来の炭素価値を示す参考指標として、IEAが公表する2030年炭素価格(140US$/t-CO2※2)を参照しています。
ただし、これらのICPは、脱炭素に向けた社会の動向やGXスチール※3の需要環境に加え、GX投資に対する政府支援など、将来の収益性とリスクの見通しを考慮した上で柔軟に見直し、投資判断を行っています。JFEは、将来のカーボンプライシング導入によるコスト影響や脱炭素化による価値をICPという形で可視化し、事業性評価や投資優先順位の検討に反映するための参考指標として活用しています。
JFEスチールは、ICPを活用した経営判断を通じて、GHG削減技術を実装し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。
- ※1経済産業省 令和8年度の参考上限取引価格及び調整基準取引価格(1.7~4.3千円/t-CO2)
- ※2IEA Net Zero Roadmap: A Global Pathway to Keep the 1.5℃ Goal in Reach (2023Update)
- ※3 GXスチール「JGreeX®」を通じたGXスチール市場の形成の取り組み
社会全体のGHG削減貢献拡大の取り組み
JFEグループでは、洋上風力発電事業や再生可能エネルギー関連分野など、GHG削減に貢献するさまざまな取り組みを、エンジニアリング事業を中心に推進しています。また、電磁鋼板や超高張力鋼板(ハイテン)など、エコプロダクトの需要が拡大している分野においては、各事業会社などと連携し、グループ全体でその効果を最大限発揮できるように取り組んでいます。
エンジニアリング事業におけるGHG削減貢献の取り組み
炭素を排出しない再生可能エネルギーを利用した発電プラントの需要は今後ますます増加すると考えられます。JFEグループでは、エンジニアリング事業において、バイオマス発電※1・地熱発電※2・太陽光発電※3・陸上風力発電※4などの設計・調達・建設・運営を事業として展開しています。さらに、資源循環と有効活用の観点から、廃棄物処理施設でも発電量増加への取り組みを進めています。
加えて、これら再生可能エネルギーをメイン電源とした電力の小売事業、ならびに再生可能エネルギーを活用したエネルギーの地産地消に焦点を当てた「地域新電力※5」の設立・運営の支援や、同一企業グループ内の電力を全国の事業所・関連会社で融通する「多拠点一括エネルギーネットワークサービス(JFE-METS)※6」の拡大にも積極的に取り組んでいます。
カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、水素・アンモニア・CO2等を安全かつ効率的に大量に輸送する技術や、廃棄物処理施設の排ガスからCO2を分離・回収して利用するプロセスの実証にも取り組んでいます。
マテリアルリサイクル分野では、選別されていない使用済みプラスチックから特性に応じてマテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクル原料とする廃プラスチックリサイクル※7や、回収したペットボトルを再生してボトルの原料とするボトルtoボトル(BtoB)※8、経年劣化により廃棄される太陽光パネルの再資源化などに取り組んでいます。
- ※1バイオマス発電事業
- ※2地熱発電システム
- ※3太陽光発電事業
- 太陽光発電
- ※4陸上風力発電事業
- ※5地域新電力支援
- ※6JFE-METS
- ※7廃プラスチックリサイクル:プラスチックリサイクル推進に向けた取り組み
- ※8ボトルtoボトル:ペットボトルの水平リサイクル
指標と目標(エンジニアリング事業におけるGHG削減貢献の計画と実績)
JFEエンジニアリングでは、再生可能エネルギー発電の拡大、プラスチックや食品リサイクルの建設・運営など、事業を通じた社会全体のGHG排出削減への貢献を進めており、2025年度は1,291万トン(2024年度比7.5%貢献拡大)のGHG排出削減に貢献しました。今後もさらに事業拡大を進め、2027年度に1,350万トン、2030年度に2,000万トン、さらに2035年度3,000万トンのGHG排出削減に貢献することを目指しています。
なお、JFEエンジニアリングのGHG排出量については、KPIで自社工場、オフィスにおけるCO2削減目標として、2025年度40%削減(2013年度比)を掲げ、2021年度より順次、横浜本社へのオンサイト型太陽光PPAおよびゼロエミプラン電源の導入、津製作所へのCO2低排出電力の導入などを行い、2025年度は79.5%削減(2013年度比)しました。あわせて、製作所およびオフィスにおける省エネルギー活動を推進しています。今後も、使用電力への再エネ電源の活用などを含め、環境に配慮した事業活動に取り組んでいきます。
エンジニアリング事業におけるGHG削減貢献計画
- ※1 集計範囲:JFEエンジニアリング
- ※2 集計範囲:JFEエンジニアリング、ドイツの子会社スタンダードケッセル・バウムガルテ(SBG)
- ※3 集計範囲:J&T環境、JFEアーバンリサイクル
- ※4 その他:消化ガス、太陽光、風力、廃熱回収、燃料転換、エネルギーサービス、バイオマスサイロ、ロジスティクス商品
JFEエンジニアリングのGHG削減貢献相当量(2025年度)
JFEエンジニアリンググループのGHG排出関連の定量データは以下をご参照ください。
EN JFEエンジニアリングの事業を通じた取り組み
JFEエンジニアリングは、「くらしの礎を『創る』『担う』『つなぐ』-Just For the Earth」というパーパスを掲げ、「Waste to Resource」※1、「カーボンニュートラル」※2の重点分野を中心にGHG削減貢献量の拡大を推進しています。
JFEエンジニアリングの気候変動への取り組みとして、事業を通じた「カーボンニュートラル」分野の取り組みについて、以降で例をいくつか紹介します。また食品リサイクル・バイオガス発電、廃棄物発電についても、サーキュラーエコノミー分野の取り組みであると同時にカーボンニュートラル分野の取り組みでもあります。
- ※1主に廃棄物発電やリサイクル(食品、プラスチック)等を推進
- ※2主に再エネ発電や水素/アンモニア・CCUS等を推進
EN “エネルギーの森”実証事業(持続可能なバイオマス燃料サプライチェーン構築の実証研究)
JFEエンジニアリングは、北海道由仁町と連携して、令和9年度末まで“エネルギーの森”実証事業を推進しています。この実証事業は、令和5年8月3日に「新たな燃料ポテンシャル(早生樹等)を開拓・利用可能とする“エネルギーの森”実証事業(2023年度)(採択事業名称:JFEの森NEXTGATEプロジェクト)」として、JFEエンジニアリングがNEDOから採択を受けたものです。具体的には、由仁町有地を活用し、亜寒帯気候に適正のある早生樹(クリーンラーチ、オノエヤナギ)の植林・育林を通して“エネルギーの森”大規模創生の先導研究に取り組んでいます。
由仁町は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「由仁町ゼロカーボンシティ」を宣言しており、「くらしの礎を『創る』『担う』『つなぐ』―Just For the Earth」をパーパスに掲げる当社は、由仁町とともに、脱炭素社会の実現・地球温暖化防止に寄与する事業の実現に向け尽力していきます。
EN アクアコネクトなみえ「請戸川水力発電所」の発電事業について
JFEエンジニアリングが東京発電(株)、請戸川土地改良区(福島県双葉郡浪江町)とともに出資・設立した事業会社「アクアコネクトなみえ(株)」が、2024年5月に請戸川水力発電所で発電事業を開始し、現在稼働しています。同発電所は、JFEエンジニアリングが手掛ける初の水力発電事業で、福島県双葉郡浪江町にある大柿ダムから南相馬市小高区、双葉郡浪江町および双葉町へ送水する農業用水を活用したものです。
大柿ダムの麓に水車・発電機を設置し、ダムの水位差で生じるエネルギーを利用して発電するもので、発電した電力は全量「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」を活用して売電しています。アクアコネクトなみえ(株)は、本発電所の安全・安定運転に取り組むとともに、本事業を通じて、請戸川地区の営農支援、カーボンニュートラルや持続可能な社会の実現に貢献していきます。
EN 地域新電力支援
JFEエンジニアリングでは、地域に存在する風力や地熱などの再生可能エネルギーを有効利用するための仕組みづくりや、廃棄物発電など、JFEエンジニアリングが建設した再生可能エネルギープラントからの電力を地域の公共施設などに供給するための仕組みづくりを行い、エネルギーの地産地消を推進しています。
JFEエンジニアリングの子会社であるアーバンエナジー(株)(Urban Energy Corporation、URC)は、地域の脱炭素化やエネルギーコストの安定化を目指す地域新電力事業を、設立から運営まで一貫してサポートします。電力小売事業で培った豊富な経験とノウハウを活かし、安定的かつ効率的な事業運営を実現することで、持続可能なまちづくりに貢献します。
地域新電力スキームイメージ
地域新電力支援実績
EN SAF合成プロセスの開発
JFEエンジニアリングは、国立大学法人富山大学(以下「富山大学」)と共同で、航空分野の脱炭素化に期待されている持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel: SAF※1)を触媒で合成するプロセスを開発しています。
合成プロセスは、一酸化炭素(CO)と水素(H₂)の混合ガスからSAFを合成するFischer-Tropsch(FT)合成※2であり、富山大学の椿教授が開発した触媒※3※4のSAF合成性能を高めました。この触媒はSAFに適した液体炭化水素の収率※5が50%以上となる高い性能を持つことから、生産性の高いSAF合成プロセスの実現が期待されます。
従来のFT合成触媒では、得られる炭化水素を水素化分解※6によりSAFに適した炭素数に変換することが必要となり、この水素化分解でのロスも含めるとSAFの収率は25%程度に留まります。一方、今回新たに開発した触媒を使用したFT合成は、多額の設備投資が必要な水素化分解プラントと水素の新規投入が不要になるため設備コストが大幅に削減できるだけでなく、FT合成のみのプロセスでSAFを従来比2倍以上の収率で製造することが可能になります。
現状国内外のSAF製造の原料は廃食油が中心ですが、食用油資源の供給不足の観点からバイオマスや都市ごみなどの廃棄物へ多様化していき、長期的には発電所や工場から排出され回収したCO2と再エネ由来などの水素(H2)を合成して製造される合成燃料が重要な位置付けを占めると予想されています※7。これらの原料からSAFを製造するには、FT合成が不可欠であり、そのFT合成に今回の新触媒が活かされます。
JFEエンジニアリングは富山大学とともに、本触媒によるSAF合成プロセスのさらなる開発を継続し、SAFの普及拡大を通じて航空分野の脱炭素化の実現に貢献したいと考えています。
- ※1持続可能な航空燃料。廃食油原料のHEFA、バイオエタノール原料のATJ、廃棄物等のガス化ガスを原料とするFT合成など様々な検討が進行中
- ※2一酸化炭素と水素の混合ガスから合成軽油など石油代替燃料およびアルコール、オレフィンなど基礎化学品を合成する触媒
- ※3出典:“Integrated tuneable synthesis of liquid fuels via Fischer-Tropsch technology”, Jie Li, Yingluo He, Li Tan, Peipei Zhang, Xiaobo Peng, Anjaneyulu Oruganti, Guohui Yang, Hideki Abe, Ye Wang, Noritatsu Tsubaki.,Nature Catalysis, Vol.1, 787-793, 2018
- ※4出典:“Clever chemistry offers new source of jet fuel”, Nature, Vol. 561, 286, 2018(ネイチャー誌社説)
- ※5原料ガスに含まれる炭素のうち、目的の炭化水素(本開発では炭素数8以上16以下の液体炭化水素)に変換された炭素の割合。触媒の性能を記述する指標となる
- ※6ゼオライト触媒を用い、水素を添加することで、炭素数20以上の固体炭化水素(ワックス)の鎖構造を切断し、炭素数の小さい液体炭化水素に変換する処理
- ※7出典:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第61回会合)資料
新触媒プロセス
FT合成によりSAFを製造するプロセス
洋上風力発電事業への取り組み
JFE グループでは、洋上風力発電事業への取り組みを主要施策の一つとして掲げています。エンジニアリング事業を主体として、グループ内で多様な事業を有し、それぞれが連携してシナジーを創出し、新たな付加価値を提供できることは JFE グループの強みです。具体的には、洋上風力発電の着床式基礎(モノパイル式、ジャケット式)の製造、さらには O&M※事業を事業化し素材から基礎製造・O&Mまでグループ一貫でサプライチェーンを構築していきます。引き続きグループ総合力を活かして事業化に取り組み、JFE グループのカーボンニュートラルに向けた取り組みの推進、さらには政府目標であるカーボンニュートラル実現に大きく貢献していきます。
- ※オペレーション&メンテナンス。補修や分析技術を応用
洋上⾵⼒発電ビジネスの事業化推進
JFEグループ各社の技術
| カテゴリー | 会社 | 内容 |
|---|---|---|
| 基礎構造 | JFEエンジニアリング | 着床式基礎(モノパイル、ジャケットなど) |
| ジャパン マリンユナイテッド | 浮体式基礎(セミサブ型) | |
| JFEスチール | 高品質・大単重厚鋼板、高強度鋼(HBLシリーズによる軽量化) | |
| JFE商事 | 着床式基礎の洗掘防止材の製造・販売 | |
| 施工 | ジャパン マリンユナイテッド | SEP船(作業船) |
| JFEエンジニアリング | JFE-RAPID(ケーブル敷設工法) | |
| 電力貯蔵用蓄電池システム | ||
| ジェコス | 大型鋼構造物用架台 | |
| JFEスチール | 天然石代替材(鉄鋼スラグ活用) | |
| O&M (運用および保守点検) |
JFEエンジニアリング | 遠隔監視・操作技術 |
| JFEアドバンテック | 振動計測機器・システム、海洋モニタリング機器(水質・海況) | |
| ジャパン マリンユナイテッド | オフショア支援船(作業船) | |
| JFEプラントエンジ | 風力発電機メンテナンス(診断・補修) | |
| JFEテクノス | 陸上風車の計画・建設・運用保守技術 | |
| JFEテクノリサーチ | 腐食、疲労、振動等設備の評価解析、余寿命診断 大型構造物 強度・耐久性試験、評価技術 |
|
| サプライチェーン | JFE商事 | 洋上風力プロジェクトの案件遂行の最適化に貢献 |
EN 国内唯一のモノパイル製造拠点
JFEエンジニアリングでは、岡山県笠岡市で洋上風力発電の基礎構造部材であるモノパイルを製造する拠点として笠岡モノパイル製作所を完成させ、2024年4月に稼働を開始しました。モノパイルは、直径約10m、鋼板板厚100mm前後、長さ100mに及ぶ超大型鋼構造物であり、国内唯一の製作所となります。当製作所は、広大な敷地と直接出荷可能な岸壁を持つとともに、大口径用の曲げ加工機械や極厚板用の溶接機械等の最新設備の導入、津製作所での大型鋼構造物製造経験を踏まえた効率的な製造プロセスにより、生産効率を追求しました。2025年12月には秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖における洋上風力発電事業向けの国産モノパイル製造を受注し、2026年2月には同事業向けモノパイルの生産を開始しました。また、2026年6月には笠岡モノパイル製作所で太陽光発電コーポレートPPAサービスの運用を開始し、再生可能エネルギー由来の電力を活用したモノパイル製造を進めています。フル稼働時は、年間最大10万トンの生産量を予定しており、洋上風力分野における国内サプライチェーンの構築、そしてカーボンニュートラル実現に大きく貢献するものと考えています。
笠岡モノパイル製作所の概要
| 建設地 | 岡山県笠岡市 (JFEスチール西日本製鉄所福山地区内) |
投資規模 | 400億円程度(工場建屋、機械設備、岸壁整備等)
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|---|---|---|---|
| 建設開始 | 敷地面積 | 約20ha(保管エリア含む) | |
| 生産開始 | 生産能力 | 年産8〜10万トン程度(約50セット) | |
| 出荷岸壁長 | 200m(岸壁全長400m) | 岸壁水深 | -11m |
EN 浮体式基礎製造事業への参入に向けた取り組み
JFEエンジニアリングは、洋上風力発電の着床式基礎構造物であるモノパイル製造に加え、将来的に導入拡大が期待される浮体式基礎製造事業への参入に向けて経済産業省の「令和7年度GXサプライチェーン構築支援事業Ⅲ(浮体式等洋上風力発電設備)(以下、「本補助金」)」に申請し、採択されました。
当社は本補助金を活用し、市場の状況を見ながら必要時期に津製作所(三重県津市)を拠点とした設備投資を行い、浮体式基礎を年間24基以上量産する体制の構築を目指します。
津製作所は、国内最大級の海洋ドックならびに広大な屋外ヤードと、半世紀にわたる橋梁および鋼構造物製造で培った確かなノウハウと技術力を保有しており、こうした強みを活かすことであらゆる浮体基礎デザインに対応可能なメーカーとして日本の洋上風力産業を主導・牽引し、カーボンニュートラル社会の早期実現に貢献していきます。
EN 洋上風力発電の統合遠隔管理システムを用いたO&M事業への参入
JFEエンジニアリングは、1996年から25年以上、陸上風力発電所(25サイト/131基)のEPC、機器供給から保守に関するビジネスを行ってきました。この陸上風力発電の豊富な経験・知見と、JFEグループ各社が保有する技術を最大限に活用して、洋上風力発電のO&M事業を進めていきます。
2023年10月には国内初の一般海域案件である富山県入善沖の洋上風力発電設備(3基/最大出力7,495kW)における20年間のO&M業務を開始しました。本契約では洋上風力発電において初めて統合管理システムによる遠隔監視を行っており、入善沖での実績を着実に積み上げるとともに、当社独自の技術・ノウハウの継続的な進化を目指します。
また、風力発電のブレードに対して音と動画の組み合わせによる異常検知技術を東京科学大学と共同で世界で初めて開発しました。風車を稼働させたままブレードの点検を行うことで、点検コストの削減と早期異常発見による安定稼働の実現に貢献します。
EN 浮体式洋上風力発電の低コスト化に係る実証研究
JFEエンジニアリングは、当社が参画するコンソーシアム※1を通じて、NEDOが公募した「グリーンイノベーション基金※2事業/洋上風力発電の低コスト化/浮体式洋上風力実証事業(フェーズ2)」に、「低コスト化による海外展開を見据えた秋田県南部沖浮体式洋上風力実証事業」(以下、本事業)を共同で提案し、採択されました。
本事業では、今後の浮体式洋上風力発電の導入拡大に向けた国際競争力のあるコスト水準で商用化する技術の確立を目標としており、当社が参画するコンソーシアムは秋田県南部沖の沖合約25km、水深約400mの海域に、1基あたり15MW超の風力発電機2基を設置し、2029年10月の実証運転開始を予定しています。なお、本事業の期間は2024年7月から2031年3月です。
- ※1コンソーシアム構成企業:丸紅洋上風力開発(株)、東北電力(株)、秋田県南部沖浮体式洋上風力合同会社、ジャパン マリンユナイテッド(株)、東亜建設工業(株)、東京製綱繊維ロープ(株)、関電プラント(株)、JFEエンジニアリング(株)、中日本航空(株)
- ※22050年カーボンニュートラルの実現に向け、野心的な目標にコミットする企業等に対して、最長10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する、NEDOに造成された基金
本事業の概要(予定)
| プロジェクト名 | 低コスト化による海外展開を見据えた秋田県南部沖浮体式洋上風力実証事業 |
|---|---|
| 実証海域 | 秋田県南部沖※沖合約25km、水深 約400m |
| 風車出力 | 15MW超 |
| 風車基数 | 2基 |
| 浮体形式 | セミサブ浮体 |
| 事業期間 | 2024年7月~2031年3月 |
ST 風力発電支持構造物向け最大板厚130mmの厚鋼板を開発、経済産業省の性能評価完了
JFEスチールは、風力発電の支持構造物(モノパイル、ジャケット、風車タワー等)に使用可能な、最大板厚130mmの厚鋼板を開発し、経済産業省において性能評価を完了しました※1。これにより、国内洋上風力案件で板厚100mmを超える鋼材の使用が可能となりました。
近年、風力発電用風車の大型化が進んでおり、特に洋上風力発電においては今後1基あたり10数MW以上の発電能力を持つ風車が主力になります。一方で、日本の風力発電の支持構造物にはこれまで板厚100mmを超える鋼板の使用は認められておらず、こうした大型風車に対しては板厚がより厚い鋼板の開発が強く求められてきました。
このようなニーズに対応するため、当社は風力発電支持構造物に用いられるJIS SM520と同等の強度を有する最大板厚130mmの厚鋼板を開発しました。今回開発した厚鋼板は風力発電用大単重厚鋼板「J-TerraPlate®」※2のラインナップにも含まれ、溶接工数の削減などを通じて大型風車の導入に大きく貢献できる厚鋼板になります。すでに国内洋上風力案件への適用に向けて複数の事業者から問い合わせを受けており、協議を進めています。
- ※1経済産業省ウェブサイト:JFEスチール株式会社の風力発電設備支持構造物用溶接構造用圧延鋼材 JFESM520BTMC/Wおよび JFESM520CTMC/Wに係る性能評価の通知について
- ※2風力発電用大単重厚鋼板「J-TerraPlate™」の初採用について(2023年8月3日)
SH 洋上風力発電向け洗掘防止材の製造・販売
JFE商事は、秋田県の採石事業者、建設事業者、金融機関との合弁による洋上風力発電向け洗掘防止材の製造販売会社「JFE商事秋田オフショアマテリアルズ(株)」(以下、JAOM)を秋田県男鹿市に設立しました。
着床式洋上風力発電では、モノパイルを海底地盤に打設すると、波浪や潮流によりモノパイル周辺の海底地盤が浸食される「洗掘」が発生し、風車が傾斜する可能性があります。JAOMは、洋上風力発電の普及が進む秋田県に拠点を構え、地元天然石とJFEスチールの人工石材※を材料とした洗掘防止材を製造・在庫し、工期に合わせてジャストインタイムで供給していきます。
また、漁礁・藻場形成といった用途への鉄鋼スラグ製品・石材製品の利用拡大を通じ、海域環境の再生や地球温暖化の抑制に寄与する事業にも取り組み、本事業を通じて日本の洋上風力発電産業の発展、カーボンニュートラルや持続可能な社会の実現に貢献すべく活動していきます。
- ※ 鉄鋼製造プロセスから発生する副産物である製鋼スラグと高炉セメントの原料である高炉スラグ微粉末と水などを練混ぜ、水和固化させて製造した人工石材。鉄分を多く含み、海藻などの生物付着性に優れる特徴を持つ。JFEスチール製造の人工石材(フロンティアロック®)
洗掘防止材のイメージ図
SH 洋上風力発電向けのサプライチェーン構築
世界共通の課題である気候変動問題に対し、各国でカーボンニュートラルへの取り組みが拡大しており、日本では2050年カーボンニュートラル達成に向け、2025年に閣議決定された第7次エネルギー計画において、日本の目標として、2040年度の温室効果ガス73%削減、電源構成の再エネ比率40~50%、風力発電比率は2023年度の1.1%に対し4~8%程度という見通しを立てています。
洋上風力発電においては、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWの案件形成を導入目標とされており、案件形成が進んでいます。また、GI基金による浮体式洋上風力発電の実証事業が選定されるなど国際競争力ある技術の大量導入に向けた取り組みも進んでいます。
JFE商事では、洋上風力発電産業が先行する台湾において、風車基礎設備を製造する現地企業と協業し、基礎設備向け鋼材サプライチェーンでの実績を積み重ねています。今後は、その知見を活かし、日本の洋上風力発電産業においても、国産化・地域経済に貢献するサプライチェーンを構築し、お客様の需要に対応することで、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
GHG削減に貢献するエコプロダクト/エコソリューション
JFEグループでは、GHG削減に貢献する多様なエコプロダクトやエコソリューションを提供しています。これらの製品やサービスは環境に配慮した技術革新を通じて、資源の効率的な利用エネルギーの最適化を実現し、GHGの削減に貢献しています。
また、JFEスチールにおいては自社技術や操業改善ノウハウを活用してお客様にソリューションを提供するビジネス「JFE Resolus®(レゾラス)」を展開し、お客様とともに発展することを目指しています。
ST エネルギー転換を支えるアンモニアタンク用鋼板の供給拡大
JFEスチールが業界トップクラスの受注実績を誇る船舶用の液体アンモニアタンク向け低温用鋼板の受注量が、このたび累計で5万トンに達しました。
脱炭素社会実現に向けた全世界的な取り組みが進む中、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアは、日本のグリーン成長戦略において火力発電燃料や船舶燃料としての利用が期待されています。アンモニアの活用にはサプライチェーンの構築が急務であり、そのためアンモニアの貯蔵用タンクの需要が高まっています。
アンモニアを貯蔵・船舶輸送する際には液化されますが、液体アンモニアは貯蔵用タンクの鋼板に応力腐食割れを引き起こすリスクがあります。JFEスチールでは、このリスクに対応するため、IMO・IGCコード※1に準拠した日本海事協会が認定するアンモニア仕様低温用鋼※2の製造を2020年に開始しました。
当社では、独自のTMCP※3技術を適用した、多様な用途や仕様※4に対応できるアンモニア仕様低温用鋼を取り揃えています。また、倉敷・福山・京浜の3地区の厚板工場で製造体制を整え、造船分野の需要増に対応するとともに、エネルギーなどの新分野も含めてさらなる拡販を目指していきます。
- ※1International Maritime Organization(国際海事機関)、International Gas Carrier Code(液化ガスのばら積み輸送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則)
- ※2日本海事協会 鋼船規則K編N編 KL24B-440U、KL27-440U、KL33-440U、KL37M-440Uに定められている通り、実際の降伏値が 440N/mm²以下の細粒鋼を使用しなければならない
- ※3Thermo Mechanical Control Process(熱加工制御)。鋼材の圧延過程において所要材質性能を確保するために、スラブ加熱~圧延~冷却の各工程の温度あるいは圧下率を厳密に管理する製造方法。規定の強度を保ちつつ、降伏値のばらつきを抑えることに有効
- ※4大入熱溶接用やPWHT(Post Weld Heat Treatment溶接後熱処理)仕様など
ST 脱炭素社会を支えるアンモニアインフラ保全技術の開発
JFEスチールは、(株)IHI、(一財)日本海事協会、国立大学法人東北大学、国立大学法人東京科学大学の4機関とコンソーシアムを結成し、NEDOから公募された「先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」に対し、「燃料アンモニア貯槽・輸送設備のSCC※1 可能性評価ツール開発」(以下、本研究)を共同提案し、2025年5月に採択され、このたび、NEDOからの業務委託の契約に至りました。
脱炭素社会実現に向けた全世界的な取り組みが加速する中、燃焼してもCO2を排出しないアンモニアは、国内のグリーン成長戦略において、火力発電燃料や船舶燃料としての利用が期待されており、燃料アンモニア貯槽・輸送設備の安全かつ合理的な運用が重要です。一方で、燃料アンモニアは貯蔵・輸送する際に液化されますが、液体アンモニア中では鋼材表面に応力腐食割れ(以下、SCC)が発生するリスクがあるため、合理的かつ実用的なリスク評価に基づいた検査と保全が必要です。そこで本研究では、液体アンモニア中での鋼のSCCメカニズムを解明し、それに基づいてSCC発生の可能性を簡便かつ的確に行うことができるプログラムを試作します。本研究完了後には、本研究で試作したプログラムについて広く関係者から意見を集約、フィードバックすることで、燃料アンモニア貯槽・輸送設備のリスクベースドメンテナンス※2の社会実装を促し、燃料アンモニアの利用拡大に貢献します。
- ※1Stress Corrosion Cracking:腐食環境下において、金属材料に引張応力が作用することで、材料に割れが生じる現象
- ※2リスクを基準にメンテナンス(検査、補修、更新など)を行う手法で、高リスク箇所に重点メンテナンスを実施し、全体のリスクレベルが許容範囲以下になるように計画される
ST エネルギートランジションを支える高機能サワーラインパイプの開発
JFEスチールは、通常より高濃度の硫化水素を含有する天然ガスの輸送に使用されるサワーラインパイプ※1向け鋼材を開発し、その成果が評価され、令和6年度「大河内記念技術賞」に続き、「第10回ものづくり日本大賞」において経済産業大臣賞を受賞しました。
天然ガスは、石炭や石油と比較して燃焼時のCO2排出量が少ないエネルギー源であり、カーボンニュートラル社会への移行過程における重要なエネルギーとして位置付けられています。一方で、高濃度の硫化水素を含む天然ガスの輸送には高度な安全性と信頼性が求められます。
JFEスチールは、高濃度硫化水素環境下における硫化物応力割れ※2(SSC)や水素誘起割れ※3(HIC)の発生を抑制するため、「極表層硬度制御技術」「極表層硬度全面検査技術」および「中心偏析制御技術」を開発しました。これにより、高い安全性と信頼性を備えたサワーラインパイプ用鋼材の安定供給を実現しています。
また、本技術は鋼材の高性能化により必要以上の合金元素の使用を抑制しながら高い耐久性を実現しており、インフラの長寿命化や省資源化にも貢献しています。
JFEスチールは今後も、高機能・高品質なラインパイプ製品の供給を通じて、低炭素エネルギーの安定供給とエネルギートランジションの推進に貢献するとともに、持続可能な社会の実現に取り組んでいきます。
- ※1硫化水素を含む天然ガス
- ※2サワーガス環境にある鋼中に水素が流入することで鋼が劣化し、応力が加わると鋼に割れが生じる現象。硫化水素濃度、負荷応力が高い程割れやすくなる
- ※3鋼中に侵入した水素がMnS等の介在物に集積し割れが発生し、中心偏析による硬化部で割れが伝播する現象
サワーラインパイプの概要
ST 高熱効率・長寿命なラジアントチューブバーナの開発による省エネの取り組み
ラジアントチューブバーナとは、連続溶融亜鉛めっきラインや連続焼鈍ラインにおいて、鋼板の引張り強度や伸びなどの機械特性を調整するために鋼板を加熱するための焼鈍炉で用いられる設備です。本バーナは通常のバーナとは異なり、燃料と空気が金属製のチューブ内で燃焼反応し、燃焼熱によって加熱されたチューブの輻射熱により鋼板を加熱する仕組みであり、鋼板表面を高品質に保持可能なため、当社の焼鈍炉でも数多く採用されています。一方で、ラジアントチューブバーナはチューブ内という比較的狭い空間での燃焼反応が生じ高温になりやすいため炉内でのチューブ変形が課題となっていました。同時にラジアントチューブバーナには高い省エネ性能も求められているため、長寿命性と省エネ性を両立したラジアントチューブバーナの開発に取り組みました。
今回開発したラジアントチューブバーナ(図)は、焼鈍炉内での変形に強いチューブと内部支持構造の開発によりラジアントチューブバーナの交換指標となる変形量が従来比で約1/6まで抑制されており、大幅な長寿命化が見込まれています。また、チューブ形状に合わせてバーナ周りの循環流制御技術の開発、歯車型伝熱促進体の開発及び高効率な熱交換器の開発成功により、鋼板単位重量当たりの燃料原単位を4.9%削減することができます。
開発した長寿命性と省エネ性を兼ね備えたラジアントチューブバーナは、JFEスチールの各製鉄所の焼鈍炉ですでに稼働しており、今後も幅広く展開する予定です。また、当社は自社技術や操業改善ノウハウを活用してお客様にソリューションを提供するビジネス「JFE Resolus®(レゾラス)」を展開し、お客様とともに発展することを目指しており、本開発技術は提供商品の一つとしてラインアップされています。
JFEスチールは、この「高熱効率・長寿命なラジアントチューブバーナの開発による省エネの取り組み」の功績により、「2025年度(令和7年度)省エネ大賞 省エネ事例部門」の最高位である経済産業大臣賞を受賞しました。「省エネ大賞」は、事業者や事業場等において実施した、他者の模範となる優れた省エネへの取り組みや、省エネルギー性に優れた製品並びにビジネスモデルを表彰するもので、日本全体の省エネ意識の拡大、省エネ製品の普及などによる、省エネ型社会の構築に寄与することを目的としています。うち「省エネ事例部門」は、企業・工場・事業場などの節電や省エネ推進活動を対象としています。なお、本開発技術は先に行われた2次審査を兼ねた2025年度省エネ大賞地区発表大会においても「優秀プレゼンテーション賞」や、2023年度「日本伝熱学会・技術賞」を受賞しています。
JFEスチールは今後もさらなる省エネ技術の開発と実用化を進めることで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
高パフォーマンスラジアントチューブバーナの開発技術
- 2025年度省エネ大賞 省エネ事例部門「経済産業大臣賞」を受賞~高熱効率・長寿命なラジアントチューブバーナの開発による省エネの取り組み~
- 「デジタルツイン」を活用した革新的ラジアントチューブバーナの短期開発~長寿命・低NOx・高効率化を実現~
- ソリューションビジネス「高コストパフォーマンス ラジアントチューブバーナー」
京浜臨海部におけるカーボンニュートラル化に向けた取り組み
東日本製鉄所京浜地区の高炉等休止後の土地利用転換について、JFEホールディングスは川崎市の土地利用方針に則ったJFEグループの土地利用構想を「OHGISHIMA2050」として取りまとめました。土地利用転換のコンセプトとして、カーボンニュートラル、イノベーション、レジリエンスを実現する先進的な取り組みに挑戦するフィールドを創出することを掲げており、国の重点課題の解決に資する公共・公益性の高い土地利用への転換を図るとともに、次の100年を担う新たな産業の立地や雇用の創出を通じて、地域・社会の持続的発展に貢献する方針です。
【カーボンニュートラルエネルギーゾーンにおける水素供給拠点の形成に向けた取り組み】
扇島地区先導エリアの港湾機能を活かした水素供給拠点等の導入とアクセスの飛躍的な向上をトリガーに、地区全体のカーボンニュートラル化とイノベーションを促進するゾーニング「カーボンニュートラルゾーン」を設定しています。当地は日本水素エネルギー(株)(以下、JSE)がNEDOのグリーンイノベーション基金事業「大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」の一環として取り組む「液化水素サプライチェーンの商用化実証」において、液化水素受入基地の建設用地として選定され、2024年7月にJFEスチールとJSEとの間で土地賃貸借契約を締結、2025年4月より土地の引渡しを開始し、2025年5月には水素受入基地の建設が開始されました。2028年度の商用実証運転開始に向けた準備が着実に進められています。
将来扇島へ供給される水素を利用してJFEの自家発電所にてグリーン電力を発電し、稼働を継続する工場へ供給します。発電余力を有効活用して、先導エリアのJSEや高度物流事業者、扇島北地区において三菱商事(株)と共同事業化を検討しているデータセンターへも電力供給を行う計画です。また水素を厚板工場の加熱炉でグリーン燃料として利用することも想定しています。
JFEグループは、扇島を起点に水素等脱炭素燃料の安定的かつ経済的なサプライチェーン構築の一翼を担うことを目指し、京浜臨海部をはじめ、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献します。
【高度物流ゾーンにおける次世代型冷凍冷蔵物流拠点の形成に向けた取り組み】
JFEスチールと日本GLP(株)(以下、日本GLP)は、2026年8月5日、冷凍・冷蔵機能を中心とする大規模多機能型物流施設の開発用地として、扇島先導エリアの土地(約18ha)の売買契約を締結するとともに、同日付でJFEホールディングス、JFEスチール、日本GLPおよび川崎市との間で、高度物流拠点の形成に向けた連携協定を締結しました。
日本GLPは、最大11棟、延床面積約37万㎡、冷凍・冷蔵収容能力約55万トン規模の大規模多機能型物流施設群を段階的に整備する計画です。施設老朽化や庫腹不足など、冷凍冷蔵物流業界が抱える課題の解決に貢献するとともに、首都圏における食料の安定供給やコールドチェーン機能の強化を目指しています。また、2030年7月までに物流施設群の一部先行稼働を予定しています。
JFEグループ、日本GLPおよび川崎市は、GX・DXの推進を通じて物流機能の高度化に取り組みます。水素モビリティや自動運転トラックの活用、物流施設の自動化、共同輸配送の推進、川崎港を活用したモーダルシフトなどの実証・実装を進めることで、環境負荷低減と物流効率化の両立を図ります。さらに、大規模災害時の物資輸送拠点としての機能強化にも取り組み、社会インフラとしての役割向上を目指します。
【南渡田北地区北側におけるクライメートテック※1の社会実装を加速する研究施設の整備】
JFEスチールは、ヒューリック(株)と共同で推進する南渡田北地区北側開発(開発面積約5.6ha)において、川崎市が掲げるクライメートテックを社会実装するスケールアップ拠点の形成に向けた整備を進めており、2028年1月のまちびらきに向けて、2025年12月に研究棟B、2026年3月に研究棟Aに着工しています。研究棟Aにはスチール研究所が入居し、GXやDXなど社会的課題の解決に向けた研究開発機能を強化するとともに、マテリアル技術を通じて産業競争力の向上と持続可能な社会の実現に貢献します。
研究開発においては、製造現場で得られるデータ、シミュレーション技術、AIを活用し、品質向上や安定操業、生産性向上、環境負荷低減につながる技術開発を推進します。また、施設内には企業や大学、地域関係者との交流・共創を促進する共創スペースを設け、研究成果の社会実装を加速する「開かれた研究開発拠点」の形成を目指します。
さらに、本施設ではGXスチール「JGreeX®」※2や鋼材と木材を組み合わせたハイブリッド構造「アーキテツト®」※3を採用するなど、建設段階から環境負荷低減に配慮しています。
ヒューリックとJFEグループは、「マテリアルから世界を変える唯一無二の産業拠点」をコンセプトに掲げ、共創を起点としたイノベーションの創出と社会実装を推進する研究開発ラボの構築を目指していきます。
- ※1気候変動の問題解決に向けて、二酸化炭素の排出削減や気候変動への適応を目的とした技術やサービスの総称
- ※2JFEスチールの登録商標で、JFEスチールのGHG排出削減技術により創出した削減量を任意の鋼材に割り当てることで、鉄鋼製造プロセスにおけるGHG排出量を大幅に削減したJFEスチール独自の鉄鋼製品
- ※3JFEスチールの登録商標で、耐震性に優れた鉄骨造と、意匠性・室内環境の改善効果に優れた木材を組み合わせて、環境にやさしい建築物の提供を目的としたJFEスチール独自の環境ブランド
- ※計画概要・イメージパースは現時点のものであり、今後変更になる場合があります
- ※本リリースに掲載されているイメージパース内の周辺建物は、Vexcel Imaging US 社の都市モデルを使用しています
エネルギー使用量削減の取り組み
エネルギー使用量の削減は、気候変動対策の中核をなす取り組みの一つです。JFEグループは、事業活動におけるエネルギー効率の向上を図るとともに、再生可能エネルギーの導入や設備の最適化を通じて、GHG排出量の削減に努めています。
鉄鋼事業における取り組み
JFEスチールでは、従来より高効率設備の導入に加え、デジタルソリューション(DS)やIoT技術の積極的な活用を通じて、鉄鋼製造プロセスにおけるエネルギー使用量の削減に取り組んできました。これらの取り組みは、生産効率の向上とエネルギーの最適利用を両立させるものであり、持続可能な製造体制の構築に向けた重要なステップとなっています。今後も、さらなる技術革新と現場での改善活動を通じて、エネルギー効率の一層の向上を目指していきます。
JFEスチールのエネルギー消費量・原単位推移
- ※2013年度は、JFE条鋼 仙台製造所のデータを加えて算出
ST 製鉄所における燃料・電力運用ガイダンスシステム
JFEスチールは、「製鉄所における燃料・電力運用ガイダンスシステム」を開発し、製鉄プロセスで使用する燃料・蒸気・電力の運用を最適化することで、省エネルギー・CO2削減および燃料・電力コストの低減を実現しています。
従来は、オペレータがエネルギー需給状況(発生および使用)、発電設備の稼働状況に基づき、コストやエネルギー損失が極力少なくなるように、各プロセスへの副生ガス配分、燃料(重油・都市ガスなど)購入量、電力購入量、副生ガス貯蔵量などのさまざまな要素を決定していましたが、エネルギー需給変動の正確な予測が難しいなどの課題を抱えていました。今回開発したガイダンスシステムでは、CPS(サイバーフィジカルシステム)※の概念に基づき、リアルタイムに得られる膨大な測定データ(①)および各工場の詳細な生産計画を使用して、将来の需給状況を高精度に予測し(②)、製鉄所内の発電設備等の情報を考慮した上で(③)、外部からの購入量が最小となる最適な運用条件を燃料・電力シミュレーションで求め(④)、その結果をオペレータにガイダンスするものです(⑤)。
本システムの開発により2022 年度日本エネルギー学会・学会賞(技術部門)を受賞しました。JFEスチールでは、「JFE Digital Transformation Center」(「JDXC®」)を開設し、製造プロセスのCPS化を進めるなどDXを積極的に推進することで、革新的な生産性向上および安定操業の実現を目指しています。製造現場におけるあらゆる分野の課題を、DXを通じて解決していくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
- ※フィジカル空間の莫大なセンサー情報(ビッグデータ)をサイバー空間に集約し、これを各種手法で解析した結果をフィジカル空間にリアルタイムにフィードバックすることで価値を創出するシステム
ガイダンスシステムの概要
商社事業における取り組み
JFE商事では、2025年に改定した環境方針のもと、エネルギー削減の一環として紙使用量の削減、電力使用量の削減、廃棄物の分別管理の徹底等の取り組みを継続的に実施しています。
紙使用量の削減については、再生紙の利用継続、Nup印刷や両面印刷の徹底、会議資料のペーパーレス化の推進等により、従業員一人あたりの紙使用量は減少傾向にあります。電力使用量の削減については、蛍光灯のLED化、人感センサー照明、省エネ機器の導入や、定時退社デーの実施、RPA化等の推進による業務効率化等により環境負荷の低減を図っています。
また、国内事業会社では、太陽光パネルの設置や再エネ由来の電力調達によるCO2排出量削減を目標として設定しています。2025年度は、排出係数の低下に加えて、オフサイトPPAの本格稼働による非化石証書の取得や、再エネ由来の電力調達によって、CO2排出量を36.6%削減(2019年度比)しました。
JFE商事の電力使用量推移
JFE商事グループのGHG排出量
- ※集計範囲: JFE商事、国内外関連会社59社
JFE商事グループのGHG排出関連の定量データは以下をご参照ください。