循環経済への移行の取り組み
基本的な考え方
JFEグループは、サーキュラーエコノミーへの移行が持続可能な社会の実現に不可欠な重要テーマであると捉え、社会全体の経済システムを従来の「線形経済」から「循環経済」へと移行する取り組みを、デジタル技術の活用に加え、グループの枠組みを越えて行政・自治体・お客様などのバリューチェーンと連携しながら進めていきます。その中で、資源利用量の削減、資源利用の効率改善、廃棄物削減を重要な視点として位置づけ、「副産物・廃棄物の資源への転換」、「資源効率の高いエコプロダクト/エコソリューション技術の開発」、「再生資源の利用・販売拡大」といった3つの観点から活動を強化していきます。そして、これらの活動を通じて、気候変動問題や生物多様性の保全などの環境課題の解決にも貢献していきます。
サーキュラーエコノミー概念と取り組み
鉄は回収が容易で、リサイクル性に優れた素材であり、同じ鉄鋼製品の原料として無限にリサイクルが可能であり、JFEグループにおいても鉄スクラップの回収および利用促進に積極的に取り組んでいます。このほかにもJFEグループでは循環経済への移行に向けてさまざまな取り組みを展開しています。
鉄鋼事業では、製鉄プロセスから発生するダストやスラッジ、スラグなどの副産物資源の有効利用に加え、使用済みプラスチックを高炉原料として使用するなど、再生資源の利用を促進しています。また、高品質・高機能な鉄鋼製品の提供を通じて、資源効率の向上にも貢献しています。
エンジニアリング事業では、食品廃棄物や下水汚泥のバイオマス燃料化、廃棄物発電などのプラント・インフラ施設等の建設および、これら施設の運転・運営の受託を通じて資源循環のソリューションを提供しています。さらに、ペットボトルやプラスチック等のリサイクル事業、エネルギー供給事業も展開し、サーキュラーエコノミーの推進に取り組んでいます。
商社事業においては、サプライチェーンマネジメント網を活用し、バイオマス燃料などの環境商材の調達に取り組んでいます。
また、JFEグループ(国内)の主要生産拠点(スチール7カ所、エンジニアリング3カ所)のすべてで、水の管理計画を策定し、取排水量、リサイクル量を把握し、水資源の定性管理や、環境負荷の低減に取り組んでいます。製鉄プロセスにおいては製品や設備の冷却・洗浄に大量の淡水を使用するため、水源やその周辺のステークホルダーへの影響を考慮した水資源の効率的な利用は重要な課題となっています。この課題に対応するため、製鉄所などでは使用した水を浄化し、可能な限り循環利用するシステムを構築することで、取水量の削減に取り組んでいます。加えて、従業員に対して、節水意識向上を促す活動を行い、水使用量の削減と効率的利用を通じて、継続的に環境負荷の低減を推進していきます。
また、製造拠点周辺地域における安全で衛生的な水環境の維持を重視しており、水質保全に関する取り組みを通じて、地域の水資源への影響を防止し、地域住民の生活環境の保全にも積極的に取り組んでいきます。
JFEスチールおよびJFEエンジニアリングのリサイクル事業は以下を参照ください。
外部イニシアチブへの賛同・参画
JFEホールディングスは、循環経済への移行を加速するため、環境省、経済産業省および日本経済団体連合会が創設した「循環経済パートナーシップ(J4CE)」に参画しています。J4CEは、企業、業界団体、自治体、政府機関などが連携し、循環経済に関する理解醸成や先進事例の共有、事業者間連携の促進を図る官民連携のプラットフォームです。
JFEグループでは、JFEエンジニアリンググループのJ&T環境もJ4CEに参画しており、廃棄物の適正処理や資源循環事業で培った知見を活かしながら、循環経済の実現に向けた取り組みを推進しています。JFEグループは、J4CEへの参画を通じて、資源循環に関する国内外の政策・技術動向や先進事例に関する知見を活用するとともに、リサイクルや資源循環に関する取り組みを発信し、多様なステークホルダーとの連携を通じて循環型社会の形成に貢献していきます。
JFEグループの循環経済への移行の戦略
循環経済への移行を加速するためには、素材や製品を供給する動脈産業と、回収・再資源化を担う静脈産業が連携し、資源循環を社会全体で最適化する仕組みの構築が重要であると考えています。その実現には、企業間の連携のみならず、行政や自治体を含めたルール形成やインフラ整備、市場環境の整備が不可欠であり、JFEグループは関係者との対話や協働を通じて、資源循環の高度化に向けた取り組みを推進していきます。
さらに、JFEグループは、循環経済を単なる廃棄物削減や資源有効利用の取り組みにとどまらず、再生材や循環資源から新たな価値を創出する成長機会と捉えています。再生資源の利用拡大や高機能化を進めることで、資源循環による環境価値やGX価値を高めるとともに、持続可能な素材・製品市場の形成に貢献していきます。
加えて、近年は地政学的リスクの高まりや重要鉱物需要の増加を背景に、資源循環は環境課題への対応に加え、経済安全保障の観点からも重要性が高まっています。JFEグループは、再生資源の有効活用や資源循環ネットワークの構築を通じて、天然資源への依存低減と安定的な資源確保に貢献し、強靭な社会基盤の構築を支えていきます。
副産物/廃棄物の資源への転換
JFEグループは、限りある資源を有効に活用し、環境負荷の低減と持続可能な社会の実現を目指して、サーキュラーエコノミーの考え方を事業活動に取り入れています。特に、副産物や廃棄物を新たな資源として再活用する取り組みを推進し、資源の循環利用と廃棄物の最小化に努めています。
EN リサイクルバリューチェーンの構築
JFEエンジニアリングは、廃棄物の収集・運搬から、中間処理、生成物の再生利用まで、ワンストップで対応可能な国内有数の企業として、関連企業や自治体との連携を含むリサイクルバリューチェーンの構築を推進しています。
リサイクルバリューチェーン
廃プラスチックリサイクル、ペットボトル水平リサイクル、サーマルリカバリー、食品リサイクル、ケミカルリサイクルに取り組んでいます。
また、廃棄物発電や食品リサイクルによるバイオガス発電等の廃棄物由来エネルギーを地産地消する「地域新電力支援」にも取り組んでいます。これは、JFEエンジニアリングにとって「カーボンニュートラル」分野の取り組みと同時に「サーキュラーエコノミー」分野における重要な取り組みの1つです。
EN プラスチックリサイクル推進に向けた取り組み
J&T環境は2022年9月仙台市がプラスチック資源循環促進法(プラ新法)に基づき策定した再商品化計画に参画し、全国で初めて環境大臣・経済産業大臣の認定を取得しました。これにより、2023年4月から製品プラスチックの一括回収を開始しました。従来、仙台市では焼却処分されていた製品プラスチックが、プラスチック製容器包装とともに一括回収され、効率的なリサイクルが可能となりました。
さらに、国内でのプラスチックリサイクルの推進を目的として、2023年7月にはJ&T環境とJR東日本グループと共同で、神奈川県川崎市に(株)Jサーキュラーシステムを設立しました。この施設は、国内最大級となる1日あたり200トンの使用済みプラスチック処理能力を有し、選別から再商品化までを一貫して行う体制を整えています。2025年4月に本格稼働を開始し、自治体・事業者が回収した選別されていない使用済みプラスチックをそのまま受け入れることが可能です。これにより、従来は選別が困難なことから焼却処理されていた使用済みプラスチックの再資源化を推進します。回収された使用済みプラスチックは高度選別され、特性に応じてマテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルとして、近隣のリサイクル事業者と連携し、資源循環の高度化を図ります。
現在、川崎市をはじめ、藤沢市、横須賀市、大田区とともにプラ新法に基づいて策定した再商品化計画が大臣認定を取得しており、複数の自治体と複数のリサイクル事業者と連携して認定取得した事例は全国初となります。この認定により自治体、市区民から家庭ごみとして分別回収される使用済みプラスチックの多くを、本施設で再資源化することが可能となりました。
Jサーキュラーシステムは、他に類をみないリサイクルシステムを通じて、プラスチック資源循環の高度化および脱炭素推進の実現に向けたトップランナーを目指し、持続可能な循環型社会の実現に貢献していきます。
仙台市での再商品化計画の大臣認定取得
Jサーキュラーシステムに係る自治体での再商品化計画の範囲
- 国内初! J&T環境(株)が仙台市のプラスチックごみの再商品化事業に参画
- 国内最大級のプラスチックリサイクル施設「Jサーキュラーシステム」本格稼働開始
~首都圏3自治体の市区民の使用済みプラスチックの再資源化を担う~
EN ペットボトルの水平リサイクル
J&T環境の子会社である協栄J&T環境※1は、2021年10月のフレーク工場の稼働に続き、2022年4月にペレット製造ラインが竣工し全面的な商業運転稼働を開始しました。「ボトルからボトルへ」(ボトルtoボトル/BtoB)何度でも繰り返しリサイクルできる技術(水平リサイクル)により、原油からペットボトルを製造するのに比して63%のCO2削減効果が得られ(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)算定)、経済産業省らによる「2010年ものづくり白書」に資源環境制約対応事例として掲載※2されています。
飲料メーカーおよび小売業者各社はペットボトルのリサイクル率向上(ボトルtoボトル)に向けさまざまな取り組みを推進しています。このようなニーズに対応し、協栄J&T環境が取り組むボトルtoボトル事業は、サーキュラーエコノミーの実現および天然資源の使用量抑制によるCO2排出量の削減に大きく貢献します。
- ※1J&T環境(株)と協栄産業(株)の合弁会社
- ※2協栄産業(株)によるもの
ペットボトルの水平リサイクルフロー
ペットボトルリサイクルの手法
- 協栄J&T環境(株)西日本PETボトルMRセンター全面的な商業運転開始
- J&T環境(株)と協栄産業(株)の合弁会社の設立について~B to Bシフトシフトに貢献する国内最大のペットボトルリサイクルレジン製造工場新設~
EN 海外での廃棄物発電プラントの建設や運転(サーマルリカバリー)
JFEエンジニアリングは、 トゥアンタインエンバイロメント社※1(以下、「TT社」)と共同で、T&Jグリーンエナジー社(以下、「T&J社」)を設立し、ベトナム国バクニン省で廃棄物発電事業を行っています。
T&J社設立後、JFEエンジニアリングがプラントの設計・建設・運転を、TT社が許認可の取得やプラント用地確保、焼却する廃棄物の収集・運搬および焼却灰処理を担当しています。この廃棄物発電プラントは、日量500トンの一般廃棄物・産業廃棄物を焼却するプラントで、発電出力は11.6MWです。発電された電力は、所内利用分を除き、固定価格買取制度(FIT)を活用して、ベトナム電力公社に売電されています。
T&J社のプラント建設・運営資金には、日本政府による二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)資金支援事業のうち設備補助事業および世界銀行グループの国際金融公社(IFC)およびフィンランド-IFCブレンド型融資気候変動対策プログラムによる融資が活用されました※2。これらの資金調達は、今回のプロジェクトにおける廃棄物の適正処理および、15年間で約60万トンの温室効果ガス排出削減見込みであることが評価され、実現したものです。本プロジェクトは、ベトナム政府と日本政府の協力の下で実施されました。両社は、本案件を皮切りに同様のプロジェクトを継続的に立ち上げることを目指しています。
JFEエンジニアリンググループは、これまで培ってきた廃棄物処理プラントの建設・運転実績をもとに、今後も国内・海外で同分野における事業計画・建設・運営を推進することで、資源循環型社会の実現に貢献しています。
- ※1廃棄物焼却をはじめ各種リサイクル事業を総合的に展開するベトナム国の大手リサイクル事業会社
- ※2現在は、地場の銀行でリファイナンス
EN 食品リサイクル
J&T環境は地産地消型資源循環の仕組み構築を目指し、全国6カ所で食品リサイクル発電事業※を行っています。施設能力の累計では、国内最大規模の食品リサイクル・バイオガス発電事業者となっています。
食品リサイクルは、食品流通の川下に至るほどリサイクル率が低くなります。その原因のひとつとして、川下業界から排出される食品廃棄物には、容器や割りばし、爪楊枝などの異物が混入しやすいことが挙げられます。J&T環境が推進する食品リサイクルは、従来リサイクルが難しいとされてきた異物を含む食品廃棄物の処理を可能にし、業界全体のリサイクル率向上に貢献しています。
各工場の基本処理フローは共通しており、食品廃棄物を微生物の力でメタン発酵させ、生成されたバイオガスを原料にガスエンジンで発電します。当社では、この仕組みを活用した「電力」と「農業」の2つのリサイクルループを構築しています。
「電力リサイクルループ」は発電した電力を排出事業者に還元する仕組みです。排出事業者とJFEエンジニアリングの電力小売事業子会社であるアーバンエナジー(株)(UEC)が電力売買契約を締結することで、食品廃棄物由来の電力に相当する再生可能エネルギーを排出事業者に還元しています。その際、排出事業者は、廃棄物の受入量に応じた電力相当分を電力料金から割り引く「創電割®」というサービスを受けることができます。
「農業リサイクルループ」は、発酵の際に生じる残渣を肥料として農家にご利用いただき、育った作物を排出事業者にご使用いただく仕組みです。そして排出事業者の元で発生した食品廃棄物を再び当社で処理するという循環を形成しています。
J&T環境は、この電力リサイクルループと農業リサイクルループを組み合わせた「ダブルリサイクルループ」の構築を推進することで、地域循環共生圏の実現を目指しています。
JFEエンジニアリンググループは今後も、地域の皆様と連携しながら、食品リサイクル率の向上と再生可能エネルギーの地産地消を推進し、循環型社会の実現に貢献しています。
ダブルリサイクルループ:食品廃棄物から再生可能エネルギーと肥料を創出
EN
GI基金を活用した廃棄物ケミカルリサイクル技術の開発
(C-PhoeniX Process®)
JFEエンジニアリングは、2024年2月にNEDOが公募した「グリーンイノベーション基金事業/廃棄物・資源循環分野におけるカーボンニュートラル実現」に実施予定先として採択※1されました。JFEエンジニアリングは、これまで20年以上にわたり廃棄物ガス化技術の独自改良を積み重ねており、その結果、一般廃棄物を含む多様な廃棄物を処理可能なガス化技術を確立し、世界で唯一の長期運転実績を有しています。現在では、カーボンニュートラル達成に向けたさらなる技術改良を目指し、新しいガス化技術「C-PhoeniX Process®(略称:CX Process®)」の開発に取り組んでいます。
「C-PhoeniX Process®」は、廃棄物を安定的に処理する機能を維持しつつ、蓄積した技術をベースに幅広い廃棄物から高品質な精製合成ガスを製造する機能をさらに高めた新しいガス化プロセスです。この「C-PhoeniX Process®」を確立することにより、多様な廃棄物から水素(H₂)と一酸化炭素(CO)を主成分とした精製合成ガスの安定製造が可能となり、プラスチックや持続可能な航空燃料(SAF)の原料としての利用や水素源としての活用など、さまざまな「廃棄物のケミカルリサイクル(Waste-to-Chemical)プロセス(以下、「WtC」)」への適用が期待されます。
本基金事業では、2025年12月より小型炉(20トン/日)での実証試験を開始※2し、新しいガス化技術について着実に成果を上げています。引き続き、本実証試験の成果を生かし、廃棄物由来の精製合成ガスを製造する技術と、ガスから高付加価値な化学品を製造する技術と組み合わせた大規模実証試験を実施する予定です。今後、国の支援を受けて「C-PhoeniX Process®」に加え、WtCプロセス全体の開発と社会実装をより一層加速していきます。JFEエンジニアリングは、本開発を2030年度までに完了させ、国内だけでなく海外への展開も目指すことで、2050年カーボンニュートラル達成に向けて貢献していきます。
廃棄物ケミカルリサイクルの概要
ST 製鉄プロセスから発生する副産物(ダスト・スラッジ・スラグ)の利用
鉄鋼スラグ(製鉄工程の副産物)や、高炉・転炉の鉄系ダスト、水処理スラッジなどの副産物については、再資源化率向上の目標を定め、発生・排出の抑制を推進しています。鉄分を多く含むダストやスラッジについては、製鉄原料への再利用を進めています。また、鉄鋼スラグについてはセメント材料や土木材料などで有効利用しています。さらに、環境修復材(生物付着基盤や海域環境改善材として有効に機能する「マリンストーン®」など)への活用を推進しています。
その結果、2025年度のダスト・スラッジ・スラグ再資源化率は99.6%となっており、再資源化率の目標値99%以上を達成し、今後も継続して達成していきます。
副産物関連の定量データは以下をご参照ください。
鉄鋼スラグ製品による貢献
鉄鋼スラグ製品の多くは、自然環境の保護などの観点から、2001年に施工された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)の公共工事における特定調達品目(環境負荷低減に資する製品等)に指定されています。
JFEスチールは、循環経済の実現に向けた取り組みとして、天然資源(砂、石材)の保全に一層貢献すべく、第8次中期経営計画期間(2025~2027年度)にて鉄鋼スラグ製品の海域用途向け利用量の拡大を掲げ(累計32万トン)、海域利用拡大を推進しています(2025年度実績7.8万トン)。
カルシア改質材
カルシア改質材は、転炉系製鋼スラグを原料として成分管理と粒度調整したスラグ製品で、浚渫土(しゅんせつど)にカルシア改質材を混合したものをカルシア改質土と呼びます。カルシア改質土は、混合前の軟弱な浚渫土に比べ強度が高いため、水中投入時に浚渫土が周囲に散逸して環境を悪化させることを抑制することが可能です。インフラの整備を支える建設資材として、埋め立て材などに適用可能であり、浚渫土の有効活用が可能です。これまで、中仕切潜堤※1の築堤材(横浜港新本牧ふ頭建設工事)、耐震岸壁の裏埋材(福山港箕沖地区岸壁築造工事)、護岸の押え盛土材(東京都新海面処分場整備事業)に利用されています。
またカルシア改質土は、浅場・干潟の造成や深掘窪地の埋戻しにも活用可能であり、海域環境改善に貢献する技術です※2。
- ※1区画して埋立するために、外周護岸内側の水面下に設けられる堤防
- ※2生物多様性の保全・自然再興
カルシア改質材とカルシア改質土
鉄鋼スラグ水和固化体
鉄鋼スラグ水和固化体は、セメントコンクリートの代替として、セメントの代わりに高炉スラグ微粉末、骨材である天然石砂の代わりに製鋼スラグなどを混合したスラグ製品です。主な原材料に鉄鋼スラグを有効活用しているため、天然材採取による環境影響の抑制やセメント使用量削減によるCO2抑制効果が期待できます。
鉄鋼スラグ水和固化体製ブロックや人工石材は、港湾工事におけるコンクリートブロックや天然石材の代替材として、多数の適用実績があり、これから建設が本格化する洋上風力発電設備の洗掘防止工への適用が見込まれています。また、千葉港葛南中央地区港内においては地元漁業協同組合の協力を得て、現地モニタリングにより生物多様性の効果も認められました。
高炉スラグ細骨材を用いたプレキャストコンクリート製品
セメントのように固まる性質がある高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートは、凍結防止剤や下水道などの劣悪環境下での耐久性を飛躍的に向上させる新技術です。従来から環境負荷低減効果が評価されてきましたが、高耐久性を有するコンクリート構造物としても期待されています。
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の成果の一つとして、2019年3月に土木学会から高炉スラグ細骨材をプレキャストコンクリート製品に適用するための指針(案)が発刊され、高速道路や桟橋のプレキャスト床版でも使用されています。高炉スラグ細骨材による高耐久化とプレキャスト製品の品質の安定化が相まって、国土強靭化への貢献が期待できます。
高炉水砕スラグ
高炉水砕スラグは、粉末状に粉砕して普通セメントの一部を置換することで、石灰石・砕石・砂の使用量削減や省エネルギーに貢献するとともに、セメント製造時のCO2も削減可能です。例えば、普通セメントを高炉水砕スラグに45%置換した高炉セメントは、セメント製造1トンあたりのCO2排出量を42%削減できます。JFEスチールは、2025年度に約572万トンの高炉水砕スラグをセメント向けに提供し、約405万トンのCO2削減に貢献しています。
1トンのセメント製造に伴うCO2排出量(㎏ -CO2/トン)
| CO2排出源 | 普通セメント | 高炉セメント |
|---|---|---|
| 石灰石 | 476 | 270 |
| 電力・エネルギー | 283 | 170 |
| 合計 | 759 | 440 |
- ※セメント協会 2022年公表データおよび鐵鋼スラグ協会「環境資材」より集計
京浜臨海部におけるサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組み
水江地区では首都圏に近接した立地を活かし、川崎市と連携しながら、首都圏における一大リサイクル拠点としての拡張整備を推進しています。その先駆けとなる事業として、JFEエンジニアリングのグループ会社J&T環境がJR東日本等と(株)Jサーキュラーシステムを設立、国内最大級のプラスチックリサイクル施設「Jサーキュラーシステム川崎スーパーソーティングセンター」を建設し、2025年4月に本格稼働しました。今後もリサイクルエリアの拡張整備を通じてサーキュラーエコノミーの実現に向けた事業を推進します。
京浜土地における事業利用(第8次中期経営計画公表資料より)
資源効率の高いエコプロダクト/エコソリューション技術の開発
JFEグループは、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、資源効率の高い製品・サービスの開発と提供に取り組んでいます。環境負荷の低減と資源の有効活用を両立させるため、設計段階からライフサイクル全体を見据えたエコプロダクトや、循環型の価値を創出するエコソリューションを展開しています。
EN インフラ強靭化・長寿命化
JFEエンジニアリングでは、多様な事業ポートフォリオを有する特長を活かし、循環経済への移行に向けた取り組みを多面的に推進しています。インフラ分野においては省資源・長寿命設計、省エネ・省力施工、メンテ・改築による効率運用で、インフラを最大限に使い切る事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。
JFEエンジニアリングにおけるサーキュラーエコノミー
長寿命化橋梁の実現に向けて
我が国の社会資本ストックは、今後急速に老朽化が進むと予測されています。一方で、少子高齢化や人口減少により労働力が減少し、インフラの維持管理を担う技術者の確保が大きな課題となっています。JFEエンジニアリングでは、こうした社会課題の解決に向けた取り組みの一環として、橋の長寿命化による維持管理負担の軽減を目指し、高耐久材料を用いた橋梁の建設を推進しています。
【橋の長寿命化を可能にする技術】
一般的な鋼製橋梁は、塗装等の被覆によって腐食の進行を抑えていますが、一定期間ごとに塗り替え工事が必要となります。そこで、塗装等を必要としない高耐久材料を使用することで、塗り替え作業が不要となり、発注・設計・工事・管理などの維持管理業務を大幅に軽減することが可能になります。さらに、100年間のライフサイクルを通じたトータルのコストにおいても、一般的な塗装橋と比べて優位性を発揮します。これを実現するために、「ステンレスクラッド鋼」という材料を道路橋に初めて採用しました。
ステンレスクラッド鋼は、一般的な鋼材(炭素鋼)とステンレス鋼を二層構造にした鋼板です。塩害などの影響を受けやすい外面側にはステンレス鋼を配置し、腐食が進行しにくい内面側には塗装した炭素鋼(母材)を配置することで、ステンレスのみで作るよりも経済的で、炭素鋼のみで作るよりも耐久性の高い、経済性と耐久性を両立した橋を実現することができます。
長寿命化に寄与するため、今回採用したクラッド鋼は、「JSL310Mo」という非常に耐食性の高いステンレスが使用されています。これは、クラッド鋼専用材としてJFEスチールが独自に開発した耐海水性ステンレスであり、さらにクラッド鋼を用いた鋼構造物の製作・施工技術に関しては、JFEエンジニアリングが他社に先駆けており、JFEグループの総力を結集して創り出したオンリーワンの長寿命化橋梁がここに誕生しました。
本橋梁は、中日本高速道路(株)からの発注を受けて、北陸自動車道 手取川橋の架け替え工事において現在、建設を進めているものです。
ステンレスクラッド鋼を用いた橋梁
ST 鋼構造物の耐疲労性能を向上させる「FLExB®溶接」による鋼構造物の寿命延長への貢献
JFEスチールが開発した鋼構造物の耐疲労性能向上に貢献する新たな溶接施工法「FLExB®溶接※1」が(株)駒井ハルテックが建設する近畿地方整備局の「国道8号御幸橋上部工拡幅工事」に初めて採用されました。「FLExB®溶接」は国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されています(CB-230007-A)。
長期間にわたって使用される鋼構造物は、老朽化に伴うメンテナンスコストや更新コストの低減が求められます。特に橋梁は自動車等の交通荷重が繰り返し作用するため、溶接部に疲労き裂が発生する疲労損傷のリスクがありました。これに対応するために、橋梁等の鋼構造物の溶接部の疲労損傷への耐久性を高める新たな溶接施工法を開発しました。この溶接施工法は、ガセットプレート(補強用鋼板)と呼ばれる接合部材の短辺側等の疲労き裂が発生しやすい回し溶接部に適用することで、疲労損傷への耐久性を向上させ、構造物の寿命延長に貢献します。
今回、鋼橋の疲労強度向上が必要な部位である横構※2のガセットプレートに「FLExB®溶接」を適用しました。これにより、疲労強度向上のために従来は必要であった溶接施工後の表面処理等の作業工程が省略可能となり、建設コストの低減にも貢献しました。
- ※1Fatigue Life Extended Beadの略。疲労損傷への耐久性を高めた溶接施工法
- 鋼構造物の耐疲労特性を向上させるFLExB®溶接
- 鋼構造物の耐疲労性能向上に貢献する新たな溶接施工法「FLExB®溶接」を開発
- ※2主に横荷重に抵抗する部材で、主桁または主構を相互に連結するように水平面内に配置
ST 電磁鋼板による資源利用効率改善への貢献
電磁鋼板※はモータや変圧器等の電気機器の鉄心材料として広く用いられており、電気機器の性能を左右するキーマテリアルです。JFEスチールでは、高性能な電磁鋼板を供給することで世界的な省エネルギー、ひいてはCO2排出削減に材料の側面から貢献しています。
- ※鉄にSiを添加した材料であり、モータ、変圧器等の鉄心材料として広く用いられる
無方向性電磁鋼板の国内生産能力拡大による電動化社会への貢献
カーボンニュートラル社会の実現には、これまでの化石燃料をエネルギー源とする社会から、カーボンフリー電力を主力エネルギーとする社会構造への大転換が必要です。電動車(xEV)がモビリティの中心となり、ゼロエミッション電源が主力となる未来社会の構築には、高効率のモータが必須であり、そのキー材料として高性能の無方向性電磁鋼板が欠かせません。
JFEスチールの高級無方向性電磁鋼板は、優れた低鉄損磁気特性による高効率化と高磁束密度による小型化において、xEV用駆動モータの高性能化に寄与します。この性能が評価され、多くの自動車メーカーに採用されています。今後もこのような高級無方向性電磁鋼板の需要が拡大すると想定され、これに対応するため、西日本製鉄所(倉敷地区)の電磁鋼板製造設備の能力増強の第Ⅰ期の製造能力増強工事が計画通り2024年7月に完工し、9月より工程生産を開始しました。本設備稼働により、JFEスチールの高級無方向性電磁鋼板(NO)の製造能力は工事前に対して、約2倍となります。
さらに、xEVの駆動モータに不可欠な高級無方向性電磁鋼板に対する需要の増加が見込まれることから、2026年度中には、電動車主機モータ用トップグレード無方向性電磁鋼板の製造能力を第Ⅰ期工事前の約3倍とする計画のもと、現在第Ⅱ期設備増強工事を進めています。
高級無方向性電磁鋼板の需要予測 (当社試算、2020年実績を1.0とした相対値)
高効率変圧器を支える方向性電磁鋼板のインドでの製造能力拡大による資源効率の向上への貢献
今後も世界的な電力需要の増加と再生可能エネルギーの導入拡大が進むことで、変圧器に使用される方向性電磁鋼板の需要が増大していくと予測されており、特にインドでの方向性電磁鋼板の需要は2030年時点で2019年実績比1.8倍に増加すると想定しています。
そのため、JFEスチールとインドの戦略的アライアンスパートナーであるJSW Steel Limited(以下、JSW)は、2023年に持ち分比率50:50で設立した方向性電磁鋼板製造・販売会社JSW JFE Electrical Steel Private Limited(以下、J2ES Vijayanagar拠点)とJSW JFE Electrical Steel Nashik Private Limited(旧thyssenkrupp ElectricalSteel India Private Limited、以下、J2ES Nashik拠点)の製造能力を大幅に拡張することを決定しました。
今回の計画では、J2ES Vijayanagar拠点の製造能力を当初計画から約10万トン/年に倍増、J2ES Nashik拠点の現状製造能力である約5万トン/年を約25万トン/年に引き上げることで、両拠点の製造能力を合計35万トン/年へと大幅に拡張します。世界最大規模の人口を有しているインドでは、経済成長に伴う電力需要増加、再生可能エネルギー使用の拡大、変圧器の高効率化、データセンターの増加に伴い、方向性電磁鋼板の需要が急速に伸びており、その市場規模は大幅に拡大すると見込まれています。J2ES Vijayanagar拠点は当初計画通り2027年度中のフル生産開始を予定しており、J2ES Nashik拠点の拡張は2028年度から段階的に進め、2030年度での完了を見込んでいます。両社は今回の製造能力拡張により、インド市場における方向性電磁鋼板の圧倒的No.1サプライヤーの地位を確実なものとします。
方向性電磁鋼板のインド需要予測 (当社試算、2019年実績を1.0とした相対値)
電気機器の省エネに貢献する省資源型Si傾斜磁性材料
近年、電気機器小型化の観点から駆動周波数の高周波化が進展しており、モータや変圧器等の鉄心材料として用いられる電磁鋼板には高周波域での低鉄損※が求められるようになっています。その実現には、電気抵抗増加元素である珪素(以下、Si)濃度アップが有効ですが、同時に磁束密度の低下を招くという課題がありました。
JFEスチールでは、独自開発したCVD(化学気相蒸着)連続浸珪プロセス技術を用いたSi濃度分布制御技術により、「JNHF®」、「JNSF®」、「JNRF®」を開発し、この課題を解決しました。開発鋼は、高周波域での鉄損が低くかつ磁束密度が高いことから電気機器の高効率化、小型化に大きく貢献しており、太陽光発電用リアクトルや高速モータの鉄心材料として使用されています。
なお、本開発の社会への効果が高く評価され、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。JFEスチールは高機能・高品位な電磁鋼板の提供を通じて、電気機器の高効率・小型化、省エネルギー化に貢献していきます。
- ※鉄心を交流で励磁した際に生じるエネルギー損失。主に熱として失われる。鉄損が低いほど電気機器は高効率となる
CVD連続浸珪プロセスとSi濃度分布のコントロール
SH 電磁鋼板におけるグローバルサプライチェーンのさらなる拡大
電力需要が全世界的に増加していく中で、各過程における電力ロスをいかに軽減するかがCO2排出量削減には非常に重要なポイントとなります。世界の電力消費量のうち、発電所や工場、家庭などで使用されているモータの電力消費量は40~50%、日本では家庭用・業務用・産業用を合わせたモータの年間消費電力量は約55%を占めています。仮に日本におけるモータ効率を1%改善すると、100万kWクラスの大型発電所1基分の省エネルギーに相当すると言われており、モータを高効率化することはCO2排出量削減に向けた重要な取り組みとなります。
JFE商事は、モータや変圧器の中核部材として使用される電磁鋼板を供給するグローバルサプライチェーンを構築しており、材料としてのトレードだけでなく、お客様のニーズに合わせた加工などの付加価値を加え、供給する体制を整えています。直近では、省エネ意識の高い欧州域内における新たなモータコア加工拠点をセルビアに設立しており、工場稼働も開始しています。JFE商事のグローバルサプライチェーンを通じ、お客様のニーズに応えていくことが我々の使命であり、供給網の構築を通じて引き続きCO2排出量の削減に寄与していきます。
ST 複雑形状のモータの薄型化・軽量化とリサイクル性向上に寄与する圧粉磁心技術
JFEスチールは、JFEテクノリサーチ(株)および静岡大学発ベンチャー(株)アーミスとともに、絶縁被覆純鉄粉「電磁郎®」を用いて新たにモータの設計・試作・評価を行い、従来モータと同等出力で48%の薄型化、40%の軽量化を実現可能であることを実証しました。
産業機器や自動車に使われる電動モータに対しては小型化・高効率化のニーズが高まっています。アキシャルギャップモータは、一般的なラジアルギャップモータより薄型でありながら高い出力が得られます(図1)。しかし、3次元的な磁心構造が必要なため、ラジアルギャップモータのように電磁鋼板の積層による磁心製造が難しいことが課題でした。これに対し、絶縁被覆した磁性粉を加圧成形した圧粉磁心は、3次元的に均一な磁気特性を有し複雑形状にも対応でき、設計の柔軟性を提供することが可能です。また、粉砕が容易な鉄心であることから、モータからの銅線の分離回収が容易であり、モータのリサイクル性向上にも寄与する材料となります。さらに、粉砕された圧粉磁心を再度成形して再利用するリマニュファクチャリング(再製造)に関する取り組みも進められています。JFEスチールは圧粉磁心用の絶縁被覆純鉄粉「電磁郎®」を開発、上市しており、今回、「電磁郎®」を用いた圧粉磁心を適用したアキシャルギャップモータを設計・試作・性能評価したところ(図2)、従来比で、高さ48%薄型化、重量40%軽量化し、かつ同等以上の高効率を実現可能であることが実証されました(表、図3)。今回の成果を受けて、JFEスチールとJFEテクノリサーチ(株)は、お客様での圧粉磁心を用いた部品の設計支援と、それによるモータ鉄心用圧粉磁心の普及を目的とした切削加工用大型圧粉体の提供や、設計形状に加工した試作圧粉磁心の提供を開始しました。
JFEスチールは、今後もお客様のご要望にお応えする製品開発を進めるとともに、利用技術の提案、試作評価支援等の技術交流を進めながら、循環型社会の実現に寄与するエコプロダクトの供給を拡大し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
図1:モータの種類
図2:モータ試作プロセスの概要
従来モータと試作モータの評価結果
図3:従来モータと試作モータの実測効率マップ
ST 車体軽量化による資源効率向上に貢献する自動車用高張力鋼板(ハイテン)
高張力鋼板(ハイテン)を自動車の部材に適用することで、車体衝突安全性を維持したまま軽量化を実現することができます。JFEスチールでは、超ハイテン鋼板をお客様に提供し車体軽量化ニーズに応えることで、燃費向上、ひいてはCO2排出量削減に貢献しています。さらに、自動車用超ハイテン鋼板の開発・生産だけでなく、その利用技術の開発にも注力しており、「車体設計技術」・「成形/組立技術」でさまざまな利用技術を開発し、自動車用鋼板における独自の利用技術「JESOLVA®」(JFE Excellent SOLution for Vehicle Application)として体系化し総合的なソリューションを提案しています。ソリューションを提供するため、自動車の開発初期段階からお客様と協力し合うEVI活動(EarlyVendor Involvement)を積極的に展開しており、車体性能向上や軽量化を実現することで、次世代の自動車開発および持続可能な社会の実現に貢献していきます。
軽量・高強度車体の普及を支える超ハイテン鋼板の供給能力拡大
(西日本製鉄所(福山地区)における溶融亜鉛めっきライン建設)
自動車業界では、世界的に年々厳しくなる環境規制、衝突安全基準に対応するため車体の軽量化と高強度化が進んでおり、そのニーズに応える加工性の良い自動車用超ハイテン鋼板※は今後も需要拡大が見込まれます。この需要拡大に対応すべく、JFEスチールでは西日本製鉄所(福山地区)に溶融亜鉛めっきライン(CGL)(生産能力:36万トン/年)を新設することを決定しました。約700億円を投資し、2028年10月の稼働開始を予定しています。本投資により、当社の高成形性高張力鋼板「JEFORMA®」シリーズを含めた自動車用超ハイテン鋼板の生産能力を増強し、拡大する需要に対応するとともに、将来のさらなる高強度化・高機能化ニーズへも対応していきます。
- ※引張り強さ≧980 MPa(メガパスカル)のハイテン鋼板
軽量・高強度車体の実現に貢献する利用技術(超ハイテン鋼板のプレス成形工法)の開発
超ハイテン鋼板は車体軽量化に貢献しますが、板厚が薄く強度が高くなるほど、プレスしわ、金型損傷、形状変動などの課題が発生しやすくなり、適用拡大の阻害要因となっていました。
超ハイテン鋼板は、一般鋼板に比べて成形時のスプリングバック量が大きく、さらに量産材の強度変動幅も大きい傾向があります。当社が開発した「ストレスリバース®工法」は、超ハイテン鋼板の材料強度上昇に伴って増加するスプリングバック量の変化(寸法精度変動)を、バウシンガー効果と呼ばれる「変形方向を逆転させた直後には変形応力が小さくなる」という鋼板特性を活用して抑制する技術です。また、「壁折リストライク工法」は、プレス工程における前工程形状の最適化などにより、スプリングバックの原因となる応力を打ち消す応力を付与し、スプリングバックを低減する技術です。これらの工法により、材料強度が変動した場合でも、プレス部品の安定生産への貢献が期待できます。
超ハイテン鋼板を湾曲した部品形状へプレス成形する際には、成形途中に湾曲部で発生する「プレスしわ」と成形後に元の形状へ戻ろうとする「スプリングバック」への対処が必要となります。「流入制御工法」は、プレス成形時の材料流入を多工程で最適化することで、プレスしわの中でも特にフランジ部に発生するしわを低減できる点を特徴とする技術です。
JFEスチールは、素材提供だけでなく、お客様の製品開発・商品性能向上を可能にするソリューションを提供するため、自動車の開発初期段階からお客様と協力し合うEVI活動(Early Vendor Involvement)を積極的に展開しています。さまざまな利用技術を開発し、自動車用鋼板における独自の利用技術「JESOLVA®」(JFE Excellent SOLution for Vehicle Application)として体系化し総合的なソリューションを提案しています。今後も自動車部品の超高張力鋼板の適用拡大に貢献し、車体性能向上や軽量化を実現することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
資源効率向上を支えるハイテン接合技術
(超ハイテン鋼板溶接安定化技術「インテリジェントスポット溶接技術」「LME割れ※1抑止溶接技術」)
JFEスチールが開発した自動車用鋼板のスポット溶接技術が、このたび国内自動車メーカー向け部品に採用されました。JFEスチールは、次世代車体設計の高度化ニーズに応えるため、多様な材料および利用技術を提供しています。
スポット溶接では、複雑化する鋼板の組み合わせに対し安定した溶接品質の確保が求められており、お客様からは高難度の板組やハイテン適用を可能にする技術への強い要望がありました。お客様との協業を通じて、国内向け車種に以下の技術が採用され、生産が開始されました。
「インテリジェントスポット溶接技術」は、板厚比※2が大きい3枚以上の重ね板組において、安定した溶接部を形成する技術です。従来は厚鋼板側に発熱が集中し、薄鋼板との間に十分な溶接部を形成しにくい課題がありましたが、通電パターンと電極加圧力を2段階制御することで溶接品質の安定化を実現しました。
また、「LME割れ抑止溶接技術」は、高強度めっき鋼板の溶接時に発生するLME割れを抑制する技術です。JFEスチールは、めっきの冷却・凝固を促進する溶接プロセスを開発し、超ハイテン鋼板溶接部の品質安定性向上を実現しました。本技術の適用とともに、国内生産車種へのJFEスチール超ハイテン鋼板の採用も開始されています。
「インテリジェントスポット溶接技術」「LME割れ抑止溶接技術」をはじめとする利用技術を、「JESOLVA®」ブランドとして体系化し、総合ソリューションを提案しています。
- ※1Liquid Metal Embrittlement(液体金属脆化)の略称
- ※2総板厚を薄板の板厚で割った値。この値が大きくなると薄板の溶接が不安定になる
インテリジェントスポット溶接技術
LME割れ抑止溶接技術
資源効率向上とCO2排出削減に貢献する高加工性ハイテン「JEFORMA®」
JFEスチールは、従来にない高い加工性と衝突エネルギー吸収特性を有し、自動車の軽量化と衝突安全性の向上に貢献する980MPa級高加工性合金化溶融亜鉛めっき(GA)ハイテン鋼板を開発しました。
自動車業界では、自動車走行時のエネルギー効率向上やCO2排出削減を目的とした車体軽量化と、車両の長寿命化に向けた防錆性能向上を目的としてGAハイテン鋼板のニーズが高まっています。一方で、ハイテン鋼板は強度の上昇に伴い加工性の低下や衝突時の破断が課題であることから、プレス成形性の向上や衝突時のエネルギー吸収性の確保が望まれていました。
これらの課題に対し、JFEスチールは、鋼板の高延性化に有効なケイ素(Si)を積極的に活用するため、CGL炉内の雰囲気制御によりSiを鋼板内部に酸化物として閉じ込める表面制御技術を開発しました。さらに、CGL焼鈍プロセスにおいて独自の加熱・冷却ヒートパターン制御を適用することで、高い加工性と優れた衝突エネルギー吸収特性の両立を実現しました。
本開発鋼は、自動車の軽量化による資源利用効率の向上に加え、走行時のエネルギー消費量の低減を通じてCO2排出量の削減に貢献します。また、優れた防錆性能により車両の長寿命化にも寄与することから、ライフサイクル全体での環境負荷低減に貢献する材料です。さらに、電動車向けのエネルギー吸収部材やバッテリー周辺部材への適用拡大も期待されています。
JFEスチールは、本技術を活用した高加工性ハイテン鋼板「JEFORMA®」シリーズを展開するとともに、お客様のニーズに応じた利用技術の開発・提案を進めています。こうした取り組みを通じて、自動車の軽量化、高性能化、安全性向上および長寿命化を実現し、循環型社会の構築とカーボンニュートラル社会の実現の両立に貢献していきます。
なお、本技術はその独創性と産業への貢献が評価され、第72回(令和7年度)大河内記念技術賞を受賞しました。
資源効率向上に貢献する冷間プレスによる自動車骨格部品の統合技術
JFEスチールでは、超ハイテン鋼板と冷間プレス成形を用いた部品統合ソリューションとして、自動車車体のリアメンバ※1をターゲットとした、部品点数削減構造に関する技術を開発しました。
近年、自動車メーカーでは、生産性向上や製造コスト削減の観点から、アルミ鋳造技術を用いた大規模部品統合技術(ギガキャスト)や、プレス成形前に鋼材を加熱し金型によるプレス成形と同時に型冷却・焼き入れを行う(ホットスタンピング)ことで成形性と部品強度を両立する中規模部品統合技術が注目されていますが、本技術はこれらに類する部品統合技術です。
冷間プレスによる部品統合には、成形性についての課題がありますが、自動車用鋼板において体系化された独自のソリューション技術「JESOLVA®」を活用することで、1,470MPa級までの超ハイテン鋼板を用いた大型部品の難成形を可能としました。また、部品統合において生じる、異なる強度を示す部品の一体化のために、TWB(Tailor Welded Blank※2)と、独自の技術である「冷間パッチワーク工法」※3を適用することで、一つの部品の中で強度差を持たせる設計が可能となりました。これにより、小規模な部品統合においても部品点数を削減することが可能となり、生産性の向上および製造コストの低減効果が得られます。
また、統合した部品が大型化すると、物流コストの上昇や、部品損傷時の修繕が広範囲におよぶことに伴うエンドユーザーへの負担などの課題が生じますが、本技術を用いて適切な範囲での部品統合に留めることで、可搬性の確保やリペアに伴う負担軽減を実現します。
リアメンバはスポット溶接された11部品からなる後面衝突からの車体保護を担う大型の部位ですが、本技術を用いることで、後面衝突性能を維持したまま、合計3部品まで部品点数を削減することができ、自動車車体の製造における生産性の向上やコスト削減に貢献します。
このような取り組みの一環として、JFEスチールは、「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」および「人とくるまのテクノロジー展2026 NAGOYA」に初出展しました。本展示会は、モビリティ関連の最先端技術についての総合展示会であり、主に車体製造に関する製品・技術を出展しました。
- ※1車のリアの足回り部品や駆動系部品を保持し、ボディと繋ぐ骨格部品
- ※2板厚や強度の異なる鋼板をレーザ溶接で接合して一枚の鋼板にする加工技術
- ※3プレス加工前の鋼板を重ねてスポット溶接し、複数の鋼板を重ねたまま同時にプレス成形する技術
冷間プレスによる部品統合ターゲットとリアメンバ部品
リアメンバ試作品
ST SuMPO環境ラベルプログラム「SuMPO EPD」の取得
JFEスチールは(一社)サステナブル経営推進機構(SuMPO)が運営する環境ラベルプログラムの「SuMPO EPD」について、36品種で取得しました(缶用鋼板3品種、薄板製品9品種、建材製品9品種、厚鋼板3品種、鋼管4品種、棒鋼・線材製品8品種)。
環境製品宣言(EPD)では、各製品の環境情報が ISO 14044 による LCA(Life Cycle Assessment)手法を用いて定量化され、ISO 14025 に基づく第三者検証に合格した製品情報のみが、EPDプログラムのウェブサイト上で有効な情報として開示されています。
「SuMPO EPD」はISO 14025:2006(環境ラベルおよび宣言-タイプⅢ環境宣言-原則および手順)に準拠して製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体における環境負荷の定量的開示を行う環境ラベルです。当社製品の環境への影響がデータとして可視化され、透明性を高めます。第三者による審査・検証で確認された公平性、信頼性が担保された環境影響データが開示されることにより、お客様が使用する製品の環境負荷を定量的・客観的に評価することが可能になります。
今後JFEスチールは、自社製品について「SuMPO EPD」の取得・公開を積極的に進めていきます。
再生資源の利用・販売拡大
JFEグループは、サーキュラーエコノミーの推進に向けて、再生資源の活用を積極的に進めるとともに、それらを活かした製品・サービスの提供を通じて市場への展開を図っています。資源の有効利用と廃棄物削減を両立させることで、環境負荷の低減と持続可能な成長の実現に貢献しています。
SH 環境商材の取り扱い強化に向けた取り組み
商社事業においては、バイオマス発電所向けの燃料や鉄スクラップの取り扱い数量をKPIに設定し、環境に資する商材の取り扱いを強化してきました。2025年度は環境に資する商材のラインナップ数の拡充として、アルミや再生亜鉛の取り扱いを開始しており、引き続き、サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みを推進していきます。
バイオマス燃料の取り扱い拡大
JFE商事は、マレーシアおよびインドネシアからパームヤシガラ(Palm Kernel Shell:以下、PKS)を、東南アジア諸国から木質ペレットを輸入し、日本国内のバイオマス発電所へ燃料として供給しています。
PKSや木質ペレットは、パーム油の製造や木材加工の過程で発生する副産物や廃材等を原料としており、これらを燃料として活用することで、廃棄物の削減と資源の有効利用を両立しています。こうした取り組みは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現にも貢献しています。
また、これらのバイオマス燃料は、生育過程でCO2を吸収するため、燃焼時に排出されるCO2と相殺されるカーボンニュートラルな燃料と位置付けられています。さらに、原料となる作物や樹木については、伐採後の栽培・植林を行うことで、持続可能なサプライチェーンの構築が推進されています。
JFE商事では、発電燃料のカーボンニュートラル化を促進するため、代替バイオマス燃料の開発・供給にも取り組んでおり、環境負荷の低減とエネルギー転換を推進する企業を目指しています。
スクラップ取り引き拡大による循環型社会発展への貢献
JFE商事はリサイクル事業として、鉄スクラップ、アルミスクラップを扱っており、特に鉄スクラップはカーボンニュートラル達成に向けて、国内外での需要が徐々に拡大していくことが見込まれています。JFE商事は国内外での取り扱い数量を増やすことで循環型社会の拡大に寄与していきます。
ST スクラップ回収・使用拡大の取り組み
鉄は磁力により簡単に分離・回収することが可能なため、93.7%という他素材と比較しても高いリサイクル率を誇っています。また、回収した鉄スクラップに含まれているさまざまな添加成分(合金)の多くを製錬時にガス化や酸化により分離除去することができるため、品質低下を招きにくいという優れた特長があります。この特長が、鉄は高品質・高機能な製品に何度でも生まれ変わることができるというクローズド・ループ・リサイクルを可能としており、新たに投入される天然資源消費量の削減、環境負荷物質排出量の低減、廃棄物の削減が図られることから、ライフサイクル全体での環境負荷の低減に大きく貢献しています。
クローズド・ループ・リサイクルのイメージ図
JFEスチールでは、鉄スクラップを高炉や転炉、電炉において原料として使用しています。従来から、お客様やグループの工場で発生するスクラップを売り戻していただく「リターン屑」の回収・使用を行っていましたが、第8次中期経営計画においてはその数量の拡大をKPIに設定し取り組みを進めています。第7次中期経営計画期間の平均数量に対し回収・使用を2.5倍とする2026年度の目標については、達成を見込んでいます。循環型社会の実現に向けてスクラップの回収・使用を拡大することにより、気候変動問題解決にも貢献していきます。
再資源化・リサイクルの目標と実績
JFEグループは、資源の有効活用を製造業にとって重要な環境課題と認識しており、各社の事業特性に合わせた高い目標を設定し、実績を管理しています。引き続き、以下の高い目標を設定して、循環経済への移行に貢献する取り組みを進めていきます。
また、水資源の利用については、製造業にとって重要な環境課題と認識しており、鉄鋼事業において大量に水を利用するため、水資源の循環利用率に対しても高い目標を設定して実績を管理し、水使用量の削減に取り組んでいます。
2025年度の目標と実績および2026年度の目標
| 事業会社 | 2025年度の目標 | 2025年度の実績・取り組み | 2026年度の目標 |
|---|---|---|---|
| JFEスチール | 副産物の再資源化率:99%以上 | 再資源化率:99.6% | ダスト、スラッジなどの発生・排出抑制と再資源化継続して推進し、再資源化率99%以上を継続する |
| 水資源の高効率利用の維持循環利用率:90%以上 | 循環利用率:92.2% | 循環利用を推進し水使用量の削減に取り組み、循環利用率90%以上を継続する | |
| JFEエンジニアリング |
建設現場でのリサイクル率
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建設現場でのリサイクル率
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建設現場でのリサイクル率
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オフィス資源物再生資源化率
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オフィス資源物再生資源化率
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オフィス資源物再生資源化率
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| JFE商事 |
鉄スクラップのグローバルな資源循環
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2020年度比:▲3% 海外向け販売は拡大するも、粗鋼生産減の影響もあり国内向け販売が減少し目標未達 |
鉄スクラップのグローバルな資源循環
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JFEスチールの副産物の最終処分量・再資源化率推移
- ※集計範囲:JFEスチールの国内連結子会社22社
JFEエンジニアリングの廃棄物排出量の推移(現地工事部門)
製作所における産業廃棄物関連の定量データは以下をご参照ください。
水資源の効率的利用
JFEグループは、水資源を事業活動を支える重要な自然資本の一つと認識しています。一方で、気候変動の進展や人口増加、産業活動の拡大などを背景として、水資源を取り巻く課題は世界的に深刻化しており、企業には水資源の持続可能な利用が求められています。
JFEグループでは、事業活動における取水量の削減や水の循環利用の推進、適切な水質管理を通じて、水資源の効率的な利用と地域の水環境保全に取り組んでいます。また、循環経済への移行や生物多様性の保全・自然再興への取り組みとの関係も踏まえ、水資源に関するリスクと機会を適切に管理しながら、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
今後も、事業特性に応じた水資源管理を推進するとともに、水利用効率の向上や環境負荷の低減に取り組み、水資源の持続可能な利用に努めていきます。
ST 鉄鋼事業における水の循環利用目標の設定と実行
JFEスチールでは、国内の7生産拠点のすべてで水の管理計画を策定し、水使用量を把握しており、循環利用率を高めることで、取排水量の低減、水資源の効率利用を推進しています。冷却等で大量に使用する水の循環利用の目標を90%以上と定めており、これは使用時の蒸発量を考慮すれば極めて高い水準です。使用した水は生物処理や化学処理等の徹底した浄化処理を行うことで循環率を高め、目標を継続達成しており、2025年度における工業用水の循環率は92.2%と高い水準を維持しています。
JFEスチールの工業用水受入量・循環率推移
- ※1工業用水循環率(%)=(総使用量-工業用水受入量)/総使用量×100
- ※2数値を遡及して修正
- ※3集計範囲:JFEスチールの国内連結子会社22社
EN エンジニアリング事業における水資源の効率的な使用
JFEエンジニアリングおよびグループ各社は、それぞれの事業拠点において水の効率的な使用に努めています。
水関連の定量データは以下をご参照ください。