JFEビジョン2035と第8次中期経営計画

JFEグループは、「豊かな地球の未来のために、創立以来最大の変革に挑戦」を掲げ、第7次中期経営計画(2021~2024年度)に取り組んできました。極めて重要な経営課題と位置付けた「気候変動問題」については、鉄鋼事業における2024年度温室効果ガス排出量のマイルストーン18%削減(2013年度比)を達成するとともに、2030年度での排出量30%以上削減(2013年度比)の達成に向けて、革新電気炉(2028年度稼働)導入を決定する等、順調に取り組みを進めています。一方で、想定を大幅に超える鉄鋼の事業環境悪化を主要因として、2024年度連結事業利益は中期計画目標の3,200億円に対して1,353億円に留まり、大幅な未達成となりました。


こうした状況の中でステークホルダーの皆様のJFEグループに対する主な懸念事項としては、①あらゆる分野で競争が激化する中で持続的に成長していけるのかという「経済的な将来性」に対する不安と、②カーボンニュートラル(CN)に技術面・資金面で対応し完遂できるのかという「CNへの対応」に対する不安の2点であると考えています。この2つの課題に対し、私たちの目指す姿と戦略をお示しするために、今回2035年をターゲットとした長期ビジョン「JFEビジョン2035」を策定しました。


JFEグループの目指す姿

存在意義

JFEグループの目指す姿を検討する上で、各事業それぞれの強みを活かして社会の中でどのような役割を果たし貢献していくべきかを改めて見つめ直し、事業会社で広く社員が参画し議論を重ね、下記の通りパーパスを策定いたしました。

2035年の目指す姿「JFEビジョン2035」

JFEグループの企業理念および行動規範、ならびに事業会社毎に策定したパーパスに基づいて、JFEグループが目指す姿として、「CNに向けた技術開発のトップランナー」であること、2050年CNの達成に必要な技術開発や設備投資を実行するための利益水準として「グループ事業利益7,000億円(2035年度)」を設定しました。さらに、厳しい事業環境においても「JFEグループの目指す姿」に向かっていくための成長戦略を推進するべく、第8次中期経営計画(2025~2027年度を対象)を策定しました。

  1. 高品質・高機能鋼材が製造可能な高効率・大型の革新電気炉

第8次中期経営計画におけるサステナビリティへの取り組み

第8次中期経営計画を策定に伴って、経営上の重要課題およびKPIの見直しも実施しました。これまでの環境課題・社会課題への取り組みと長期ビジョンからバックキャストしたJFEグループの持続的成長に向けて必要な取り組みを抽出・精査し、16項目の経営上の重要課題を設定しました。


環境的持続性への取り組み

前中期で経営上の極めて重要な経営課題と位置付けてきた「気候変動問題」に加え、本中期においては「循環経済への移行」、「生物多様性の保全・自然再興」に対してグループ全体で積極的に取り組んでいきます。

気候変動問題への取り組み

2021 年に策定した「JFEグループ環境経営ビジョン2050」に基づき、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みをさらに推進していきます。鉄鋼事業においては、本中期経営計画期間を2030年度GHG排出量30%以上削減(2013年度比)と2035年超革新技術開発完了に向けた準備期間と位置付け、西日本製鉄所倉敷地区での革新電気炉の稼働や超革新技術の開発を推進します。エンジニアリング事業においては社会のGHG排出削減貢献量の2030年目標を2,000万トンと設定し、洋上風力発電の需要取り込みや今後社会実装が進むと見込まれる水素・アンモニア・CCS分野のEPC受注や事業参画を図ります。

  1. 設計、調達、建設の3つの工程を一貫して請け負うこと

循環経済への取り組み

JFEグループとして取り組むべき重点項目として、「再生資源の利用・販売拡大」、「資源効率の高いエコプロダクト/エコソリューション技術の開発」、「副産物・廃棄物の資源への転換」を掲げ、各事業会社の強みやグループシナジー効果を活かした取り組みを推進していきます。

生物多様性の保全・自然再興に関する取り組み

JFEグループの事業活動は生物多様性や自然資本に依存し、また影響を与えているという認識を深め、リスクの低減を図る活動を推進します。同時にこれらに貢献するプロセス・製品・技術の開発のみならず、地域社会やサプライチェーンとの連携も含めて多様なアプローチで活動を推進していきます。さらに、JFEグループはTNFD提言に賛同し、TNFDフレームワークに沿った情報開示を進め、社会と広く共有していきます。

  1. Taskforce on Nature-related Financial Disclosure

人財戦略・人的資本経営の推進

JFEグループでは変革の時代において「人材こそが企業成長の原動力」であると考えています。経営戦略の実行・実現に向けて「会社の成長」と「社員の成長」を連動させる施策が必要であるとの認識から、長期的な目線での人財戦略を策定しました。「人材ポートフォリオの構築」を狙いとした人材確保策、「人材の能力最大発揮」を狙いとしたDEI推進、働きがいの向上といった取り組みを推進していきます。

コーポレートガバナンス

CNやDX等、当社事業を取り巻く経営環境が急激かつ大きく変化していくことが想定される中、これらに迅速に対応していくべく「監査等委員会設置会社」に移行しました。前中期経営計画で取り組んできた取締役会の実効性向上・監督機能強化に向けた取り組みをさらに進展させ、経営の意思決定の迅速化、取締役会における経営方針や戦略に関する議論の充実およびさらなる取締役会の監督機能の強化等を目指します。また、役員のESG報酬として、新たな算定指標の追加も行います。

主要財務・収益指標と株主還元方針

本中期経営計画における主要財務指標は以下の通りです。また、当社は株主の皆様への利益還元を最重要経営課題の一つと考えており、グループ全体として持続性のある企業体質の確立を図りつつ、積極的に配当を実施していく方針としています。引き続き配当性向30%程度としますが、安定的に配当を実施する観点から80円/株を下限とする方針としています。

第8次中期経営計画
2027年度
グループ全体 連結事業利益 4,000億円
ROE 少なくとも10%
Debt/EBITDA 3倍程度
D/E 60%程度
事業会社 鉄鋼事業 セグメント利益 2,600億円
エンジニアリング事業 セグメント利益 420億円
商社事業 セグメント利益 600億円
株主還元 配当方針 配当性向30%程度
但し、80円/株を下限とする

各事業会社の主要施策についてはJFE GROUP REPORT 2025(統合報告書)を参照ください。