サステナビリティマネジメント
基本的な考え方
JFEグループは、「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。」という企業理念に基づき、今後も長期にわたって、豊かな地球の未来のための商品やサービスを提供する存在であり続けることを目指しています。また、社会の持続的発展と人々の安全で快適な暮らしに寄り添う「なくてはならない」存在を目指し、社会の皆様に広く認めて頂ける企業となることが、使命であると考えています。環境的持続性への取り組みに加え、人財戦略・人的資本経営の推進などに重点的に取り組むことで、持続的な成長と企業価値向上を実現していきます。
2035年の目指す姿「JFEビジョン2035」
2050年のカーボンニュートラルの実現を目指す当社にとって、2035年はカーボンニュートラル技術の開発を完了させた上で、以降その技術を実装した大規模プロセス転換を進めていく極めて重要なタイミングです。「カーボンニュートラルに向かって鉄鋼業界は技術面・資金面で対応し完遂できるのか」、「あらゆる競争が激化する中、JFEは果たして持続的に成長していけるのか」というステークホルダーの皆様の懸念に対して2035年の目指す姿を以下のように設定しました。
CNに向けた技術開発でのトップランナー |
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グループ事業利益増大(セグメント利益7,000億円) |
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グループサステナビリティ推進体制
JFEグループの企業価値の毀損防止と向上の観点から、リスクマネジメントを含むグループ全体のサステナビリティへの取り組みを監督・指導する体制として、JFEホールディングス社長を議長とし、副社長、監査等委員(常勤)、執行役員、各事業会社社長等で構成される「グループサステナビリティ会議」を設置しています。また、「グループサステナビリティ会議」のもとに「グループコンプライアンス委員会」、「グループ環境委員会」、「グループ内部統制委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「開示検討委員会」、および「企業価値向上委員会」を設置し、グループとしての方針審議や方針の浸透状況の監督、課題や発生した問題および対処事例等についての情報共有を行い、JFEグループのサステナビリティへの取り組みを監督・指導しています。また、「グループサステナビリティ会議」における審議事項のうち、グループの基本方針、活動計画、重要施策の内容および重要事態発生時の対応等について、取締役会に定期的に報告し審議することにより、指示監督を受けています。
グループサステナビリティ会議の活動状況
「グループサステナビリティ会議」は、約3カ月に1回程度開催し、独占禁止法、公務員等に対する贈収賄を含む汚職防止に関する法令等の遵守、および人事労働、安全・防災、環境、気候変動、品質、財務報告、反社会的勢力への対応、情報セキュリティ等のESGリスクも含むリスクマネジメントや社会貢献等の多岐にわたる範囲を対象として、グループの取り組みに関する方針審議(重要案件に対する指示・指導を含む)、方針の浸透状況の監督、および課題、発生した問題への対処事例等についての情報共有、水平展開を行っています。
各事業会社との連携
各事業会社においても各々の会議体を設置しており、JFEグループの企業価値の毀損防止と向上の観点からグループ全体の取り組みを推進するため、グループサステナビリティ会議と連携して運営しています。JFEスチール、JFEエンジニアリングおよびJFE商事においても、コンプライアンスや環境、安全、防災等に関する委員会等を設け、サステナビリティの実現に向け取り組んでいます。
サステナビリティ推進体制図

従業員を対象とした意識調査による確認と改善
JFEグループでは、グループの企業理念・行動規範・企業行動指針の浸透・徹底を確認すること、潜在的なリスクの洗い出し等を目的として、当社および事業会社の役員・従業員を対象に「企業倫理等に関する意識調査」を定期的(2024年度から2年に1回に変更)に実施しています。2024年度に実施した調査では、多くの従業員がグループ理念・グループ行動規範や自己の業務に関する法令・規程類を十分に理解し、また、職場において「公務員等贈賄防止に関するグループ基本方針」、「接待・贈答ガイドライン」を遵守していることを確認するなど、高いコンプライアンス意識を持って業務を行っていることを確認できた一方で、今後の課題も把握しました。企業倫理等に関する意識調査の結果およびその対応方針については、2025年度にグループサステナビリティ会議および取締役会で報告しています。引き続き、グループサステナビリティ会議および取締役会の監督のもと、各社での具体的な取り組みを行い改善に努めていきます。
なお、グループ理念および行動規範については、第8次中期経営計画策定時にJFEグループ全体の求心力として、創業以来22年を経て今後も不変の理念であることを、JFEホールディングス取締役会で改めて確認しました。
リスク管理
JFEホールディングスが持株会社として、「内部統制体制構築の基本方針」に基づきグループの包括的なリスク管理を担っています。JFEホールディングスの社長が議長を務める「グループサステナビリティ会議」を通じてグループ横断的に情報の集約と管理の強化を行い、リスクの発生頻度や影響の低減を図っています。
気候変動問題などをはじめとするESGリスクの管理についても、担当執行役員などがリスクの認識に努め、必要に応じてグループサステナビリティ会議において確認・評価し、その対処方針を審議・決定しています。特に経営にとって重要な課題については、「グループ経営戦略会議」で審議しています。
取締役会は、気候変動問題などのESGリスクやサステナビリティに関する取り組みに係る重要事項について決議し、または報告を受けています。
ESGリスクのモニタリング方法
「グループサステナビリティ会議」、「グループ経営戦略会議」または「経営会議」は、経営に影響を及ぼす可能性のあるリスクについてモニタリングしています。グループ環境委員会ではリスクに関する情報の集約と管理の強化を行い、リスクの発生頻度や影響の低減を図るだけでなく、機会の最大化に取り組んでいます。
グループサステナビリティ戦略
第8次中期経営計画の策定と経営上の重要課題の見直し
2035年をターゲットとした「JFEビジョン2035」からバックキャストし、足元3年間を対象とした第8次中期経営計画(2025~2027年度)を策定しました。厳しい環境において、「JFEグループの目指す姿」に向かっていくためには、これまで以上に強い覚悟で成長戦略を推進していく必要があり、JFEグループの強みを活かした品種戦略に基づく国内でのスリムで強靭な体制の再構築と、海外の成長分野・地域における積極的な投資を含めた事業拡大戦略を基軸としています。
引き続き、気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、これに応えるべく策定した「JFEグループ環境経営ビジョン2050」に沿って、「鉄鋼事業のCO2排出量削減」と「社会全体のCO2削減への貢献」の活動を推進するとともに、カーボンニュートラルへの挑戦を成長の機会ととらえ、さまざまな技術開発に注力しています。当社事業の中核である「鉄」を、今後も社会の発展や私たちの生活に欠かせない素材として社会に安定的に供給するために、今後も体系的な取り組みを継続していきます。第8次中期経営計画の策定に際し、経営上の重要課題についても見直しを行いました。
第8次中期経営計画の詳細は以下をご参照ください。
経営上の重要課題(マテリアリティ)
第8次中期経営計画における経営上の重要課題
JFEグループは、さまざまなステークホルダーのニーズに対し、グループの資本をどのように投入すれば社会に対するマイナスの影響を最小化し、当社グループならではの社会的価値創造の最大化につながるのかという観点から、重要課題の特定とKPIの設定による課題への取り組みを推進してきました。
第8次中期経営計画においては、これまで取り組んできた課題も踏まえつつ、「JFEビジョン2035」の実現に向けて足元の3年間で特に注力して取り組むべき課題を「持続的成長のための事業基盤」という観点と「ビジョン達成に向けた成長戦略」という観点で抽出し、抽出された課題に対して重要性評価を行い、経営上の重要課題(6分野・16項目)を特定しました。
課題の分野 | 経営上の重要課題 |
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気候変動問題への取り組み | ① JFEグループのGHG排出量削減と社会全体のGHG削減への貢献 |
循環型社会実現への貢献 | ② サーキュラーエコノミー実現にむけた取り組み推進 |
強靭な収益力の獲得 | ③【鉄鋼事業】販売製造実力の向上と事業領域の拡大・高度化 |
④【エンジニアリング事業】収益力・競争力の向上および成長分野への投資推進 | |
⑤【商社事業】経営基盤刷新と海外成長市場でのインサイダー化推進 | |
社員の労働安全衛生の確保 | ⑥ 労働災害の防止 |
⑦ 健康経営の推進 | |
人的資本経営の推進 | ⑧ 働きがいの向上 |
⑨ DEIの推進 | |
⑩ 人材の確保・育成の推進 | |
経営の根幹を揺るがすリスクの低減 | ⑪ 事業に関わる一人ひとりの人権尊重 |
⑫ 企業倫理の徹底と法令遵守 | |
⑬ 適正な品質保証の実施推進 | |
⑭ 情報セキュリティレベル向上 | |
⑮ 地域・社会・自然との共生 | |
⑯ 健全な財務体質の維持 |
経営上の重要課題の特定プロセス
これまで中期経営計画の更新に際し、経営上の重要課題についても再評価を行っています。今回も第8次中期経営計画の策定にあたり、経営上の重要課題について以下のプロセスで特定を行いました。
第7次中期経営計画で設定した経営上の重要課題とそれぞれに対して設定したKPIに対する取り組みの実績や成果を再評価しました。
2020年度までのCSR重要課題の特定については以下をご参照ください。
2021年度に特定した経営上の重要課題については以下をご参照ください。
2035年をターゲットとした長期ビジョンを策定し、「持続的成長のための事業基盤」と、「ビジョン達成に向けた成長戦略」の観点で第8次中期経営計画における重要課題の候補を28項目を抽出しました。
- 労働災害の防止
- 大気・水環境の保全
- 健康経営の推進
- 生産拠点の防災リスク低減
- 事業に関わる一人ひとりの人権尊重
- 社会インフラ老朽化の対応
- 企業倫理の徹底と法令遵守
- 有事の際の従業員の安全確保
- 適正な品質保証の実施推進
- 経済安全保障リスクへの対応
- 情報セキュリティレベル向上
- 天災等への防災対策
- 地域・社会・自然との共生
- 適切な情報開示
- 健全な財務体質の維持
- ステークホルダーへの利益還元
- JFEグループのCO2排出量削減と社会全体のCO2削減への貢献
- 事業領域の拡大、高度化による幅広い社会への商品、サービスの提供
- 働きがいの向上
- 販売製造実力の向上を通じた持続可能なものづくり
- DEIの推進
- 持続的成長に資する利益規模の実現
- 人材の確保・育成の推進
- 運営型事業への継続的投資を通じた事業拡大
- サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組み推進
- デジタル技術による業務効率化、生産性向上
- DXによる商品・サービスの競争力向上
- トレード・事業収益バランス
抽出された課題に対して当社の成長における重要性と社会・ステークホルダーにおける重要性を評価し、第8次中期経営計画における経営上の重要課題16項目を特定しました。
- 労働災害の防止
- 健康経営の推進
- 事業に関わる一人ひとりの人権尊重
- 企業倫理の徹底と法令遵守
- 適正な品質保証の実施推進
- 情報セキュリティレベル向上
- 地域・社会・自然との共生
- 健全な財務体質の維持
- JFEグループのCO2排出量削減と社会全体のCO2削減への貢献
- 働きがいの向上
- DEIの推進
- 人材の確保・育成の推進
- サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組み推進
- 【鉄鋼事業】販売製造実力の向上と事業領域の拡大・高度化
- 【エンジニアリング事業】収益力・競争力の向上および成長分野への投資推進
- 【商社事業】経営基盤刷新と海外成長市場でのインサイダー化推進
特定した経営上の重要課題に対する達成目標・目指す姿と、その達成に向けた活動管理指標としてのKPIを設定しました。経営上の重要課題については、中期経営計画の策定に際して再評価することに加え、KPIの達成状況・実績のレビューも含めた重要性評価を毎年実施しています。
経営上の重要課題 【検討プロセス】

経営上の重要課題に対する取り組み
2024年度の実績評価および2025年度のKPI設定
2021年度に特定した経営上の重要課題に対して、2024年度のKPIの実績を評価するとともに、上述のプロセスによって特定された第8次中期経営計画における経営上の重要課題に対して新たに2025年度のKPIを設定しました。2024年度の実績および2025年度のKPIは、各事業会社の経営会議等での議論の後、グループ経営戦略会議および取締役会における審議を経て確定しました。KPIを達成していくことで、企業の社会的責任を果たしていくとともに、経営の根幹を揺るがすリスクの低減や強靭な収益力の獲得、財務目標の達成などにつなげていきます。
財務指標の改善に向けた取り組み
財務目標の達成において改善ドライバーとなる財務指標の向上が重要です。各取り組みと財務目標との関係性を意識し、実効性を高めていくことで中長期的な企業価値向上に結び付けていきます。

【売上収益成長率の改善】
海外成長地域でのインサイダー型事業やサーキュラーエコノミー推進に資する事業など成長事業の拡大を図ります。また、鉄鋼事業における高付加価値品比率の向上や新商品・新技術の開発件数、エンジニアリング事業におけるプロジェクトの採算性向上などをKPIとして設定し、売上収益向上に向けた活動を推進します。
【製造原価率の改善】
生産効率・歩留の向上に継続して取り組み、製造原価率の改善を図ります。また、DX活用による改善をさらに推進するため、高度DX人材育成人数をKPIとして設定し、人材の充実を図ります。
【販管費率の改善】
労働生産性の向上を目的に、各事業において基幹システムの刷新などによる業務効率化・自動化を進めます。特に鉄鋼事業では、基幹システムの刷新・DS・自動化による合理化と労働生産性向上による収益貢献や、労働力・人口減に追随した省力推進をKPIとして管理していきます。
【運転資金回転率・固定資産回転率への影響】
上記の改善活動や在庫の適正管理・使用に加え、最適な国内体制構築、事業の再編・統合、京浜地区の土地活用等を推進することによる改善を図ります。また、鉄鋼事業を中心にこれまで培ってきた知見・ノウハウを活用したソリューションビジネスの事業収益をKPIとしても管理し、拡大していきます。
JFEグループの取り組みとSDGsの関連性
JFEグループでは、グループの中長期的な持続的成長と企業価値の向上実現していくため、さまざまな取り組みを行っています。
本報告書で掲載している活動を以下に示しました。これらの多様な活動を通じてSDGsの達成への貢献を目指しています。
活動の例 | 関連する主なSDGs | |
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ESG課題への取り組み | ||
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