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第7次中期経営計画の進捗

JFEグループは、2021年に中長期的な企業価値向上を確実に実現することを目指して、2021年度から2024年度までを対象とした第7次中期経営計画(以下、中期計画)を策定しました。中期計画期間を創立以来最大の変革期ととらえ、長期の持続的成長のための強靭な経営基盤を確立するとともに、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在を目指して、変革に向けた挑戦を続けています。「JFEグループ環境経営ビジョン2050」で示した気候変動問題への取り組みをはじめ、人材の活躍推進、地域社会への貢献やサプライチェーンの人権尊重等の取り組みを推進することにより、環境的・社会的持続性の確保に取り組んでいます。また、鉄鋼事業における構造改革の完遂やDX戦略の推進等によってコスト競争力を高めるとともに、脱炭素化の進展を事業機会ととらえ、高機能電磁鋼板等の高付加価値品の供給や再生可能エネルギー発電の拡大等の成長戦略を推進することにより、安定した収益力による経済的持続性の確立に向けて取り組んでいます。

第7次中期経営計画(CSR報告書2021)

第7次中期経営計画の取り組み状況

環境的・社会的持続性の確保

気候変動問題への対応

JFEグループは、気候変動問題への取り組みを極めて重要な経営課題ととらえ、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を掲げ、カーボンニュートラルの実現に向けて「鉄鋼事業のCO2排出量削減」 「社会全体のCO2削減への貢献」を戦略の軸として取り組みを進めています。2022年度の鉄鋼事業におけるCO2排出量は2013年度比で約13%の削減となり、中期計画の目標である18%以上削減に向けて継続して取り組んでいきます。また、エンジニアリング事業における再生可能エネルギー発電や廃棄物発電などのプラント建設、運営事業の拡大により、2022年度の社会全体のCO2排出量削減への貢献量は1,114万t-CO2となり、中期計画の目標である1,200万t-CO2の達成に向けて着実に進展しています。

鉄鋼事業では、2030年度においてCO2排出量を2013年度比で30%以上削減し、2050年にカーボンニュートラルを実現することを目指しています。2022年度は、より具体的なCO2削減計画※1を策定し、低炭素鉄鋼プロセスへの転換を進める2030年までをトランジション期、超革新技術を確立・実装しカーボンニュートラルを目指す2050年までをイノベーション期と位置付け、その実現に向けた一歩を踏み出しました。2030年度30%以上削減の目標に向けては、転炉においてスクラップ使用量を拡大し、大幅なCO2排出量削減が可能となる環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス(DRP®)を全地区に導入しました。加えて、仙台製造所における電気炉の増強や千葉地区のステンレス製造プロセスにおける電気炉の導入等を決定しました。倉敷地区においては、高炉の改修時期に合わせて高効率・大型電気炉の導入も検討しており、目標の達成に向けて必要な設備投資を実行していきます。2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、NEDOグリーンイノベーション基金事業の支援を受け、超革新技術の開発を複線的に進めています。千葉地区においては、カーボンリサイクル高炉※2の試験炉建設工事に着手しており、超革新技術の早期実装を目指し、研究開発を加速していきます。

また、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を従来の製品より大幅に削減したグリーン鋼材「JGreeX(ジェイグリークス)」の供給を開始することを決定し、2023年度は20万トン程度の供給を予定しています。カーボンニュートラル社会の実現に貢献できるグリーン鋼材の価値をお客様に認めていただけるよう市場の創出に積極的に取り組んでいきます。

社会全体のCO2削減への貢献では、EV向けモーターや変圧器の効率性向上に資する電磁鋼板について、国内において倉敷地区の生産能力を現行の3倍に増強する投資を決定し、海外ではインドにおいてJSWスチール社と方向性電磁鋼板の製造販売会社を設立することに基本合意しました。また、エンジニアリング事業における再生可能エネルギー発電事業等の拡大に加え、洋上風力発電の事業化にグループ全体で取り組んでいます。2022年度は着床式基礎構造物の製造・供給体制を整備すべく、岡山県笠岡市においてモノパイル製造工場の建設に着手しました。環境配慮型商品の供給や再生可能エネルギー関連の事業を拡大し、社会全体のCO2を削減することに貢献していきます。

※1カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ

※2カーボンリサイクル高炉:高炉から排出されるCO2をメタン化し、還元材として高炉に吹き込む技術

社会課題に対する取り組み

当社グループが将来にわたって持続的な成長を成し遂げるためには、環境課題とともに、社会課題への取り組みも不可欠です。当社グループは、人権が尊重・擁護される社会の実現に向けて人権デューディリジェンスに取り組んでいます。さらなる取り組みの深化に向けて、2023年4月にグループ人権基本方針の改正を行いました。今後もサプライチェーンも含めたすべてのステークホルダーに対する人権尊重のために、取り組みを拡大していきます。

従業員の安全・健康の確保は企業活動の基本要件であり、特に安全については、「重大災害ゼロ」の実現に向けて、設備そのもので災害の発生を防止する取り組みに注力しています。2022年度も計画通り、グループ全体で年間100億円規模の安全投資を実行しました。また多様な背景をもつ人材の能力・意欲を最大限に引き出すため、ダイバーシティ&インクルージョンや働き方改革の取り組みを推進しています。2022年度は女性採用や女性管理職の比率について、より意欲的なKPIを設定して取り組みを推進しています。人的資本への投資を通じて、多様な人材の確保や人材の育成、従業員が働きがいをもって能力を最大限に発揮できる職場環境や制度の整備などを進めていきます。

また、2022年度以降は、役員の業績連動報酬について、従来の財務指標に加え、環境や社会に関する非財務指標も用いて算定することとしています。2022年度には、従業員の安全に関する指標を導入しました。さらに、経営の最重要課題と位置付けている気候変動問題への取り組みを加速させるインセンティブとして、2023年度から気候変動に関する指標を導入することを決定しました。

中期計画で掲げた環境・社会的持続性の確保を目指して、気候変動問題を中心とするESG課題への取り組みを積極的に推進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

経済的持続性の確立

量から質への転換と構造改革の進捗

2022年度においても経済的持続性の確立に向けた中期計画の重点施策を着実に進めました。鉄鋼事業においては、原料コスト変動や諸物価高騰の価格への反映、エキストラ見直し、価格水準の是正等の販売価格改善を推進し、スプレッドは前年度に対して740億円(3千円/トン)の大幅改善となりました。また高付加価値品の比率は、前年度から2%増加し47%となり中期計画の50%に向け着実に進捗しています。重点分野である自動車のハイテンや電磁鋼板、インフラ建材の拡販を実行することで高付加価値品比率を向上させ、さらなる販売価格、スプレッドの改善を目指します。構造改革関連は、千葉地区の缶用鋼板設備を休止し福山地区への集約を完了しました。また千葉地区の高炉を改修し、着実に立ち上げを実施しました。2023年9月には京浜地区の上工程の休止を予定しており、構造改革を完遂して量から質への転換を推進していきます。構造改革後の京浜の土地利用についても順調に進展しており、南渡田北地区の北側の事業パートナーの選定、扇町の土地売却を決定しました。さらに、川崎市の土地利用方針の公表を受け、2023年9月には当社としての扇島の土地利用方針を公表する予定です。

成長戦略の推進

インドのJSWスチール社と方向性電磁鋼板製造販売会社の共同設立については2023年8月に正式に合弁契約を締結しました。現地生産化による事業戦略を深化させていきます。加えて、高付加価値品製造や環境負荷低減等に関する技術・操業・研究ノウハウを提供するソリューションビジネスの受注活動にも注力しています。これらの取り組みを着実に実行することにより、中期計画の鉄鋼事業の収益目標を当初計画より300億円上積みし2,600億円としています。

エンジニアリング事業については2022年度のセグメント利益は資機材の高騰影響等により落ち込みましたが、受注は5,649億円と過去最高となりました。商社事業につきましては、2022年度のセグメント利益は651億円と過去最高を計上しました。両事業とも中期計画に対してさらなる上積みを目指して取り組みを進めていきます。

DX戦略の推進

中期計画ではDXを創立以来最大の変革の鍵となる重要な戦略と位置付けています。2022年度は、鉄鋼事業のデータサイエンス技術による設備異常予兆検知システムの適用拡大などの取り組みを推進しました。従来から取り組んできた業務改革や生産性向上等、内部最適化への取り組みに加え、DXを活用した外部(社外)への付加価値提供や新規ビジネス創出にチャレンジし、足元の急激かつ大幅な変化を成長機会へ転化する足掛かりとしていきます。新規ビジネスの一例として、エンジニアリング事業においてボイラー発電プラント向けのパッケージサービス(RODAS®)の提供を開始し、本サービスは2022年度の省エネ大賞を受賞しました。なお、DX投資は1,200億円程度(4カ年合計)を計画していますが、2022年度までに5割弱を意思決定し、着実に進捗させています。鉄鋼事業でのCPS(サイバー・フィジカル・システム)化の推進、エンジニアリング事業でのデジタル技術を活用した業務プロセス改革など各種施策をさらに推進していきます。

効果的な投資の実行と財務健全性の両立

中長期の成長に向けた攻めの経営には安定した財務基盤の確立が必要であり、そのためには十分な収益性を確保するための選択と集中に基づく効果的な投資の実行と財務健全性の確保を両立させることが重要です。2022年度末の有利子負債残高は、前期に比べ135億円増加し1兆8,629億円、中期計画の財務目標として掲げているDebt/EBITDA倍率は3.7倍となりました。ただし、現預金の積み上げもあり、有利子負債残高と現預金をネットすると40億円程度ですが前年度より減少というポジションになっています。D/Eレシオについては67.8%となり、中期計画目標の70%程度を2年前倒しで達成しました。引き続き、事業や資産の見直しによる徹底した資産圧縮と、棚卸資産圧縮等によるCCC(Cash Conversion Cycle)の改善により、投資に向けた必要資金を確保するとともに財務健全性の確保に努めていきます。

JFEグループは、中長期的な持続成長と企業価値の向上を目指して中期計画で掲げた施策を完遂するとともに、不透明で急激な環境変化に迅速かつ的確に対応して困難な状況を乗り越えていきます。

グループ全体の財務・収益目標と株主還元方針と2022年度の実績および2023年度見込み

財務・収益目標 第7次中期経営計画
(最終年度:2024年度)
2022年度の実績 2023年度見込み
連結事業利益
(鉄鋼事業 棚卸資産評価差等除き)
3,200億円 2,358億円
(1,628億円)
2,900億円/年
(3,150億円)
親会社所有者帰属当期利益 2,200億円 1,626億円 1,900億円
ROE 10% 7.9% 8.7%
Debt/EBITDA 3倍程度 3.7倍
D/Eレシオ 70%程度 67.8%
株主還元 第7次中期経営計画 2022年度の実績 2023年度見込み
配当性向 30%程度 28.5%(80円) 30.6%(100円)

事業会社の財務・収益目標と2022年度の実績および2023年度見込み

事業会社の財務・収益目標 第7次中期経営計画
(最終年度:2024年度)
2022年度の実績 2023年度見込み
鉄鋼事業 トンあたり利益
(棚卸資産評価差等除き)
10千円/トン 7千円/トン
(3千円/トン)
9千円/トン
(10千円/トン)
セグメント利益
(棚卸資産評価差等除き)
2,300億円 1,468億円
(738億円)
2,000億円
(△2,250億円)
エンジニアリング事業 セグメント利益 350億円 134億円 250億円
売上収益 6,500億円 5,125億円 5,500億円
商社事業 セグメント利益 400億円 651億円 480億円

投資計画・資産圧縮計画と2022年度までの累計実績

計画内容 第7次中期経営計画(4か年合計) 2021~2022年度の実績累計
投資 総設備投資・投融資 14,500億円程度 計画の50%程度を採択
GX投資※1 3,400億円程度 計画の50%程度を採択
(洋上風力発電事業関連、無方向性電磁鋼板製造設備増強など)
DX投資※2 1,200億円程度 計画の50%弱を採択
(製鉄所システムリフレッシュなど)
資産圧縮 2,000億円程度 870億円

※1GX投資:グリーントランスフォーメーション投資

※2DX投資:デジタルトランスフォーメーション投資