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ニュースリリース


JFEホールディングス株式会社

2023年 JFEホールディングス社長年頭挨拶

代表取締役社長  柿木 厚司

代表取締役社長 柿木 厚司

 

皆さん、明けましておめでとうございます。

新年にあたり、JFEグループで働く皆さんに一言ご挨拶を申し上げます。

 

昨年は、ウクライナ情勢の長期化に伴い世界経済の先行き不透明感が前年に比べて更に強まるとともに、物価高騰や円安が進行し、厳しい事業環境が続いた年でした。 鋼材需要は新型コロナウイルスの感染拡大影響による落ち込みからの持ち直しが見られたものの、自動車生産や海外鋼材市況の回復はまだ充分ではありません。特に、世界の鋼材市況に大きな影響を及ぼす中国では、ゼロコロナ政策による内需低迷、とりわけ不動産市場の不調が継続しており、中国政府による景気対策など引き続き注視が必要です。 エンジニアリング事業では、資機材費の高騰や海外における工事損益悪化が収益に大きな影響を及ぼしています。 このような厳しい環境下で、「創立以来最大の変革期」として2021年度よりスタートした第7次中期経営計画(以下、中期計画)は2年目が過ぎようとしています。当社グループの2022年度の業績は一定の黒字となる見通しではあるものの、中期計画で掲げた収益目標には到達しておらず、安定した収益基盤の確立は道半ばです。鉄鋼事業の構造改革に向けた設備集約等については社内外の関係者のご理解とご協力のおかげで計画通り進捗しています。構造改革後を見据えた千葉地区第6高炉の改修工事も順調に進んでおり、今月火入れを予定しています。中期計画の重点課題の一つである「量から質への転換」に向けた取り組みは一定程度進展したと評価しています。また、京浜地区の土地活用についても、ENEOS(株)、(株)JERAとの水素・アンモニア供給事業の協業検討等が昨年より開始されました。 更に、経営の最重要課題と位置付けている気候変動問題への対応に関しては、昨年5月にカーボンニュートラル製鉄の実現に向けた具体的なロードマップを策定し、2027~2030年に倉敷地区に高効率・大型電気炉の導入を検討することなどを公表しました。同年9月には、伊藤忠商事(株)、エミレーツ・スチールと共に低炭素還元鉄のサプライチェーン構築に向けた詳細な事業化調査を共同で推進すること、10月には、2023年度を目標にグリーン鋼材の販売を開始することも表明しています。また、洋上風力発電の事業化についてもモノパイル工場の建設に着手するなどグループ一丸となって取り組みを進めており、当社グループの中で気候変動問題への取り組みが様々な形で本格化しています。 一方、この2年間の当社グループに対する株式市場の評価は低調と言わざるを得ません。脱炭素化が進展する中で鉄鋼業の将来に対する不確実性が高いとみられていること、また、同業他社と比較して当社の業績が高い水準とは言えず、株主の期待に十分に応えられていないこと、が大きな要因だと受け止めています。こうした懸念を払しょくするため、私たちは中期計画の施策を着実に実行し、今後の持続的な成長に向けた道筋を外部に示していく必要があります。

本年の取り組みについて

本年は、中期計画の3年目に入ります。各々、中期前半の取り組みを振り返り、成果と課題を確認した上で、中期目標の達成に向けた取り組みを加速させてください。 また、鉄鋼事業においてカーボンニュートラルを実現するためには、今後長期にわたって設備投資や研究開発のために巨額の資金が必要となります。この原資を確保するためにも中期の取り組みを通じてグループ全体で収益力を高めていくことが不可欠です。 以下に本年の重点課題を示します。各事業会社は常に環境の変化を注視しながら、何を実行すべきかを考え、課題に前向きに取り組んでください。

 

○収益力の追求と成長戦略の推進
グループの収益基盤であるJFEスチールは、2023年度に計画通り構造改革を完遂して固定費を大幅に引き下げるとともに、高付加価値品の拡大や価格体系の見直し等も進め、経済環境の変化に左右されにくい強靭な収益基盤を確立してください。また、中長期的な成長に向けて、海外メーカーとの関係強化等を通じた海外事業の拡大を推進してください。 JFEエンジニアリングは、昨年12月に発表した国内水エンジニアリング事業の統合等、M&Aや他社との共同事業の立ち上げに引き続き積極的に取り組み、事業規模の拡大を進めるとともに、安定的な収益を確保できるように海外事業の強化を図ってください。 JFE商事は、JFEスチールの構造改革に伴い、同社関連以外の取引拡大に取り組むとともに、世界NO.1の電磁鋼板グループ加工流通体制構築や昨年買収した米国CEMCO社との連携を通じた海外建材事業の取り組みを加速してください。 JMUにおいては、抜本的な収益および財務の改善に努めるとともに、国内外の競合に先行して次世代燃料船の開発等将来に向けた技術力の向上を図ってください。 また、グループ全体では、洋上風力に代表されるようなグループシナジーの創出や、DXによる外部への付加価値提供などの新たなビジネス創出に取り組んでください。D&Iや働き方改革など人的資本経営にも従来以上に積極的に取り組んでいきましょう。

○カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
当社グループにとって脱炭素化の進展はピンチではなく、大きなチャンスです。当社の有する世界最高レベルの技術力を活かし、競合他社に先んじてカーボンニュートラル製鉄を実現すること、加えて、再生可能エネルギー発電やカーボンリサイクル技術の開発・拡大等によって社会のCO2削減に大きく貢献することができれば、当社グループは世界の中で圧倒的な地位を確立できます。 特に本年は、カーボンニュートラル製鉄実現に向けた具体的なロードマップに基づき、カーボンリサイクル試験高炉、直接水素還元試験炉、試験電気炉等、様々な実証試験用設備の建設に着手していく予定です。関係する従業員はこの貴重な機会を前向きに捉え、失敗を恐れることなく挑戦してください。

○安全
以上、本年の主な取り組みについて述べましたが、JFEグループにとって、安全は全てに優先する最重要課題です。「すべての災害は防ぐことが出来る」という信念のもと、DXなど最新技術を活用して設備の本質安全化を推進してください。

結び

本年は、JFEスチールとJFEエンジニアリングが設立から20年を迎えます。当社グループを取り巻く環境は依然として変化が激しく将来が見通しにくい状況ですが、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはらならない」存在としての地位を確立し、社会の皆様に広く認めていただける企業を目指して、グループ一丸となって取り組んでいきましょう。 最後になりましたが、本年が皆さんとご家族にとって、健康で実り多い年となることを祈念して、新年の挨拶といたします。