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生物多様性

基本的な考え方

JFEグループは、持続可能な社会の実現に向けて、自然資本や生物多様性が社会にとって重要な基盤であると考えており、「経団連生物多様性宣言・行動指針」に賛同し、国際社会の一員として自然の営みと事業活動とが調和した経営を行っています。特に生物多様性保全を重要な課題と認識し、事業活動に伴う生態系への影響を評価した上で、この影響を最小限にとどめるよう配慮しています。例えば、重要な拠点である製鉄所およびその周辺地域の生態系のモニタリングや保全活動等を行うなど、地域の皆様とともに取り組んでいます。また、海洋環境を再生する鉄鋼スラグ製品の開発や自治体との共同研究、地域の皆様への環境教育機会の提供などを通して、事業活動以外の場での貢献も積極的に進めています。

経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)

取り組み

LEAPアプローチに沿った機会とリスクの評価

JFEグループは今後の情報開示に向けて、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)で推奨しているLEAPアプローチに沿った評価を開始しています。まずは、JFEスチールの主要製造拠点および上流である鉄鋼石や原料炭の主要調達先の鉱山に対する試行的評価を行っていきます。今後、自社と自然の関係性の整理をさらに進めていき、TNFDのフレームワークを参考にした適切な開示につなげていきます。

LEAPアプローチに沿った試行的な評価の進捗

LEAPアプローチに沿った試行的な評価の進捗

生物多様性保全への対応

JFEスチール

環境影響評価の実施

事業活動による周辺地域の生態系への影響を最小限にとどめるために、拠点の状況に応じた生物多様性のモニタリングや、構内の緑化・希少種の保全活動等を行っています。新たな製造拠点の建設や新規事業を開始する場合は、法令に則り環境影響評価(アセスメント)を実施し、周辺地域や敷地内の生物多様性の状況の確認、必要な配慮・保全を行っています。

工事計画区域内の希少な植物を移植

JFE扇島火力発電所の1号機は、2019年に老朽化による設備の更新工事を完了し、稼働を開始しました。本計画を進めるにあたり「環境影響評価法」および「電気事業法」に基づき、事業による環境への影響について予測・評価を行いました。その結果、環境省第4次レッドリストの絶滅の危険が増大している種(絶滅危惧II類(VU))として登録されているクゲヌマランの生育が発電設備計画地内で確認されたことから、計画区域内の類似した環境に移植を実施し、個体群の存続を図りました。

JFE扇島発電所設備計画地内で確認されたクゲヌマラン
JFE扇島発電所設備計画地内で確認されたクゲヌマラン

鉄鋼スラグ製品による生物多様性と海辺の賑わうまちづくりへの貢献(横浜市との連携協定)

神奈川県横浜市にある山下公園の前に広がる海の海底付近はヘドロ(有機物を多く含む泥)が堆積しており、夏場には著しい水質の悪化がみられます。そのため、生物の産卵場や育成の場としての機能が失われた状態となっています。

JFEスチールは、横浜市との共同研究により、炭酸ガスを製鋼スラグに吸収させた「マリンブロック®」などの鉄鋼スラグ製品を用いて磯場(生物付着基盤)を造成することで、生物生息環境を改善し、海域が本来持っている生物による水質浄化能力の回復を図りました。実験開始直後からヒトデやナマコなどの生き物が確認され、その後も生き物の増加が確認されました。また、濾過食性生物(二枚貝やホヤなど)が1日当たり8,400kL(25mプール換算で17杯分)の海水を濾過していると推計し、さらにこれによるCOD※1除去や下水処理場と比較した浄化のためのCO2削減の環境負荷低減効果を試算しました。

これらの成果は多数の展示会やイベントに活用し、地域住民などへの環境啓発に貢献しました。この海の環境改善に向けた公民連携の取り組みが評価され、2021年度の土木学会環境賞(Ⅱグループ)※2を連名で受賞しました。さらに2022年に(一社)サステナブル経営推進機構が主催する第5回エコプロアワード※3「国土交通大臣賞」も受賞しました。

※1Chemical Oxygen Demandの略。海域や湖沼の汚染の度合いを示す指標で、水中の有機物などの汚染源となる物質を酸化するときに消費される酸素量(mg/l)を表したもの

※2土木学会賞は90余年の伝統に基づく権威ある表彰制度。環境賞(Ⅱグループ)は、土木技術・システムを開発・運用し、環境の保全・改善・創造に貢献した画期的なプロジェクトに対して授与される賞

※3日本市場において事業者、消費者、投資家、さらには市場関係者に評価が高く、具体的に優れた環境配慮が組み込まれた製品、サービス、技術、ソリューション、ビジネスモデルといった案件を表彰

令和3年度土木学会環境賞

第5回エコプロアワード

山下公園前海域、枠内がスラグ製品施工エリア(横浜市提供)
山下公園前海域、枠内がスラグ製品施工エリア
(横浜市提供)
フロンティアストーン®に群生するホヤ
フロンティアストーン®に群生するホヤ
二枚貝がびっしり着生したマリンブロック®(山下公園前海域)
二枚貝がびっしり着生したマリンブロック®
(山下公園前海域)

ベンチャー企業との協業による鉄鋼スラグ製品の生物多様性検証の推進

JFEスチールは、本社受付の展示エリアにサンゴを着生させた鉄鋼スラグ製品(マリンブロック®)を入れた水槽の常設展示を行っています。来社されるお客様に、サンゴや熱帯魚を観賞いただきながら、鉄鋼スラグ製品を活用した生態系保全の取り組みを知っていただくことや、合わせて水槽内で各種実験を実施することを目的に企画したものです。本取り組みは、(株)イノカの技術協力を得て実施、新聞やテレビなどのメディアに「環境分野の協業事例」として紹介されました。

アクアリストのノウハウとIoT・AIの技術を組み合わせ、サンゴ・魚などの生体管理・生育を行うシステム開発を手掛けるベンチャー企業

水槽内に設置したマリンブロックと順調に成長しているサンゴ
水槽内に設置したマリンブロック®と順調に成長しているサンゴ

ホタル観賞会の開催

JFEスチールでは、知多製造所内の環境池において、地域の方々を対象としたホタルの鑑賞会を2014年より開催し、子どもたちによるホタルの放流などを行っています。製造所内の水場とその周辺環境の整備、ホタル観賞会などを通じて、地域の皆様とともに、生態系が保たれる環境づくりに取り組んでいます。

ほたるの幼虫を放流する様子
ほたるの幼虫を放流する様子
ホタルの放流を行っている製造所内の小川
ホタルの放流を行っている製造所内の小川
ほたる鑑賞会(ほたるの夕べ)
ほたる鑑賞会(ほたるの夕べ)

知多製造所の「あいち生物多様性認証企業」認定

あいち生物多様性認証企業

知多製造所は2022年11月、「あいち生物多様性企業認証制度」において、第1期目の認証企業として認定されました。「あいち生物多様性企業認証」は、愛知県が「あいち生物多様性戦略2030」に基づき推進する生物多様性保全に関する取り組みの一環です。愛知県がより多くの企業が地域の核となって生物多様性保全に貢献していくことを期待し、企業の生物多様性保全に関する取り組みを促進するため、優れた取り組みを実践している企業を認証する制度です。

知多製造所では、地元自治体や保育園・幼稚園と連携し、「ほたるの幼虫放流」や「ほたるの夕べ」の開催など、産学官連携でほたるを増やし、定着させるための取り組みを行っています。また、2022年度から日本列島を2,000キロ以上も移動するチョウの1種であるアサギマダラ飛来のため、フジバカマの植栽など緑地を整備し、愛知県知多半島の各自治体と連携して飛来情報の交換を行うなどの活動を開始しました。今後も地域と連携し、生物多様性への取り組みを継続・推進していきます。

JFEエンジニアリング

建設工事における取り組み

水辺や山間部、あるいは大規模な建設工事では、周辺環境の保全の重要性に応じてお客様や関係機関による調査が事前に実施され、工事に対して生物の保護を含むさまざまな環境保全の条件が提示される場合があります。

JFEエンジニアリングは提示された条件に従い、例えば騒音や排水などによる周辺の生物への影響を最小限にする施工方法を提案するなど、建設工事による影響を最小限にとどめることで生物多様性の保全に配慮しています。製作所においては、周辺地域や敷地内の生物多様性の状況の確認、必要な配慮・保全を行っています。

地域へ開かれた自然環境の学び舎としてビオトープを提供

JFEエンジニアリングは、鶴見地区にある遊歩道「JFEトンボみち」を整備し、ビオトープ「トンボ池」を、地域住民の方や近隣の小学生の皆さんが生態系にふれあい、学べるイベント会場として2009年から提供しています。

2022年は、近隣住民の方を中心とした「トンボみちファンクラブ」が、子どもたちにトンボの生態や植物の生育状況など地域の自然環境を直接知ってもらうためのトンボ調査「トンボとり大作戦」を行いました。

また、2020年度より京浜臨海部の緑地の質向上と生物多様性への貢献を目的とする「トンボはドコまで飛ぶかフォーラム」に協賛しています。企業、市民、行政、専門家が集まるこのフォーラムでは、京浜臨海部と内陸部に点在する15カ所の緑地やビオトープに飛来するトンボを捕獲し、マーキングして大空に解き放ち、その行動範囲を追跡するなどの調査活動を行っています。この調査場所として、「JFEトンボみち」も利用されています。このフォーラムは2022年に活動開始20周年を迎え、横浜市役所で開催された記念イベントでのパネルトークに当社も登壇し、他企業と意見交換を行いました。

ビオトープ トンボ池
ビオトープ トンボ池
「トンボはドコまで飛ぶかフォーラム」20周年記念イベント
「トンボはドコまで飛ぶかフォーラム」
20周年記念イベント

神奈川県 「森林再生パートナー制度」 への参加

JFEエンジニアリンググループのJ&T環境は、神奈川県の「かながわ森林再生50年構想」の趣旨に賛同し、2023年3月に県との間で「森林再生パートナー制度」の覚書を締結しました。

これは、J&T環境が進める環境保全・社会共生活動の一環で、県の貴重な水源としての森林を次世代に繋ぐことを目的とした間伐作業などのプログラムに社員がボランティアとして参加し、県の森林再生の取り組みに協力していくものです。

5月には、今年入社した新入社員18名が神奈川県南足柄市にある「県立21世紀の森」で枝打ち作業を行い、環境保全の大切さへの認識やボランティアの意識を高めました。

また、「森林再生パートナー制度」では県が指定する公有林の一部に独自の名称を付けることができ、社内公募により、「J&T環境 未来来(ミラクル)Forest」 と命名いたしました。今後も引き続きESGの取り組みを強化し、より良い地球環境の創造に貢献していきます。

神奈川県 「森林再生パートナー制度」 への参加
新入社員による枝打ちボランティア
新入社員による枝打ちボランティア
J&T環境 未来来(ミラクル)Forest
J&T環境 未来来(ミラクル)Forest
森林CO2吸収量算定書
森林CO2吸収量算定書

森林再生パートナー制度の詳細は以下をご参照ください。

神奈川県ホームページ

外部イニシアチブへの賛同・参画

JFEグループは、「経団連自然保護協議会」の一員として、「経団連生物多様性宣言・行動指針(改訂版)」に賛同するとともに、自然保護や生物多様性の保全に積極的に取り組んでいます。また、 環境省と経団連自然保護協議会が立ち上げた「生物多様性ビジネス貢献プロジェクト」に参画し、環境省と経団連が選出した生物多様性の保全に貢献する取り組みの一例に、JFEスチールの鉄鋼スラグ製品が紹介されています。今後もこれらの活動を通じて、ポスト2020生物多様性枠組などの世界的な自然保護や生物多様性の保全の取り組みに対する理解を深め、貢献していきます。

外部イニシアチブの詳細は以下をご参照ください。

環境省 生物多様性ビジネス貢献プロジェクト

商品・技術(生物多様性の保全)

JFEグループは、日本経済団体連合会が日本政府と連携して進めているイニシアチブ「チャレンジ・ゼロ」に賛同・参画し、「鉄鋼スラグ製品を活用した海域環境改善技術開発(横浜市と共同)」を推進しています。その他、さまざまな生物多様性の保全に関する製品を開発しています。

環境の保全に関する商品・技術の詳細は以下をご参照ください。

環境配慮型プロセス・商品の開発と提供

チャレンジ・ゼロ