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気候変動

基本的な考え方

JFEグループにとって、気候変動問題は事業継続の観点から極めて重要な経営課題です。グループのCO2排出量の99.9%を占める鉄鋼事業では、これまでにさまざまな省エネルギー・CO2排出削減技術を開発し、製鉄プロセスに適用することにより、低いレベルのCO2排出原単位で生産を行っています。

また、JFEグループは、お客様の使用段階で省エネルギーに寄与する高機能鋼材、再生可能エネルギーによる発電など、多数の環境配慮型商品や技術を開発・保有しています。

今後さらにこれらのプロセスおよび商品の技術開発・普及を進めるとともに、これまで培ってきたさまざまな技術のグローバルな展開を当社にとっての機会と捉え、気候変動問題の解決に貢献していきます。

2019年5月、TCFD提言への賛同を表明し、TCFDが提言している「シナリオ分析」を用いて気候変動問題に対する課題を特定するとともに、持続的な成長に向けた戦略策定を進めてきました。2020年9月には、グループのCO2排出量の大部分を占める鉄鋼事業において、2030年度のCO2排出量の削減目標を設定し、また、政府のカーボンニュートラル宣言に先駆けて2050年に向けてカーボンニュートラル実現を目指すことを発表しました。

さらに2022年2月に、鉄鋼事業におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みや外部環境の整備が進展していることを踏まえ、2030年度のCO2排出量の削減目標を上方修正し、2013年度比で30%以上を目標とすることを決定しました。

これらの目標達成に向け、JFEグループはCO2排出量およびエネルギー使用量の削減に取り組んでいきます。

JFEグループ環境経営ビジョン2050

JFEグループは、主に鉄鋼事業を取り巻く環境変化に対応すべく事業構造改革を実施していく中で、地球規模の気候変動問題の解決を通じた持続可能性の向上を目指していきます。そして、2020年を気候変動問題へのさらなる対応強化の節目の年と位置付け、CO2排出量削減に向けた取り組みを積極的に推進しています。

JFEグループは2021年、気候変動問題への取り組みを第7次中期経営計画の最重要課題とし、2050年カーボンニュートラルの実現を目指した「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定しました。

「JFEグループ環境経営ビジョン2050」では、TCFDの理念を経営戦略に反映することで、気候変動問題の解決に向けて体系的に取り組んでいきます。鉄鋼事業においては、2024年度末のCO2排出量を2013年度比で18%削減します。また2030年度のCO2排出量を2013年度比で30%以上削減することを目標としています。2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、当社独自技術であるカーボンリサイクル高炉をはじめとする超革新技術に挑戦するとともに、さまざまな技術開発を複線的に進めるなど、あらゆる可能性を模索しながら取り組みを推進していきます。また、エンジニアリング事業の再生可能エネルギー発電やカーボンリサイクル技術の拡大・開発、高機能鉄鋼製品の供給等による社会でのCO2削減貢献を拡大していきます。さらに、グループ全体で洋上風力発電ビジネスの事業化を推進していきます。

【JFEグループ環境経営ビジョン2050】

  • 気候変動問題を極めて重要な経営課題ととらえ、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。
  • 新技術の研究開発を加速し、超革新技術に挑戦します。
  • 社会全体のCO2削減に貢献し、それを事業機会ととらえ、企業価値の向上を図ります。
  • TCFDの理念を経営戦略に反映し、気候変動問題解決に向けて体系的に取り組みます。

【2024年CO2排出量削減目標(第7次中期経営計画における取り組み)】

  • 2024年度末のCO2排出量を2013年度比で18%削減(鉄鋼事業)

【2030年CO2排出量削減目標】

  • 2030年度のCO2排出量を2013年度比で30%以上削減(鉄鋼事業)

【2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み】

鉄鋼事業のCO2排出量削減

  • カーボンリサイクル高炉+CCUを軸とした超革新技術開発への挑戦
  • 水素製鉄(直接還元)の技術開発
  • 業界トップクラスの電気炉技術を最大活用した高品質・高機能鋼材製造技術の開発、高効率化等の推進
  • トランジション技術の複線的な開発推進
    (フェロコークス、転炉スクラップ利用拡大、低炭素エネルギー転換等)

社会全体のCO2削減への貢献拡大

  • JFEエンジニアリング:再生可能エネルギー発電、カーボンリサイクル技術の拡大・開発
    (CO2削減貢献量目標 2024年度1,200万トン、2030年度2,500万トン)
  • JFEスチール:エコプロダクトやエコソリューションの開発・提供
  • JFE商事:バイオマス燃料や鉄スクラップ等の取引拡大、エコプロダクトのSCM(流通加工体制)強化等

洋上風力発電ビジネスへの取り組み(グループ全体で洋上風力発電事業化を推進)

  • JFEエンジニアリング:着床式基礎(モノパイル、ジャケット等)の製造
  • JFEスチール:倉敷地区の新連鋳機を活用した大単重厚板の製造
  • JFE商事:鋼材、加工品のSCM構築
  • ジャパンマリンユナイテッド:洋上風力発電浮体の製作および作業船の建造
  • グループ全体:リソースを最大限活用したオペレーション&メンテナンス

(注)

1.カーボンリサイクル高炉:高炉から排出されるCO2をメタン化し、還元材として高炉に吹き込む技術

2.CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization(CO2回収・利用)

3.トランジション技術:カーボンニュートラル社会への移行を進める技術

4.フェロコークス:鉄鉱石の還元効率を改善し、高炉からのCO2発生量を削減する革新的な高炉原料

第7次中期経営計画

JFEグループ環境経営ビジョン2050 説明会資料

CO2を排出することなく、高品質・高機能な鉄を大量に生産できるプロセスの開発は、今後の社会の持続的な発展のためには避けて通ることのできない取り組みです。カーボンニュートラルの実現に向けたさまざまな施策を実行する上で、研究開発や新規開発設備への更新に多額のコストが発生することは避けられず、社会全体でのコスト負担のあり方の検討や政府等による支援が必要と考えています。

高い目標である「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けて、脱炭素インフラの整備とグローバルなイコールフッティングの実現を前提としつつ、世界の競合他社に先んじて、必要な脱炭素技術を可能な限り早い時期に確立することを目指します。

JFEグループのカーボンニュートラルに向けた取り組み

JFEグループのカーボンニュートラルに向けた取り組み

体制

鉄鋼事業におけるカーボンニュートラル推進体制

JFEスチールは、西日本製鉄所(倉敷地区)での高効率・大型の電気炉の新規導入を迅速かつ効率的に対応していくことを目的として、新溶解プロセス開発部内に「倉敷電気炉建設検討班」を2023年5月に設置しました。また、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギーの活用や燃料の非化石化の推進、および当社生産プロセスから排出されたCO2の回収、有効利用や貯留を迅速に推進するために「CCUS・グリーンインフラ検討チーム」を廃止し、新たに2023年6月、「GXインフラ開発部」を設置しました。

CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(CO2回収・利用・貯留)

JFEスチールのカーボンニュートラル推進体制

推進体制図

TCFDに基づく情報開示

TCFD

JFEホールディングスは、2019年5月27日、TCFD最終報告書の趣旨に対する賛同を表明しました。

G20財務大臣および中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」。

気候関連のリスクと機会は中長期的に企業の財務に大きな影響を与えます。TCFDは、金融市場が不安定化するリスクを低減するために、G20からの要請で金融安定理事会が立ち上げたタスクフォースです。TCFDは、金融市場が気候関連のリスクと機会を適切に評価できるような情報開示方法を検討し、最終報告書として公表しています。

投資家等が財務上の意思決定を行うに際し、気候関連のリスクと機会が投資先の財務状況にどのような影響を及ぼすかを的確に把握していることが重要であるとの考えに基づき、組織運営における4つの中核的要素である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に関する情報を開示することを推奨しています。

TCFD対照表は以下をご参照ください。

ガイドライン対照表

ガバナンス

JFEグループは、「JFEグループ企業行動指針」の中で、地球環境との共存を図るとともに、快適なくらしやすい社会の構築に向けて主体的に行動することを定めており、環境保全活動の強化や気候変動問題への対応等の「地球環境保全」は持続可能な社会を実現する上で非常に重要な課題として認識しています。

従来から取り組んできた製鉄プロセスにおけるCO2削減や環境配慮型商品の開発と提供等の取り組みについて、円滑にPDCAを回し適切にマネジメントを推進するために、2016年度に「地球温暖化防止」をCSR重要課題(マテリアリティ)として特定しました。2021年には、重要課題に経済的な観点の項目を加えるとともに、より重要度の高い項目を選定することで、経営上の重要課題として新たに取り組みを開始しました。その中で、課題の分野に気候変動問題解決への貢献(2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組み)を設定し、「JFEグループのCO2排出量削減」および「社会全体のCO2削減への貢献」の2項目を重要課題として特定しました。

これらの取り組みについては、JFEホールディングスの社長が議長を務める「グループサステナビリティ会議」のもと、グループを横断する「グループ環境委員会」を設置し、目標の設定、達成状況のチェック、グループ全体のパフォーマンスの向上等について議論することにより、監督・指導しています。

特に気候変動問題など、経営にとって重要なテーマについては、グループ経営戦略会議で審議し、さらに取締役会への報告を行っています。取締役会は気候変動問題等の環境課題について決議、または報告を受けています。

取締役会で決議、または報告された気候変動問題に関する事案の例

  • TCFD最終報告書の趣旨に対する賛同表明
  • TCFD提言に沿った情報開示(シナリオ分析など)
  • 第7次中期経営計画「JFEグループ環境経営ビジョン2050」の策定
  • 2030年度のCO2削減目標の見直しについて
  • 気候変動に関する指標の役員報酬への導入について
コーポレートガバナンス体制
環境マネジメント体制

気候変動問題への対応

脱炭素プロセスの開発とグリーン鋼材の供給、CO2排出削減貢献技術の拡大により
カーボンニュートラル社会の実現に貢献

JFEグループは、気候変動問題への対応を経営の最重要課題と位置付け、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定して2050年カーボンニュートラル実現に向けた具体的なロードマップを公表しています。低炭素鉄鋼プロセスへの転換を進める2030年までをトランジション期、超革新技術を確立・実装しカーボンニュートラルを目指す2050年までをイノベーション期とした具体的なCO2削減計画を策定して、取り組みを進めています。

鉄鋼事業においては、2030年度30%以上削減(2013年度比)という目標の達成に向け、転炉におけるスクラップ使用量の拡大が可能となるプロセスの全地区導入に加え、仙台製造所の電気炉増強や千葉地区のステンレス製造プロセスへの電気炉の導入等を決定しました。また、倉敷地区への高効率・大型電気炉の導入検討も行っており、引き続き2030年度の目標達成に向けて必要な設備投資を着実に実行していきます。さらに、複線的に開発に取り組んでいる、カーボンリサイクル高炉、水素製鉄(直接還元)、高効率・大型電気炉について、千葉地区での試験炉建設工事を2023年度より開始しました。これらの試験炉は長期にわたるカーボンニュートラル製鉄開発の重要な一歩と位置付けています。試験炉を活用した効率的な開発により、超革新技術の早期実装化を目指します。

また、サプライチェーン全体での脱炭素への要請が加速する中、お客様からは従来の製品より製造時のCO2排出を低減したグリーン商材の供給への関心が寄せられています。JFEスチールでも、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を従来の製品より大幅に削減したグリーン鋼材「JGreeX」の供給を2023年度上期より開始しました。「JGreeX」は既に種々の用途への採用が決定していますが、ドライバルク船への採用ケースでは、CO2削減コストをサプライチェーン全体で負担する新たなビジネスモデルを世界に先駆けて構築し、4割程度のグリーンプレミアムを認めて頂いています。カーボンニュートラルに向けた設備投資や超革新技術開発の原資を得るためにも、グリーン鋼材の環境価値を認めて頂くことが重要と考えています。今後もカーボンニュートラル社会の実現に貢献できるグリーン鋼材の市場創出に積極的に取り組んでいきます。

「JFEグループ環境経営ビジョン2050」における、もう一つの柱は、社会全体のCO2排出量削減への貢献です。エンジニアリング事業では、再生可能エネルギーによる発電事業の拡大に加え、PETボトルリサイクル原料製造工場(西日本PETボトルMRセンター)が全面的な商業運転を開始しました。ボトルtoボトル事業の取り組みであり、全国の総出荷ペットボトル本数の約10%を再生処理可能です。また、鉄鋼事業では、電気自動車への適用拡大が見込まれる高級無方向性電磁鋼板について、西日本製鉄所(倉敷地区)の製造設備のさらなる能力増強を決定しました。商社事業においても電磁鋼板の供給体制を強化し、伸び行く需要を確実に捕捉していきます。当社の保有する高い技術を活用して持続可能な社会の実現に貢献することを新たな事業機会と捉え、成長に結びつけることで企業価値の向上を図っていきます。

さらに、グループ全体で洋上風力発電に貢献する事業にも取り組んでいます。JFEエンジニアリングを主体として、着床式基礎構造物(モノパイルなど)の製造工場を建設しており2024年度の稼働を目指しています。洋上風力発電に関するビジネスはグループの総合力を発揮できる事業であり、今後もグループ全体で積極的に取り組んでいきます。

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、「鉄鋼事業のCO2排出量削減」と「社会全体のCO2削減への貢献」を戦略の軸とし、脱炭素化社会の進展をチャンスと捉えて、脱炭素技術の開発・早期実装化へのチャレンジ、脱炭素社会に貢献可能な製品・サービスの創出に取り組むことで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

JFEホールディングス株式会社 常務執行役員 北島 誠也

JFEホールディングス株式会社
常務執行役員
北島 誠也

JFEグループの気候変動戦略

気候変動問題に関わるさまざまなリスク・機会は、JFEグループの事業戦略に以下のように統合されています。JFEグループは、2021~2024年度の事業運営の方針となる「JFEグループ第7次中期経営計画」を策定し、グループの中長期的な持続成長と企業価値の向上を実現するために、気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付けています。そして、「環境的・社会的持続性の確保」を主要施策の一つとして掲げ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定することで、気候変動問題への取り組みを事業戦略に組み込むとともに、TCFDの理念を経営戦略に反映し、気候変動問題解決に向けて体系的に取り組んでいます。シナリオ分析をはじめとするTCFD提言に沿った情報開示を進めると同時に事業に影響を及ぼす重要な要因を選定し、特定したリスクと機会、評価を経営戦略に反映しています。

シナリオ分析結果およびJFEグループ環境経営ビジョン2050については以下をご参照ください。

TCFD推奨シナリオ分析

JFEグループ環境経営ビジョン2050 説明会資料

「JFEグループ環境経営ビジョン2050」では、カーボンニュートラルの実現に向けて、「鉄鋼事業のCO2排出量削減」「社会全体のCO2削減への貢献拡大」「洋上風力発電ビジネスへの取り組み」という3つの戦略を軸に企業活動を行っていくことを掲げています。製鉄プロセスにおいては、CO2排出削減に向けた取り組みとともに、水資源・エネルギーの再利用に加え、環境に配慮した商品・プロセス技術の開発や資源循環ソリューションの提供を通じて積極的に環境負荷低減を推進していきます。

鉄鋼事業のCO2排出量削減

JFEグループは、2050年カーボンニュートラル実現に向け超革新技術の開発を含む複線的な取り組みを進めており、鉄鋼事業において、2024年度末18%、2030年度30%以上(2013年度比)のCO2削減目標を定めています。2030年までをトランジション期、それ以降をイノベーション期と定義し、トランジション期においては、「減らす」取り組みを中心とした低炭素技術の適用拡大により2030年度のCO2削減目標達成に向けた計画を確実に実行します。また、イノベーション期への移行準備として超革新技術の研究・開発を加速します。イノベーション期においては、当社独自技術であるカーボンリサイクル技術を適用したカーボンリサイクル高炉や直接還元製鉄法の早期実装、CCUの適用拡大等による「賢く使う」取り組みを進めます。また、地域社会やコンビナート各社と一体となった、カーボンニュートラル社会の構築に向けてCCSによる「固定化」にも取り組み、これら3つの取り組みによりカーボンニュートラルを実現します。

製鋼プロセスでのスクラップ利用拡大

JFEスチールは、環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス「DRP®」(Double-slag Refining Process、以下、「DRP」)の導入を推進し、2021年に全地区で設備実装を完了させ、転炉でのスクラップ利用量拡大によるCO2排出量の削減を実現しました。

「DRP」では、溶銑中の珪素(Si)を熱源として最大限活用することで、転炉でのスクラップ投入量を拡大することが可能となります。当技術の導入により溶銑配合率を従来プロセスの90%から82%に低減することができます。

当社は「DRP」を全地区に導入し、転炉でのスクラップ利用量拡大を図ったことにより、2021年度実績で、約17万トン/年のCO2排出量削減を達成しています。今後のさらなるスクラップ利用拡大のための熱余裕拡大技術開発、および設備増強投資等を推進し、2030年度に約200万トン/年のCO2排出量削減を目指していきます。

環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス
「 DRP®」:Double-slag Refining Process

環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス

東日本製鉄所(千葉地区)のステンレス製造における電気炉プロセスの導入

JFEスチールは、2025年度下期(予定)に、東日本製鉄所(千葉地区)第4製鋼工場に新たにアーク式電気炉を導入することを決定しました。スクラップ溶解能力は従来比最大約6倍の約30万トン/年(予定)になり、CO2排出量削減効果は最大約45万トン/年を見込んでいます。当社は2030年までをカーボンニュートラルに向けたトランジション期と位置付け、電気炉プロセスは有効な手段と考えて、今後も超革新技術の開発を複線的に進めてカーボンニュートラル実現に向けた着実な取り組みを推進していきます。

低炭素鉄鋼プロセスへのトランジション

当社は、2050年カーボンニュートラル実現に向け、超革新技術の開発を含む複線的な取り組みを進めています。鉄鋼事業においては、2030年までをトランジション期、それ以降をイノベーション期と定義し、トランジション期においては、既存プロセスの省エネルギー・高効率化および電気炉技術の活用等の取り組みを進めています。2030年度のCO2削減目標達成に向けては、1兆円規模の投融資が必要な可能性を想定しており、2022年度までに約1,100億円の認可を行いました。引き続き、削減目標達成に向け、必要な投融資の認可と実行を着実に推進していきます。

低炭素鉄鋼プロセスへのトランジション

グリーン鋼材「JGreeX」の供給開始について

JGreeX™

名称の由来:JFE + Green + GX
社内の関連部署から広く公募し、「JFEスチールが提供するグリーン鋼材である」と伝わりやすいことから、この名称に決定しました。

ロゴのデザインについて:
「X」の文字に矢印を組み合わせ、「カーボンニュートラル実現に向け前進していく」という意思を表現しています。

JFEスチールは、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を従来の製品より大幅に削減したグリーン鋼材「JGreeX」の供給を2023年度上期から開始しました。現時点、直ちにCO2排出量を大幅に低下あるいはゼロとしたグリーン鋼材の供給は難しいことから、当社のCO2排出削減技術により創出した削減量を、「マスバランス方式※1」を適用して特定の鋼材に割り当ててグリーン鋼材として供給します。CO2排出削減量および各製品の排出原単位については、認証機関である日本海事協会から2022年度に52万トンのCO2削減量の第三者認証を取得しています。

「JGreeX」は、常石造船(株)が建造を予定している水素燃料タグボートに採用されることが決定しました。供給時期は、2023年9月から順次予定しています。

また、NYKバルク・プロジェクト(株)、商船三井ドライバルク(株)、東興海運(株)、川崎汽船(株)、川崎近海汽船(株)、第一中央汽船(株)、第一中央近海(株)、およびイースタン・カーライナー(株)の8社が新規で建造予定のドライバルク船※2への「JGreeX」の採用が決定しました。今回建造に使用する鋼材※3はすべて、製造プロセスにおけるCO2排出量を実質ゼロとした「JGreeX」を使用する予定であり、世界で初めてグリーン鋼材のみを使用した船舶となります。また、本件は海運会社と荷主でもある当社が共同で、CO2削減価値をサプライチェーン全体で負担し社会分配する新たなビジネスモデル(下図参照)を世界に先駆け構築したものです。

さらに、2023年度はNYKバルク・プロジェクト、商船三井ドライバルク、東興海運3社が建造を予定している4隻(2024年9月~2025年1月就航予定)向けに、尾道造船(株)、檜垣造船(株)2社に、「JGreeX」を計14,000トン程度納入予定です。

サプライチェーン全体でのCO2削減が急速に進む中、さまざまな低炭素化技術や省エネ・高効率化技術の適用拡大によりCO2排出量のさらなる削減を実現するとともに、「JGreeX」の供給能力拡大により社会全体の脱炭素化に貢献していきます。

JGreeX供給概要

JGreeX™供給概要

グリーン鋼材「JGreeX」の考え方

グリーン鋼材「JGreeX™」の考え方

ビジネスモデル図

ビジネスモデル図

※1製品製造プロセス全体のCO2排出量の削減における環境価値を一部の鉄鋼製品に集約し、CO2排出原単位の低い鉄鋼製品とみなすこと

※2乾貨物を大量に輸送する貨物船

※3造船会社が直接購入する鋼材

カーボンニュートラルの実現に向けたNEDO製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクトに関する実証試験

イノベーション期に向けて、カーボンリサイクル高炉や水素製鉄(直接還元)等の超革新技術の研究・開発にチャレンジし、2050年カーボンニュートラルの実現を目指しています。

JFEスチールは日本製鉄(株)、(株)神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターとともにコンソーシアムを結成し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」を共同で受託し、2050年のカーボンニュートラルに向けた取り組みを推進しています。

JFEスチールは、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた超革新技術の開発を推進すべく、カーボンリサイクル高炉をはじめとした本プロジェクトに関する実証試験を行うための各種設備を東日本製鉄所(千葉地区)に集中して建設し、効率的な開発を推進することで、コンソーシアムメンバーと共同で超革新技術の開発を加速させます。

【実証試験の実施計画内容】

・カーボンリサイクル試験高炉(内容積 150m3

2023年現地工事開始、2025年4月稼働、2026年までに実証試験完了予定

・水素直接還元小型ベンチ試験炉

2023年現地工事開始、2024年稼働、2026年までに実証試験完了予定

・試験電気炉(10t試験炉)

2023年現地工事開始、2024年稼働、2025年までに実証試験完了予定

それぞれの詳細内容は、以下に紹介します。

カーボンリサイクル高炉(CR高炉)

JFEグループでは、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」で公表した2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、カーボンリサイクル高炉(CR高炉)、水素製鉄(直接還元)、電気炉法(高効率・大型電気炉)の開発に複線的に取り組んでいきます。なかでも、CR高炉とCCUを組み合わせることにより、高効率に大量の高品質・高機能鋼材を製造する事が可能な高炉法でCO2が再利用でき、余剰のCO2についても、メタノールなどの基礎化学品を製造するなどにより実質CO2排出ゼロを目指すことができます。

CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization(CO2回収・利用)

【CR高炉の技術的な特徴】

CR高炉は、高炉から発生するCO2をメタネーション技術によりカーボンニュートラルメタンに変換し、これを高炉の還元材として繰り返し利用する超革新的な高炉技術です。CR高炉およびその他の手段を用いて、通常高炉に対して50%のCO2を削減し、CCU/CCUS※を活用することによりカーボンニュートラルを目指すものです。さらに、通常高炉で吹き込んでいた空気を純酸素に換えることにより、空気に含まれる窒素の加熱に使っていたエネルギーをメタン加熱に使い、プロセスの熱効率を高めていきます。また、窒素が無くなることでCO2の分離が容易になり、メタネーション向けにCO2を分離する設備が小型化・効率化でき、CCUSでの効率的なガス利用が可能となります。

【実証試験の概要】

高炉から発生するガスに含まれるCO2を、水素を用いてメタンに変換し、還元材として高炉で利用することでカーボンを繰り返し利用し、CO2を削減するプロセスを開発します。実証試験では以下の項目を検証します。

・多量のメタンを酸素とともに吹込む操業方法

・循環ガスを使用する加熱バーナーの活用方法

・高炉ガスに含まれるCO2をメタンに変換するメタネーション設備の連動操業方法

カーボンリサイクル高炉の概要

カーボンリサイクル高炉の概要

直接水素還元技術の開発(カーボンリサイクル直接還元プロセスの開発)

JFEグループが取り組むカーボンニュートラルに資するもう一つの製鉄技術として水素還元製鉄技術があります。水素還元製鉄技術は、現在実用化されている直接還元製鉄で用いられている天然ガスを水素に100%置き換えることによって、鉄鉱石を還元する時にCO2を排出させないことを目指したものです。

【新たな原料処理技術の開発】

直接還元製鉄の原料には高品位鉱石しか使えないという問題点があります。高品位鉱石は生産量が少なく、今後世界的に直接還元製鉄が拡大していく局面では入手が困難になると予想されています。

この問題に対し、JFEスチールは鉄鉱石のサプライヤーの一つであるBHP社との協業により、生産量が大きく、現在高炉用原料として使われている低・中品位鉱石の新たな原料処理技術を開発する計画です。これにより低・中品位鉱石を直接還元製鉄用原料として戦力化し、原料ソースの拡大を目指します。

【原料の予熱、水素の加熱技術の開発】

水素還元の課題の一つに、水素による鉄鉱石の還元が吸熱反応であること、すなわち反応が進むためには熱を外部から与える必要があることが挙げられます。熱が不足した状態では、還元反応が十分に行われない可能性があるため、原料や水素ガスを加熱する技術を開発する必要があります。

【実証試験の概要】

直接還元炉から排出されるCO2をメタネーションにより水素を用いてメタンに変換し、還元材として直接還元炉で利用することでカーボンを繰り返し利用し、CO2を削減するプロセスを開発します。実証試験では以下の項目を検証します。

・排ガス中のCO2をメタネーションによりリサイクルする最適な方法

・低品位鉱石の使用方法

カーボンリサイクル直接還元プロセスについて

カーボンリサイクル直接還元プロセスについて

JFEにおける電気炉プロセス技術の開発

JFEグループが取り組む、カーボンニュートラルに向けた既存製鉄技術の開発として電気炉プロセス技術があります。電気炉プロセスは、鉄スクラップや直接還元鉄を溶解して鉄鋼製品を製造するプロセスで、現状でもCO2発生量は高炉-転炉法に比べ1/4程度となっています。JFEグループでは将来的に原料として前述の水素還元鉄の利用やグリーン電力を利用することにより電気炉プロセスでのCO2発生量をゼロにすることを進めています。

この様にCO2発生量の削減にアドバンテージを持つ電気炉プロセスですが、高炉-転炉法に比べ大きく課題となる点が2点あります。それは、一般的な電気炉の生産性は高炉-転炉法に比べ30%程度低くなる点と、原料としてスクラップを使用することから不純物濃度が不可避的に増加し高品質・高機能鋼材の製造に制約があるという点です。JFEグループではこれらの点についても技術開発を進め、電気炉プロセスにおいても高生産性でかつ高品質・高機能鋼材を生産可能な技術の確立を目指しています。

【電気炉によるスクラップ利用拡大】

JFEスチールは、仙台製造所の電気炉の強靭化、DX化等による能力増強対応および荷役設備増強によって、2024年度に仙台の電気炉製造能力を約14万トン/年増強することを計画しています。これにより、約10万トン/年のCO2排出量の削減を目指します。

また、千葉地区のステンレス製造プロセスにおける電気炉の導入も決定しました。高炉溶銑の一部をスクラップに代替することで、CO2排出量を削減することができます。スクラップの溶解能力は従来比最大約6倍になり、CO2排出量削減効果は最大約45万トン/年を見込んでいます。

さらに、2027~2030年に改修タイミングを迎える倉敷地区の高炉を1基休止し、高効率・大型電気炉へのプロセス転換を検討しています。

【還元鉄確保に向けた事業化検討】

2030年までのトランジション期において、不足することが想定される国内スクラップを補い、電気炉での高品質鋼製造や、高炉法でのCO2排出量削減のためには直接還元鉄の活用が有効と考えられます。

JFEスチールは、アラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼最大手のEmirates Steel Arkan(以下、「エミレーツ・スチール」)、伊藤忠商事(株)(以下、伊藤忠商事)との間で低炭素還元鉄のサプライチェーン構築に向けた詳細な事業化調査を実施することで合意しました。UAEに設立する合弁会社のもと2025年度下期からのUAEの立地特性を活かしたCCUSを活用(EOR)した低炭素直接還元鉄の生産を目指します。

【低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築】

JFEスチールは、伊藤忠商事、エミレーツ・スチールとAbu Dhabi Ports Group(以下、「ADPG」)とともに、低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築に関する覚書を締結し、7月17日に開催された日本・UAEビジネスフォーラムの場で、岸田内閣総理大臣立ち合いのもと、4社間で覚書の交換を行いました。

当社は、還元鉄の活用をCO2排出削減に向けた重要な取り組みと位置付け、伊藤忠商事、エミレーツ・スチールとともに低炭素還元鉄のサプライチェーン構築についてコアメンバーとして参画し、プロジェクト候補地をアブダビとする詳細な事業化調査を共同で推進しています。

プロジェクト候補地であるアブダビの港湾管理および土地開発事業者であるADPGは10の港湾、550km2の経済・工業エリアを保有しています。

今回、本プロジェクトの港湾開発および操業、土地のリース・サービス、関連のインフラ整備について、ADPGが本格的に参画することで合意しました。ADPGとの協業により、プロジェクトエリアの確保、原材料購入・製品出荷における安定的な物流体制の構築など、サプライチェーンの確立を目指していきます。

EOR:Enhanced oil recovery: 原油増進回収

・エミレーツ・スチール概要

会社名:Emirates Steel Arkan

代表者:HE Engineer Saeed Ghumran Al Remeithi(Group CEO)

事業内容:鉄鋼業

・ADPG概要

会社名:Abu Dhabi Ports Group

代表者:Captain Mohamed Juma Al Shamisi

事業内容:港湾運営、海運・物流事業、経済特区開発

低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築
低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築

【電気炉プロセスの生産性向上対策】

JFEグループでは、電気炉プロセスの生産性向上対策として環境調和型高効率電気炉「ECOARC」を開発しグループ各社に導入しています。本技術では電気炉上部にシャフト部を設け、そこに原料であるスクラップを連続投入することにより電気炉の高温排ガスで効率的に予熱し、後段の電気炉内での高効率・高速溶解を可能としたものです。これにより電気炉での高生産性と共に、溶解エネルギー(電力)の低減を達成しています。

JFEグループではこれらの技術により業界トップクラスの生産性、溶解エネルギー(電力)の低減を達成していますが、さらなる高生産性を追求した技術開発を進めています。

【実証試験の概要】

電気炉の溶解電力低減および冷鉄源(スクラップや還元鉄)の高速溶解を実現するプロセスを開発します。実証試験では以下の項目を検証します。

・還元鉄の予熱・投入適正化方法

・熱付与バーナーの使用方法

・溶鋼撹拌の適正化方法

電気炉での研究開発項目について

電気炉での研究開発項目について

【電気炉プロセス製品の品質向上対策】

電気炉プロセスでは、スクラップや還元鉄を原料として溶解し製品を製造します。スクラップ等から混入する銅などの不純物が増加するため、自動車用鋼板では表面欠陥や加工性の低下、電磁鋼板では特性の悪化など、材質が劣化してしまう欠点があります。そのため、JFEグループでは、混入する不純物を除去する技術と不純物による悪影響を無害化する技術の両面から、電気炉プロセス製品においても自動車用鋼板や電磁鋼板といった高級鋼を製造可能な技術の開発を進めています。

CO2有効利用技術の実用化

JFEスチールは、(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)と共同で、「CO2を用いたメタノール合成における最適システム開発」の研究開発を推進しています(図1)。西日本製鉄所福山地区において2022年度より試験設備建設の現地工事を開始し、2023年度稼働、2025年度末までに一貫での実用化試験を完了予定です。低コスト型のCO2分離と高効率メタノール合成を柱に最適な全体システムの構築を図ります。当研究開発により、カーボンリサイクル高炉などの製鉄プロセスと組み合わせた大規模CCUプロセスの実用化を目指していきます。

また、JFEスチールは、国立大学法人愛媛大学と共同で、「製鋼スラグの高速多量炭酸化による革新的CO2固定技術の研究開発」も推進しています(図2)。東日本製鉄所千葉地区において2023年度より実用化試験設備の建設を予定しています。2022年度までにプロセス原理を確認し、2024~2025年度に試験操業を実施予定です。当研究開発により、カーボンリサイクル高炉などの製鉄プロセスや近隣の火力発電所などから発生するCO2をスラグに固定し、CO2固定化後のガスの熱回収技術および道路の路盤材等として利用する技術を検証していきます。

さらに、JFEスチール、石油資源開発(株)(以下、「JAPEX」)、日揮ホールディングス(株)(以下「日揮HD」)、川崎汽船(株)(以下「川崎汽船」)の4社は、マレーシア国営エネルギー会社Petroliam Nasional Berhad(以下、ペトロナス)と進めているマレーシアにおけるCCSに係る共同スタディと連携した、日本を起点とするCCSバリューチェーン構築に向けた共同検討の実施について合意しました。今後、本共同検討の中で、JFEスチールの日本国内の製鉄所で排出されるCO2の分離・回収、およびマレーシアまでの液化CO2の海上輸送と受け入れまでのCCSバリューチェーン構築について、必要な設備やコストなどを含めた検討を行い、またペトロナスとの本共同スタディにおける、マレーシア国内におけるCO2の受入・貯留に係る検討とも適宜連携してきます。JFEスチール、JAPEX、日揮HD、川崎汽船の4社は、本共同検討を通じた国際的CCSバリューチェーンの構築により、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(Asia Energy Transition Initiative:AETI(エイティ))」が目指すアジア地域の脱炭素社会の実現をはじめとした、2050年カーボンニュートラル社会実現への貢献を目指していきます。

図1

図1

図2

図2

2021年5月に日本政府が発表した、アジアの持続的な経済成長とカーボンニュートラルの同時達成に向けたイニシアティブ

環境配慮型プロセス・商品の開発と提供

関連する商品・技術一覧

鉄鋼事業のCO2排出量削減
カーボンニュートラル 主な取り組みについて JFEスチール カーボンニュートラル戦略説明会
JFEスチールのGXへの挑戦~カーボンニュートラルの実現に向けて~
実証試験について カーボンニュートラルの実現に向けたNEDO製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクトに関する実証試験について
グリーン鋼材 供給開始について グリーン鋼材「JGreeX」の供給開始について
採用について 常石造船の水素燃料船にグリーン鋼材「JGreeX」が初採用
グリーン鋼材「JGreeX」のドライバルク船への一斉採用決定について
カーボンリサイクル高炉 カーボンリサイクル高炉技術 JFEスチール カーボンニュートラル戦略説明会「CR高炉によるCO2削減技術開発」
チャレンジゼロ「『カーボンリサイクル高炉+CCU』を軸とした超革新的技術開発への挑戦」
CCU/CCUS チャレンジゼロ「CO2有効利用技術開発」
水素還元製鉄向け原料処理技術の開発 水素直接還元技術 JFEスチール カーボンニュートラル戦略説明会「直接水素還元技術開発」
原料サプライヤーとの協業 「BHP社と製鉄プロセスの低炭素化に向けた取り組みに関する覚書を締結」
鉄スクラップ・還元鉄利用拡大 環境調和型転炉溶銑予備処理プロセス「DRP® 製鋼プロセスでのスクラップ利用拡大によるCO2排出量削減について
還元鉄確保に向けた事業化検討 鉄鋼業界のグリーン化に向けた低炭素還元鉄のサプライチェーンの構築について
低炭素還元鉄のサプライチェーン確立に向けた協業体制の構築について
電気炉プロセス技術の開発 JFEスチール カーボンニュートラル戦略説明会「高効率・大型電気炉技術開発」
電気炉プロセスの導入について 東日本製鉄所(千葉地区)のステンレス製造における電気炉プロセスの導入について
CO2有効利用・貯留技術 CO2有効利用技術 石炭由来のCO2を利用して有価物を製造する新プロセスがNEDO委託事業に採択
実用化試験 カーボンニュートラルの実現に向けたCO2有効利用技術の実用化試験について
CCSバリューチェーン構築 マレーシアCCS共同スタディと連携した日本起点のCCSバリューチェーン構築共同検討実施にJFEスチールと合意

2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ

2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップ

出典:2022年5月6日JFEグループインベスターズ・ミーティング資料より

第7次中期経営計画

JFEグループ環境経営ビジョン2050 説明会資料

JFEグループの取り組みとパリ協定との整合性・トランジションファイナンスの取り組み

JFEグループは「JFEグループ環境経営ビジョン2050」において、カーボンニュートラル実現に向けたロードマップを策定し、短期・中期・長期のCO2削減目標を設定しました。当社グループは、2030年までは既存の技術を最大限活用することによって脱炭素を進めるとともに、カーボンニュートラル実現に必要な超革新技術の開発を推進します。その上で、社会的インフラも整ってくる2030年代から2040年代にかけて、超革新技術を実装することで、脱炭素を加速させ、2050年のカーボンニュートラルを目指します。

日本政府(経済産業省、以下、METI)が策定・公表した「トランジション・ファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップにおいても、2040年代以降、水素供給インフラやCCUS等が整備されることを前提に、革新技術の導入により脱炭素を加速させ、カーボンニュートラルを実現する道筋が描かれています。なお、このロードマップは、パリ協定に基づき定められた国の排出量削減目標と整合しており、パリ協定とも整合するものです。

2022年に、当社グループは公募形式によるトランジションボンドを発行(経済産業省の「令和3年度クライメート・トランジション・ファイナンスモデル事業に係るモデル事例」に、国内製造業で初めて選定)しましたが、その評価過程で、当社グループの取り組みがMETIのロードマップと整合することが第三者機関から認証されていることから、当社グループの取り組みはパリ協定と整合したものと考えられます。

経済産業省 「トランジションファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップ

経済産業省 トランジションファイナンス事例

カーボンニュートラルの実現に向けては、今後長期にわたって設備投資や研究開発投資に、多額の資金が必要となってきます。トランジション・ファインナンスには引き続き取り組み、資金調達手段の多様化につなげていきます。

グリーン/トランジションファイナンス・フレームワーク

トランジションファイナンス実績、資金充当・インパクトレポート

社会全体のCO2削減への貢献拡大

エンジニアリング事業でのCO2削減貢献

炭素を排出しない再生可能エネルギーを利用した発電プラントの需要は今後ますます増加すると考えられます。JFEグループでは、エンジニアリング領域において、バイオマス・地熱・太陽光・陸上風力発電などの設計・調達・建設・運営を事業として展開しています。さらに、資源循環と有効活用の観点から、廃棄物処理施設でも発電量増加への取り組みを進めています。

加えて、これら再生可能エネルギーをメイン電源とした電力の小売事業、ならびに再生可能エネルギーを活用したエネルギーの地産地消に焦点を当てた「地域新電力」の設立・運営の支援や、同一企業グループ内の電力を全国の事業所・関連会社で融通する「多拠点一括エネルギーネットワークサービス(JFE-METS)」の拡大にも積極的に取り組んでいます。

カーボンニュートラルに向けた新たな取り組みとして、水素・アンモニア・CO2等を安全かつ効率的に大量に輸送する技術や、廃棄物処理施設の排ガスからCO2を分離・回収して利用するプロセスの実証にも取り組んでいます。

マテリアルリサイクル分野では新たに、回収したPETボトルを再生してボトルの原料とするボトルtoボトル(BtoB)や、経年劣化により廃棄される太陽光パネルの再資源化に取り組んでいます。

これらの取り組みにより、2024年度に1,200万トン/年、 2030年度に2,500万トン/年の社会全体のCO2削減に貢献していきます。

2022年度のCO2削減貢献に寄与する主な取り組みは、以下の通りです。

【大型バイオマス発電】

国内最大級112,000kWの木質バイオマス専焼発電所 「田原バイオマス発電所」の工事着手

JFEエンジニアリング、中部電力(株)、東邦ガス(株)、東京センチュリー(株)が共同で出資する田原バイオマスパワー合同会社は、田原バイオマス発電所の建設工事に着手しました。本発電所は、愛知県田原市に建設する、国内最大級となる発電出力112,000kWの木質バイオマス専焼発電所で、2025年9月の運転開始を予定しています。

【食品廃棄物発電】

福岡県福岡市に食品リサイクル・バイオガス発電施設を新設 ~J&T環境が食品リサイクル事業で九州地区へ初進出~

JFEエンジニアリングのグループ会社であるJ&T環境と、環境エイジェンシーの2社は、福岡バイオフードリサイクル(株)を設立し、福岡市においてバイオガス化による食品リサイクル・バイオガス発電事業を行います。本事業用に新設される工場は、一日最大100トンの食品廃棄物を受け入れ、微生物発酵により生産されるメタンガスを燃料にして発電(出力1,560kW、年間想定発電量約12,000MWh)を行うとともに、処理過程で生じた発酵汚泥や消化液を近隣農地などで二次活用を目指します。

このほかにも、2022年5月に稼働した仙台市の東北バイオフードリサイクルにおける食品リサイクル発電や、札幌市の札幌バイオフードリサイクルの能力増強に伴う新工場建設など、日本全国で食品廃棄物発電事業の拡大を行っています。

【多拠点一括エネルギーネットワークサービス(JFE-METS)】

ハウス食品グループ8社17拠点に電力融通
「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」実施に合意~CO2削減を推進!~

JFEエンジニアリングは、ハウス食品グループ本社(株)とJFE-METSの実施について基本合意しました。当社は、ハウス食品静岡工場にガスコジェネレーションシステムを設置するとともに、JFE-METSを用いて余剰電力と当社グループ保有電力をハウス食品グループの全国8社17拠点に供給します。本サービスにより対象拠点のCO2排出量を約12%、エネルギー使用量を約17%削減(2020年度比)できる見込みで、運用開始は2024年4月を予定しています。

【CCUS】

CO2液化・貯蔵・荷役設備建設工事を受注
~CCUS社会実装に向けた長距離・大量輸送と低コスト化につながる 液化CO2輸送システム~

JFEエンジニアリングは、日本CCS調査(株)より「CO2液化・貯蔵・荷役設備建設工事(EPC)」を受注しました。本工事は、NEDO事業「CCUS研究開発・実証関連事業/苫小牧における CCUS 大規模実証試験/CO2輸送に関する実証試験」で使用する設備の一部を建設するもので、関西電力(株)舞鶴発電所より供給される、石炭火力燃焼ガスから分離回収された年間1万トン規模のCO2を液化、貯蔵し、船舶へ払い出すことができる陸上設備の設計から建設までを一貫して担います。

【PETボトルリサイクル(ボトルtoボトル)】

協栄J&T環境(株)西日本PETボトルMRセンター 全面的な商業運転開始

JFEエンジニアリングのグループ会社である協栄J&T環境は、三重県津市のPETボトルリサイクル原料製造工場(西日本PETボトルMRセンター)において2021年10月のフレーク工場の稼働に続き、2022年4月にペレット製造ラインが竣工し全面的な商業運転を開始いたしました。処理能力は年間60千トン(1日当たり約1,000万本)で、日本全国の総出荷本数の約10%を処理できます。

使用済みPETボトルよりフレークやペレットを製造してボトルメーカーに提供することで、再生原料100%のボトル製造に貢献し、原油由来のペレット製造と比べて約63%のCO2削減効果が期待されます。

電磁鋼板

電磁鋼板はモータや変圧器等の電気機器の鉄心材料として広く用いられており、電気機器の性能を左右するキーマテリアルです。JFEスチールでは、高性能な電磁鋼板を供給することで世界的なCO2排出削減に材料の側面から貢献しています。

【無方向性電磁鋼板】

カーボンニュートラル社会の実現には、これまでの化石燃料をエネルギー源とする社会から、カーボンフリー電力を主力エネルギーとする社会構造への大転換が必要です。電気自動車(EV)がモビリティの中心となり、ゼロエミッション電源が主力となる未来社会の構築には、高効率のモータが必須であり、そのキー材料として高性能の無方向性電磁鋼板が欠かせません。

当社の高級無方向性電磁鋼板は、優れた低鉄損磁気特性による高効率化と高磁束密度による小型化において、EV用駆動モータの高性能化に寄与します。この性能が評価され、多くの自動車メーカーに採用されています。今後もこのような高級無方向性電磁鋼板の需要が急速に拡大すると想定され、これに対応するため、西日本製鉄所(倉敷地区)においてその製造能力を2024年度上期に現行比2倍に増強する投資(約490億円)を実行しています。

さらに、自動車の電動化に向けた動きの加速に伴って、EVの駆動モータに不可欠な高級無方向性電磁鋼板に対する需要に一層の急伸が見込まれることから、西日本製鉄所(倉敷地区)の電磁鋼板製造能力のさらなる増強を進めています。約460億円の追加投資により、2026年度中にEV主機モータ用トップグレード無方向性電磁鋼板の製造能力を現行比3倍に増強(既投資分含む)することを目指します。

高級無方向性電磁鋼板の需要予測
(当社試算、20年実績を1.0とした相対値)

高級無方向性電磁鋼板の需要予測(当社試算、20年実績を1.0とした相対値)

【方向性電磁鋼板】

今後も世界的な電力需要の増加と再生可能エネルギーの導入拡大が進むことで、変圧器に使用される方向性電磁鋼板の需要が増大していくと予測されており、特にインドでの方向性電磁鋼板の需要は2030年時点で2019年実績比1.8倍に増加すると想定しています。

そのため、JFEスチールとJSW Steel Limited(以下、JSW)は、インドにおける方向性電磁鋼板の合弁会社JSW JFE Electrical Steel Private Limited の設立について、2023年8月に合弁契約を締結しました。これにより、インド国内においてJSWと方向性電磁鋼板の一貫製造体制を構築し、JFEスチールが長年培ってきた、エネルギー効率に優れた方向性電磁鋼板を、高級グレードを中心としたフルラインナップにて現地で製造することで、よりグリーンな送配電インフラの整備に寄与し、インド経済の著しい成長に寄与していきます。

総投資額は両社で670百万ドルを計画し、2027年度のフル生産開始を目指して取り組みを進めていきます。

方向性電磁鋼板のインド需要予測
(当社試算、19年実績を1.0とした相対値)

方向性電磁鋼板のインド需要予測(当社試算、19年実績を1.0とした相対値)
方向性電磁鋼板の契約締結
方向性電磁鋼板の契約締結

【スーパーコア】

近年、小型・高速化が進展するモータ分野(EVの駆動用、家電製品用、ドローン用等)では高出力化と高効率化が要求されており、鉄心材料である電磁鋼板には高周波鉄損※1の低減と磁束密度※2の向上が求められています。これには、鋼の電気抵抗を高めるSi(珪素)の添加を増やすことが有効であり、当社は独自開発したCVD(化学気相蒸着)※3連続浸珪プロセス技術を用いて浸珪量と拡散条件の最適化による板厚方向のSi濃度分布のコントロールと結晶方位制御に取り組み、従来の無方向性電磁鋼板(3% Si鋼板)並みの磁束密度(高出力)を維持しつつ、モータの大幅な高効率化(省エネ)を可能とする高速モータ用Si傾斜磁性材料「JNRF®」を開発しました。

※1鉄損とは、鉄心を交流で励磁した際に生じるエネルギー損失であり、主に熱として失われます。高周波で励磁した際に発生するエネルギー損失は特に高周波鉄損と呼ばれ、高速モータにおいては高周波鉄損が低いほどモータ効率は高くなります

※2磁束密度とは、材料の磁化されやすさの指標であり、磁束密度が高い材料ほど強い電磁石となります。モータにおいては、磁束密度が高い材料を用いることで、より大きなトルク(力)が得られます

※3鋼帯の焼鈍ラインにChemical Vapor Deposition (化学気相蒸着)法を適用し、連続通板しながら炉内でSiCl4(四塩化珪素)ガスと鋼帯を反応させ、鋼のSi濃度を高めるプロセス技術です

スーパーコア製造プロセスの概要

スーパーコア製造プロセスの概要

自動車用高張力鋼板(ハイテン)

自動車に使用される鋼板は、燃費や車体の安全性を向上させるため、また最近ではEVの航続距離延長のため、高強度化が求められています。鋼板を高強度化すると、一般的に加工性が低下するという課題があり、適用可能な部品が制限される場合もありました。JFEスチールでは、冷延鋼板および合金化溶融亜鉛めっき(GA)鋼板の590、780、980、1,180MPa級の各強度グレードにおいて、数種類の異なる加工性を有する製品を「JEFORMA®」としてシリーズ化し、ラインナップの中から適用する部品の形状や加工方法に応じて最適な鋼板を提供しています。最近では、以下のような自動車用高張力鋼板の開発を行っています。

【ティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ社との共同開発】

JFEスチールは、ドイツのティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ社と特に鋼の局部延性に焦点を当てた新しい鋼組成の設計と、新たな熱処理方法の確立により、冷間加工用に新たな980~1,180MPa級高張力鋼板を共同で開発しました。従来の汎用高張力鋼板と比較し、より高い降伏強度と延性、特に優れた局部延性を有しています。これらの特性により、自動車骨格のさらなる軽量化と、衝突安全性能の向上に寄与するとともに、熱間プレス工法を用いず従来の冷間加工で難成形部品を製造することが可能となり、生産性向上や製造コスト低減に加えて、部品製造時の省エネルギーにも貢献します。

【冷間プレス用1.5GPa級高張力冷延鋼板】

JFEスチールが開発した1.5GPa(1,470MPa)級高張力冷延鋼板が、2020年に冷間プレス用途として世界で初めて自動車の骨格部品に採用されました。冷間プレスによる車体骨格部品の強度としては、世界最高レベルとなります。それまで形状が複雑な車体骨格部品への適用は、冷間プレス性や遅れ破壊特性の低下から1.3GPa(1,310MPa)級までにとどまり、熱間プレス工法による1.5GPa級高張力鋼板の適用が進んでいました。JFEスチールは、独自のWQ(Water Quench)方式連続焼鈍プロセスを活用した鋼板の組織制御により、1.3GPa級と同等の冷間プレス性を有しながら高い降伏強度と耐遅れ破壊特性を両立し、環境負荷が小さく低コストな冷間プレス工法によって、車体骨格部品に1.5GPa級高張力鋼板を適用することを可能にしました。

また、「自動車の燃費と衝突安全性を向上する超高強度薄鋼板の発明」により、令和5年度全国発明表彰経済産業大臣賞を受賞しました。この発明は、引張強さが1,320MPa以上の超高強度でありながら耐遅れ破壊特性を飛躍的に高めた自動車用冷延鋼板に関するもので、上記冷延加工用超高強度冷延鋼板に活用されています。

当社調べ

JFEスチールは、環境への影響、省エネルギー・省資源への貢献を常に考え、使いやすい薄板製品の開発・生産を行っています。製品の自動車部品としての利用を通して、社会でのCO2排出削減に貢献していきます。

関連する商品・技術一覧

社会全体のCO2削減への貢献拡大
エンジニアリング事業でのCO2削減貢献 大型バイオマス発電 「国内最大級112,000kWの木質バイオマス専焼発電所 「田原バイオマス発電所」の工事着手」
地域新電力 「官民連携の地域エネルギー事業への取り組み 地域新電力事業の展開」
多拠点一括エネルギーネットワークサービス 「ハウス食品グループ8社17拠点に電力融通~CO2削減を推進」
食品廃棄物リサイクル 「食品廃棄物リサイクル事業の取り組み」
カーボンニュートラル社会 「水素、CO2輸送によるカーボンニュートラル社会実現への貢献」
「CO2液化・貯蔵・荷役設備建設工事(EPC)を受注 ~CCUS社会実装に向けた長距離・大量輸送と低コスト化につながる 液化CO2輸送システム~」
PETボトルリサイクル 「協栄J&T環境(株) 西日本PETボトルMRセンター 全面的な商業運転開始」
電磁鋼板 JNRF 「高速モータ用Si傾斜磁性材料 『JNRF』を開発~高周波低鉄損と高磁束密度を両立した電磁鋼板~」
設備増強 「西日本製鉄所(倉敷地区)電磁鋼板製造設備の増強について」
「西日本製鉄所(倉敷地区)電磁鋼板製造設備の追加増強の決定について」
電磁鋼板ビジネスのサプライチェーン 「インドでの方向性電磁鋼板製造販売会社設立に関するFSの実施について」
「印JSWと方向性電磁鋼板製造販売会社設立に関する基本合意について」
「印JSWとの方向性電磁鋼板製造販売会社設立に関する合弁契約締結について」
「電磁鋼板ビジネスでのグローバルサプライチェーン構築」
自動車用高張力鋼板(ハイテン) 自動車用高張力鋼板の開発 ティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ社と共同で新商品開発~自動車向け冷間加工用の新ハイテンをグローバルに提案~
冷間プレス用1.5GPa級高張力冷延鋼板が自動車の車体骨格部品に初採用

洋上風力発電ビジネスへの取り組み

日本政府が2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた「グリーン成長戦略」の柱の一つとして位置付けた洋上風力発電について、エンジニアリング事業を主体として、JFEグループの総合力を活かして事業化に取り組んでいます。具体的には、洋上風力発電の着床式基礎(モノパイル式、ジャケット式)の製造、さらにはO&M事業を事業化し素材から基礎製造・O&Mまでグループ一貫でサプライチェーンを構築していきます。これにより、JFEグループのカーボンニュートラルに向けた取り組みの推進、さらには政府目標であるカーボンニュートラル実現に大きく貢献していきます。

Operation and Maintenance

モノパイル製造工場の建設

JFEエンジニアリングでは、岡山県笠岡市で洋上風力発電の基礎構造部材であるモノパイルの製造工場の建設を進めています。モノパイルは、直径約10m、鋼板板厚100mm前後、長さ100mに及ぶ超大型鋼構造物であり、完成時には国内唯一の製造工場となります。当工場は、広大な敷地と直接出荷可能な岸壁を持つとともに、大口径用の曲げ加工機械や極厚板用の溶接機械等の最新設備の導入、津製作所での大型鋼構造物製造経験を踏まえた効率的な製造プロセスにより、生産効率を追求した工場です。稼働は2024年4月で、年間最大10万トンの生産量を予定しており、洋上風力分野における国内サプライチェーンの構築、そしてカーボンニュートラル実現に大きく貢献するものと考えています。

モノパイル製造工場(笠岡製作所)の概要

モノパイル製造工場(笠岡製作所)の概要
モノパイル工場建設工事の様子(2023年5月現在)
モノパイル工場建設工事の様子(2023年5月現在)

洋上風力発電用大単重鋼板

JFEスチール西日本製鉄所(倉敷地区)の第7連続鋳造機で製造する大単重鋼板「J-TerraPlate(ジェイテラプレート)」が、洋上風力発電用の基礎構造物(モノパイル)に初採用されました。

近年、洋上風力用風車の大型化とともに、それを支える基礎構造物も巨大になっています。これらの基礎構造物は極厚の厚鋼板を溶接して製造するため、溶接作業負荷が高く作業効率の向上が課題となっています。この課題解決に向けて、従来よりも大きなサイズの厚鋼板を使用することで溶接作業回数を削減することができ、作業効率の向上および製造コストの削減に貢献できます。

そのため、最新鋭の第7連続鋳造機で製造する大単重のスラブを使って、最大37トン/枚(従来は20~28トン/枚程度)のアジア最大級かつ洋上の厳しい環境で長期にわたって風車を支える高品質な「大単重鋼板」を大量に供給できるよう、厚板工場などへの設備投資を進めてきました。その結果として今回の初採用に至ったものです。

洋上風力発電用大単重鋼板の製造プロセス

洋上風力発電用大単重鋼板の製造プロセス

モノパイル製造における大単重材のメリット

モノパイル製造における大単重材のメリット

洋上風力発電ビジネスの事業化推進

洋上風力発電ビジネスの事業化推進

JFEグループ各社の技術

カテゴリー 会社 内容
基礎構造 JFEエンジニアリング 着床式基礎(モノパイル、ジャケットなど)
ジャパンマリンユナイテッド 浮体式基礎(セミサブ型)
JFEスチール 高品質・大単重厚鋼板、高強度鋼(HBLシリーズによる軽量化)
施工 ジャパンマリンユナイテッド SEP船(作業船)
JFEエンジニアリング JFE-RAPID(ケーブル敷設工法)
電力貯蔵用蓄電池システム
ジェコス 大型鋼構造物用架台
JFEスチール 天然石代替材(鉄鋼スラグ活用)
O&M
(運用および保守点検)
JFEエンジニアリング 遠隔監視・操作技術
JFEアドバンテック 振動計測機器・システム、海洋モニタリング機器(水質・海況)
ジャパンマリンユナイテッド オフショア支援船(作業船)
JFEプラントエンジ 風力発電機メンテナンス(診断・補修)
JFEテクノス 陸上風車の計画・建設・運用保守技術
JFEテクノリサーチ 腐食、疲労、振動等設備の評価解析、余寿命診断
大型構造物 強度・耐久性試験、評価技術
サプライチェーン JFE商事 洋上風力プロジェクトの案件遂行の最適化に貢献

京浜臨海部におけるカーボンニュートラル化に向けた取り組み

東日本製鉄所京浜地区の高炉等休止後の土地利用転換について、川崎市とJFEグループは協働検討を進めており、土地利用の方向性として「カーボンニュートラルを先導する」ことが示されています。また製鉄所を含む京浜臨海部において、国が推進するカーボンニュートラルポート形成に向けた官民連携での取り組みが進んでいます。

JFEホールディングスは、京浜地区扇島の大水深岸壁および後背地の活用を視野に、ENEOS(株)、(株)JERAと、水素・アンモニア等の受け入れ・供給拠点整備に向けた協業検討を2022年4月より進めています。また、2023年3月には、NEDOのグリーンイノベーション基金事業「大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」の一環として、日本水素エネルギー(株)、岩谷産業(株)、ENEOS(株)が共同で取り組む「液化水素サプライチェーンの商用化実証」の液化水素受入候補地として川崎臨海部が選定され、事業者との積極的な情報交換を進めています。

JFEグループは、扇島を起点に水素等脱炭素燃料の安定的かつ経済的なサプライチェーン構築の一翼を担うことを目指し、京浜臨海部をはじめ、社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献します。

京浜臨海部 航空写真(川崎市提供)
京浜臨海部 航空写真(川崎市提供)

気候変動への「適応」(レジリエント社会への貢献)

防災・減災対策、国土強靭化への貢献

JFEグループは、CO2排出量削減(気候変動の「緩和」)を目指すだけでなく、気候変動の影響に適応したレジリエントな社会にも貢献します。

ハイブリッド防潮堤や鋼製透過型砂防堰堤等で、国民の生活・経済活動に欠かせない重要インフラ等の防災・減災、強靭化に貢献していきます。

【ハイブリッド防潮堤】

ハイブリッド防潮堤は、鋼材とコンクリートのハイブリッド構造の部材によって、工期短縮・省スペースの両面で貢献します。

ハイブリッド防潮堤の特徴は、現地における防潮堤の基礎鋼管杭施工中に、JFEグループの工場で堤体ブロックを製作することにより、現地工期を約6割削減できるところです。また、施工現場で大量の資機材や人手を調達する必要がないため、他の工事を妨げることもありません。これに加え、従来の盛土構造の防潮堤と比べ、土地占有面積が約8割削減でき、省スペース化も実現しています。今後も技術を応用・発展させ、地域の防災に貢献していきます。

断面図
断面図
ハイブリッド防潮堤
ハイブリッド防潮堤

JFEエンジニアリング 鉄構インフラ

【鋼製透過型砂防堰堤】

鋼製透過型砂防堰堤は、土石流をせき止めるために渓流に設置する、鋼管構造の砂防構造物です。

強固な鋼管を組み合わせることで流木や巨礫の衝撃に耐える一方、流水や土砂の通り道となる開口部を大きくしているため、洪水時に水位の上昇が上流に及ぶ「せき上げ」が発生しにくく、土石流の先頭部を確実に捕捉することができます。また、ダムのように河の流れをせき止めることもないため、河床の勾配に合わせた形状をすることにより生態系への配慮も可能です。JFEグループでは、構造の工夫などにより設置コスト削減と工期短縮化を図ることで、鋼製透過型砂防堰堤の普及拡大を進めています。

鋼製透過型砂防堰提
鋼製透過型砂防堰提
【テールアルメ工法】

テールアルメ工法(フランス語でテールは「土」、アルメは「補強」)は、日本に「補強土」という技術を広めたパイオニアであり、導入約半世紀で高速道路などの道路構造物や、空港・学校・防衛施設等の造成工事等、国内のインフラ整備を中心にさまざまな場面で使用されている補強土壁工法です。盛土内に鋼製の補強材を層状に敷設することで、鋼材と土との摩擦効果により垂直で強靭な構造となり、優れた耐震性を示すのが大きな特徴です。

JFE商事のグループ会社であるJFE商事テールワン(株)は、テールアルメ工法をさらに安全・安心な社会づくりに活かすべく、巨大地震などの不測の力が作用した場合の構造物の健全性を可視化するFS(フェイルセーフ)機能を開発しました。補強盛土の内部異常を可視化することで、インフラの安全性を見極め、メンテナンス時期を知らせることができます。

テールアルメ工法の普及と、防災・減災・国土強靭化に寄与するテールアルメ工法以外の商材拡販により、災害に強い道路や街づくりに貢献していきます。

国道3号線(熊本県)での施工実績
国道3号線(熊本県)での施工実績
フェイルセンサー作動時
フェイルセンサー作動時
(赤色の変状サインで内部異常を可視化)

リスク管理(気候変動問題)

JFEホールディングスが持株会社として、「内部統制体制構築の基本方針」に基づきグループの包括的なリスク管理を担っています。JFEホールディングスの社長が議長を務める「グループサステナビリティ会議」を通じてグループ横断的に情報の集約と管理の強化を行い、リスクの発生頻度や影響の低減を図っています。

気候変動問題などをはじめとするESGリスクの管理についても、担当執行役員などがリスクの認識に努め、必要に応じてグループサステナビリティ会議において確認・評価し、その対処方針を審議・決定しています。特に経営にとって重要な課題については、「グループ経営戦略会議」で審議しています。

取締役会は、気候変動問題などのESGリスクやサステナビリティに関する取り組みに係る重要事項について決議し、または報告を受けています。

気候関連リスクの企業レベルでの特定・評価については、2017年にTCFDから提言されたフレームワークに従いシナリオ分析を踏まえて行っています。事業に影響を及ぼす重要な要因を選定し、より詳細な影響を分析することによって第7次中期経営計画などの事業戦略策定に活用しています。

気候変動関連リスクのモニタリング方法

「グループサステナビリティ会議」、「グループ経営戦略会議」または「経営会議」は、経営に影響を及ぼす可能性のあるリスクについてモニタリングしています。モニタリング方法としては、各事業会社の環境委員会等で審議した気候関連問題について四半期に一度報告を受けており、対策を講じています。グループ環境委員会ではリスクに関する情報の集約と管理の強化を行い、リスクの発生頻度や影響の低減を図るだけでなく、機会の最大化に取り組んでいます。

モニタリングをもとにした対策

1.グループとしての方針審議

2.方針の浸透状況の監督

3.議題や発生した問題への対処事例などの情報共有

詳細は以下をご参照ください。

サステナビリティ推進体制

リスクマネジメント

環境マネジメント

指標と目標(中長期の目標と2022年度の実績)

JFEグループは、鉄鋼事業会社であるJFEスチールが所属する日本鉄鋼連盟にて策定された、3つのエコと革新的製鉄プロセス開発を柱とする低炭素社会実行計画を推進しています。この計画では、日本鉄鋼連盟として、2030年度までに900万t-CO2削減を目標としてきました。2020年に低炭素社会実行計画のフェーズⅠが終了し、「カーボンニュートラル行動計画」と改め、フェーズⅡ目標として2030年度のエネルギー起源CO2排出量を2013年度比30%削減へと改訂されました。JFEスチールもこの計画の目標達成に向けて積極的な活動を推進しています。

日本鉄鋼連盟は、これらの取り組みに加え、最終的な「ゼロカーボン・スチール」の実現を目指した2030年以降の「長期温暖化対策ビジョン」を策定し公表しました。JFEスチールもこの長期ビジョンの策定に中核的な立場で参画しました。さらに、2021年に「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を発表し、日本鉄鋼業として早期のゼロカーボン・スチールの実現に向けて、果敢に挑戦することを宣言しました。

また、JFEグループは、鉄鋼事業を取り巻く環境変化に対応すべく事業構造改革を実施していく中で、地球規模の気候変動問題の解決を通じた持続可能性の向上を目指しています。2020年を気候変動問題へのさらなる対応強化の節目の年と位置付け、「2030年度のCO2排出量を2013年度比で20%以上削減、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す」という鉄鋼事業におけるCO2削減目標を掲げました。

2021年5月、JFEグループは気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、「第7次中期経営計画」において2050年カーボンニュートラルの実現に向けた「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定し、新たなCO2削減目標を公表しました。加えて、2022年2月には、2030年度の鉄鋼事業におけるCO2削減目標を上方修正し、「2013年度比で30%以上の削減」を目標としました。さらに、JFEスチールの国内の主要グループ会社においてもJFEスチールと同レベルのCO2削減目標を策定しました。国内外のグループが一丸となって気候変動問題への取り組みを事業戦略に組み込むとともに、TCFDの理念を経営戦略に反映し、CO2排出量削減に向けた取り組みを体系的に推進していきます。

JFEグループのCO2削減に向けた取り組み(JFEグループ環境経営ビジョン2050)

第7次中期経営計画における取り組み
  • 2024年度末のCO2排出量を2013年度比で18%削減(鉄鋼事業)

    さらに、JFEスチールの主要グループ会社においても2024年度の個別のCO2削減目標を策定し、この確実な達成に向けて取り組むこととしました。これにより、JFEスチールグループ全体のCO2排出量の99%以上をカバーしています。

  • 2030年度のCO2排出量の削減目標:2013年度比で30%以上(鉄鋼事業)
2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み
  • 鉄鋼事業のCO2排出量削減

    カーボンリサイクル高炉+CCUを軸とした超革新技術開発への挑戦

    水素製鉄(直接還元)の技術開発

    電気炉プロセス技術の開発

  • エンジニアリング事業の社会全体のCO2削減への貢献拡大

    CO2削減貢献量目標2024年度1,200万トン、2030年度2,500万トン

  • 洋上風力発電ビジネスへの取り組み

    洋上風力発電事業についてグループ全体で事業化を推進

JFEグループ環境経営ビジョン2050 説明会資料

JFEグループのCO2排出量

JFEグループのCO2排出量推移

JFEグループのCO2排出量推移

※ 集計範囲:JFEスチール、国内外主要子会社26社
JFEエンジニアリング、国内外主要子会社12社
JFE商事、国内外主要子会社35社
総計76社

JFEスチールの非エネルギー起源CO2排出量を含む

2018年度からJFEスチール子会社およびJFEエンジニアリング子会社の非エネルギー起源CO2も含む

2013年度は、JFE条鋼 仙台製造所のデータを加えて算出

2021年度より、JFEスチール、JFEエンジニアリング、JFE商事の主要子会社の集計範囲を拡充

JFEグループのScope3排出量(2022年度)

JFEグループのScope3排出量(2022年度)
集計範囲:

<カテゴリー1,2,3,4,5>JFEスチール、JFEスチール国内主要子会社21社、JFEエンジニアリング、JFEエンジニアリング主要子会社1社、JFE商事

<カテゴリー6,7>JFEスチール、JFEスチール国内主要子会社21社、JFEエンジニアリング、JFEエンジニアリング国内外主要子会社15社、JFE商事

<カテゴリー15>ジャパンマリンユナイテッド、JFEスチールの持分法適用会社10社(国内7社、海外3社)

出典:環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォーム等

CO2排出関連の定量データは以下をご参照ください。

環境データ

JFEスチール

省エネルギーとCO2削減への取り組み

JFEスチールでは、従来から高効率設備の導入などを中心に、エネルギー使用量およびCO2排出量の削減に向けた活動を積極的に推進してきました。

2022年度の省エネルギーとCO2排出量実績

JFEスチールの粗鋼生産量推移

JFEスチールの粗鋼生産量推移

2013年度は、JFE条鋼 仙台製造所のデータを加えて算出

JFEスチールのエネルギー消費量・原単位推移

JFEスチールのエネルギー消費量・原単位推移

2013年度は、JFE条鋼 仙台製造所のデータを加えて算出

JFEスチールのエネルギー起源CO2排出量・原単位推移

JFEスチールのエネルギー起源CO2排出量・原単位推移

2022年度の購入電力のCO2排出係数:日本鉄鋼連盟の低炭素社会実行計画における2021年度購入電力のCO2排出係数

日本鉄鋼連盟の低炭素社会実行計画における2021年度購入電力のCO2排出係数を適用しているため、2021年度数値を更新

2013年度は、JFE条鋼 仙台製造所のデータを加えて算出

JFEエンジニアリング

JFEエンジニアリングでは、再生可能エネルギー発電の拡大、プラスチックや食品リサイクルの建設・運営など、事業を通じた社会全体のCO2排出削減への貢献を進めており、2022年度は1,114万t-CO2のCO2排出削減(2021年度比5%貢献拡大)に貢献しました。今後もさらに事業拡大を進め、2024年度に1,200万トン、2030年度に2,500万トンのCO2排出削減に貢献することを目指しています。

また、2021年度より順次、横浜本社へのオンサイト型太陽光PPAおよびゼロエミプラン電源の導入、津製作所へのCO2低排出電力の導入などを行い、2022年度は自社CO2排出量を50%削減(2013年比)しました。あわせて、製作所およびオフィスにおける省エネルギー活動や廃棄物発生削減の取り組みを推進しています。今後も、使用電力への再エネ電源の活用などを含め、省資源・環境に配慮した事業活動に取り組んでいきます。

JFEエンジニアリングのCO2削減貢献相当量(2022年度)

JFEエンジニアリングのCO2削減貢献相当量(2022年度)

※1 集計範囲:JFEエンジニアリング

※2 集計範囲:JFEエンジニアリング、ドイツの子会社スタンダードケッセル・バウムガルテ(SBG)

※3 集計範囲:J&T環境、JFEアーバンリサイクル

※4 その他:太陽光、風力、消化ガス、汚泥焼却、 PPA、エネルギーサービスを含む

JFEエンジニアリンググループのエネルギー起源CO2排出量推移

JFEエンジニアリンググループのエネルギー起源CO2排出量推移

集計範囲:JFEエンジニアリング、国内外主要子会社13社

2021年度より、JFEエンジニアリングの主要子会社の集計範囲を拡充

JFE商事

JFE商事では、2001年に策定した環境方針のもと、エネルギー削減の一環として紙使用量の削減、電力使用量の削減、廃棄物の分別管理の徹底等の取り組みを継続的に実施しています。

紙使用量の削減については、原材料供給の負荷軽減のために再生紙の利用を継続しながら、作成資料等のモノクロ印刷や両面印刷を徹底しているほか、大型モニターやWEB会議システムの活用による会議資料のペーパーレス化も強力に推進しており、従業員一人あたりの紙使用量は減少傾向にあります。電力使用量の削減については、オフィスリニューアルによる人感センサー照明・省エネ機器の導入や、定時退社デーの実施、RPA化等の推進による業務効率化等により環境負荷の低減を図っています。

また、国内事業会社では、太陽光パネルの設置や再エネ由来の電力調達によるCO2排出量削減を目標として設定しており、2023年2月よりJFE商事コイルセンター静岡事業所において、鉄鋼流通業界で初の取り組みである鋼材加工分野におけるCO2排出量実質ゼロを実現しました。この取り組みに加え、使用する電力の低減に継続して取り組んだことにより、2022年度は国内事業会社のCO2排出量を11.2%削減(2019年度比)しました。

当社調べ

JFE商事の電力使用量推移

JFE商事の電力使用量推移

JFE商事グループのCO2排出量(2022年度)

JFE商事グループのCO2排出量(2022年度)

※ 集計範囲:JFE商事、国内外鋼材加工会社35社の電力使用によるCO2排出量

外部イニシアチブへの賛同・参画

JFEグループは、気候変動問題や環境保全に関わるさまざまな公共政策、外部イニシアチブについて、日本経済団体連合会や日本鉄鋼連盟などを通じて当社の考え方、意見を表明するとともに、それらの活動に主体的に参画しています。

また、グループとして「チャレンジ・ゼロ」宣言に賛同し、さまざまなイノベーションに挑戦していきます。「チャレンジ・ゼロ」(チャレンジネット・ゼロカーボンイノベーション)は、日本経済団体連合会が日本政府と連携し、「パリ協定」が長期的なゴールと位置付ける「脱炭素社会」の実現に向け、企業・団体がチャレンジするイノベーションのアクションを、国内外に力強く発信し、後押ししていく新たなイニシアチブです。

日本鉄鋼連盟は、2030年度を目標年次とするカーボンニュートラル行動計画(旧:低炭素社会実行計画)の達成に向けた取り組みを進めています。一方、2030年以降を見据えては、2018年11月に策定した「長期温暖化対策ビジョン-ゼロカーボン・スチールへの挑戦-」、および2021年2月に発表した「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」において、日本鉄鋼業として最終的なCO2排出ゼロの鉄鋼「ゼロカーボン・スチール」の実現に向けて果敢に挑戦することを宣言しました。JFEスチールも日本鉄鋼連盟の主要加盟会社として、これらの中長期の気候変動の取り組みに積極的に取り組んでいきます。また、経済産業省はGXに積極的に取り組む企業群を募り、官・学・金で協力して、GXに向けた挑戦を行い、経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場創造のための実践を行う場として「GXリーグ」を設立しています。JFEグループの気候変動問題の取り組みの方向性は「GXリーグ」の趣旨に合致するものと考え、「GXリーグ」に参画しています。グローバルでの協働としては、日印鉄鋼官民協力会合、日ASEAN鉄鋼イニシアチブ、日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術交流会などに積極的に参加し、さらにISO14404に基づいて計測・算出する世界鉄鋼協会(WSA:World Steel Association)のClimate Action data collection programmeのメンバーとしても活動しています。

JFEエンジニアリングは日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)に加盟しています。JCLPは、持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきであるという認識のもとに2009年に発足した、日本独自の企業グループです。脱炭素社会への移行を先導することで、社会から求められる企業となることを目指しています。JFEエンジニアリングは、JCLPが運営する企業間の知見共有と協働を促すためのプラットフォームである「脱炭素コンソーシアム」へ参加し、既に脱炭素の取り組みで先行している企業の知見を共有し、加盟企業同士のコラボレーションや新しいソリューションを生み出す活動に取り組んでいます。また、経産省が設立・推進する「GXリーグ」が2023年4月より本格稼働することを機に、2023年度より同リーグに正式に参画することとしました。同リーグを通じてさまざまなステークホルダーの皆様との共創を進め、カーボンニュートラルの実現と経済社会システムの変革に貢献していきます。

JFE商事は2021年、国連が提唱する世界最大のサステナビリティイニシアチブである「グローバル・コンパクト」に署名し、支持を表明いたしました。持続可能な社会の実現に向けて、グローバル・コンパクトが掲げる10原則の遵守と実践、SDGs推進に取り組んでいきます。また、当社はグローバル・コンパクトの日本のローカル・ネットワークである「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」の会員企業としても活動しています。2022年度はサプライチェーン、ヒューマンライツデューデリジェンス、人権教育等をテーマとした分科会に参加し、世界の潮流を学び、企業間の情報交換を行いながら自社のSDGs推進の取り組みにつなげています。

詳細は以下をご参照ください。

鉄鋼業界の取り組み

業界団体としての取り組み等

日本鉄鋼連盟 「地球温暖化対策」

日本鉄鋼連盟 「カーボンニュートラルへの挑戦!」

日本経済団体連合会 「チャレンジ・ゼロ」

経済産業省「GXリーグ」

WSA Climate Action data collection programme

日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)

国連グローバル・コンパクト

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン