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環境配慮型プロセス・商品の開発と提供

基本的な考え方

「JFEグループは、常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。」という企業理念のもと、気候変動問題の解決および環境負荷低減に向けたプロセス・商品の開発と提供を行っています。「JFEグループ環境経営ビジョン2050」において公表したJFEグループのCO2排出量の削減と社会全体のCO2削減への貢献拡大への取り組みのほか、地球環境の保全に関わるさまざまなプロセス・商品の開発と提供を通じて、企業価値の向上と持続的な社会の実現を目指していきます。

鉄鋼事業では、スチール研究所が、環境マネジメントシステム(環境方針)のもと、世界最高の技術の提供とイノベーション創出で持続的発展可能な循環型社会づくりを目指して、研究開発に取り組んでいます。エンジニアリング事業では、総合研究所において次世代エネルギーの創出や環境問題の解決など社会を支える新技術の研究開発を行っています。

JFEスチール 研究・技術開発

JFEエンジニアリング 研究開発

取り組み

事業別の主な環境配慮型商品・技術

JFEグループでは、事業会社がそれぞれの強みを活かして、環境に配慮したさまざまな商品や技術の開発と提供を行っています。

主な環境配慮型商品・技術

商品/技術名 環境配慮の内容 対象事業会社 ステータス
コークス炉の部分燃焼最適化技術 省エネルギー・CO2排出削減 JFEスチール 工程運用
フェロコークス 省エネルギー・CO2排出削減 試験操業
燃料・電力運用ガイダンスシステム 省エネルギー・CO2排出削減 開発
省資源型Si傾斜磁性材料 省資源・CO2排出削減 販売
鋼構造物用の薄物耐疲労鋼(AFD®鋼) 資源循環・CO2排出削減 開発
圧粉磁心用絶縁被覆純鉄粉「電磁郎® 資源循環・CO2排出削減 販売
極厚高強度鋼板 資源循環・CO2排出削減 販売
高圧水素輸送用ラインパイプ材 資源循環・CO2排出削減 開発
カルシア改質材 資源循環・生物多様性保全 販売
鉄鋼スラグ水和固化体 資源循環・CO2排出削減 販売
高炉スラグ細骨材を用いたプレキャストコンクリート製品 資源循環・CO2排出削減 販売
高炉水砕スラグ製品 資源循環・生物多様性保全・CO2排出削減 販売
マリンストーン® 資源循環・生物多様性保全・CO2吸収・固定 販売
フロンティアロック® 資源循環・生物多様性保全・CO2吸収・固定 販売
マリンブロック® 資源循環・生物多様性保全・CO2吸収・固定 販売
木質バイオマス専焼発電所 再生可能エネルギー・CO2排出削減 JFEエンジニアリング 建設
太陽光発電PPAモデル 再生可能エネルギー・CO2排出削減 事業拡大
ボイラ発電プラント向けDXサービス 省エネルギー・CO2排出削減 事業拡大
ダム最適運用システム 再生可能エネルギー・CO2排出削減・気候変動対応(洪水低減) 開発・
実証実験
ペットボトルリサイクル 資源循環・CO2排出削減・生物多様性保全(海洋環境保護) J&T環境 事業拡大
海外水処理事業 環境保全(下水処理) JFEエンジニアリング 事業拡大
海外橋梁事業 環境保全(渋滞緩和) 事業拡大
金属3Dプリンタによる受託造形事業 省エネルギー・省資源 事業拡大
電磁鋼板におけるグローバルサプライチェーンのさらなる拡大 省エネルギー・CO2排出削減 JFE商事 販売拡大
洋上風力発電産業向けのサプライチェーン構築 再生可能エネルギー 販売拡大
バイオマス燃料の取り扱い拡大 再生可能エネルギー・CO2排出削減 販売拡大
スクラップ取り引き拡大による循環型社会発展への貢献 資源循環・CO2排出削減 販売拡大

JFEグループ環境経営ビジョン2050の詳細については以下をご参照ください。

JFEグループ環境経営ビジョン2050

JFEグループ環境経営ビジョン2050 説明会資料[2021年5月25日]

JFEスチール

SuMPO環境ラベルプログラム「エコリーフ」の取得

エコリーフ

JFEスチールは(一社)サステナブル経営推進機構(SuMPO)が認証するSuMPO環境ラベルプログラムの「エコリーフ」について、缶用鋼板3品種(ブリキ、JFEユニバーサルブライト(ラミネート鋼板)、ティンフリースチール)、建材製品5品種(H形鋼、スーパーハイスレンド®H形鋼、極厚H形鋼、建材厚板、建材コラム)、厚鋼板3品種(海洋構造物・風力用厚鋼板、造船用厚鋼板、UOE鋼管)で取得しました。

「エコリーフ」はSuMPOが運営するタイプIII環境宣言(EPD)で、ISO 14025:2006(環境ラベルおよび宣言-タイプIII環境宣言-原則および手順)に準拠して製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体における環境負荷の定量的開示を行う環境ラベルです。当社製品の環境への影響がデータとして可視化され、透明性を高めます。第三者による審査・検証で確認された公平性、信頼性が担保された環境影響データが開示されることにより、お客様が使用する製品の環境負荷を定量的・客観的に評価することが可能になります。

JFEスチールでは、今後も自社製品について「エコリーフ」の取得・公開を積極的に進めていきます。

「SuMPO環境ラベルプログラム」

コークス炉の部分燃焼最適化技術

JFEスチールは、デジタルツイン技術を活用した設備設計により、西日本製鉄所(福山地区)のコークス炉において、省エネルギー効果とCO2削減効果のある新設備の技術開発を行い、工程運用を開始しました。

当社は、DX戦略として製鉄所全体にCyber Physical System(以下、CPS)を活用したインテリジェント製鉄所の実現を目指しています。デジタルツインはCPSのコア技術であり、現実世界の物理システムやプロセスを仮想空間上に現実世界と等価なモデル(双子=ツイン)を再現し、現実世界を忠実にシミュレートする技術です。少ないデータからでも、現実世界では把握しえない設備内部の状態を可視化できるため、目視やセンサーによる内部状況の確認が難しい設備についても、従来成し得なかった生産プロセスの効率的な開発と運用が可能となります。さらに、大規模な操業変更や設備変更時における影響の予測も可能にします。

この技術を活用して西日本製鉄所(福山地区)の5コークス炉D団の操業改善に取り組み、仮想空間上に構築したコークス炉のデジタルツインの情報から、部分的に空気供給量を制御する機構が高効率操業に有効であることを確認し、さらに燃焼最適化のための補助空気量を算出しました。この知見をもとに、既存設備を活用した新たな設備を開発して実運用を開始し、従来比で燃料使用削減量約5%、CO2排出削減量6,600トン/年の効果を達成しました。本件は、(一社)環境共創イニシアチブ(SII)助成金事業に採択されています。

コークス炉構造とコークス炉のデジタルツインモデル

コークス炉構造とコークス炉のデジタルツインモデル

フェロコークス

フェロコークスは、低品位の石炭や鉄鉱石から製造される画期的な高炉原料です。内部の金属鉄の触媒作用により、高炉で使用するコークス量を削減することで、製銑プロセスのCO2発生量を大幅に削減することができる省エネルギー技術です。

JFEスチールは、2017年度より2022年度の6年間、(国研)新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)による「環境調和型プロセス技術の開発/フェロコークス技術の開発」プロジェクトを実施しました。最終年度に中規模設備で製造したフェロコークスの西日本製鉄所(福山地区)の高炉での使用試験を行い、還元材比の低下を確認しました。今後は、技術開発の最終目標である製銑プロセスにおけるエネルギー消費量約10%削減技術を確立するため、当社が開発したモデル製鉄所を対象とした物質・エネルギー収支モデル、および上記結果を反映させた汎用高機能高炉シミュレーターを用いて、最終目標を達成するための課題抽出や操業条件の検討を進めていきます。

汎用高機能高炉シミュレーター:プロジェクト期間で日本製鉄(株)が開発

モデル製鉄所における省エネルギー・CO2削減量の評価方法

モデル製鉄所における省エネルギー・CO2削減量の評価方法
モデル製鉄所における省エネ・CO2削減量の評価方法

製鉄所における燃料・電力運用ガイダンスシステム

JFEスチールは、「製鉄所における燃料・電力運用ガイダンスシステム」を開発し、製鉄プロセスで使用する燃料・蒸気・電力の運用を最適化することで、省エネルギー・CO2削減および燃料・電力コストの低減を実現しています。

従来は、オペレータがエネルギー需給状況(発生および使用)、発電設備の稼働状況に基づき、コストやエネルギー損失が極力少なくなるように、各プロセスへの副生ガス配分、燃料(重油・都市ガスなど)購入量、電力購入量、副生ガス貯蔵量などのさまざまな要素を決定していましたが、エネルギー需給変動の正確な予測が難しいなどの課題を抱えていました。今回開発したガイダンスシステム (図1)では、CPSの概念に基づき、リアルタイムに得られる膨大な測定データ(①)および各工場の詳細な生産計画を使用して、将来の需給状況を高精度に予測し(②)、製鉄所内の発電設備等の情報を考慮した上で(③)、外部からの購入量が最小となる最適な運用条件を燃料・電力シミュレーションで求め(④)、その結果をオペレータにガイダンスするものです(⑤)。

本システムの開発により2022年度日本エネルギー学会・学会賞(技術部門)を受賞しました。JFEスチールでは、「JFE Digital Transformation Center」(「JDXC®」)を開設し、製造プロセスのCPS化を進めるなどDXを積極的に推進することで、革新的な生産性向上および安定操業の実現を目指しています。製造現場におけるあらゆる分野の課題を、DXを通じて解決していくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

サイバーフィジカルシステム(CPS):フィジカル空間の莫大なセンサー情報(ビッグデータ)をサイバー空間に集約し、これを各種手法で解析した結果をフィジカル空間にリアルタイムにフィードバックすることで価値を創出するシステム

ガイダンスシステムの概要

ガイダンスシステムの概要

2022年度日本エネルギー学会・学会賞(技術部門)を受賞

電気機器の省エネに貢献する省資源型Si傾斜磁性材料

近年、電気機器小型化の観点から駆動周波数の高周波化が進展しており、モータや変圧器等の鉄心材料として用いられる電磁鋼板※1には高周波域での低鉄損※2が求められるようになっています。その実現には、電気抵抗増加元素である珪素(以下、Si)濃度アップが有効ですが、同時に磁束密度の低下を招くという課題がありました。

JFEスチールは、独自開発したCVD(化学気相蒸着)連続浸珪プロセス技術を用いたSi濃度分布制御技術により、「JNHF®」、「JNSF®」、「JNRF®」を開発し、この課題を解決しました。開発鋼は、高周波鉄損が低くかつ磁束密度が高いことから電気機器の高効率化、小型化に大きく貢献しており、太陽光発電用リアクトルや高速モータの鉄心材料として使用されています。開発鋼は、高周波鉄損が低くかつ磁束密度が高いことから電気機器の高効率化、小型化に大きく貢献しており、太陽光発電用リアクトルや高速モータの鉄心材料として使用されています。

なお、本開発の社会への効果が高く評価され、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。JFEスチールは高機能・高品位な電磁鋼板の提供を通じて、電気機器の高効率・小型化、省エネルギー化に貢献していきます。

※1電磁鋼板:鉄にSiを添加した材料であり、モータ、変圧器等の鉄心材料として広く用いられる

※2鉄損:鉄心を交流で励磁した際に生じるエネルギー損失。主に熱として失われる。鉄損が低いほど電気機器は高効率となる

CVD連続浸珪プロセスとSi濃度分布のコントロール

CVD連続浸珪プロセスとSi濃度分布のコントロール

令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞

主な外部表彰

西日本製鉄所(倉敷地区)電磁鋼板製造設備の追加増強について

当社は、西日本製鉄所(倉敷地区)の電磁鋼板製造設備について、2024年度上期の完工を目指して能力増強を図っていますが、さらなる能力増強について具体的な検討を開始しました。

カーボンニュートラルに向けた取り組みが世界的に進む中、自動車の電動化に向けた動きが加速しています。電動車の駆動モータに不可欠な高級無方向性電磁鋼板に対する需要は、世界的な環境規制の強化に伴い、さらなる急伸が見込まれることから、当社は、高級無方向性電磁鋼板の供給体制を増強し、伸び行く需要を確実に捕捉していきます。

当社は、自動車の電動化、エネルギー利用の効率化、および再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、世界的な高級電磁鋼板に対する需要の増加が継続することを見据え、今後もさらに資本を投入し、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の供給能力を増強していきます。

今後も、国内製造体制の強化を継続し、世界トップクラスの製造実力をさらに向上させるとともに、CO2排出量削減に寄与するエコプロダクトの供給を拡大していくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

【電磁鋼板とは】

鉄にSi,Al等を添加した材料で、高磁束密度かつ低鉄損という優れた磁気特性を有します。全方向にほぼ平均的に優れた磁気特性を有し、モータなどの鉄心材料として用いられる無方向性電磁鋼板と、一方向(圧延方向)に極めて優れた磁気特性を有し、変圧器などの鉄心材料として用いられる方向性電磁鋼板の2種類があります。

【増強概要】

総投資額(予定):約460億円

稼働時期(予定):2026年度中

製造能力(予定):電動車主機モータ用トップグレード無方向性電磁鋼板の製造能力を現行比3倍に増強

橋梁の安全性向上に貢献する鋼構造物用の薄物耐疲労鋼(AFD®鋼)

JFEスチールは、疲労損傷への耐久性を高めた薄物耐疲労鋼(AFD®※1)を開発しました。東日本製鉄所(京浜地区)厚板工場の高度な冷却制御機能を特徴とする「Super-RQ」を活用し、従来の厚板と同等の機械的性質を維持しつつ、一般鋼と比べて疲労損傷への耐久性を高めた鋼板を最小板厚9mmまで商品化しています。「AFD®」鋼の薄肉製造を実現したことで、疲労き裂の発生しやすい橋梁の薄肉部材向けなど、より広範囲の部位に適用可能となります。

長期間使用される鋼構造物には、老朽化に伴うメンテナンスコストや更新コストの低減が求められます。特に橋梁は薄肉部材が多いことから、自動車等の交通荷重により疲労き裂が発生する場合があり、点検や補修までの期間において、き裂が進展するリスクがありました。新たに開発した「AFD®」鋼は、これまで疲労き裂が問題となり易かった部材への適用が可能となるため、鋼構造物の耐久性を向上します。また、「AFD®」鋼は一般鋼の上限値と比較して、疲労き裂伝播速度※2が1/2以下に抑制され、製品寿命についても、一般鋼に比べ約2倍に改善する結果が得られており、部材の長寿命化に伴うライフサイクルコスト低減にも貢献することができます。

橋梁・船舶・建設機械・産業機械等の鋼構造物のさらなる耐久性、安全性、経済性の向上に寄与する高機能・高品質な鋼材の開発・供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

※1AFD:Anti-Fatigue-Damageの略

※2疲労き裂伝播速度:疲労損傷は、小さな力が繰り返し加わり続けることによって小さな割れ(き裂)が発生し、次第に大きくなって(伝搬)、最終的に破壊に至る現象。き裂は繰返し回数ごとに少しずつ伝搬するため、1回あたりにき裂が伝播した長さを疲労き裂伝播速度という

薄物AFD鋼の好適用部位の例

薄物AFD鋼の好適用部位の例

鋼構造物用の薄物耐疲労鋼を開発

圧粉磁心用絶縁被覆純鉄粉「電磁郎®

自動車の電動化の進展等、カーボンニュートラル社会実現のために要求が高まっているモータの高トルク化と小型化の両立に対応するため、JFEスチールは、圧粉磁心用絶縁被覆純鉄粉「電磁郎®」を開発しました。

圧粉磁心とは、軟磁性金属粉末に絶縁被覆を施し圧縮成形して製造する鉄心のことであり、従来用いられてきた電磁鋼板と比べると、動作周波数が高い領域での損失が低く、かつ複雑形状の鉄心に適した磁気特性を有しています。モータコア製造時の歩留まりも良く、製造コストを低減でき、モータ廃棄時の銅線回収も容易でリサイクル性の高い製品です。

今回開発した「電磁郎®」を用いた圧粉磁心は高回転モータや、高トルクが指向されるアキシャルギャップモータへの適用に最適な素材の一つです。「電磁郎®」の商品化により、JFEグループは、電磁鋼板からソフトフェライトコアまでをラインアップし、現状必要とされるほぼすべての周波数に対して幅広い軟磁性材料を提供する体制を整え、モータを含むあらゆる電源機器に対してワンストップで最適なソリューションを提供できる世界唯一の総合サプライヤーとなりました。

軟磁性:電流変化に応じて柔軟に磁力が変化する性質。このような材料はトランスやモータの鉄心として適しています。

JFEグループの軟磁性材料供給体制

JFEグループの軟磁性材料供給体制

圧粉磁心用絶縁被覆純鉄粉「電磁郎®」を開発

超大型コンテナ船の建造を実現した極厚高強度鋼板

JFEスチールは、超大型コンテナ船に適用可能な、世界最大厚となる板厚100mmの降伏強度460MPa級高アレスト鋼※1を開発しました。本技術では、世界で初めて、超極厚鋼板における溶接性とアレスト性能の両立も実現しています。

コンテナ船は、デッキ上部に大きな開口部を有する特徴的な構造の船です。海上を航行時に船体に大きな波の荷重を受けるため、デッキ上部や船体側面(ハッチサイドコーミング)には、極厚かつ高強度の鋼材を使用する必要があります。近年、輸送効率向上を目的にコンテナ船が大型化しており、それに合わせて鋼板は板厚が50mmから100mmまで拡大し、降伏強度で460MPa級までの高強度化が求められるようになる一方、鋼材の脆性き裂の進展を停止するために必要な高いアレスト性能も求められています。急速に大型化する船体の安全性確保のため、ハッチサイドコーミングに使用される板厚80mm~100mmの鋼材において、アレスト靭性値(Kca)8,000N/mm3/2以上の性能が、国際船級協会連合により義務付けられました。JFEスチールでは、加熱温度や圧延温度を精緻に制御するTMCP技術※2を活用し、鋼板の板厚中央部にき裂の伝播に抵抗する向きの結晶比率を高める独自の技術を確立し、世界最高厚となる100mmの極厚高強度鋼板においても高アレスト性能の確保を可能にしました。

本開発により超大型コンテナ船の実現に大きく寄与したことが評価され、令和5年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。その他、平成30年度「全国発明表彰 発明賞」や令和元年度「大河内記念賞」など数多くの賞を受賞しています。高機能・高品位な鋼材の供給を通じ、船舶のさらなる経済性、安全性と信頼性向上に努めるとともに、地球環境課題への対応など多様化するお客様のニーズに応え、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

※1高アレスト鋼:溶接部に万が一発生した脆性き裂の伝播を止め、船体の損傷被害を最小限にとどめる性能に優れた鋼板

※2TMCP技術:Thermo-mechanical Control Process(熱加工制御)のこと。制御圧延、加速冷却を駆使して、オンライン製造で鋼材の強度や靭性を向上させる技術

科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞

高圧水素輸送用ラインパイプ材の研究開発

石油メジャーなどが参画する「海洋石油・天然ガスに係る日本財団※1とDeepStar※2の連携技術開発助成プログラム※3」(以下、「本プロジェクト」)の水素関連技術開発において、当社製品の電縫鋼管(マイティーシーム®※4)を用いた、高圧水素輸送用ラインパイプ材の特性評価に関する研究開発が採択されました。本プロジェクトにおいて、DeepStarメンバーである石油メジャーのExxonMobil社(米国)、TotalEnergies社(仏国)と連携し、高圧水素輸送用の鋼管材料などの評価基準および方法を確立し、世界初の高圧水素輸送向けパイプラインの実用化を目指します。

2050年のカーボンニュートラルに向けて、発電用燃料等での水素の大規模利用が世界的に検討され、水素受入基地から需要地への大量輸送の手段として、現在の天然ガスにおけるサプライチェーンと同様にパイプラインを利用することが考えられています。

一方で、水素は鋼材を脆くする(延性を低下させる)性質があり、海外ではこの性質を踏まえ、安全基準や品質調査のための材料特性評価法の整備が進んでいます。今回の研究開発は、当社の千葉地区にあるスチール研究所で、高圧水素パイプラインに求められる必要特性についてECA技術※5などを用いた研究を実施すると共に、鋼管材料から切り出した材料試験片を用いて、高圧水素環境試験での性能評価を行います。石油メジャーのニーズを踏まえた技術開発を推進し、各社と共同で脱炭素化に貢献するべく、連携強化を図っていきます。

※1国土交通大臣が指定する船舶等振興機関として、全国の地方自治体が主催するボートレースの収益金をもとに、海洋船舶関連事業の支援や公益・福祉事業、国際協力事業を主に行っている公益財団法人

※2海洋油田開発生産に関わるChevron(米国)、Shell(英国)、Equinor(ノルウェー)など、世界中の海洋石油・天然ガスの探査・開発・生産を担う企業や、これら企業に製品・サービスを提供する企業、大学、研究機関などから成る海洋技術開発のコンソーシアム

※3海洋石油・天然ガス分野における脱炭素化等推進に係る日本財団とDeepStarの連携技術開発助成プログラム

※4溶接部品質に優れたラインパイプ用電縫鋼管「マイティーシーム®

※5Engineering Critical Assessment: 構造物に作用する力と材料試験から求めた材料靭性を比較し、力学的な観点で安全性を評価する技術

カルシア改質材

カルシア改質材は、転炉系製鋼スラグを原料として成分管理と粒度調整したスラグ製品で、浚渫土(しゅんせつど)にカルシア改質材を混合したものをカルシア改質土と呼びます。カルシア改質土は、混合前の軟弱な浚渫土に比べ強度が高いため、水中投入時に浚渫土が周囲に散逸して環境を悪化させることを抑制することが可能です。

埋立て材、浅場・干潟造成材、埋戻し材などに適用可能であり、浚渫土の有効活用が可能です。これまで、中仕切潜堤※の築堤材(横浜港新本牧ふ頭建設工事)、浅場造成の本体盛土材(徳山下松港土砂処分場付帯施設工事)、耐震岸壁の裏埋材(福山港箕沖地区岸壁築造工事)、護岸の押え盛土材(東京都新海面処分場整備事業)に利用されています。

区画して埋立するために、外周護岸内側の水面下に設けられる堤防

カルシア改質材とカルシア改質土

カルシア改質材とカルシア改質土
カルシア改質土の適用用途例(浅場・干潟造成材)
カルシア改質土の適用例(浅場・干潟造成材)

鉄鋼スラグ水和固化体

鉄鋼スラグ水和固化体は、セメントコンクリートの代替として、セメントの代わりに高炉スラグ微粉末、骨材である天然石砂の代わりに製鋼スラグなどを混合したスラグ製品です。主な原材料に鉄鋼スラグを有効活用しているため、天然材採取による環境影響の抑制やセメント使用量削減によるCO2抑制効果が期待できます。

鉄鋼スラグ水和固化体製ブロックや人工石材は、港湾工事におけるコンクリートブロックや天然石材の代替材として、国土交通省の羽田D滑走路工事、東日本大震災後の護岸復興工事などの適用実績があります。また、千葉港葛南中央地区港内においては地元漁業協同組合の協力を得て、現地モニタリングにより生物多様性への効果も調査しています。

消波根固ブロック
消波根固ブロック
鉄鋼スラグ水和固化体製人工石材
鉄鋼スラグ水和固化体製人工石材

高炉スラグ細骨材を用いたプレキャストコンクリート製品

セメントのように固まる性質がある高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートは、凍結防止剤や下水道などの劣悪環境下での耐久性を飛躍的に向上させる新技術です。従来から環境負荷低減効果が評価されてきましたが、高耐久性を有するコンクリート構造物としても期待されています。

2019年3月に、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の成果の一つとして、土木学会から高炉スラグ細骨材をプレキャストコンクリート製品に適用するための指針(案)が発刊され、高速道路や桟橋のプレキャスト床版でも使用されています。高炉スラグ細骨材による高耐久化とプレキャスト製品の品質の安定化が相まって、国土強靭化への貢献が期待できます。

高炉スラグ細骨材を用いた桟橋のプレキャスト床
高炉スラグ細骨材を用いた桟橋のプレキャスト床版

CO2削減に貢献する高炉水砕スラグ

高炉水砕スラグは、粉末状に粉砕してセメントと混合すると、セメントと同様にコンクリートの結合材となり、セメント製造時のCO2を削減します。例えば、高炉水砕スラグをセメントと45%置換した高炉セメントは、セメント製造1トン当たりのCO2排出量を42%削減できます。JFEスチールは、2022年度に約660万トンの高炉水砕スラグをセメント向けに提供し、約449万トンのCO2削減に貢献しています。

1トンのセメント製造に伴うCO2排出量(kg-CO2/トン)

CO2排出源 普通セメント 高炉セメント
石灰石 476 270
電力・エネルギー 283 170
合計 759 440

セメント協会 2022年公表データ

鉄鋼スラグ製品による海洋環境再生

粒度調整した鉄鋼スラグである「マリンストーン®」は、閉鎖性海域のヘドロ状底質からの硫化水素の発生を抑制し、生物が生息できる環境に改善するなど海の豊かさを守る機能があります。その効果は、社外表彰を広島大学と連名で受賞するなど高く評価されています。

一方、鉄鋼スラグ水和固化体製人工石材の「フロンティアロック®」は藻場や漁礁としても高い機能が認められています。静岡県南伊豆町沖の海底に造成された潜堤には、多年生大型海藻のアンクトメやノコギリモクなどのほか、有用な水産資源であるイセエビ、サザエ、多種の魚類などが集まっていました。さらに「マリンブロック®」によるサンゴの着生効果試験も実施しています。

「フロンティアロック®」潜堤に集まった魚群
「フロンティアロック®」潜堤に集まった魚群
「マリンブロック®」上で成長するサンゴ
「マリンブロック®」上で成長するサンゴ

鉄鋼スラグ製品によるブルーカーボンの取り組みと「Jブルークレジット®」認証

近年研究が進んでいるブルーカーボン(海洋で生息する生物によって吸収・固定される炭素)に注目して、鉄鋼スラグ製品による藻場の造成、藻場全体の炭素吸収量の測定にも取り組んでいます。

JFEスチールでは、神代漁業協同組合(山口県岩国市)、宇部工業高等専門学校(山口県宇部市)と連携し、2012年度から「岩国市神東地先におけるリサイクル資材を活用した藻場・生態系の創出プロジェクト」を推進しています。粒度調整した鉄鋼スラグである「マリンストーン®」などの鉄鋼スラグ製品を用いた豊かな生物多様性を持つ海藻藻場の造成、および藻場造成によるCO2吸収量の算定に取り組んできました。この度、算定したCO2吸収量79.6トン(2018〜2021年の累計吸収・固定化量)が、「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合」が認証・発行する「Jブルークレジット®」認証を受けました。漁業協同組合、学術機関、および民間企業が3者で連携して取り組んだプロジェクトとしては初の認証例です。プロジェクトで創出された藻場には多様な魚類集まるなどのコベネフィット(一つの活動がさまざまな利益につながること)が得られました。この海域は教育・研究の場としても活用されています。

鉄鋼スラグで造成した藻場に蝟集したメバルの群れ
鉄鋼スラグで造成した藻場に蝟集したメバルの群れ
教育や研究の場としての活用(写真提供:宇部工業高等専門学校)
教育や研究の場としての活用
(写真提供:宇部工業高等専門学校)

「JFEスチール×東北大学グリーンスチール共創研究所」

JFEスチールと国立大学法人東北大学は、カーボンニュートラル時代を見据えた研究活動の推進を目的として、2022年2月に「JFEスチール×東北大学グリーンスチール共創研究所」(以下、「共創研究所」)を東北大学大学院工学研究科に設置しました。共創研究所では、部門横断的な運営体制を構築し、製鉄プロセス開発や材料開発をはじめとする幅広い分野で相互に連携することで、低炭素製鉄プロセスに関する課題を多角的なアプローチで解決するとともに、新規開発テーマを新たな視点から発掘することが可能となります。さらに、若手研究員の派遣を通じて、次世代の製鉄業を担う高度専門人材を育成します。

東北大学大学院工学研究科 マテリアル・開発系 共同研究棟
東北大学大学院工学研究科 マテリアル・開発系 共同研究棟

「JFEスチール×東北大学グリーンスチール共創研究所」設置について

JFEエンジニアリング

JFEエンジニアリングの事業を通じた取り組み

JFEエンジニアリングでは、「くらしの礎を『創る』『担う』『つなぐ』-Just For the Earth」というパーパスのもと、SDGs達成に向けて「Waste to Resource」「カーボンニュートラル」「複合ユーティリティサービス」「基幹インフラ」「DXの推進」といった5つの分野に取り組んでいます。

「Waste to Resource」分野では、食品リサイクル、プラスチックリサイクル、燃焼・発電といった事業を行っています。「カーボンニュートラル」分野では、洋上風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、地熱発電といった再生可能エネルギーに係る事業を広く展開しています。「複合ユーティリティサービス」分野では、地域新電力立上げや熱供給サービスを通じて地域の課題に即したユーティリティ(水、電気、ガスなど)サービスの提供に取り組んでいます。「基幹インフラ」では、強靭化や長寿命化といったニーズを捉え、橋梁、ガス、上下水道のプラント、パイプライン等の建設を行っています。「DXの推進」分野では、単なる業務効率化にとどまらず、AIやIoT等のデジタル技術を活用した商品やサービスの提供に取り組んでいます。

JFE GROUP REPORT 2021(P43-P44)

国内最大級の木質バイオマス専焼発電所の事業化

JFEエンジニアリング、中部電力(株)、東邦ガス(株)および東京センチュリー(株)が共同で出資する田原バイオマスパワー合同会社は、国内最大級となる発電出力112,000kWの木質バイオマス専焼発電所の運転開始を2025年9月に予定しており、2022年に建設工事を着手しました。バイオマス発電とは、木質ペレット等の動植物性の原料を燃やして電力を作る発電方式で、再生可能エネルギーのうち、出力調整を行いやすく安定的な発電が可能である特徴があり、カーボンニュートラルや持続可能な社会の実現に貢献しています。

国内最大級木質バイオマス専燃発電所(田原バイオマス発電所)の完成イメージ
国内最大級木質バイオマス専燃発電所(田原バイオマス発電所)の完成イメージ

国内最大級112,000kWの木質バイオマス専焼発電所「田原バイオマス発電所」の工事着手

国内最大級バイオマス専焼発電所の建設工事開始(JFEだより第21期中間 P.6)

太陽光発電PPAモデル「ゼロエミプラン®オンサイト型サービス」を全国展開中

JFEエンジニアリングの子会社であるアーバンエナジー(株)は、需要家の敷地や屋根などを借用して太陽光発電システムを設置し、発電した電力を長期にわたり需要家に販売する太陽光発電PPAモデルの「ゼロエミプラン®オンサイト型サービス」を展開しています。需要家は初期投資ゼロで再生可能エネルギー由来の電力を活用できることに加えて電気料金の削減が期待できます。

太陽光発電PPAモデル:第三者が需要家の敷地や屋根などを借用して太陽光発電システムを設置し、発電した電力を長期にわたり需要家に販売するモデル。設置場所が電力消費場所と同じ場合はオンサイト型、異なる場合はオフサイト型と呼ばれる

太陽光発電PPAモデル「ゼロエミプラン®オンサイト型サービス」を全国展開中

アーバンエナジーの太陽光発電PPAモデル「ゼロエミプラン®オンサイト型サービス」導入50MW達成 ~前年度比2.5倍、既存サービスの高付加価値化メニューとして体制確立~

ボイラ発電プラント向けDXサービス(RODAS®

JFEエンジニアリングの「RODAS®は、ボイラ発電プラント向けDXサービスのブランド名です。下図のように、プラントの運転データをリアルタイムに当社クラウド環境へ収集する機能を持つ「Global Remote Center (GRC)」と、それらのデータを分析するためのデータ解析プラットフォーム「Pla’cello®」の上に成り立ち、双方の技術とボイラ発電プラントノウハウを組み合わせることで各種サービスを展開・開発しています。例えば、時間と場所を問わず最新の運転データと気象データを入手できるダウンロードツールや時系列データの解析を直感的に操作可能な可視化分析ツールの提供、遠隔でDCS(Distributed Control System:分散制御システム)のメンテナンスを行うサービスなど、プラント操業に関わる業務の効率向上に寄与するツール/サービスをご提供します。さらに、新燃焼制御システムは、Pla’cello®の人工知能によるシステム開発機能を利用してビッグデータを解析し、発電プラントのファン類の省エネおよびそれに伴うCO2削減を実現するプラント運転最適化サービスです。

RODAS®は、省エネに資するDXサービスとして高く評価され、2022年度省エネ大賞のビジネスモデル分野で最高位である経済産業大臣賞を受賞しました。また、既に当社JFEエンジニアリング製ボイラのユーザに順次導入いただいています(2023年3月時点で4拠点に導入済み有償サービス契約)。導入済みサービスのほかにも、人工知能を活用した異常予兆検知サービスや、 EPCや操業従事者の専門業務効率化に資する新たなサービスも、ユーザの声を取り入れながら、開発しています。

RODAS®は「Realize Operation by Digitalizing,Analyzing and Synthesizing」の頭文字を取りました。また、RODASはポルトガル語で「車輪」を意味します。あらゆるデータの解析&統合ノウハウを結集し、高度なプラント操業を実現するビジョンと、ユーザとのつながり、そしてよりよい未来へ前進する姿勢も表しています

2022年度省エネ大賞受賞

2022年度省エネ大賞受賞

RODAS®のイメージ図

RODAS®のイメージ図

「RODAS®」が2022 年度「省エネ大賞 経済産業大臣賞」受賞 ~ボイラ発電プラント向けDXサービスパッケージにより高効率な運営を実現~

JFEエンジニアリングのDX戦略(RODAS®

AIを活用した「ダム最適運用システム」の運用開始について

北陸電力(株)(以下、「北陸電力」)およびJFEエンジニアリングは、2017年度より浅井田ダムへの水の流入量を予測するAI(以下、「流入量予測AI※1」)の検証を行うとともに、2020年度より流入量予測AIを基に最適なダム・発電所運用を計画するAI(以下、「ダム最適運用AI」)を追加した「ダム最適運用システム」の共同開発に取り組んできました。

ダム最適運用システムは、流入量予測AIから得られたダムへの流入量を基にダム・発電所のゲート放流の操作タイミングを各ダムの運用上定められた規則を守りつつ提案するシステムです。これにより無駄な放流をなくし、発電電力量を増やすことが可能となります。

浅井田ダムでの検証を踏まえ、2021年度から、北陸電力が有する神通川水系5ダム(浅井田ダム、新猪谷ダム、神一ダム、神二ダム、神三ダム)に適用範囲を拡大し、5つのダム全体で最適運用の検証を進めてきました。その結果、AIの提案に沿って運転員が操作することで、水系全体で1%程度の水力発電電力量の増加が見込まれることが確認できたことから、このたび、「ダム最適運用システム」の運用を開始しました。 また、「流入量予測AI」や「ダム最適運用AI」は、ダムの早期放流による洪水※2低減(安全な操作)などにも活用できることから、治水の分野でも効果が期待できます。これにより、自治体やダム管理事業者をはじめ、地域の課題解決にも本システムが貢献するものと考えています。

今後、最新鋭のAI技術を取り込みながら、本システムを常に高度化・進化させ、CO2を排出しない水力発電電力量の増加に向けて継続的に取り組んでいきます。

※1流入量予測AI:過去の降雨実績と流入実績、気象庁の降雨予測をもとに33時間先までのダムへの流入量を精度高く予測するシステム

※2洪水:豪雨により河川の水が急激に増え、流れが速くなること

ダム最適運用システム構成(両社による共同開発)

ダム最適運用システム構成(両社による共同開発)

AIを活用した「ダム最適運用システム」の運用開始について

AIを活用した「ダム最適運用システム」の運用開始について:別紙「ダム最適運用システム」の概要

JFEエンジニアリングのDX戦略(WinmuSe®

東京工業大学「JFEエンジニアリング カーボンニュートラル協働研究拠点」

JFEエンジニアリングと国立大学法人東京工業大学は、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新規技術の開発推進を目的として、2022年7月1日に「JFEエンジニアリング カーボンニュートラル協働研究拠点」(以下、「協働研究拠点」)を東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所に設置しました。カーボンニュートラル社会の実現のために必要な、幅広い分野にわたる重層的なアプローチと革新的イノベーションを目指し、個別の共同研究の枠組みを超えた包括的な連携で同分野の技術開発を進めています。

本協働研究拠点では、JFEエンジニアリングが有するエネルギー・環境分野などにおけるプラントおよび各種インフラ建設に関連するエンジニアリング技術と、東京工業大学が有する幅広い領域における高度な学術的知見を融合することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新規技術開発を推進します。

協働研究拠点協定調印式(2022年6月29日)
協働研究拠点協定調印式(2022年6月29日)
科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所(大岡山北1号館)
科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所
(大岡山北1号館)

JFEエンジニアリングと東京工業大学「JFEエンジニアリング カーボンニュートラル協働研究拠点」を設置

循環型社会の実現と海洋環境保護の両立を目指して(ペットボトルの水平リサイクル)

J&T環境(株)※1の子会社である協栄J&T環境(株)※2は、2021年10月のフレーク工場の稼働に続き、2022年4月にペレット製造ラインが竣工し全面的な商業運転稼働を開始しました。「ボトルからボトルへ」(ボトルtoボトル/B to B)何度でも繰り返しリサイクルできる技術(水平リサイクル)により、原油からペットボトルを製造するのに比して63%のCO2削減効果が得られ(三菱UFJ R&C算定)、経済産業省らによる「2010年ものづくり白書」に資源環境制約対応事例として掲載※3されています。

なお、J&T環境は、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けた取り組みを推進することを目的として設立されたクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(Japan Clean Ocean Material Alliance、以下、「CLOMA」)の活動に共感し、CLOMAの会員となって、ペットボトルやプラスチックのリサイクル事業に取り組んでいます。

※1JFEエンジニアリングのグループ会社

※2J&T環境(株)と協栄産業(株)の合弁会社

※3協栄産業(株)によるもの

工場全景
工場全景

ペットボトルの水平リサイクル

ペットボトルの水平リサイクル

リサイクル手法の比較

リサイクル手法の比較

協栄J&T環境(株)西日本PETボトルMRセンター全面的な商業運転開始

J&T環境株式会社と協栄産業株式会社の合弁会社の設立について ~B to Bシフトに貢献する国内最大のペットボトルリサイクルレジン製造工場新設~

海外基幹インフラ事業への取り組み(東南アジア/水処理事業)

JFEエンジニアリングは、(株)大林組他と共同企業体を組成し、インドネシア共和国公共事業・国民住宅省居住総局から日本国政府の円借款事業によるジャカルタ下水整備計画(第1工区)下水処理場建設工事を受注しました。

インドネシアの首都で、人口1,000万人を超えるジャカルタ特別州では、下水道の普及率が12%に留まるため、下水管路の敷設と下水処理施設の整備が急務となっています。本プロジェクトでは、同州が策定する「ジャカルタ汚水管理マスタープラン」の15の処理区のうち、特に人口密度が高く商業施設が多い第1工区を対象とした下水処理場の建設工事です。

用地制約が厳しいなか、処理水量240,000m3/日(計画人口:124万人)の下水処理場を建設するため、排水のろ過(分離)に特殊な膜を用いた、省スペースと高い処理性能を実現する排水処理技術が採用されています。また、日本国内で実績のある最新鋭の工法をインドネシアで初めて採用するなど、設計から建設までを一貫して請け負い、質の高いインフラ輸出を実現します。

ジャカルタ下水処理場(第1工区)の完成予想イメージ図
ジャカルタ下水処理場(第1工区)の完成予想イメージ図

海外基幹インフラ事業への取り組み(西アフリカへの拡大/海外橋梁事業)

JFEエンジニアリングは2030年に向けた成長戦略の中で、海外事業の強化を推し進めています。世界のSDGs達成に貢献する上では、人口が増加していく国やエリアにおける橋梁などの社会インフラ整備が欠かせません。JFEエンジニアリングは東南アジア、南アジアを中心に多数の海外橋梁案件の実績を積み重ねてきましたが、未来に目を向けたとき、大きなポテンシャルを有しているのがさらに西に位置するアフリカや北米地域です。経済成長に向けて各国でさまざまなプロジェクトが動き出している中、このたび当社はガーナ共和国で第二次テマ交差点改良工事を、コートジボワール共和国でアビジャンの交差点改良工事を受注しました。ニーズに寄り添った提案や技術力を最大限に活用し、これらのプロジェクトを完遂することで、同国および西アフリカ地域のくらしや産業の基盤づくりに貢献していきます。

【ガーナ共和国 第二次テマ交差点改良工事を受注】

ガーナでは経済発展に伴う交通量の増加により、首都アクラ市および主要幹線道路の渋滞が深刻化しています。同プロジェクトは都市部狭小地での施工であり、渋滞下の既存交通への影響を最小化するため、短工期での建設が要求されています。また、耐久性の高い鋼・コンクリート合成床版や、塗装寿命を延長しメンテナンス性を高めた鋼などの日本の優れたサステナブルな技術が採用され、将来の維持管理負担の低減に寄与しています。

【コートジボワール共和国 アビジャンの交差点改良工事を受注】

コートジボワール最大の経済都市アビジャンでは、道路の老朽化や未整備による渋滞が慢性化しています。本プロジェクトは、市内を横断する幹線道路上の3つの交差点に高架橋を建設し、立体交差化することで円滑な交通を実現します。

当社は、現地規格を採用し設計の柔軟化を図ることで、プロジェクトの要求仕様の範囲内で設計を見直すことにより、使用する鋼材等の材料を削減し、建設コストやプロジェクトに伴うCO2排出を大幅に縮減させるバリューエンジニアリング提案を行いました。

主要な海外橋梁案件

主要な海外橋梁案件

ガーナ第二次テマ交差点工事完成予想イメージ

ガーナ第二次テマ交差点工事完成予想イメージ
出典:(独)国際協力機構

アビジャン(コートジボワール)のパルメリー交差点改良工事完成予想イメージ

アビジャン(コートジボワール)のパルメリー交差点改良工事完成予想イメージ
出典:(独)国際協力機構

国内最大級の金属3Dプリンターを活用した受託造形事業を開始

JFEエンジニアリングの鶴見製作所では2022年よりDED方式の国内最大級金属3Dプリンターを活用した受託造形事業を開始しました。現在、航空宇宙分野や自動車関連分野を中心に金属3Dプリンターを適用する動きが急速に広まっています。国内においても、電力・石油・ガス・化学等の基幹産業向けプラントや産業機械分野における適用ニーズの大幅な拡大が見られています。

例えば、鋳造では型作成と原料を溶かすための大容量の電力と時間が必要でしたが、3Dプリンターでは3Dモデルを基に金属材料を薄く積み重ねて形状を作る製造方法により1プロセスで最終形状まで製作する(ニアネットシェイプ)ため、大幅な省エネと製作時間短縮が実現できます。また、ニアネットシェイプによる歩留まりの大幅な改善が希少金属材料ロスの削減につながります。

鶴見製作所ではこれまでシールドマシンや蒸気タービンなどの多様な産業機械を製作してきました。長年培ってきた機械加工技術と3Dプリンターによる新しいものづくりの融合により、新たな産業・技術革新の基盤として展開・推進し、また航空宇宙や自動車関連などの新規分野に対しても製作体制を整えていきます。また、限りある資源を守り、「つくる責任 つかう責任」を持ちながら持続可能な社会の実現を目指し、人々の暮らしを支えていきます。

DED方式:3Dプリンターの造形方法の一種。 Directed Energy Deposition(指向性エネルギー堆積)の略。レーザー(熱源)を噴射した金属粉末に照射し、溶融・凝固による肉盛りを繰り返し、積層させることで三次元に造形する

使用例(二軸せん断式破砕機のモノカッター摩耗部補修 母材:SKD61/補修材:SKH51)

使用例(二軸せん断式破砕機のモノカッター摩耗部補修 母材:SKD61/補修材:SKH51)

JFEエンジニアリングと東レ・プレシジョンが事業提携~金属3Dプリンターによる受託造形事業で生産補完関係を構築~

金属3Dプリンター受託造形サービス(リーフレット)

JFE商事

電磁鋼板におけるグローバルサプライチェーンのさらなる拡大

CO2排出の削減をはじめとした気候変動問題への取り組みにおいては、発電された電力をいかにロスなく利用するかが重要なポイントとなります。全世界の電力消費量のうち、発電所や工場、家庭などさまざまな場所で使用されているモータによる電力消費量は40~50%、日本においては約60%を占めています。仮に日本において、モータの効率を1%改善すると、50万kWクラスの大型発電1基分に相当する省エネルギーになるといわれています。脱炭素社会実現へ向けて今後普及が見込まれるEVの主機モータや、車1台に50~100個搭載されているといわれている各種車載モータは、さらなる高効率化および小型化による軽量化が期待されています。また、発電した電力を工場や家庭に届ける際のエネルギーロスを最小にするため、送配電設備における損失のうち、多くを占める変圧器のさらなる高効率化も重要な課題です。

JFE商事は、モータや変圧器の高効率化に貢献する高品質な電磁鋼板をJFEスチールや他の鉄鋼メーカーから仕入れ、お客様のニーズに合わせた加工を行った上で安定的に供給するサプライチェーンの体制を整えています。高品質な電磁鋼板を必要とするモータメーカーや変圧器メーカーなどの需要家は、グローバルに製造拠点を展開していることから、当社も「日本・米州・中国・アセアンにおけるグローバル4極体制」の中で電磁鋼板のサプライチェーンを拡大してきました。JFE商事においては、高品質な電磁鋼板の世界No.1グローバル流通加工体制の構築に向け、国内外の拠点においてプレス加工設備を増強するなど、需要を捕捉するための取り組みを着実に進めています。さらなるサプライチェーンの拡大や加工機能の深化、アライアンス企業との協業拡大などを通じて、お客様のニーズにきめ細やかに対応し、電磁鋼板加工流通分野における体制構築を充実させていきます。

洋上風力発電産業向けのサプライチェーン構築

世界共通の課題である気候変動問題に対し、各国でカーボンニュートラルへの取り組みが拡大しており、日本では2050年カーボンニュートラル達成に向け2021年に策定された第6次エネルギー計画において、野心的な目標として、2030年度の温室効果ガス46%削減、電源構成の再エネ比率36〜38%、風力発電比率は2019年度の0.9%(設備容量4.5GW)に対し、5%程度(同23.6GW)という目標を掲げています。

洋上風力発電においては、2030年までに10GW、2040年までに30〜45GWの案件形成を導入目標とされており、産業の発展が見込まれます。

JFE商事では、洋上風力発電産業が先行する台湾において、風車基礎設備を製造する現地企業と協業し、基礎設備向け鋼材サプライチェーンでの実績を積み重ねています。今後は、その知見を活かし、日本の洋上風力発電産業においても、国産化・地域経済に貢献するサプライチェーンを構築し、お客様の需要に対応することで、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

バイオマス燃料の取り扱い拡大

JFE商事は、パームヤシガラ(Palm Kernel Shell:以下、PKS)をマレーシア・インドネシアから、木質ペレットを東南アジア諸国から、日本へ輸入し国内のバイオマス発電所へ燃料として供給しています。

PKS・木質ペレットいずれも生育過程でCO2を吸収することでカーボンニュートラルな燃料となるだけでなく、伐採後は再度植林を行うことで持続可能なビジネスモデルを確立しています。また、脱石炭に向けた代替燃料への取り組みも開始しており、環境に優しい企業を目指しています。

PKS
PKS
木材ペレット
木材ペレット

スクラップ取り引き拡大による循環型社会発展への貢献

JFE商事はリサイクル事業として、鉄スクラップ、アルミスクラップを扱っており、特に鉄スクラップはカーボンニュートラル達成に向けて、国内外での需要が徐々に拡大していくことが見込まれています。JFE商事は国内外での取り扱い数量を増やすことで循環型社会の拡大に寄与していきます。